サイト内検索

会員のページ

リハニュース No.6

  1. 特集:回復期リハ病棟―そのねらいと対策

    回復期リハ病棟入院料について

    回復期リハ病棟をシミュレーションして

    公的リハ病院の立場から

  2. 第37回日本リハビリテーション医学会学術集会:印象記

  3. INFORMATION

    国際委員会

    編集委員会

    教育委員会

    評価・用語委員会

    障害保健福祉委員会

    関連専門職委員会

  4. 専門医コーナー:臨時総会報告

  5. 医局だより

    吉備高原医療リハビリテーションセンター

    昭和大学リハビリテーション医学診療科

  6. 質問箱

    functional outcome

    EBMとは?

  7. 歩行分析の診療報酬点数化について

特集:回復期リハ病棟―そのねらいと対策

回復期リハ病棟入院料について

新村 和哉
厚生省保険局医療課

 平成12年度診療報酬改定においては,医療機関の機能分担と連携,医療技術の適正評価,出来高と包括の組み合わせ等が主要な検討項目とされたが,これと同時に,同年4月からの介護保険の本格実施を目前にして,寝たきり等による要介護状態の発生を防ぐためのリハビリテーション(以下,リハ)の充実も重要な課題であった.

 リハには,時間的な推移から見ると急性期,回復期,維持期といった区分がなされているようであり,また,提供施設も病院,老人保健施設,福祉施設,市町村等さまざまである.制度としても医療保険のほか,従来で言えば老人福祉,老人保健事業があり,今後は介護保険下でもリハが行われることとなるが,医療保険としては,脳血管疾患等の患者の急性期から回復期のリハを強化することにより早急にADLの向上を図り,要介護状態を作らない,あるいは軽い要介護度を目指すことが最も重要なことと考えられた.

 このような問題意識の下に,リハ医学の関係者との非公式な意見交換を行う中で,リハの診療報酬上の評価方法について模索していたが,リハ施設・病院協会がかねてよりリハ専門病棟の評価を提案し,12年改定に向けても要望を行っていたことから,この提案を参考にしつつ新設点数の検討を進めることとした.

 一方,昨年来,中医協では中長期的な診療報酬体系のあり方を検討していたが,リハの充実評価について,総論的には診療側,支払い側ともにほぼ合意が得られていた.昨年12月に出された「診療報酬体系のあり方に関する審議の中間報告」においては,「医療法による病床区分を基本として,急性期医療,慢性期医療,リハ,長期療養等の疾病,病状に応じた患者の医療ニーズの視点から,現行の診療報酬体系における既存の機能分担の見直しや新たな機能分担の設定,及びその連携の強化方法について検討する」とされた.

 政府予算がらみの診療報酬改定率が年末にセットされた以降,年明けには,中医協で診療報酬改定の具体的な検討項目を示すこととなり,「回復期リハ病棟入院料」について,おおまかな施設基準を含めて事務局として提案を行った.中医協では,「回復期リハ」という言葉が耳慣れなかったためか,支払い側から回復期の概念等についての質問があったが,その背景には,回復期リハの名の下に病状の軽い患者を対象とした維持期のリハまで入ってしまうのではないかとの懸念があったようである.これに対しては,同入院料の対象患者の疾患を明示するとともに発症後受け入れまでの期間を3カ月に限定し,かつ,算定期間を6カ月と区切ることにより理解を求めることとした.

 施設基準については,看護3:1以上,看護補助6:1以上,病棟に医師1名以上,PT2名以上,OT1名以上の配置,病床面積6.4m2以上等としたが,これらは病棟を中心として集中的なリハを行うためには必要な要件と考えられたものである.これを見てわかるように,人員配置面では一般病棟に近く,構造設備面では療養病棟に近い基準である.リハ専門病棟を有する病院には,一般病棟で従来の新看護を届け出ているところと,療養病棟で行っているところがあるようだが,回復期リハ病棟は,その施設要件を満たすならば一般病棟,療養病棟のいずれでも算定可能とした.特に療養病棟に関しては,構造面では要件を満たしており,人員配置面の改善と対象患者受け入れの努力を行うことにより同点数が算定できることになる.介護保険の実施に伴い,療養病棟は介護保険適用のものと医療保険適用のものに分かれることになるが,後者の重要な機能としてリハが挙げられていることから,この入院料の活用が強く期待されるところである.

回復期リハ病棟をシミュレーションして

大 島  峻
時計台病院 

■はじめに 平成12年3月,第四次医療法改正の中で回復期リハ病棟が診療報酬上認められた.リハ科を持てば在院日数が長くなると敬遠されていた我が国の医療が,リハを取り入れなければ在院日数が長くなると180度転換した考え方に変わる契機を作るかもしれないと期待される. 

■従来のリハ病棟 時計台病院のリハ病棟は2:1看護,一日当たり平均入院単価は26,264円であり,その26.9%がリハ費用,58%が入院料である.注射・投薬・検査・処置・レントゲンなどは合わせても12%に充たない. 

■回復期リハ病棟シミュレーション 平成12年2月に入院していた患者251人(延べ5,367日)のうち整形外科と脳外科の入院患者を調査した.整形外科は83人中17人(延べ326日)が,脳外科は38人中7人(延べ118日)が回復期リハ病棟の対象であることが分かった.この時期の整形外科は一日入院単価は42,059円,脳外科は58,731円であり,平均在院日数はそれぞれ19.3日,16.6日であった.回復期リハ病棟があって,予定通りリハ病棟に移行すると,整形外科は患者数66人(延べ1,306日)になり,平均在院日数は17.2日,一日入院単価は50,930円となる.同様に脳外科は患者数31人(延べ536日)で平均在院日数は14.9日,一日入院単価は67,725円となる.
 リハ科は入院患者16人(延べ717日),平均在院日数は51.2日,一日入院単価は26,346円であったが,回復期リハ病棟に移行することで一日入院単価が25,532円と低下することになる.しかし,整形外科,脳外科の回復期リハ患者を24人(延べ835日)を受け入れることで月の入院収入は1889万円から2936万円に増加する.この結果から,病院全体としてみれば,同じ患者に同じ行為を行ったとしても入院収入は月額22034万円から22658万円に624万円増加することになる. 

■まとめ 回復期リハ病棟は,従来,急性期の病棟に入院していた患者で長期化していた患者が入院基本料の保証されているリハ病棟に移行することで,時計台病院の場合は明らかに収入の増加(約3%,年間7392万円)につながる.しかし,もっと大きな導入の効果は一般病棟の平均在院日数の削減である.現在,平均21.5日の時計台病院は回復期リハ病棟を作ることで18.4日に削減される.このことはリハ科を抱えていながら特定急性期病院へ移行するための必須の要件であり,多くの急性期病院がリハ科を抱え,積極的に急性期・回復期のリハを提供できるための重要な礎石となるであろう. 

回復期リハ病棟の導入による入院要素の変化

対象患者(人)

平均在院日数(日)

診療単価(円)

現状

一般病棟

リハ病棟

現状

一般病棟

リハ病棟

現状

一般病棟

リハ病棟

整形

83

66

17

19.3

17.2

38.4

42,059

50,930

23,944

神リ

16

0

16

51.2

-

75.5

26,346

-

25,532

消化

73

73

0

21.4

21.4

-

42,096

42,096

-

外科

32

32

0

23.1

23.1

-

35,335

35,335

-

泌尿

9

9

0

10.5

10.5

-

43,333

43,333

-

脳外

38

31

7

16.6

14.9

33.6

58,731

67,725

27,552

合計

251

211

40

21.5

18.4

54

41,055

46,890

25,290

公的リハ病院の立場から

永田 雅章
市川市リハビリテーション病院 

■当院は平成10年9月に開設した病床数100床(50床2病棟)の病院で,開院当初から亜急性期~回復期のリハに重点をおいている.また,整形外科的疾患の保存療法や術前術後訓練を含む一貫した手術療法も行っている.昨年度の病棟体制は3:1看護,6:1看護補助で病床利用率92.3%,平均在院日数57日であった.総合リハ施設でリハ科の医師は4人,入院患者の8割がリハ科で2割が整形外科であり,約60%の患者が回復期リハ病棟(以下,リハ病棟)の条件に合致していた.この度の診療報酬改定を受けて5月より1病棟をリハ病棟とし,他の1病棟は一般病棟で入院基本料Ⅱ群3(3:1看護,平均在院日数60日以内)とした. 

■リハ病棟をすぐに申請した(できた)理由は,①収支改善のため(当院は公営企業会計を採用しており,市財政逼迫のため開院前から一般会計負担金を減らすことを常に要求されている),②当院が回復期リハに力を入れていることを名実とも内外にアピールするため,③一般病棟の平均在院日数60日以内を確実にするとともにリハ病棟の入院期間に余裕をもたせることが可能,④看護職員の配置が合致していること,⑤入院患者の過半数が要件を満たしていること,などである. 

■まだ1カ月半で結果を論ずるのは時期尚早だが,これまでのところリハ病棟の患者はすべてリハ病棟入院料を算定できている.シミュレーションでは,入院料Ⅱ群3で出来高払いとした場合より1人平均145点/日の増収である.また,リハ病棟の看護業務を見直し,よりきめ細かなサービス提供,病棟訓練の充実,ADL評価・指導法の改善などに取り組むきっかけとなった.一方,1病棟をリハ病棟とした当院でのデメリットは事前に予想したとおり,2病棟間に業務量の差がかなり生じていることである. 

■6月1日現在,千葉県内のリハ病棟は当院を含め2カ所しかない.リハ医療に力を入れている病院は多いが,リハ病棟の要件がかなり厳しいため数が限られると推測される.今後リハ病棟を増やしていくために,①4:1看護・4:1看護補助も選択可能,②言語聴覚士とソーシャルワーカー(資格の問題があるが)の配置による点数の加算,③リハ病棟の患者には医師による訓練も含めてPT・OT・STをそれぞれ1日2回まで算定可能,④リハ病棟に入院する脳卒中患者にはPT・OTの同一日算定を(発症日からでなく)入院日から6カ月まで認める,などの方策が必要と考える.

第37回日本リハビリテーション医学会学術集会:印象記

渡 邉  修
東京慈恵会医科大学

 第37回日本リハ医学会学術集会が,平成12年6月22日~24日,東京ビッグサイトにて石神重信会長(防衛医科大学校リハ部)のもと,2,300人以上の会員の出席を得て,盛大に開催された.会長が掲げたメインテーマは,「リハ医学の確立と展開―リハ医療の有効性―」であり,20世紀のリハ医療の総括を行うとともに,来たる21世紀の幕開けにふさわしい大きな課題を含んでいた.学会に先立ち,6月21日には,プレコングレスとして,岩井武尚教授(東京医科歯科大学)による「重症虚血肢の治療―Limb Salvage Update―」,水野美邦教授(順天堂大学)による「パーキンソン病の薬物治療Update」の御講演があった.

■学会では,基調講演2題,特別講演4題,シンポジウム15題,ワークショップ2種(リハ工学,義肢装具),モーニングレクチャー4題,小児レクチャー3題,教育研修講演8題,セミナー6題,一般演題752題があり,総演題数は871題であった.さらに今回は,諸外国から第一線で活躍されておられる先生方28人が講師として出席され,石神会長の御熱意からInternational programも設けられ,すべて英語での活発な質疑応答がみられた.また一般演題では,Keynote mini-symposiumとして,座長による最新のレビューを含む合同討論が随所に盛り込まれ,より深く熱心な議論が行われた. 

■基調講演では,まず佐藤達夫教授(東京医科歯科大学)が「ヒトの肩はなぜ多様な動きができるようになったか―系統発生学的視点から―」と題する講演をされ,肩の複雑な構造と機能を比較解剖学的視野から説明された.ついで,DeLisa教授(New Jersey Medical School)は21世紀に求むべきリハ医学の姿について述べられた.20世紀に蓄積された,基礎的研究から臨床研究,教育,テクノロジー,データベース(研究,保健,福祉,医療)は世界的グローバルな視点からお互いに共有し発展させるべきであること,互いに,言語,文化,人種,地理など相違はみられても,共通する点はそれ以上に多く,個々のデータを総括し,コラボレイトしていくことこそ重要であるとの指針を与え,会員に感銘と思索する機会を与えた. 

■特別講演はMelvin教授(Jefferson Medical College)は米国における保険制度の問題点を浮き彫りにしてManaged CareからHMO(健康維持組織),ISN(包括的医療組織)への変遷について触れ,日本における今後の保健医療の方向性について大きな示唆となった.Grabois教授(Baylor College of Medicine)は“Chronic Pain Syndrome: Role of Rehabilitation in Evaluation and Treatment”と題する講演のなかで,慢性疼痛は,実に多くの要因が関与していることから包括的アプローチ(評価,治療)の重要性を強調され,またこうしたアプローチの費用効果についても言及された.Walsh教授は“The Decade of Bone and Joint”と題する講演のなかで,21世紀における骨関節疾患の重要性を話された.人口の高齢化とともに関節疾患,骨粗鬆症,腰痛,骨折は急増し,社会に与える影響は計り知れない.こうした問題を喚起するとともに,研究分野,福祉分野,さらに経済効率の上からも予防的施策の必要性を説かれた.またSae-il Chun教授(Yonsei University)は,リハプログラムを作成する時点で,患者個人個人のQOLを重視し,個々の機能障害のみならず,その患者背景や文化を十分考慮しなければならないことを強調した. 

■シンポジウムは15題を数えた.「ニューミレニアムシンポジウム―21世紀のリハ医療への期待」では,整形外科医,神経内科医,リハ医,福祉サイド,障害者,市民のそれぞれの立場から21世紀への期待が述べられた.今世紀に臨床医学として誕生したリハ医学がさらに人類のために発展するには,その構造,思想をすべての医学,社会の分野に統合するとともに,国民に普及し,研究面では,リハ医学の50年以上にわたって蓄積されたデータをもとに,evidenceのある治療手段を発展させ,さらに機能回復神経学(restorative neurology)やテクノロジーの進歩,予防医学の確立が期待された. 

■また本学会のメインテーマにあるリハ医療の有効性について,脳卒中の急性期および回復期のリハを検討した.いずれも全国規模のアンケート調査の結果を踏まえ,さらに一般市中病院,県立病院,大学病院,リハ病院からの個々の報告があった.近年,特に重要視されてきた急性期からのリハの介入の効果は,機能回復のうえでも,費用便益の上でも自明であることが述べられ,その具体的方略が提起された.また,クリニカルパスの導入によって,入院期間は短縮されても,効率的包括的リハは,その機能予後に影響を与えないことが確認された.一方,回復期リハの全国調査の結果は今後検討すべき課題だが,回復期においてもリハの効果が運動機能,認知機能,ADLレベルにおいても十分認められるという指摘は重要である.ただし,本年4月から施行されている「回復期リハ」の認定を得るには,多くの障壁があることの問題が提示された. 

■本学会では,介護保険元年として,社会福祉基礎構造改革の概要が述べられ,介護保険制度に見られる今後の展望と問題点が討議された.またそれによって生じた在宅リハの具体的施策が活発に議論された. 

 紙面に限りがあるのでさらに内容の詳述はできないが,本学会は,来る21世紀におけるリハ医学に確固たる方向性を与えた意義深い学会であった.

INFORMATION

国際委員会

担当理事 平澤泰介,委員長 岡島康友

 国際委員会では,第37回リハ医学会における平成12年度学会評議員会・総会において,昨年度の委員会活動として,国際委員会関連規約の作成の経緯と,それに基づいたHonorary Member, Corresponding Member,海外研修助成者の選出過程を報告しました.その上で, Honorary Member候補6名"Dr. John L. Melvin, MD, Jefferson Medical College, Dr. John V. Basmajian, MD, FRCP, McMaster University, Dr. Evert J. Knutsson, MD, PhD, Karolinska Institute, Dr. Frederic J. Kottke, MD, PhD, University of Minnesota, Dr. Henry B. Betts, MD, Past President, Medical Director, RIC, Dr. Gunnar Grimby, MD, PhD, FRCP, Goeteborg University",およびCorresponding Member候補8名"Dr. Joel A. DeLisa, MD (USA), UMD-New Jersey Medical School, Dr. Sae-il Chun, MD (Korea), Yonsei University, Dr. Martin Grabois, MD (USA), Baylor College of Medicine, Dr. Gary Okamoto, MD (USA), University of Hawaii, Dr. Kerl H. Mauritz, MD (Germany), Free University Berlin, Dr. Haim Ring, MD (Israel), Lowenstein Rehabilitation Center, Dr. Tyrone M. Reyes, MD (Philippine), University of Santo Tomas, Dr. John K. Ker, MD (Australia), Royal Perth Rehabilitation Hospital"のご承認をいただきました.それから,海外研修助成者として井手 睦先生,長谷公隆先生,菅 俊光先生の3名に対して,証書授与を行うことができました.会員の先生方のご理解に感謝いたします. 

 また,学会長の石神重信先生の御尽力により,ゲストとして韓国からDr. Seo Joo Kim(韓国リハビリテーション医学会理事長),Dr. Sae-il Chun(韓国リハビリテーション医学会会長),Dr. Kang Woo Lee(次期理事長),Dr. Jae Ho Moon(次期会長),Dr. Chang-il Park(国際委員会委員長)をお招きいただき,日韓交流準備会を開催いたしました.他の多くの学会が行っている日韓学術交流の布石になるものと考えております.今後の展開にご期待ください.

 なお,平成12年度の活動目標としては,海外交換研修制度の創案と国際交流のためのシステム構築,新たなHonorary MemberおよびCorresponding Member候補の検討,平成11年度海外研修助成者の研修情報の収集と報告,平成12年度海外研修助成の募集を挙げさせていただきました.

編集委員会

委員長 里宇明元

 佐鹿前委員長の後任として,本年4月より,編集委員長を仰せつかり,その任の重さに身が引き締まる思いです.現在,委員会では2つの大きな課題に取り組んでおります.第一は,Index Medicusへの収載問題で,学会員の貴重な研究を世界に広めるべく,様々な検討を重ねて参りましたが,1) National Library of Medicineの財源が限られている,2) MEDLINE収載総雑誌数がほとんど増えていない(約3,900),3) 特に邦文誌(約120件)は,ここ20年間ほとんど新規採用がなく,英文抄録があっても採用は難しい,というのが現状です.そこで委員会では,Index Medicus収載の道を探りつつも,並行して学会ホームページに英文抄録を掲載する,各国のリハ関係学会ホームページに本誌記事へのリンクを依頼するなど積極的な情報発信を通して,世界の目を本誌に向けさせることも検討中です.第二の課題は,本誌の生命とも言える投稿論文をいかに増やすかということで,このために会員への投稿の呼びかけ,査読過程の迅速化,honorary およびcorresponding membersからの投稿の促進など,質と量を充実させるべく,努力を重ねております.21世紀に向けて,本学会誌がリハ医学に関する人類共有の知的財産としてさらに発展すべく,力を尽くしたいと考えております.皆様の御指導,御支援を心よりお願い申し上げます.

教育委員会

委員長 間嶋 満

 第37回リハ医学会に先立ち,6月21日開催された委員会で決定した内容の一部をお伝えします.

1. 新委員決定:今回の委員会から,山鹿眞紀夫委員(九州ブロック),石田健司委員(中国・四国ブロック)が新たに参加されました.
2. 卒後医師研修会開催予定:平成12年度にはもう1回,平成13年度には3回,以下の内容での開催が決まりました.なお,要望が強かった小児領域の研修会を今年度と来年度に2回開催することになりました.
・第54回:小児領域,平成13年2~3月頃,九州,山鹿委員
・第55回:神経・筋,平成13年7月頃,金沢,染矢委員
・第56回:小児領域,平成13年11月頃,東京,永田委員
・第57回:総論(障害学,運動学),平成14年2~3月頃,倉敷,椿原委員 

 上記内容は次回理事会にて正式決定され,学会誌に掲載されます.

評価・用語委員会

委員長 住田幹男

 日本リハ医学会においては5年ごとの用語集の改訂を行ってきている.すでに会員各位におかれては1997年版の用語集があると思われるが,2002年度改訂版作成に向けて本格的な作業を本年度より開始する運びである.医療ビッグバンと形容される医療・福祉・介護保険・保健を取り巻く環境の激変の中で様々な用語が氾濫しているのが現状である.そこで当委員会では本医学会会員の英知を結集して頂き,臨床や研究の日常活動にまた教育活動により便利な用語集の発刊を目指している.今後関係各位においてはアンケート調査表依頼への応諾,学会誌への告示,直接学会事務局への提案などを切にお願い申し上げる次第である.2002年(平成14年度)には,新しい用語集が首尾良く会員の皆様に届けられるように,委員会一同努力する所存ですので会員のご助力をお願いします.

障害保健福祉委員会

委員長 伊藤利之

障害保健福祉情報(1)~今,何が問題になっているか?~ 

 戦後50年,障害者を支えてきた社会保障制度が大きな転換期を迎えている.救命や貧困救済という基本的な生活保障から,人権を尊重したより豊かな生活保障に向けた適切な制度改革ができるか否か,ここ数年の動向が21世紀の日本の社会保障を左右することになろう.

 現在,すでに公的介護保険の創設と医療保険の改革が進んでいるが,その一方で,社会福祉の基礎構造改革も進められており,障害保健福祉施策全般の見直しが始まっている.

 そこで今回は,去る5月29日に国会を通過した「社会福祉事業法」の改正を中心に,社会福祉基礎構造改革の基本的方向性について,その概略を紹介する.

  1. 行政処分である措置制度から,種々のサービスを個人が自ら選択し,サービス提供者との契約により利用する制度へ転換する(利用者と提供者の対等な関係の確立).

  2. 利用者に対する相談援助事業,情報伝達支援事業などを新たに追加,成年後見制度とあわせ,各種サービスの適正な利用を援助する権利擁護制度を導入・強化する.

  3. 社会福祉法人は,今後も福祉サービスの提供において中心的な役割を担うが,民間企業などの他の事業主体との適正な競争条件を整備する(多様な主体の参入促進).サービスの提供にあたっては,専門的な第3者機関によるサービス評価を導入するともに,情報公開等による事業運営の透明性の確保に努める.

  4. 市町村が主体となって,地域の実情に見合った障害者計画を作成,それに基づいて障害者施策を進めていけるように,地方分権を推進する(地域での総合的な支援).

 この他,今後の障害保健福祉施策のあり方として,(1)身体障害,知的障害,精神障害の3つの障害種別に係る施策の総合化をはかり,サービスの相互乗り入れを実施する.(2)介護保険の導入に伴い,障害者施策における利用者の費用負担のあり方や権利性,サービス受給の選択性などを検討し,その整合性をはかるなど,利用者本位の施策に変更することが示されている.

関連専門職委員会

委員長 齋藤 宏

 平成12年3月31日,第1回リハ医療関連専門職連絡会議が開催されました.連絡会議は,日本理学療法士協会,日本作業療法士協会,日本義肢装具協会,日本言語聴覚士協会の各協会長および理事,本学会からは理事長,前理事長,担当理事および本委員会委員が出席しました.千野理事長から連絡会議設立の趣旨説明と規約案が提示され,設立について参加者全員の賛同が得られました.リハ医療関連専門職で当面問題となっている事柄について活発な意見の交換が行われ,専門職相互に関連する保健・医療・福祉・教育・研究等の情報交換と,必要に応じて専門職間の協力・支援体制の調整を積極的に行うことで意見が一致しました.当面,本連絡会議は本学会が事務局を担当することになりました.

 本委員会の本年度の活動計画は,①理学療法士・作業療法士養成施設等教員講習会の運営,②在宅訪問リハ講習会の運営,③リハ医療におけるチームアプローチに関する情報収集,の3件を主なものとしました.③は言語聴覚士の資格制度化,介護保健の実施等が進むなかで,リハ医療の原点であるチームアプローチの問題を改めて取り上げ,その実態の情報を会員の皆様にお知らせすることを目的としています.

専門医コーナー

臨時総会報告

水落和也 (横浜市立大学)

 6月23日,東京ビッグサイトで行われた学術集会の2日目に専門医会臨時総会が行われました.リハニュース第5号でお知らせしたように,規約起草委員会による新しい規約案が下記の如く提示されました.

■専門医会の機構改革に関する趣意書(案)抜粋
専門医会の目的:本会の活動は日本におけるリハビリテーション医学・医療の発展と普及に指導的役割をもって貢献することを目的とします.
専門医会の事業:1.学術集会の開催,2.日本リハビリテーション医学会が行う各種事業への協力,3.施設間研究・調査協力の推進,4.研究・教育・診療に関する情報収集および広報,5.国内外の関連機関との連携,6.会員の研究活動への援助・協力 

■専門医会会則(案)抜粋
第2条(所属) 本会は,社団法人日本リハビリテーション医学会に属する.
第4条(目的) 本会は,リハビリテーション医学・医療の進歩,発展,普及に貢献するとともに,日本リハビリテーション医学会の発展のために,会員が自ら専門性の維持・向上に努められるよう,学術的研鑚の場や親睦・交流の場を提供する.
第6条(資格) 本会の会員は,日本リハビリテーション医学会専門医の資格を有する者とする.
第7条(入会) 会員になろうとする者は,当該年度の会費を添えて会長に申し込むこととする.
第18条(地区代議員) 本会に,役員とは別に地区代議員を置く.
第20条(地区代議員の職務) 地区代議員は,各地域において本会の掲げる各種事業を推進するとともに,地域毎の情報交流の担い手となる.
第26条(資産の構成) 本会の資産は,次のとおりとする.1)会費,2)事業に伴う収入,3)その他の収入 

 当日は本会則案の検討を行う予定でしたが,新しい会則案の検討以前に,今後のリハ医学会と専門医会の関係についての根本的問題について質疑が集中し,結論は次回総会まで先送りとなりました.

 具体的な意見は,リハ医学会の組織の中に専門医会が位置付けられたということは,専門医会がリハ医学会に所属することを意味(第2条)し,専門医会の活動はリハ医学会の事業としての制約を受けるのではないかというものです.そうであれば,これまでのように,独自の会員と会則を有し,独自の事業を展開する任意団体としての専門医会は,その存在自体が危うくなります.

 しかし,リハ医学会の組織図を見ますと,専門医会は理事会直属の組織として,学術集会,学会認定医制協議会,大学リハセンター連絡協議会,日本医学会などと並列に置かれており,各種委員会とは異なる位置付けになっており,専門医会の性格・役割はリハ医学会の新しい機構のなかでもあいまいなまま残されているように思えます.

 当日は時間的制約から,この問題についての結論は得られず,専門医会のリハ医学会における位置付け,専門医会がリハ医学会の中で果たす役割,専門医会の運営方法等については,理事会での意見調整とともに,専門医会内で今後さらに議論を重ねる必要があると思われ,11月に大阪で行われる総会まで,検討期間を設けることといたしました.

 今後の専門医会の活動については,前号でも会員諸氏に御意見を求めましたが,再度皆様の御意見をいただければ幸いです.

水落和也 Eメールアドレス:rh901019@urahp.yokohama-cu.ac.jp 

【新専門医諸兄姉へのお願い】
今年の新専門医に目出度く合格された42名の諸兄姉に,カレントトピックス&レクチャー当番幹事よりお願いがあります.例年新専門医の自己紹介文を抄録集に掲載しておりますが,今年はどういう訳か集計状況がよくありません.合格通知に胸をなで下ろされているでしょうが,その新鮮な気持ちを原稿用紙5枚以内で下記までFAXまたはできるだけe-mailでお送りください.
大阪市大リハ部e-mail: tatsuya@med.osaka-cu.ac.jp,FAX06-6645-3984
(当番幹事 住田幹男) 

医局だより

吉備高原医療リハビリテーションセンター

 「明るく,楽しく,さりげなく」―障害をもつひとの価値観を重視したリハを,「ヒトは運動機能のみにて生きるものにあらず」―常に包括的・全人的視点をもって,「障害をもつひとにはQOLを,われわれにはQOWL(Quality of Working Life)を」―常によりよい医療環境をもとめてゆこう.当センターの紹介にいつも書くわれわれの標語です.

 当センターは,併設された国立吉備高原職業リハセンターと連携し,リハ医療から職業リハまで一貫して実施することで肢体不自由中途障害者の早期の職場復帰を図ることを目標として1987年に開設されました.したがって最大の使命は中途で障害者となった方々を職業の場に復帰させることと位置づけられます.運営は労働福祉事業団,つまり全国の労災病院・総合せき損センターと同じ系列にある施設で,労働福祉事業団が標榜する「勤労者医療」を政策医療としてリハ医療で実践する施設といえます.したがって,近隣の重度障害者多数雇用事業所や重度身体障害者授産施設など障害者の職場の産業医を受け持ち,リハ医療と産業医学の接点ともいうべき仕事もしており,かなり個性的なリハ施設です.

 規模は診療科7科,130床で院長以下医師12名,名目上はリハ科医3名,整形外科医2名で診療にあたっていますが,診療上リハ科整形外科の区別は一切していません.リハ医もimpairment改善のための手術を行いますし,整形外科医もCVAなどリハ対象疾患を受け持ちます.また特殊クリニックとして褥瘡予防のためのプレッシャークリニック,重度障害者の社会復帰のための3DCGを用いた家屋改造クリニック,また院外活動として中四国の労災による切断者を対象とした義肢適合のための巡回検診,これを利用した義肢適合判定医師のための研修会,職業復帰に携わる医療者のための研修会,リハ看護に関する研修会などを実施しております.医師はこれらの活動に積極的にかかわっています.

 入院対象者の内訳はCVA40%,TBI8%,SCI46%(四肢麻痺24%,対麻痺22%),他6%となっています.平成11年度は当センターのリハ終了後,復学・職業復帰・職業リハに移行したものは,40歳以下で48%という結果でした.当センターのリハ医療の概要・結果はホームページで公開しています.またリハ専門医をめざす医師の公募,研修会案内なども行っていますので是非ご覧ください.

(德弘昭博)

吉備高原医療リハビリテーションセンター
〒716-1241 岡山県上房郡賀陽町吉川7511
Tel0866-56-7141,Fax0866-56-7772
http://www.kibirihaH.rofuku.go.jp/

昭和大学リハビリテーション医学診療科

 昭和大学リハ医学診療科は,昭和60年森義明教授のもとで開設された理学診療科(当時整形外科内)を前身に,平成3年9月よりリハ医学診療科として独立し発足しました.現在,森教授をはじめ26名(認定専門医10名,認定臨床医5名)の医局員を有し,昭和大学病院を中心に,昭和大学藤が丘リハ病院/医療短期大学など関連病院/関連施設においてリハ医療に従事しています.

 大学病院リハ科の専門病床は7床,他科併診約100例を有し,年間依頼患者数は約800例に及びます.その内訳は,中枢神経障害250例,骨関節障害125例,神経筋疾患70例,循環器障害100例,呼吸機能障害55例,脊髄障害15例,小児障害15例,切断10例の他,嚥下障害,熱傷,廃用症候群であり,日本リハ学会の指定する対象疾患及び,急性期~慢性期のすべての障害者に対応しています.特に入院においては,第3次リハ医療の実現とリハ医の技術の向上をモットーとして,一般病院では扱いづらい高位脊髄損傷患者,重度重複障害患者のリハに加え,腱切り/腱延長術などの機能的腱再建術やASO/DM性壊疽の四肢切断術(年間約30例)なども手がけています.また,リハの最終目標は障害児者のよりよい在宅生活への復帰であるという方針のもと,地域の保健福祉機関と連携し「地域リハ懇談会」を主催し,地域リハの推進に力を入れております.大学病院では,毎日の診療に加え,休日には医師の手で訓練を行い,英論文抄読会,カンファレンス,家屋評価,大学病院当直,教授回診準備,拡大医局会,RJC(リハ・ジョイント・カンファレンス)と多忙な日々を送っています.特に教授回診は,リハ科入院患者のみならず依頼患者すべてに行い,病院全体をくまなく行うため,その総移動距離はゴルフ1ラウンドを回る距離に匹敵します.また,拡大医局会では,関連病院の症例を持ち寄り,診断からリハ計画,在宅ケアプランを深夜まで討論しあいます.医局員の年齢層は40歳未満が9割と若く,気力/体力だけは! と自負しており,医局対抗野球大会では,毎年決勝に進出し,2度の優勝を飾っている他,マラソン部,フットサル部,フォレストカップゴルフ大会などスポーツを通して親睦を深めております.発足から9年弱とまだまだ発展途上ですが,若さと気力/体力で21世紀のリハ医療を担うべく日夜,研究,臨床に邁進しております.

(川手信行)

昭和大学リハビリテーション医学診療科
〒142-0072 東京都品川区旗の台1-5-8
Tel 03-3784-8782,Fax 03-3784-2188
E-mail: rehabpost.cc.showa-u.ac.jp
http://www6.showa-u.ac./ ~reha/

質問箱

欧米の文献で盛んに見かけるfunctional outcomeについて,私も学会発表でoutcome study(リハの成果に関する研究)の報告をしていますが,発表の際になかなか良い和訳がないので困っています.機能的帰結,機能的成果などと言葉を変えて発表しましたが,リハ医学会として推奨する和訳があれば教えてください.また,他の医学会ではoutcomeをどのように訳しているのでしょうか.(横浜市大 水落和也)

評価・用語委員会
千田富義

A Outcomeとは「転帰,帰結」と訳され,結果,結末などの意味がある.医学の分野では予測因子と関連させて用いられる1).予測因子は転帰に影響し,転帰に先行する要因である.治療的介入,危険因子,予後因子などがこれに当たる.転帰はこれらの予測因子に影響されたある時点での結果である.治療的介入によって退院時点で死亡,軽快,不変などの転帰となる.危険因子の有無によって発病するかどうかの転帰が問題となる.

 転帰は種々の測定尺度によって評価される2).死亡率,発症率などで転帰を検討する場合,疾病の特性についての分析となる.これはより疾病を指向した視点からの転帰である.これに対して日常生活活動などで転帰を検討する場合,疾病に罹患した個人の機能的状態,一個人としての外界への働きかけについての分析となる.これはより機能を指向した視点からの転帰である.これがfunctional outcomeであり,機能的転帰または機能的帰結と訳される.リハ医療の分野では,国際障害分類に基づき,機能障害,能力低下,社会的不利の各側面から転帰を表現することが重視されている.例えばパーキンソン病患者について,Yahrの分類,Barthel Index,QOL尺度をそれぞれ評価することである.機能的転帰と類似用語に機能的利得(functional gain)がある3).これは,治療的介入の前後を比較する概念で,介入前後の差,変化率で示される.10m最大歩行速度が20m/min 改善したなどと表現する.機能的転帰がどのレベルに到達したかを問題にするのに対して,機能的利得は変化の量を問題とする.

 予後(prognosis)も疾病の経過,変化を論ずるときに用いられる4).これはある疾病の経過および結末を予測することを意味している.予測であること,経過を含むことが転帰すなわち結果とは異なった概念である.

参考文献
1) Friedland DJ: Guide for assessing the validity of study. in Evidence-based Medicine. A framework for clinical practice (eds by Friedland DJ, et al). Appleton&Lange, Stanford, 1998; pp153-182
2) Good DC: Outcome assessment in chronic neurological disease. in Handbook of Neurorehabilitation (eds by Good DC, Couch JR Jr). Marcel Dekker, New York, 1994; pp105-128
3) 中村隆一(編): 脳卒中のリハビリテーション. 永井書店, 大阪, 1986; pp186-201
4) 上田 敏, 大川弥生: リハビリテーション医学大辞典. 医歯薬出版, 東京, 1996; p600

EBMとは? (大阪 MS)

評価・用語委員会
豊倉 穣

A  EBMはevidence-based medicineの略であり,日本語では「証拠(根拠)に基づく医療」と訳される.もともと医学・科学文献の批判的検証評価法を発展させたものとしてカナダのMcMaster大学で提唱されたものである1).EBMは,従来の医療(治療)が多分に熟練者の「経験」に基づく判断によって行われることへの反省から,さまざまな情報の中から正しい手続きで妥当性のある根拠を見い出し,それに基づいて患者の治療を行うという医療方法の概念を指す2).今日,「患者の知る権利」「インフォームドコンセント」など医療に対する考え方が大きく様変わりしている.このなかで,EBMは医療を科学としてとらえた厳格な診療実践方法であり,全世界で急速に浸透しつつある.

 EBMセンターのSackett教授によるとEBMは以下の5つのステップで構成される1)

  1. 情報の必要性を解答可能な質問の形に変換する.

  2. それらの質問に答えるための最良の根拠(診察,検査,文献その他の情報源)を最も能率的な方法で追求する.

  3. 根拠の妥当性や有用性について批判的に検証評価する.

  4. この検証評価の結果を臨床業務に応用する.

  5. 実行したことの事後評価を行う.

 具体例を示す.ある症例の治療に対していくつかの方法が考えられる場合,まずそれぞれの治療効果やその比較に関する研究成果を種々のデータベースから抽出する(ステップ②).次にこれらの情報を,理論的モデルに基づいているか,対照群の設定は適切か,客観的な評価に基づいているか,バイアスはないか,統計手法は正しいか,など多くの視点から批判的に検証し,研究結果の妥当性を吟味する(ステップ③).その上で,抽出された「証拠(根拠)」に基づいて実際の治療を行う(ステップ④)ものである.

 この過程で最も重要なのはステップ②③であるが,近年のコンピューター通信技術の発展により,多くの情報が手軽に入手できるようになっている.MEDLINEなどはデータベースとして定着しているが,近年,EBMの概念に則って系統的レビューを行ったコクラン共同計画3,4)の成果もCD-ROM化されている.また,このCochrane Libraryを1つの情報源として発展させ,ネットワークで入手可能なOvid社のEBMR(Evidence-Based Medicine Review)(詳細は文献5,またはe-media@usaco.co.jp)も紹介されている.一方,文献の批判的検証の手続きについては実践的なワークブックも出版されているので参照されたい(文献1).

参考文献
1) 野崎定彦・他(訳): EBMワークブック. 医歯薬出版, 1999
2) 里宇明元: EBM(evidence-based medicine). 臨床リハ1999; 8: 1100-1110
3) 津谷喜一郎: コクラン共同計画とは. 医学図書館1996; 43: 119-120
4) 別府宏圀・他: コクラン共同計画資料集. サイエンティスト社, 1997
5) 角田亮子: Ovid evidence-based medicine reviews. 医学図書館1998; 45: 484-486

歩行分析の診療報酬点数化について

大橋正洋
(神奈川リハビリテーション病院リハビリテーション科)

 本年4月の診療報酬点数改訂に伴い,歩行分析検査に関して「項目エ」が追記されました.

D250平衡機能検査
5「5」の重心動揺計 ア,イ,ウ 省略
エ 下肢加重検査,フォースプレート分析,動作分析検査を行った場合は,区分「D250」の「5」の重心動揺計により算定する.

 すなわち,下肢荷重検査(足圧測定など),フォースプレート(床反力計),動作分析(3次元動作分析)を,医師の指示に基づいて,医師,臨床検査技師あるいは理学療法士等が施行した場合,それぞれ重心動揺計と同じ250点として算定できるようになりました.

 歩行分析はリハ医学において,大事な臨床検査手段です.しかし現在のところ,臨床の場に浸透していない印象があります.診療報酬点数化を機会に,歩行分析をどのように導入すべきか,リハ医による検討が必要と思われます.