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リハニュース No.5

  1. 特集:大学病院リハビリテーション科はどうあるべきか

    特集1-国立大学の重要課題-

    特集2-公立大学の立場から-

    特集3-私立大学の立場から-

  2. 第37回 日本リハビリテーション医学会 学術集会開催を控えて~Come to TOKYO BIG SIGHT

  3. 医局だより

    国立身体障害者リハビリテーションセンター

    鹿児島大学医学部リハビリテーション科

  4. 会員の声

    リハビリテーションと機能訓練

    「維持期リハビリテーション」と「維持的リハビリテーション」

  5. INFORMATION

    国際委員会

    教育委員会

    会則検討委員会

  6. 専門医コーナー:今後の専門医会活動について

特集:大学病院リハビリテーション科はどうあるべきか

特集1-国立大学の重要課題-

田中 信行
鹿児島大学医学部リハビリテーション科 

 今,医学・医療,また大学は重大な岐路に立っている.
 平成11年10月2日,横浜市立大学安藤德彦教授のお世話で行われた大学リハセンター連絡協議会の国立部会では,最重要と思われる下記の3題について,各演者の講演と討論を行った. 

Ⅰ. 独立行政法人化(独法化)の動きとリハ部門のあり方
 宮崎医科大学の田島直也教授は,国立大学の独法化のメリットとして,各大学の予算,人事の自由度の増加がある.しかし,デメリットとして,すべてが利潤,効率性で評価され,文部省の管理も逆に強くなり,リハ講座やリハ部門もその観点からしか評価されなくなる危険性を強調された.一方,救急部門や臓器別診療,総合診療科等が重要になろうと述べられた.
 会場からは,独法化は単なる公務員や教育経費削減のためである,不採算部門の切り捨て,研究の抑止が起こり,リハ講座等の新部門の設置は困難になるとの意見が多かった. 

Ⅱ. 大学病院の民営化,在院期間短縮とリハ部門のあり方
 東京医科歯科大学の森田定雄助教授は,大学の独法化=病院の民営化というだけならリハ科(部)新設や病床の配分の自由度も増すが,すべては経済効率が第一となると述べられた.私立大学や民間病院との比較,患者満足度からリハ部門の意義が問われよう.
 在院日数は,DRGやクリティカルパス導入でさらに厳しくなる.東京医科歯科大学リハ科の平均在院は69日だが,リハ科20~40床/600床では大きな影響はない.早期リハによる機能回復の促進,患者の満足度等のメリットを強調すべきである.
 意見として,リハ部門自体の収支の算出や,重症度に応じた在院期間の設定を要望すべきことも出された. 

Ⅲ. 卒後研修義務化とリハ部門のあり方
 東京大学リハ部の江藤文夫教授は,厚生省と国立大学病院との卒後研修目標の違いを述べ,いずれも疾病中心でリハ部門の研修の明示はないことを指摘した.またリハ部門の研修の義務化等よりも,現状ではリハ医の育成こそ重要であると述べられた.
 意見としては,リハ科研修は義務化はしなくても今後の重要な医療分野として位置づけ,これをリハ部門充実の契機にすべきとの考えが出された. 

 まとめ
 わが国は先進国8カ国中で最大の個人GDPを有しながら,最低の高等教育予算,最低の医療,福祉費用であるが,その事実は全く報道されない.大学の独法化や民営化,在院期間短縮は,さらにそれを抑えて物質的充足に向けようとするもので,国のあり方に不安を覚える.病者や障害者,老人という最も弱い人々のリハ医療を担う者として,積極的な活動や発言が必要であろう.
 昨年12月には千野理事長と共に厚生省,文部省を訪問し,各大臣および医療審議会委員宛に,①特定機能病院へのリハ科設置の明記,②リハ医学講座(科)の増設,③卒後研修へのリハ医学の取り入れ等の要望書を提出した.  各大学はこれらの「要望書」(事務局にあり)を活用して,リハ部門設置に努力してほしい. 

特集2-公立大学の立場から-

安藤 德彦
横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科 

1. 公立大学リハビリテーション科の現状と問題点
 公立8大学のリハ科は診療科か中央サービス部門に位置付けられ,専任の臨床教授が2大学で誕生したが,他は兼任教授が部長になっている.教員数はどこも2~3人である.
 1) 診療活動:多くの大学が診療科ではなく,ベッドを持つ3大学でも混合病棟で,リハ科固有の看護が実施できずにいる.しかしカンファランスは医師の司会で週1回は実施されており,他科からの指示はリハ科への併診依頼箋を介して行われ,リハ科のPT,OTに対する責任体制は確保されている.
 2) 卒前・卒後教育:学生教育の時間数は圧倒的に不足している.学生は患者を担当して評価,処方,リスク管理を実体験して医学的リハを理解できるが,それには最低1週間の臨床実習が必要である.筆記試験もリハ科単独で合否を判定できていない.これはリハ医学の学習成果を確認できない現状を示している.また,多くの大学が卒後教育まで余裕がなく,地域医療機関からリハ医の派遣要請があっても応えられないでいる.
 3) 研究活動:研究活動は臨床諸科と連携協力して行われているが,リハ科が独立してから学位を取得したところはまだ少なく,文部省科学研究費の申請も半数に過ぎない. 

2. 今後の課題と解決策
 公立大学のリハ科は一医療機関の診療科としては機能している.しかし教育・研究に関して機能を十分に果たしているとは言いがたい.根本的な改善には大学全体の意識改革が必要だが,現状では兼任教授の母体科に働きかけてでも時間を確保して,学生に医学的リハの必要性と意義を認識させたい.それは彼らが将来,患者にリハ医学の機会を与えてくれる機会の育成に繋がる.また,地域に派遣できるリハ専門医の養成は,無理をしてでも実行すべきだと考える.
 研究活動についても,成果を上げられなければそれが逆に劣悪な条件を変革できない悪循環の原因となる.Impact Factorの高い研究論文以外は業績と認めない大学という環境の中では,その実績を積まなければ実現の可能性のない他力本願に何時までも頼ることになる.リハ医学を充実・発展させる現実的な方法を展開する責任は我々にある.

特集3-私立大学の立場から-

石 田  暉
東海大学医学部リハビリテーション学

 高齢少子化の時代を迎え,授業料や受験料を主な収入源としている私立大学では,病院の収支の悪化は即学園そのものの経営を圧迫しかねないこととなり,今後の医療情勢を的確に分析し,対応することがそれぞれの大学病院に与えられた課題となっている.

 東海大学医学部は設立より四半世紀を超え,付属病院もリニューアルの時期を迎えている.新病院のコンセプトは,①在院日数が2週間以内の急性期病院に特化する,②day surgeryの枠を広げる,③患者のフローマネージメントによる時間の短縮を図る,④電子カルテの導入による効率化,などである.

 臨床の場面でこれらを実現するための一つの手段として,できるだけ多くの疾患にCritical Pathwayを導入して効率のよい医療を行うこととしてる.入院期間の短縮は当然のことながら,治療が完結できない患者を生み,リハビリテーション治療においても外来,在宅,転院による継続が今以上に行われることとなる.これら私どもの大学が抱える問題は,地域性はあるものの他の私立大学でも同様な問題として捉えることができる.

 「どうあるべきか」は個々の大学の特殊性があるために一概に言えないが,私どもは以下に示すいくつかの方策を考えている.
1) 超早期リハビリ(脳卒中では48時間以内,整形外科疾患では手術日当日からのリハビリなど)をCritical Pathwayに組み込む.
2) 呼吸器・循環器疾患,生活習慣病など今後需要が拡大するであろう疾患への先行投資(特殊外来の創設など)
3) 救命・救急センター(当大学では総合診療部に属す)に診療の前線を作る.
4) 回復期リハビリテーションが可能である病院とのネットワーク
などである.教育・研修面においてもリハビリテーション医学会全般の知識に加え,より急性期に対応のできる知識・技術をもった医師の養成が急務となり,今後導入されるであろう臨床研修必修化のなかでリハビリテーション卒後教育も再検討が迫られることが予想される.

第37回 日本リハビリテーション医学会 学術集会開催を控えて~Come to TOKYO BIG SIGHT

第37回日本リハビリテーション医学会学術集会 会長
石神 重信 (防衛医科大学校リハ部) 

 学会開催まで残すところあとわずかとなり,現在,プログラムの最終調整段階に入っております.最終的に722もの演題をお寄せいただき,事務局一同うれしい悲鳴を上げております.

 今回の学術集会では介護保険をテーマに,介護保険にリハ医療がどう対応すべきか,在宅医療で関連専門職の役割はどうあるべきかなど,現実に直面している様々な問題に対し率直な意見交換ができるよう大幅な時間を割きました.また,エキスパートに聞く在宅ケアにおけるリハのノウハウ,摂食嚥下障害者の自宅復帰へ向けてのアプローチ,など明日からのプラクティスに役立つ実践的な講義をたくさん用意しました.ワークショップではリハ工学と義肢装具を行います.著名な外国人講師も多数の参加が決定しており,アジア各国からの代表による“Rehabilitation Certificates”も行うなど,盛り沢山のプログラムを予定しております.以下に主な内容を示しました.

 さらに新企画として「リハ症例報告」や「我々の使っているクリニカルパス」もあり,活発な議論が予想されます.

 今回はリハ医師のみならず関連職種の方々が興味をもって参加していただけるように配慮しました.百聞は一見に如かずで,皆様お誘い合わせの上,是非ともご参加くださいますようお願い申し上げます.

会期:2000年6月22日(木)~24日(土)
会場:東京ビッグサイト  

医局だより

国立身体障害者リハビリテーションセンター

 当センターは,障害者の職業訓練を主体とした更生施設である更生訓練所,リハ工学から障害者の社会生活まで幅広く研究を行っている研究所,リハ関連職種養成のための学院,障害者のリハ・一般的治療および入所者の健康管理を役割とする病院より構成され,昨年20周年を迎えた.病院は現在200床で,脳損傷・神経筋疾患などを主体としたリハ病棟50床,脊損・切断などを主体としたリハ病棟50床,眼科・耳鼻科・整形外科など手術的治療を目的とした病棟50床,高位頚損・泌尿器科・内科などの病棟50床に分けられている.診療科は13科あり,医師は常勤医21名・レジデント4名よりなるが大学の医局形態とは違いリハ科としてまとまっているわけではない.各科の医師がそれぞれの専門分野でリハ医療に携わっており,お互い連携を取り合いながら障害者のリハだけでなく,障害者のプライマリケアから一般的な健康管理まで幅広く障害者に対しての総合的医療を行っている.そのなかで当院における特色ある診療内容をいくつか取り上げて簡単に紹介する.

 外傷性脳損傷において問題となる高次脳機能障害に対し,神経内科医が中心となりチームによる認知リハを行っている.脊損関係では,昨年度のリハ科の入院患者の約半数が頚損であり,C4レベル以上の高位頚損者も受け入れて呼吸管理も含めリハを行っている.整形外科では,他院で治療に苦労しているような難治性褥瘡に対して治療効果を上げている.眼科では白内障や緑内障,糖尿病性網膜症など手術で視機能の改善・視機能低下の予防を図るだけでなく,低視力者に対してロービジョンクリニックで専門的なリハ指導も行っている.耳鼻科では人工内耳埋め込み手術を施行しており,今後は幼児への適応拡大も含め充実を図っている.泌尿器科では脊損者の障害者の排泄障害だけでなく性機能障害に対しても検査・治療を行っており,実際に挙児が現実的となってきている.内科・消化器内科では,車椅子でも安心して検査が受けられるように検査機器や検査法を工夫し,障害者の健康管理の一環として人間ドックを随時行っている.歯科では重度な障害者の歯科治療や口腔衛生指導を行っている.昨年度に精神科医師も常勤となり,障害者の抱える様々な精神的問題に対してもより専門的な治療アプローチができるようになった.

 リハ患者に関しては数年前より院内LANを活用し,脳卒中における予後予測データベースシステムである「RES-4」をもとに他の障害にも対応しうるリハデータベースシステムを新たに構築し,各種障害のリハデータベース化とそのデータのカンファランスなどへの活用を図っている.

(草野修輔)

国立身体障害者リハビリテーションセンター
〒359-8555 埼玉県所沢市並木4-1
URL: http://www.rehab.go.jp
Tel042-995-3100,Fax042-995-3102

鹿児島大学医学部リハビリテーション科 

 鹿児島大学医学部リハビリテーション科は昭和63年に国立大学では全国初のリハ医学講座,リハ科として発足した.昭和12年に設立の県立病院温泉治療研究所を前身とし,昭和33年からは鹿児島大学医学部霧島分院として運営されてきた.現在,リハ講座を鹿児島市内の医学部に,リハ科を霧島リハセンターに置くという形をとっている.

 霧島リハセンターは,自然豊かな緑と温泉の湯けむりに囲まれた中にある.病棟は50床(リハ科・内科)で,外来はリハ医療だけでなく,地域の病院として高血圧や糖尿病などの生活習慣病,風邪や腹痛,また内科的救急診療も行っている.平成10年度は入院患者334名(稼働率95.3%),外来患者延べ9,913人だった.入院は脳血管障害が全体の60%を占めるが,ここ2~3年は本院からの脳外傷やHAM,脊髄損傷,慢性関節リウマチなどの紹介患者も増えてきた.PT3人,OT1人しかいないため,各主治医が運動訓練や言語,高次脳機能の評価,訓練にも取り組んでいる.また,3年前から月~金曜の毎日,当科の医師2人が本院のリハ室で他科からの紹介患者のリハ評価,リハ指示,装具指示などを行っている.本院にリハ病床はないが,これにより他科から早期のリハ依頼が増えてきた.

 霧島リハセンターの週間スケジュールは月・木曜日に各2名の患者の集中的な機能診,火曜日は午前中教授回診,午後から看護部,リハ部も合同の評価会議,木曜日に装具診,そして土曜日は午前中に“遊びりてーしょん”を行っている.

 我々が特に力を入れていることとして,(1)リハ効果の発現機序,効果促進法の開発(遺伝子転写,脳可塑性,集中訓練,薬物等),(2)スーパーローテーション研修(全員2年間の研修医中に1.5年を3~4科の他科研修),(3)社会的リハ啓蒙活動(公開講座年4回,実習・研修生年100余名),(4)患者アメニティの向上(食前酒,コーヒー,紅茶サービス,カラフルな衣服,化粧の推奨等)である.

 特に昨年3月,病床50床のままで810m2の増改築を行い,おそらく国立大学では初めて大部屋(4人室)にすべてトイレ,洗面所を設け,今年度の文部省文教施設部長賞(リニューアル部門)を受賞したことは最も明るい話題である. 医療,福祉のみでなく,教育(大学)にも厳しい抑止の波が押し寄せているが,教室員皆で力を合わせて進みたい.

(緒方敦子・田中信行)

鹿児島大学医学部附属病院霧島リハビリテーションセンター
〒899-6603 鹿児島県姶良郡牧園町高千穂3930-7
Tel0995-78-2077,Fax0995-64-4045

会員の声

リハビリテーションと機能訓練

佐直 信彦 (東北文化学園大学医療福祉学部リハ学科)

 我々はリハビリテーション医療,デイケア,機能訓練事業,デイサービスの場で,「訓練治療」に関わる用語を無造作に使ってきたきらいがある.しかし,法制度上は病院,療養型病床群,診療所等の医療機関で行う理学療法,作業療法等は診療報酬上はリハビリテーション(料)と呼ばれ,各種福祉法,老人保健法の下では機能訓練であり,明確に区分されていた.診療報酬上のリハビリテーション医療は基本的動作能力,応用的動作能力,社会的適応能力,言語能力の回復を図ることを目的としているのに対して,機能訓練は老人保健法(医療等以外の保健事業の実施基準)によると,「医療終了後も継続して心身の機能の維持回復するための訓練」と規定されている.その内容はおおむね「①歩行,上肢機能等の基本動作訓練,②食事,衣服の着脱等の日常生活動作訓練,③手工芸,④レクリエーション及びスポーツ」で,「医師の判定を受けた上で,医師,理学療法士,作業療法士,保健婦その他の者が行う」とある.現実は保健婦その他が主体となって実施している.因みに,総合承認施設のリハビリテーションは当然医師も行えるが,理学療法士,作業療法士が行うとなっている(Ⅱでは,理学療法士・作業療法士以外の従事者が行った場合はⅢに準じて算定するとなっているが,Ⅰについてはその規定はない).

 ところが,介護保険法下では用語の使い方は渾沌としている.一例としてあげるなら,老人保健施設での機能訓練は入所者および通所者を合わせた利用者に対して理学療法士または作業療法士の基準が決められており,通所者の機能訓練は「通所者施設療養費」で賄われていたが,介護保険法では基準はそのままで,通所リハビリテーション(料)となる.逆に,療養型病床群でリハビリテーション(料)と称されていた理学療法,作業療法は,介護療養型医療施設ではリハビリテーション(料)ではなく,特定診療費扱いとなる.

 その意図は,①理学療法(士),作業療法(士)の独自性の希薄化(低料金化)の布石なのか,②機能訓練は医師の必要性の認定というだけの縛りである.言語聴覚士法の場合のように一部を除いて,医師の指示から分離する布石なのか,③高齢者医療制度と介護制度の一体化とその方向性の布石なのか,不明である.

 以上のようなことを考慮すると,法制度の文脈で論ずる場合は,リハビリテーション,機能訓練の用語の使い方に,もう少し注意を払って欲しいと感じている.

「維持期リハビリテーション」と「維持的リハビリテーション」

佐直 信彦 (東北文化学園大学医療福祉学部リハ学科)

 何時の頃からか「維持期リハビリテーション」という用語が跋扈するようになった.多分,老人保健法の機能訓練が「医療終了後も継続して心身の機能の維持回復するための訓練」と規定されてから,「医療終了後」が「維持期」と重なるように,使われ出したのが始まりではないかと推察している.

 疾病は発症,経過から急性疾患,慢性疾患に大別される.急性疾患では病態の経過は「発病-修復-治癒」で,対応する病期は,「急性期―回復期~症状固定・障害残存(期)」となる.治癒についての定義も曖昧で,病理過程の修復の終焉とするか,機能の回復の終焉とするか,いろいろな考えがある.さらに,障害モデルに対応して,臓器レベル―個体レベル―社会レベルの機能的状態の帰結を視野に入れた考えもある.慢性疾患の病態の経過は,「発病不詳―進行・増悪・寛解~障害併存」で,対応する病期は,「慢性期」のみとなる.「維持期」とは何れを指すのであろうか.強いて言えば,急性疾患にのみ当てはまり,治癒過程のある時期から症状固定期に該当すると考えられる.当然,介護保険法でいう加齢現象,「特定疾病」の大方の疾患に「維持期」はない.

 一方,リハビリテーション的介入は概念的には予防的リハビリテーション,回復的リハビリテーション,維持的リハビリテーションに区分される.申すまでもなく,予防的リハビリテーションとは急性期の治療の過程で起こる廃用症候群の予防,回復的リハビリテーションは一次障害,廃用症候群をはじめとする二次障害の治療,維持的リハビリテーションとは到達された機能的状態を維持すること,その多くは生活習慣によって起こる廃用症候群の予防である.いずれにせよ,WHOの障害への対応が「障害予防とリハビリテーション」であったことを想起すれば了解できる.それぞれの病期において,何を予防し,何を治療回復させるかの介入の問題と言える.

 維持的リハビリテーションには,医療,保健,福祉の社会資源をいかに利用するかが,鍵になることは論を待たない.身体的な機能的状態に限っても,長期ケアにおけるリハビリテーションでは,維持的・予防的配慮だけでは,生活習慣によって起こる廃用症候群を防ぎきれず,時に応じて積極的な,回復を目的とした治療的介入(理学療法,作業療法等)が必要となることも少なくない.それを見抜くのもリハビリテーション医の技量である.

 「維持期」「維持的」についてのこだわりは私だけなのであろうか.会員諸氏の御意見を伺いたい.

INFORMATION

国際委員会

担当理事 平澤泰介, 委員長 岡島康友

 国際委員会は委員会が新体制へ移行したのに伴って,平成11年1月から活動しています.平成11年度は4回の委員会を開催し,他学会での規約を参考にしてHonorary Membership, Corresponding Membership,海外研修助成(Traveling Fellowship)の各制度の詳細を検討しました.目的は国際的なリハ医学交流と日本リハ学会の国際的認知度の向上にあります.これらの規約は一部修正を経て,理事会の承認を得ることができました.昨年の学会誌36巻11号に全文を掲載し,会員の先生方からのご意見も募集させていただきました.ここに,規約の概要を改めてご紹介いたします.なおHonorary MemberとCorresponding Memberの適切な邦訳がなく,他学会と同様,そのままの語を使うことにしました.

  1. Honorary Membership規約
    65歳以上の外国の方です.リハ医学に関する十分な業績をお持ちで,本学会が主催した学会での講演をされたり,あるいは本学会会員の留学などを受け入れるなど,日本との関わりをもたれたリハ医学の専門家です.定員は30名を限度としています.

  2. Corresponding Membership規約
    65歳未満の外国の方です.リハ医学に関する十分な業績をお持ちの方ですが,海外のリハ医学会で現役で活躍されているリハ医学の専門家といたしました.再任は妨げませんが,任期は5年です.本学会との国際交流が目的ですので,5年の間に少なくとも1回は,本学会への参加や講演もしくは日本のリハ医学関連出版物への投稿をいただくことにいたしました.定員は30名を限度とし,対象国が偏らないように考えています.

  3. 海外研修助成規約
    40歳以下の本学会会員で,海外でのリハ医学に関する学会発表と海外のリハ医学関連施設への訪問研修を予定する方が対象です.Honorary Membership,Corresponding Membershipと違って,この制度には本学会からの出費を伴います.助成人数は年3名を限度として,支給額は各30万円といたしました.応募資格は,リハ医学に関して外国語での学会発表の経験があることと,海外誌にFirst Authorの原著論文を持っておられることなどです.なお助成者には海外の参加学会あるいは施設研修の報告書をいただくことになっております.会員の先生方には,報告内容を公表する予定です.

 なお,これらの3つの規約に対して会員の先生方からのご指摘がなかったことを報告し,理事会の指示により平成12年1月から3月末まで海外研修助成募集(学会誌37巻1号掲載)を行いました.海外研修助成と同時に,規約にしたがってHonorary Member,Corresponding Member推薦募集を本学会名誉会員,役員,評議員の先生方にいたしましたところ,約20名のご推薦をいただくことができました.現在,理事会におきまして審議中でありますが,第37回日本リハ医学会総会には,実際の海外研修助成者,およびHonorary Member,Corresponding Memberのお名前をご紹介できるかもしれません.会員の先生方には,国際委員会の活動にご賛同いただきますよう宜しくお願いいたします.

教育委員会

委員長  間嶋 満

学術集会で6単位の生涯教育単位取得が可能に 

 学術集会での生涯教育単位の取得機会拡大が早くも実現しました.学術集会でちょっと頑張れば6単位〔学術集会参加2単位,教育研修講演受講4単位(学術集会長主催2単位,教育委員会主催2単位〕の取得が可能になりました.取得単位不足の方は大いにこのチャンスを生かしてください.

1. 学術集会における教育研修講演について
 a) 教育委員会主催:6月24日10:10~11:10,11:20~12:20
   (2会場,4演題,受講料は各1,000円)
 b) 学術集会長主催:6月24日14:00~15:00,15:10~16:10
   (2会場,4演題,受講料は各1,000円) 

2. 地域の学術集会・研究会の単位認定が進行中
地域の学術集会・研究会の単位認定が進み,地域における単位取得機会の拡大も実現しています.
皆様もリハビリテーション医学会誌の公示に必ず目を通されて,拡大された研修機会をご活用ください.

会則検討委員会

委員長  鈴木堅二

役員(理事,監事)の定年制に関わる調査から

 会則検討委員会では本医学会運営の活性化を目的とした役員ならびに評議員の定年制の改訂が懸案となっていた昨年末に,役員会から定年制について検討するように指示があり,他学会の調査や現状を踏まえて委員会案を作成した.委員会案では評議員の定年を現行の70歳から65歳に下げる,現在定款にない役員の定年制を設定するなどについて,評議員を対象にアンケートによる調査を行うことを理事会に答申した.

 役員会では評議員の改定は時期尚早という判断がなされ,役員に関わる調査のみ行われることになった.調査結果はリハ医学第37巻3号に報告した.今回の調査では回答率が88%と高く,関心の高さを示し,93%が改定に賛同した.理事については65歳が過半数を越え,監事は68歳と65歳に分かれ,その他として年齢だけでなく任期制についての提言もあった.今後は,役員会で改定に向けて検討がなされることになる.

 本学会評議員の定年は現行70歳であり,65歳以上がおよそ4分の1を占めており(平成11年12月現在),他学会に比べて評議員会は高齢化していることは事実である.また,本学会の評議員の選出方法は会員の選挙によるものではなく,評議員の推薦によるものである現行の評議員選出方法が妥当であるか,また社団法人として代議員制の導入などを検討する時期にきていると思われる.

専門医コーナー

今後の専門医会活動について

水落 和也 (横浜市立大学)

 一昨年からの機構改革の結果,リハ医学会は昨年4月から新たな体制で組織運営がなされています.専門医会にとって重要な点は,今回の機構改革の結果,はじめて専門医会がリハ医学会内の正式な組織として位置づけられたことです.
 専門医会は,これまでも年1回の会合を持ち,研究会と親睦会を行ってきましたが,これからはリハ医学会の下部組織としての性格・活動が求められることになったわけです.これに伴い専門医会の新たな規約,事業計画が必要となり,昨年の第11回リハカレントトピックス&レクチャー(横浜)において行われた専門医会総会において,伊藤利之事務局長から下のような改革の骨子の提案がなされました.

■専門医会会則&学術集会等事業に関する改革の骨子 

[専門医会の位置づけと役員体制]
1. 専門医会が「社団法人日本リハ医学会」に属することを会則に明文化する.
2. 事務局を「社団法人日本リハ医学会」の事務局内に置く.但し,会計は別とする.
3. 役員は,地方ブロック別に選出された幹事と実務を担当する若干名の幹事で構成する. 

[学術集会等の事業]
1. 年1回,秋季に専門医会の学術集会を開催する(内容は今後検討する).
2. 日本リハ医学会学術集会の中で,専門医会主催のシンポジウムやパネルディスカッション,交流セミナーなどが企画できるようにする.
3. 学術委員会や教育・研修委員会を設置し,学術集会におけるシンポジウムの企画や委託研究などを行う.
4. 主に若手会員を対象として研究奨励制度を創設する.
5. 専門医の質的向上をはかる目的で,教育を軸とした研究・研修会などを企画する.ただし,当面は専門医会内の自助努力として行うが,資格更新制度についても検討する.
6. 秋季に予定される専門医会学術集会時に,会員の親睦交流をはかる懇親会を開催する.
7. 日本リハ医学会の広報誌に専門医のコーナーを設け,専門医会の活動を広報する.
8. 専門医会学術集会の抄録などはリハ学会誌に掲載する. 

 総会で承認されたこの改革案に従って,本年6月の専門医会総会での最終決定に向けて,専門医会起草委員会が設立され,1月28日に第1回委員会が開催されました.
[委員:梅津祐一(産業医大),木村彰男(慶應大),小林一成(東京逓信病院),住田幹男(関西労災病院),椿原彰夫(川崎医療福祉大),松本茂男(青森中央病院),前島伸一郎(和歌山県立医大),水落和也(横浜市大)].
第1回委員会では,各地域での専門医をとりまく状況と地方会活動状況,専門医としての活動の問題点などの意見交換の後,今後の具体的な活動計画がなされました.

 専門医会はどうあるべきか,専門医とリハ医学会の関係はどうあるべきか,専門医会が主催する学術集会(旧リハカレントトピックス&レクチャー)の位置づけと内容をどうするべきか,などの問題について,6月までには結論を出し,新たな会則,事業計画を提示したいと考えております.

 専門医やこれから専門医を目指す先生方から今後の専門医の活動についてご意見をお聞かせいただければ幸いです.また,専門医でない先生方からのご意見・ご批判も仰ぎたいと思っております.御意見がありましたら,上に示した起草委員にお寄せください.