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リハニュース No.17

2003年4月15日

  1. 座談会:専門医の広告をめぐって

  2. 第40回 日本リハビリテーション医学会 学術集会(6月18~20日,札幌) 開催までもう一息です!

  3. The 2nd ISPRM World Congress, Prague Hilton Hotel, Prague , 18-22nd May 2003 an update・・・Haim Ring, Chairperson

  4. INFORMATION

    障害保健福祉委員会

    地方会等検討委員会

    北海道地方会

    九州地方会

  5. 書評:リハビリテーション医学白書

  6. 医局だより

    いわてリハビリテーションセンター

    北里大学東病院リハビリテーション科

  7. 2002年度海外研修:印象記

    Drucker Brain Injury Centerを訪ねて・・・生駒 一憲

    Dysphagia Research Society 11th Annual Meeting に参加して・・・馬 場  尊

  8. 専門医コーナー:第15回 日本リハビリテーション医学専門医会 学術集会

  9. 広報委員会より

座談会

専門医の広告をめぐって

千野直一 日本リハ医学会理事長
米本恭三 日本リハ医学会前理事長
中村隆一 日本専門医認定制機構理事
司会:江藤文夫 日本リハ医学会常任理事
オブザーバー:水落和也 広報委員長  

 江藤 先の常任委員会などで,2002年4月からの専門医の広告に関する厚生労働省(厚労省)告示に関連して,従来の専門医制度をいろいろ見直す必要があるということと,これまでの専門医認定制協議会(専認協)が中心に取り組んできた専門医制度の標準化に関連してどのような対応が必要かということで,会員の先生方にも問題点への理解を深めていただくために座談会を企画する話が出ました.本日は理事長の千野先生,前理事長の米本先生,そして現在,日本専門医認定制機構(専認構)理事の中村隆一先生においでいただき,専門医制度について,学会として今後どのように改めていく必要があるかについて,お話しいただきます. 昨年,学会認定医制協議会(学認協)から専認協になったと思ったら,すぐにまた専認構という形で法人化されました.経緯の概略についてはリハニュースあるいは学会誌等で解説をいたしましたので,現在の専認構と広告に関連した現況について,専認構理事の中村先生からお話しいただきたいと思います.

 中村 3つに分けてお話ししたいと思います.1つは専門医という議論で,昭和40年代にあちこちで出てきたと思います.整形外科学会は比較的早く手を挙げていたと思います.当時,リハ医学会では医学教育委員会でも専門医制度を立ち上げようとしました.それから数年後に,何人かで各学会の協議会をつくったわけです.ところが,リハ医学会の議論と,協議会の動きとは同じではなかったようです.リハ医学会は認定臨床医制度を新規に作りました.それから,昨年の4月になって,厚労省のほうから医療法上の,厚労大臣が指定する項目というところで,「専門医の広告」が広告規制の中の緩和の1つに入りました.  われわれは,専門医制度の議論をするのに,リハ医学会の中だけの議論なのか,それから,いわゆる認定医の協議会という格好で,だいたい横並びにやっていきましょうというのが専認協(現在は専認構)になったといういきさつと,今度の広告規制の緩和という中の,どこに足を据えるかというのは大事な点だと思います.もしも広告というところから話をすれば,国が指定している制度,外形基準を満たすようなスタイルにしたうえで申請をすればよろしいということになります.ただし届出をすると,日本医師会と日本医学会,専認構の方へ,これでいいかという問合せが行きますから,内容のチェックなど,事務処理が事前に必要になります.それが今の状況ではないでしょうか.

 江藤 千野先生も学認協の時代から参加されていて流れはご存じかと思いますが,少し補足していただけますか.

 千野 中村先生のお話の中にあったように,日本にある学会全体が同じ歩調で専門医を認定し,これを専認協,日本医師会,日本医学会からなる三者懇が追認するという形で始まりした.それは14基本学会に脳神経外科が加わった15学会が対象です.問題は昨年4月1日に厚労省が規制緩和ということで新たな方向づけをしたということで,それまでの旧厚生省の方針と比べて大きな変化だと思うんです.学認協の頃は厚生省はオブザーバーとして参加してきたのが,厚労省になって,今度は政府が後押しする形になった.新たな専門医制度の具体的な運用に関しては,第三者的な機構が公正にチェックをするという概略は決まっていても,その機構がどうかということも,まだわからない面があります.日本リハ医学会としては,厚労省の規制緩和とあわせた9つの基準に則った内規を早く構築することが大切であると考えています.

 江藤 米本先生は前理事長で,リハの専門医の教育に関して,医学教育のガイドライン等をあらためて見直してつくられて,全国の大学にも通知していただいたわけですが,専認構の代表理事とも親しくされていますので,最新の情報について補足していただけたらと思います.

 米本 過日,専認構理事長の酒井先生をお招きして,専認構の考え方についてお話を伺いましたけれど,先ず,リハ学会の会員の皆さんに今回の専門医の広告に関して,分かり易く十分に知っていただくことが大事だと思います.私たちの学会は第Ⅰ群の基本領域へ加わることになっていますが,そのためには,社会で容認されるような統一性をもつ基本事項を整備し,厚労省へ届出していくことになります.しかし認定団体となるための基準をクリアしていないと,厚労省は受け付けてくれません.かなり厳しい関門と考えていいでしょう.その後,届出された内容は専認構,日本医学会,日本医師会へ具申されます.専門医資格を認定する団体としてクリアすべき外形基準については9項目が示されています.その9項目の基準を満たすために,リハ医学会では,今後研修制度や更新制度の期間などの整備を要します.これらの点を会員各自はよく理解する必要があります.

●外形基準について 

 江藤 資料として,この外形基準を改めて出します(表1).9つありますが,ここで確認していきたいと思います.まず,外形基準の「1」はクリアされています.「2」もクリアしています.それから「3」もホームページもあり,クリアできると思います.それから「4」ですが,これも事務局体制としては十分ですよね.「5」資格の取得条件の公表ですが….

 中村 これは,公表という形ではありませんが,うちの規定集には入っているわけですよね.事務局に見せてくれと言えば見せられますということですから,一応は公表という扱いにしていいと思います.

 米本 ホームページにも載せればいいと思いますが.

 江藤 次の「6」が問題になるかと思うのですが,この「5年以上の研修」という意味ですけれど,これは医師歴や学会の会員歴とは関係ないものですよね.

 米本 認定を受ける際に会員であればいいとなりましたね.

 江藤 この「5年以上の研修」に関しては,リハ医学会の認定臨床医に関してはちょっと足りないですね.専門医に関してはいかがでしょうか,これは大丈夫でしょうか.

 中村 これは問題ないですね.今ので通ります.カリキュラムは最低限,こういうカリキュラムを満たしているということ,その証拠をどうやってとっていますかというその書類とか,そういう要件として突っ込まれると今は不十分ですから,届出のときまでにはそれを定めておくことです.

 江藤 要するに5年以上の研修の確認というか,評価に関するシステムですか.

 中村 それからカリキュラムも要検討です.理想的なことを出されても,現実には通らないわけです.そうすると最低限必要なものは何かという….

 米本 卒後研修はできていますよね.

 江藤 ええ.今,教育委員会でだいたいのものはできています.

 中村 それができたら,今度は,これから受ける人が1人ずつ研修記録を持っていて,チェックをされるようなスタイルを踏んでおけばよいのですが….

 江藤 そうですね.そういう研修手帳のようなものも準備する段階に入っています.  

 米本 従来,30症例のレポートが提出されていて,それが厳正に評価されているのが分かるように….

 中村 そこまでやっておけばいいですよね.

 千野 指導医のサインか何かで….

 米本 研修の内容を証明するものが必要でしょう.

 江藤 現在のわれわれの制度における専門医を,専門医という形で言うかぎりは,この「6」に関してもまあまあクリアできるということですね.それから次の「7」もクリアしていますね.

 米本 うちは,専門医の試験の合格率は何%ぐらいでしょうか.

 中村 その年によって違いますけれど,7~8割前後でしょうね.

 江藤 とくに専認構のほうで,試験にどの程度の合格率であれば適正というのはないですね.

 中村 それは一切言っていません.

 米本 しかし100%ですと,適正な内容の試験でないとされるでしょう.

 江藤 そういう意味では,今の専門医あるいは認定臨床医のレベルでも合格率はまあ適正な範囲ということでしょうね.

 千野 「8」に移る前に,認定臨床医についても議論が必要でしょう.

 江藤 そうですね,学会で議論されてきたこととしては,実際に臨床の場で仕事をされている認定臨床医の多くの先生方も当然,専門医としての広告に該当するものではないかと考えているわけです.そうしますと現在の制度をこれにあわせて変えていく必要,あらためる必要があるということですが,その際の問題点ということになると,どうでしょうか.

 中村 2つあると思います.既存の制度の中でも,試験を受けてもらって専門医になれるということは生きているわけですよね.ただ現状では,受験資格がないため試験が受けられないという人が出ているわけです.そこで,受験資格の緩和という格好で,あるいは,まったく別個の研修会か何かで,それに研修歴を足していくのか.委員会で検討したうえで,経過措置としてある時限を切って入れれば,それは通ると思いますけれどね.

 江藤 それでは次に「8」の更新制度についてですが,原則として少なくとも5年に1度ということですが,リハ医学会では認定臨床医に関して10年という制度です.これに関しては今….

 千野 経過措置的に5年にしていくということであればいいんじゃないでしょうか.

 江藤 次に「9」ですが,これは届出の段階で問題になるかと思いますが.

 米本 これはいろいろなやり方がありますね.名簿は3年に1回つくるとか,事務所で閲覧というのがありますが,そういうのが多いです.ホームページに載せているのは1つ(耳鼻科学会)くらいですね.あとは備え付けたり名簿に記載したり,そのぐらいでいいんですよね.

 中村 そうですね.見たい人が見られるようになっていればいい.

 江藤 この外形基準の「9」に関連したことで理解しておく必要があると思われるのは,厚生労働省で出した専門医資格に関する通達において,「広告が可能なのは,常時診療に従事する医師又は歯科医師についてのみ」とあり,要するに1つだけ….

 中村 ここの項目は,皆さんに理解していただけるように整理しておいたほうがいいと思います.

●専門医の広告について

 江藤 では,この通達(表2)についても理解するために,ここで確認していきたいと思います.まずは「ア」の項目です.

 中村 広告「しても差し支えない」というのは,「しなければいけない」ではないのです.出さなくてもよいのです.

 江藤 それから次の「イ」の項目があります.

 中村 現在,これが日本医学会,日本医師会,それと専認構に対応しています.

 江藤 これは,既に届出が行われはじめている中でも,従来の医学会と医師会と専認構というようなことで行われています.次の「ウ」の項目に「常時診療に従事する」という規定がありますが….

 千野 「常時」の意味は何ですか.

 中村 要するに,そこの常勤医であるという意味だと思います.

 千野 常勤医の条件というのはあるんですか.1日何時間とか,あるいは週何回勤務とか….

 中村 それは契約方式ではないでしょうか.「広告が可能なのは」とあるわけで,こういうのは全部付帯的な条件文がついているというふうに読んでください.

 江藤 要するに「広告可能なのは」とあって,しかもその場合には1つだけという意味ですよね.

 中村 そういうことでしょうね.

 江藤 仮にいくつかの学会の専門医を持っていても,1つだけという意味だと思います.それからその次の「エ」.これはどういう意味でしょうか.

 中村 これは専認構の皆さんの意見を総合すると,所属の都道府県名も出さないで,名前しか出していないようですね.ここは具体的な手続きはわかりません.

 千野 国から地方におろして,都道府県単位となりますね.

 中村 ええ,病院管理は全部そうです.医療上のトラブルについては,一応すべて,地方自治体が先にやったうえで,地方から上申する.いきなり国でということはないと思います.

 江藤 次の「オ」には「○○学会認定○○専門医」とありますが,この言い方ですよね.

 中村 これも既に広告申請が受理された学会の情報を委員会で集めて,わがほうはどれがいちばんいいかという検討を進めてほしいように思います.どういう書き方をするのか,誰の名前で出すのか,これも理事長名なのか担当理事なのかとか,いろいろ議論はあると思います.

 江藤 それから「カ」は,手続上のことだと思います.

●リハ医学会としての今後の対応

 江藤 次に,今後の対応について,それからこれによる影響について,議論していただきたいと思います.ここまでの話で,現行制度との整合性の問題点は明らかになったかと思いますけれど,当面,至急やらねばならないことというのは,どういったことになりますでしょうか.

 千野 この件については既に理事会で検討しています.1つの委員会ですべて検討するのは不可能ですから,関連する委員会を担当常任理事がまとめていただくようにしたいと考えています.

 江藤 そうですね.先ほどちょっと話題になりましたけれど,多くの認定臨床医の方が,この専門医に該当するので,その移行措置をどうするかについて,既に検討に入っています.

 千野 移行というと少々語弊が生じるおそれがあります.ある程度,スクリーニングをかけて認定臨床医の先生方が専門医になるような具体的な方策を検討しているといったほうがよろしいのではないでしょうか.今まで議論してきたように,この外形基準に則るようなものを委員会でつくって対応するということです.

 江藤 そうですね.次に,リハ医学会の場合には整形,あるいは内科,神経内科をバックグラウンドにしていたりということで,1人で2つの専門医を持っている人があり得ると思うんですけれど,広告に関しては1つしか出せないというのが基本ですね.

 千野 学会のホームページでは,リハ医学会で専門医をとった先生方の名前を載せるだけということになります.さっきの資格についての項目「エ」では,一覧を都道府県宛に通知するということになります.たとえば埼玉のある病院にいたときは整形で届け出たけれど,東京に移ったときにリハの専門医として届出することもありえますか.

 米本 それでいいと思います.個人が資格を持っていることと外へ広告することを別に考えないと,事務局は責任が重すぎますね.

 千野 Aという先生がリハと整形外科の認定を受けている場合に,どこか整形を表示しているとリハのほうは剥奪されることではないと思います.学会としても認定したわけですからね.

 米本 私もそう思います.

 江藤 その問題と絡んでくるわけですけれど,広告をしてもいい,ということになってきたのは診療報酬との関係もあれこれ憶測もされています.専門医の広告と診療報酬との関連について,何か動向は既にあるんでしょうか.

 千野 先日,内保連の総会に出て議論になったのですが,平成16年度の診療報酬点数改定では,ドクターフィーとホスピタルフィーを採り入れようとしています.外保連では,手術という技術料により,計算式をつくらせますが,内保連でのドクターフィーはどのようにランクづけしたらいいか,結論が出ていません.このようなときに,採り上げられそうなのが専門医資格を持っているか否かということです.内科系のドクターフィーのあり方を,診療報酬の改定の1つの道として専門医制度が大きく採り上げられる可能性は十分あると思います.

 江藤 それはまだ内保連の議論のレベルで,仮にその場合には専門医というのは,広告で出している専門医が有効なのか,あるいはいくつか持っていて,そのうちのどの専門医が有効かといった議論はまだ全然ないですよね.

 千野 それはまだありません.

 中村 社会的な面も含めていろんな側面があって,今のような議論というのは医療保険の中だけの議論ですからね.それから別の意味では,資格制度的な意味のもの,任用制度というのがあります.リハ専門医というのは,社会的にどういう役割があるのか.そういうものを活かす領域を医療保険制度の中だけで見ておくのかどうか,それはやはり学会の態度そのものによってくると思います.

 江藤 まだ触れていなかったのが,研修期間の5年間の中の卒後研修が義務化されたときの最初の2年間を,リハ医学会としてはどう扱うかということです.リハは幅広くプライマリーケアの技術をベースにするので,初期の2年間も研修の中に加える考え方でいるわけですけれど,このあたりはよろしいでしょうか.

 中村 それでいいでしょう.

 江藤 そうすると,その場合の2年間の研修記録をどういうふうにやっていくかということがあろうかと思いますけれど.

 中村 新しい研修制度が2004(平成16)年度に本当にスタートするなら,ある程度,どういうスタイルになるかというのも決まりますよね.

 千野 中身を見ないと何とも言えませんね.

●リハ専門医の未来は

 江藤 リハの専門医もだんだん増えていくと期待しますが,最後に,リハ専門医の将来像について,先生方が考えておられることについてお聞かせください.こうあるべきだとか,あるいはバラ色の未来があるかといった点から一言ずつお聞かせいただきたいと思います.

 千野 広報委員長として水落先生のお考えを伺いたいですね.

 水落 肢体不自由児の養護学校の指導医はリハ専門医に限るとか,リハ科の教授は専門医でなければならないとか,そういった方向にこの専門医制度が発展していってくれれば,リハ専門医の未来もバラ色にというか,社会に認められて,いろいろな領域で活躍できるようになるのではないか,と.ぜひともそういう方向になってほしいし,そうなっていかなくてはいけないと思っています.

 千野 もう既にそういう方向になっています.リハの求人がすごく増えていて,応じきれない状況ですね.

 江藤 実際に,リハのお医者さんはいませんかというような求人は多いですけれど,そこにこの資格がちゃんと活かされて,資格を持った先生がほしいというような状況になってくればいいんじゃないでしょうか.

 中村 そうですね.もう1つはそういう意味では,とくに高齢者がターゲットかもしれないけれど,コミュニティーケア,要するに入院して治療,訓練ということはこれ以上増えない.そういうあたりを考えなければいけませんね.

 千野 在宅医療でのリハ専門医のニーズも検討されるべきですね.

 中村 そういう意味でも初期の2年間というのは十分にやっておけということです.

 千野 当然プライマリーケアは必須となりますね.

 中村 それができないと困りますからね.

 千野 それがうまくいけば,まさにバラ色ですね(笑).

 江藤 米本先生,最後に一言お願いします.

 米本 私も先生方のご意見に賛成です.リハ専門医の資格を有する先生方は,大学や病院,施設,地域で或る職位につきやすいということになれば,大変元気が出ますし,望ましいと思います.もう一つの点は,専門医の仕事には,それに見合った収入がついてくるということが制度上にも整備されると良いでしょうね.

 千野 診療報酬ですね.そのへんはリンクしてくるでしょうね.

 米本 国民の理解と支持を得る上でも,リハ医療に関わっている先生方の質の担保を学会がすることは,大変重要と思います.そのためにも現在,整備されつつある専門医制度の確立は大きな意味を持っています.学会としても本気で取り組むことで,学会の発展や会員の皆さん方の将来が明るくなると考えています.いかがでしょうか.

 江藤 締めのお言葉をいただいたようですが,専門医の広告ができるようになったこの機会に,専門医の教育制度をしっかりとして,現在高まっているニーズに応えられるもの,それにふさわしいものとして,社会から認知されることを改めて目指す良い機会であるということですね.それでは,これで座談会を終わらせていただきます.本日はどうもありがとうございました.

■表1 専門医資格を認定する団体の基準(厚生労働省告示第159号1号の基準)■
註:1~9は告示記載の号,ア~ケは都道府県あてに通達したもの  

基準内容 基準と現状制度との比較 現状の日本リハ医学会専門医制度*1
現状の日本リハ医学会認定臨床医制度*2
1 学術団体として法人格を有していること.ア(略) 社団法人日本リハビリテーション医学会
2 会員数は1,000人以上であり,かつ,その8割が医師又は歯科医師であること.イ(略) 9,286名*3
3 一定の活動実績を有し,かつ,その内容を公表していること.ウ(略) (HPで公開)
4 外部からの問い合わせに対する体制が整備されていること.エ(略) 事務局体制確保済
5 医師又は歯科医師の専門性に関する資格(以下「資格」という)の取得条件を公表していること.オ(略) (HPで公開)
6 資格の認定に際して5年以上の研修の受講を条件としていること.カ:5年間の研修のすべてについて,必ずしも専門医資格の認定を行う団体自らが行う必要はないが,外部の研修を利用する場合は,当該団体自ら行う研修と外部の研修とが有機的に連携されたものとなるよう配慮されたものである必要がある. 5年以上の研修を証明するものが必要(研修手帳など検討中).専門医813人*3:ほぼクリア,認定臨床医4,971人*3:専門医試験を受けるか,研修歴を足す等の経過措置が必要 (1)専門医:リハ医学全般を3年以上(学会歴及び医師歴5年以上)及び認定臨床医であること (2)認定臨床医:リハ医学全般を1年以上(学会歴及び医師歴4年以上) (3)研修関係書類:各疾患又は障害について臨床経過をまとめる. 専門医30症例,認定臨床医10症例
7 資格の認定に際して適正な試験を実施していること.キ:資格の認定は,医師又は歯科医師の専門性を判断するに充分な内容及び水準の公正な試験により実施されている必要があること. 資格審査(研修歴,学会歴及び医師歴等)と試験 (1)専門医:試験(口頭試験) (2)認定臨床医:試験(筆記試験)
8 資格を定期的に更新する制度を設けているということ.ク:医師又は歯科医師の専門性を担保するため,専門医資格の認定を行った医師又は歯科医師に対し,原則として少なくとも5年に一度(将来的に5年以内に一度に改善する計画を示した団体にあっては,当分の間,10年以内に一度とする.)は当該資格を更新しなければならない.また,更新の際には,適宜,医師又は歯科医師の専門性を確認できるよう努めること. 認定臨床医の更新10年を経過措置的に5年に移行可能 認定更新:年限10年 研修単位取得制で40単位(うち本学会企画参加20単位が必要)
9 会員及び資格を認定した医師又は歯科医師の名簿が公表されていること.ケ(略) 公表可能
*1昭和55年6月11日発足,*2昭和62年6月27日発足,*3平成14年4月現在,○基準を達成

■表2 専門医資格について(厚生労働省告示第158号第26号関係事項)■
 註:ア~カは都道府県知事への通達  

内容
専門医告示の各号に掲げる基準を満たす団体が厚生労働大臣に届出を行った場合は,当該団体が認定するいわゆる専門医資格を有する旨を広告しても差し支えないこと
届出の受理の当職による専門医告示に定める基準の審査にあたっては,専門医資格の客観性を担保するため,医学医術に関する団体の意見を聴取することとしていること
専門医資格の広告が可能なのは,常時診療に従事する医師又は歯科医師についてのみであること
厚生労働大臣が届出を受理した場合は,厚生労働省は,当該団体名及び当該団体が認定する専門医資格名の一覧を都道府県宛に通知するとともに,個別の広告が広告規制に抵触するか否かを判断する際の参考にされたいこと
実際の広告の形態は,主に次に示すようなものを想定していること. (例) 医師○○○○「○○学会認定○○専門医」
団体による厚生労働大臣への届出は,(別添2)の申請書により必要な添付書類を添えて行うこととする

第40回 日本リハビリテーション医学会 学術集会(6月18~20日,札幌)

開催までもう一息です!

 北海道は,厳寒の冬を乗り越え,春の息吹を感じるまでもう一息です.第40回日本リハ医学会学術集会のタイムテーブルも大詰めを迎えております.北海道大学リハビリテーション科でも開催準備にいっそう力を注いでおります.

 プログラムとタイムテーブルについては学会誌40巻4号に掲載しましたのでご覧ください.一般演題は700題を超え,基礎から臨床研究まで多岐にわたる多数の応募をいただきありがとうございました.また査読の先生方には,5段階評価システムにて演題をご評価いただきお礼申し上げます.

 学会場は,現在建築中で,6月オープン予定の札幌コンベンションセンターを全館使用します.2,000人収容可能な大ホール(A会場),700人収容の特別会議室(B会場),中ホール(C会場500人)の3会場を中心に,特別講演,教育講演,シンポジウム,パネルディスカッションなど主要プログラムを進めます.大ホールの一部と,玄関ホールでは,ポスター発表会場,商業展示発表を予定しています.

 第1日目午前中は,主会場で,記念講演,会長講演,総会のみ予定しています.午後から,シンポジウム,一般演題が分野別に開始されます.ポスターセッションは毎日一般演題発表終了後15:00~17:00の時間帯で行います.

 第3日目は最終日ですが,質量とも最も充実したプログラムが予定されています.例年通り「第30回日本脳性麻痺研究会」が開催されます.また本会場で6月21日から開催される「第26回日本プライマリ・ケア学会」(http://www.primary-care.or.jp/main.htm)との共同開催による市民講座,公開シンポジウムなど一般向けプログラムも予定しています.

 多数の皆様の協力により開催まであと一息のところまでこぎつけました.さらに多くの皆様の参加・ご協力を賜り,リハ医学会学術集会を充実したものとするようよろしくお願い申し上げます.

The 2nd ISPRM World Congress, Prague Hilton Hotel, Prague , 18-22nd May 2003

By Prof. Haim Ring, Chairperson

Dear Colleagues, 

I am happy to inform you that preparations are almost finished and are proceeding according to plan. Nearly 1100 abstracts for oral and poster presentation were submitted and arranged in 91 sessions according to fields of work in our profession. 13 Special Educational Activities are scheduled on various interesting topics (cognition, posturography, nerve conduction, etc.) from basic to advanced levels. Interactive sessions on education and training needs and on Meet the Editor with editors and board members of 9 leading PM&R journals have also been included. 35 candidates for the Young scientist Award entered the competition, and 10 of them will reach the final stage that will take place as part of the scientific program. There will also be an award for the Best Poster. Juries have been appointed for both.
The social program includes an opening ceremony with the Czech Minister of Health, Dr. M. Souckova, and representatives of the ISPRM and Czech PM&R Society, the Congress Chairperson and Chairman of the Scientific Committee, followed by a cocktail reception. On Tuesday 20 May, the social program includes a visit to a beautiful church for a concert, and on Wednesday 21 May the optional Gala Dinner will be held including the presentation of the Young Scientist Award. Thursday 22 May is the last day of the Congress and concludes with the Closing Ceremony, where the Best Poster Award will be presented to the winner/s. The ISPRM 2005 Congress in Sao Paolo will also be introduced.
The ISPRM Educational and Development fund has granted the congress with support to enable people from developing countries to take part, learn and spread the gospel of modern rehabilitation principles. 24 colleagues from countries including Mongolia, Bangladesh, India, Thailand, Croatia, Yugoslavia, Uruguay will join the Congress with help from the fund.
I am sure the Congress in Prague will be remembered by many as an outstanding congress, both scientifically and socially, and as the city where so many magic moments happened and new friendships started. Looking forward to seeing you in Prague.  

INFORMATION

障害保健福祉委員会

身体障害者手帳,身体障害認定基準の改正
身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について

 今回,新たに「身体障害認定基準」及び「身体障害認定要領」を定め,「身体障害者障害程度等級表について」〔昭和59(1984)年厚生省社会局長通知〕は廃止する旨,厚生労働省から通知があり,2003年4月1日,施行されました.

 この通知は,地方自治法に基づく技術的助言(ガイドライン)としての位置づけではありますが,身体障害者手帳は全国共通の制度であり,多くの自治体で新たな「身体障害認定基準」及び「身体障害認定要領」が採用されるものと思われます.

 なお,大幅な改正は,「音声機能,言語機能又はそしゃく機能の障害」「ぼうこう又は直腸機能障害」について行われています.以下に改正の概要を示します.

(1) 音声機能,言語機能又はそしゃく機能の障害
 従来,「そしゃく機能の喪失」(3級)は重症筋無力症などの筋疾患,延髄機能障害が障害の原因として認められてきましたが,今回,末梢神経障害や外傷,腫瘍切除等による顎,口腔,咽頭,喉頭の欠損等によるものも認定の対象となりました.
 「そしゃく機能の著しい障害」(4級)については「唇顎口蓋裂の後遺症」による咬合異常のみが認定の対象とされてきましたが,今回,認定の対象が拡大され,神経・筋疾患,延髄機能障害及び末梢神経障害,外傷及び腫瘍切除等による顎,口腔,咽頭,喉頭の欠損等によるそしゃく・嚥下機能の障害も認定可能となりました.

(2) ぼうこう又は直腸機能障害
 一例として,従来,下行・S状結腸に人工肛門を造設されていても,ストマの管理状況によっては,認定の対象とならない場合もありましたが,今回,永久的に造設されるストマについては,造設のみにより認定可能となり,認定の対象が拡大されています.  

 また,これまの障害認定に係る「疑義回答」に関する通知は廃止され,「身体障害認定基準等の取扱いに関する疑義について」として取りまとめ,同様に4月1日から適用されています.

 詳しくは,各自治体担当部局,身体障害者更生相談所にお問い合わせください.

(小池純子,委員長 山口 明)

地方会等検討委員会

 2002年6月の日本リハ医学会総会において地方会を充実するために,次の3項目が承認されました.

 ①日本リハ医学会会員は本医学会の何れかの地方会に所属するものとみなす.
 ②日本リハ医学会は地方会事務局運営費の一部を補助する.
 ③地方会としての年会費は徴収しない.  

上記に伴い地方会等検討委員会では
1. 地方会組織に関する規則案の検討
2. 日本リハ医学会からの地方会事務局運営の補助金の取扱い

について検討してきました.  

「1」の規則案はほぼ出来上がり,これから評議員の方々にご意見をうかがった後,本年6月の総会で検討いただくことになっております.
 「2」の地方会事務局運営費の取扱いについては,各地方会による組織形態やこれまでの歴史の違いもあり,本委員会および理事会において種々議論がなされました.その結果,事務局運営費の使途目的は,地方会組織の充実と地域におけるリハ医学の普及と発展を図ることであり,事業として地方会総会,幹事会,学術集会,生涯教育研修会などを開催・運営することと規定されました.  

 事務局運営費の支出項目は,1) 賃金,2) 旅費交通費,3) 通信運搬費,4) 什器・備品費,5) 消耗品費,6) 会議費,7) 雑費となっております.
 すなわち地方会総会,学術集会,生涯教育研修会などのお知らせのための通信費,印刷費,人件費,会議費,備品費などに使用することになります.このため,地方会学術集会や生涯教育研修会の会場費,講師謝礼は補助金から支出せず,参加費の範囲内で行うように努力することとなりました.

 これに対して各地方会の幹事の方々からの異論もありましたが,参加者のみの利益に繋がる部分につきましては参加費で賄っていただくという,受益者負担の方針で行うことになりましたのでご了解いただきたいと思います.

(委員長 吉村 理,担当理事 宮野佐年)

北海道地方会

 日本リハ医学会地方会制度の変更について,北海道地方会世話人会でも対応を活発に協議しています.これまで過去5回の北海道地方会は,北海道リハビリテーション学会と共同開催し,リハ医学会会員やPT,OT,看護師,福祉関連者との交流に重きを置きましたが,2002年12月14日第6回北海道地方会は,地方会制度の協議のため,北海道在住リハ医学会会員全会員319人に,抄録集と,総会,検討事項,参加費500円などの配布案内したところ130人以上の会員の参加を得ました.会員の新地方会制度への関心は高いものと感じます.またこのときは,才藤先生(藤田保健衛生大リハ講座),宝金先生(札医大脳外科)を講師にお迎えし,一般公募演題から,「脳卒中リハのトピックス」のワークショップを催したことも盛況を博した要因と思います.会場(北大学術交流会館)の座席が足りないほどでした.演者の先生方にはこの場を借りて厚くお礼を申し上げたいと思います.■2002年度最後の地方会会合として,2003年3月8日北海道地区認定臨床医生涯教育研修会(幹事会含む)を開催しました.会場は現在建築中の札幌コンベンションセンター(写真)で,第40回日本リハ医学会学術集会会場となる6月完成に先立ち使用させていただきました.新しい施設の先進性・充実度に参加者は驚かれたと思います.我々事務局にとっては総会の予行・設備の確認など問題点の洗い出しなど収穫は多かったのですが,参加者の皆様には,地下鉄出口から案内板の欠如や駐車場などでご不便をかけたことをお詫びします.■最後に,事務局経費の予算から,地方会専用パソコンとして高性能低価格(\49,800!)で話題のe-Machineを購入しました.地方会業務のバックアップと効率的な運用に活用したいと思います.

(渡部一郎/北大リハ医学)

九州地方会

 佐賀医大・浅見会長のお世話で,第13回地方会が本年2月,佐賀市アバンセで開催されました.予想を超える多数の参加者にも恵まれ,盛会裏に終えることができました.■昨年,日本リハ医学会で決定した「地方会システム」の変更に関して,同上の地方会世話人会・総会で次の事項が決議されました:現地方会会則を破棄し,新たに申し合わせを採択,幹事・代表幹事・監事・顧問の選任,事業計画と予算案の承認.これにより,地方会システムの規則等の移行作業が完了し,日本リハ医学会地方会運営規則に基づいた運営が可能となります.今後は,経費(補助金)を含めた運用面での課題に取り組んでゆく必要があります.■第14回地方会は,大分県別府市のビーコンプラザにて,本年9月21日(日),佐竹孝之会長(別府発達医療センター)が,第15回地方会は,福岡県にて来年2月頃,植田尊善幹事(総合せき損センター)が担当で開催の予定です.

(佐伯 覚/産業医大リハ医学講座)

書評:リハビリテーション医学白書

監修 ●日本リハビリテーション医学会
編集 リハビリテーション医学白書委員会
2003年3月15日発行
医学書院,B5判,280頁
定価(本体2,400円+税)
日本リハビリテーション医学会 前理事長
東京都立保健科学大学 学長 米本 恭三  

 このたび,待望の書「リハビリテーション医学白書」が刊行された.今回はリハビリテーション医学が強調された点で,1979年,1994年と二度にわたって出版された「リハビリテーション白書」とやや趣を異にしている.本書を紐解き,頁を追うごとに,今日までのリハ医学の歩みとその社会的背景に始まり,現状と提言がしっかりと記述されているのに驚きと感動を覚えた.正しい歴史認識の上に現在の理解があり,未来の予測が可能になることは言うまでもない.

 本書の充実かつ優れた内容は序文と第1章の“リハ医学の現状と歩み”を読めば概要を把握することができる.第2章以下第5章に及ぶが,各項の執筆者は当該分野に精通し,指導的立場の先生方が選ばれている.したがって各筆者が長年にわたり携わって来た領域のため,現状を踏まえた内容豊富な記述となっている.全体として,統一した流れで,図表も精選され理解しやすい.リハ医学の主要な事項が盛り込まれた本白書は学会の公式報告として十二分の役割を果たしている.

 第1章:リハ医学の歴史と現況を概説し,発展に大きく貢献するものとして,リハ科という診療科名が認められ(1996年),この領域が科学研究費の細目に加わったことを述べている.“社会福祉とリハ”の項では,戦後の社会保障制度とくに福祉制度の枠組みの中でリハサービスの大部分が発展して来たとし,その変遷と施策の方向に言及している.

 第2章:リハ医学の教育・研究の現状を主題とし,その内容にはリハ医学教育,専門医・認定医制,関連職,リハ医学研究,評価法,関連用語があり,それぞれの現状と課題が述べられている.卒前教育のモデル・コア・カリキュラムについてはreviseの時期に各大学を通じて不備な点の改善を求めていくことになろう.教育・研修施設の充実は今後とも努力を要するとしている.

 第3章:リハ医学と社会保障制度が取り上げられた.変化する社会保障制度から福祉機器等について平易に解説されている.社会保障制度,医療保険,介護保険,障害認定,福祉機器開発と続くが,いずれも大きい転換期にあり,その抱える諸問題と今後の課題を提示している.関連の制度や法律の知識はリハ医療職にとって不可欠であり,その欠如により受益者側が不利を蒙らぬようにすることであろう.

 第4章:学会が行っている事業の中の学会誌発行,広報,国際協力,地方会,会則等を取り上げている.学会誌,広報紙は如何に早く,質の良い情報を会員に送り届けるかに腐心している.その成果はリハ医学誌への掲載論文数増加につながった.アジア地区における国際学会の主催(2001年)や共催(2002年)など国際化の実を上げた.地方会には各種の課題があるものの,整備が進み,現在代議員制が検討されるようになったと述べている.

 第5章:代表的なリハ疾患や外傷に伴う障害が取り上げられ,その問題点や対応方法,そして今後の課題について論じている.教科書的には各論に当たる章で,脳卒中,外傷性脳損傷,脊髄損傷,小児疾患,切断,骨関節疾患,関節リウマチ,神経筋疾患,心疾患,呼吸器疾患,内部障害,摂食・嚥下の12項目である.全項目には,主要な参考文献が収録され,内容の正確さを期すると共に理解を助けている.

 リハは重要な国策の一つであり,医療の中で拡大を続ける現場と相俟って,極めて将来性と魅力ある領域として,多くの若者の参入を促し人材の育成に努める義務があろう.本書がその一助となることを信じている.

 リハ医学白書委員会の第1回が2001年8月に開催されて以降,企画立案から原稿依頼,編集と,円滑に業務を進め,短い期間に発刊まで漕ぎ着けられた石神常任理事,木村委員長をはじめ赤居,水落,里宇の各委員の意気込みとそのご努力に対して心から感謝する.そして多忙な日常業務の中で,分担して執筆の労をお取り下さった諸先生方の一致したご協力によりこのリハ医学会監修の良書が誕生したことをお慶び申し上げる.

 保健・医療・福祉の変革のスピードは現在の1年が過去の3~5年に匹敵するほどであるが,その中で進歩発展して行くわが国のリハ医学のガイドブックとして,白書が今後も定期的に刊行されるであろう.卒前・卒後のリハ医学教育において,あるいはリハや他領域の臨床の現場でご活躍中の医療職の方々の座右に置く必読の書としてお薦めする.さらに広く社会一般や公的機関における本書の利用を期待したい.

医局だより

いわてリハビリテーションセンター

 当センターは1992年4月1日に岩手県,岩手県市町村会,岩手県医師会および岩手医科大学を出資母体とする財団法人(理事長:岩手県副知事)が設立され,リハ医療における県内唯一の公的中核病院として,1993年10月1日に50床から当センターを開設,翌年4月1日より現在の100床にて全面稼動しました.当センターは岩手県岩手郡雫石町にあり,盛岡市の中心部より車で西に30分の所で,小岩井乳製品で有名な小岩井農場の手前に位置し,周辺には繋温泉などの温泉地も多く,また雫石スキー場などのスポーツ施設も近接し,環境には非常に恵まれた所にあります.このような環境のもとで現在107名の職員が働いており,医師は高橋明センター長(専門医)を含め5名,PTおよびOTは各8名,STは3名,臨床心理士およびMSWは各1名が常勤しております.標榜科はリハ科と整形外科であり,共に学会の認定施設となっております.

 当センターは4部門より構成され,いわゆる病院にあたる診療部,県内58市町村に職員を派遣し,リハの啓発と普及の実践および地域リハの推進を目的に活動を行う地域支援部,医師を含めたリハに関係する医療従事者や学生に対する指導および研修を行う教育研修部,そしてリハに関する調査,研究および開発を活動の目的とする研究開発部からなっております.これらの部門は常勤の職員が兼務し活動するため,非常に忙しい毎日ではありますが,県民の方々からは年を経るごとに高い評価をいただいており,やりがいのある仕事でもあります.さらに岩手県は非常に広大な面積を持つことより,三陸沿岸部の2市とのテレビ会議システムを導入しリハの指導を行っているほか,近年「岩手県リハビリテーション支援センター」に指定され,介護保険行政の推進と共に地域リハの中核施設として,県内の医療・保健・福祉を纏める重要な役割を果しています.

 診療の面では,脳卒中患者のみならず,外傷(脊髄損傷,骨折や切断および頭部外傷),神経疾患や循環器・呼吸器疾患患者も多く,クリティカルパスを導入し,在院日数の減少に努めています.毎週月曜日は機能診(入院時評価)と装具診,水曜日は車椅子診,金曜日は総回診と評価会議(症例検討会)があり,その他随時スタッフ会議を行い,筋電図検査等研修も充実しております.一緒に勉強したい方の希望を心よりお待ちしております.

(大井清文)

いわてリハビリテーションセンター
〒020 -0503 岩手県岩手郡雫石町七森 16-243
Tel019-692-5800,Fax019-692-5807
E-mail: irc@rnac.ne.jp,URL: http://www.rnac.ne.jp/~irc/
画像左から大井,徳永,柏木,高橋,立木 各医師

北里大学東病院リハビリテーション科

 1986年に地域に根ざす大学病院として,道路を隔てて従来からある北里大学病院の600メートル東に,北里大学東病院が設立されました.外観はピンク色(病院からは藤色というように言われていますが)の病院です.総合病院とは異なり,神経・運動器疾患センター,消化器疾患センター,精神神経疾患センターの主なる3センターからなっています.大学病院が急性期に特化するという現在の保険診療の流れと逆行するようですが,患者を中心に患者に向いた医療を展開するために設立されました.

 このようにある意味特殊な大学病院ではありますが,そのような環境のなか東病院のリハ科は,疾患発症早期から在宅生活に至るまで一貫したリハを提供するように行ってまいりました.チーム医療を展開する上でもリハ科医師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師が1つのスタッフルームに同居し,常にコミュニケーションを図れる状況にあります.また,臨床心理士,ソーシャルワーカー,保健師等も充実し心理的側面や社会的側面に対するアプローチも行っています.さらに,地域に根ざすということもあり,在宅支援センターも院内に設けられ,訪問医療専用の自動車もあり,リハ科医師を含めたリハスタッフも訪問を行い在宅医療にも力を入れています.それに,精神神経疾患センターに関連して,精神科作業療法も活発に行われています.大学病院としてはちょっと変わっているかもしれませんが,病院の中に体育館があり,そこではリハスタッフの一員としてスポーツ指導員という職種と一緒に作業療法士と臨床心理士などが一緒になって,精神神経疾患患者のデイケア・ナイトケアも行っています.また,慢性期の神経疾患患者を対象にレクリエーションも行っており,ユニークな医療を展開しています.

 このような環境の中でリハの目指すべき理想像を求めて,患者中心の医療を展開していますが,リハ医師としては,写真のような3人で診療している状況で,多忙な診療を行っています.週間スケジュールは,毎日の外来のほかに,義手義足外来1回,装具外来2回,車椅子外来1回,病棟回診1回がそれぞれ半日あります.また,医学部,看護学部,医療衛生学部(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士の専攻のあるリハ学科)などの学生もひっきりなしに出入りしており,それぞれの専門職の養成を担う活気のある大学病院のリハ部となっています.急激な変革により医療体制の荒波の中,常に患者の方を向いた医療を心がけて行っていきたいと思います.

(前田真治)

北里大学東病院リハビリテーション科
〒228 -8520 神奈川県相模原市麻溝台2 -1 -1
Tel042 -748 -2708,Fax042 -748 -2078
リハ医師:左から頼住孝二医師,古橋紀久医師,筆者

2002年度海外研修:印象記

Drucker Brain Injury Centerを訪ねて

生駒 一憲(北海道大学大学院医学研究科リハビリテーション医学)

 私が訪問したDrucker Brain Injury Center(以下Center)はPhiladelphiaの北部にあるMossRehabの3階部分を占めている.この部署の責任者であるDr. Nathaniel Mayerは痙縮等の運動障害の制御では世界的権威であるが,同時に外傷性脳損傷全般にわたりこのセンターで指導的役割をされている.筋電図による詳細な筋活動の解析や神経ブロック等も見学させていただいたが,ここではCenterでの外傷性脳損傷へのリハビリテーションついて,実際に見学させていただいたことを中心に述べたい.

 Centerでは入院プログラムと外来プログラムがある.入院プログラムの目的は自宅へ安全に帰ることができるように患者と家族を指導することである.Centerには30床の外傷性脳損傷専門病棟があり,入院患者は急性期を過ぎた症例で入院期間は1~2カ月である.入院患者に対して,PT 6名,OT 5名,ST 3名,臨床心理士2名がいる.医師は5名である.医師を中心として,各職種合同のカンファレンスが頻回に行われていた.また,OTでは病棟内で,生活全般に関する訓練が行われていた.

 入院から外来への橋渡しとして,1~2週間の入院で集中して評価,訓練をし,外来リハへ移行するAccelerated treat-ment programと,日中はMossRehabで訓練をし,夜は家で家族と過ごすというDay hospitalがある.

 外来部門では日常生活術,仕事への適応,学力などを評価した後,Community Re-Entry Programが実施される.これは地域社会に戻る日常生活訓練が行われるもので,家庭で実施されることも多い.また,Centerでは各職種が集まり,患者の問題点が話し合われる.4~5人が参加し,臨床心理士が中心となって進める会話訓練も行われていた.

 ClubhouseというDay programがあり,ここでは患者はメンバーとして位置づけられ社会活動等を行っている.MossRehabではメンバーによる寄付活動が行われていた.実際に居住し,衣食住などの日常生活を学ぶCommunity residential programもある.

 Centerでは,亜急性期の患者の早期自立を目指す方向で,それに必要なすべてのサービスがそろっている.このサービスには,家族へのサポートも含まれる.入院施設,入院から外来への過渡的施設があり,外来通院,地域社会への復帰プログラムが充実し,それにかかわる人員も充実している.外傷性脳損傷のリハにはこのような包括的な体制を整備することが重要であると感じた.日本が参考とすべき点は多々あると思われる.

(研修期間:2002年9月29日~10月6日)

Dysphagia Research Society 11th Annual Meeting に参加して

馬 場  尊(藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座)

 このたび,幸運にも日本リハ医学会海外研修助成者に選定され,Dysphagia Research Society 11th Annual Meetingに参加させていただく機会を得た.

 この学会は,1992年にWisconsinで第1回が開催され,以来,北米を中心に毎年10月頃に開催されており,今回が11回目となる.本学会のOfficial Journalは “Dysphagia” で摂食・嚥下の専門学術誌として,関連分野から多くの文献が引用され,近年そのImpact factorは非常に高くなっている.本学会はDysphagia誌の多くの編集委員が参加し,彼らの研究や意見を直接聞くことのできる貴重な場となっている.

 今回はMiamiのHotel InterContinentalにおいて2002年10月3~5日の3日間開催された.参加者数は約240名で米国以外の参加者は35名,うち日本からは12名であった.私たちの講座は才藤教授(Dysphagia編集委員)をはじめ6名が参加した.参加者職種については約3/4が言語聴覚士(SLP)で残りのほとんどは医師のようであった.米国ではこの分野がSLPのテリトリーとして確立していることの裏付けであろうが,やや排他的な印象は否めない.

 この学会は,口演発表が1会場,ポスター発表が1会場のみですべての参加者がすべての講演,発表を聴くことができる.開始は朝7時から,3日間で教育講演が8題,パネルディスカッションが7題,口演発表27題,ポスター発表33題と高密度なスケジュールであった.

 私は,バルーン拡張法に関する発表をポスターで行った.この方法は特に仮性球麻痺例に効果があるという内容で,参加者には興味をもっていただけた.

 今回の学会で取り上げられたテーマは,ALSの管理,神経可塑性と脳損傷嚥下障害の帰結,ベッドサイドの評価・訓練,内視鏡検査,誤嚥性肺炎,FES,喉頭の外科治療などであった.興味の対象は我々とほぼ同じであるが,臨床に則した内容が多く,基礎研究的なものが少ない印象であった.そのなかで,FESは日本では嚥下に対しての研究はあまりなく,非常に参考になる情報が得られた.次回も是非参加したいと考えている.

 以上,つたない印象記でありますが,このような機会を与えてくださいました日本リハ医学会の皆様に感謝申しあげます.

専門医コーナー

第15回 日本リハビリテーション医学専門医会 学術集会
必ず面白い! カレントトピックス&レクチャー

 カレントトピックス&レクチャーを2003年10月に名古屋で開催いたします.必ず面白くなります.リハビリテーション関係諸氏の多数のご参加をお待ちしています.
 重視したのは以下の点です.絞り込んだ話題を深く議論できる場としたい.主催者の姿勢が明確でありたい.以上の意図と参加者の利益とが合致する会としたい.参加者の利益とは,リハ医としての規範の賦活とリハ重要知識・知恵の獲得です.
 具体的内容として,

  1. ワークショップは,ノウハウの伝達,参加者の即時的利益を目指し,「摂食・嚥下リハtips」としました.熟練した臨床家により,皆様に明日からすぐ役立つtipsを伝授してもらいます.
  2. パネルは,重要かつ今まで深く議論されていないテーマを選びました.「運動学習」です.リハ医の他に計算理論の宇野洋二先生を招き,ある意味でとても刺激的なパネルになるはずです.もうひとつ,今後の成り行きが注目される「専門医の広告」について刻々と変わる状況と対処について,ホットな議論の場を提供します.
  3. シンポジウムは,先進的かつ完成度の高い成果を皆様にお示しいただき参加者がそれらを良きモデルとして参考にできる話題を選びました.「脳卒中リハ治療の先端」です.
  4. 特別講演には,嚥下の新しいモデルを提出し注目を集めているジョンズホプキンス大学のPalmer教授に「嚥下モデル再考」と題して,食べることの意味を深く考察いただく予定です.
  5. 特別企画として,FUJITA REHAB ABENDを前夜にアドホック開催いたします(参加費無料).皆様がまだ知らない「藤田リハの活動性」をお示しいたします.是非,併せてご参加ください.

●第15回日本リハビリテーション医学専門医会学術集会の概要
主催:藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座 才藤 栄一
会期:2003年10月25日(土)~26日(日)
会場:今池ガスビルホール(地下鉄今池駅すぐ)
会費:7,000円,懇親会(25日夜)5,000円
参加資格:専門医会会員およびリハ医学に興味を持つ方
企画:特別講演Palmer JB(嚥下モデル再考),ワークショップ(摂食・嚥下リハtips),パネルディスカッション(1. 運動学習,2. 専門医の広告),シンポジウム(脳卒中リハ治療の先端)
アドホック開催:Fujita Rehabilitation Abend(藤田リハの夕べ):10月24日(金)18時~22時半,ヒルトン名古屋,参加費無料:記念講演(FITプログラム,トレッドミル歩行分析,咀嚼嚥下複合体),特別講演(摂食・嚥下リハ:Palmer),懇親会
連絡先:藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座
 Tel 0562-93-2167,Fax 0562-95-2906,メール:rehabmed@fujita-hu.ac.jp,
  URL: http://www.fujita-hu.ac.jp/~rehabmed/index.html

広報委員会より

 専門医制度についての座談会を掲載しましたが,この4月より特定機能病院等で包括評価制度が導入され,来年度は新しい臨床研修医制度がスタートします.そして,国公立大学などでは独立法人化が現実味を帯びてきて,医療界,特に大学病院での大きな変化が起きています.包括評価の導入により,基準となる尺度が提供されることで病院間の比較が可能になったり,専門医制度で認められる広告の問題など,医療界においてもホームページなどのインターネットを利用した情報提供はますます重要になると思われます.広報委員会もより適切な情報提供が可能になるよう努力しなければなどと改めて考えさせられました.今年度もよろしくお願いいたします.(根本)