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運動器のリハビリテーション治療

運動器のリハビリテーション治療とは

運動器とは、“動く”ことに関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。運動器のリハビリテーション治療は、運動器の機能が低下した状態、たとえば骨折、関節リウマチ、骨粗鬆症、変形性膝関節症のような関節が悪くなった状態、頚椎や腰椎が悪くなった脊椎疾患、スポーツによる運動器の障害、また最も頻度が高いと言われる腰痛、肩こりなど、運動器が障害された状態のときに行なわれます。

運動器のリハビリテーション治療は、低下した筋力や関節の動く範囲の改善を図り、立ち上がり、歩行、階段などの日常生活動作の獲得や、障害された機能を回復し職場復帰などの社会活動ができるように、また、より高度な能力が必要なスポーツ活動への復帰を目指して行なわれます。手術が必要な場合においても、手術前には評価や予想される状態への対応として行い、手術後はできるだけ早期から機能向上を目的として行ないます。

健康寿命の延伸、介護予防を目的として、高齢者にロコモティブシンドロームを広く知ってもらい、足腰を強くして元気になっていただくことも運動器のリハビリテーション治療の一環であるといえます。たいへん広い範囲を運動器のリハビリテーション治療は担っています。
脊髄損傷、切断、関節リウマチも運動器疾患に含まれますが、別の独立した項として説明しています。ここではよく経験されると思われる運動器リハビリテーション治療が必要な状態について説明します。

大腿骨近位部骨折

骨粗鬆症がある高齢者によく起こる骨折で、年間約15万件発生する脚の付け根(股)の骨折です。多くは転倒することで発生し、手術が必要な場合がほとんどです。要介護状態に陥りやすい骨折であり、術後にはできるだけ早期から離床するためにリハビリテーション治療が不可欠です。リハビリテーション治療を行う際には、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)やまた転んでしまうことなどに注意する必要があります。骨折の原因となる骨粗鬆症に対する治療も必要であり、できるだけ早く骨折する前の状態に戻るためにもリハビリテーション治療が必要です。

腰部脊柱管狭窄症

腰椎の神経組織と血管が通るスペースが減少することにより、腰痛、臀部痛、下肢痛がみられる症候群です。最も代表的な症状は間欠性跛行です。間欠性跛行とは、歩行すると次第に下肢痛、腰痛が強くなり、歩けなくなりますが、少し休むとまた歩くことができるという症状です。

肩腱板断裂

肩関節の深いところには腱板という構造があります。腱板がささくれて破れた状態を肩腱板断裂といいます。原因は主に変性と外傷であり、若年者では怪我や使いすぎにより発症しやすく、中年以後は腱の加齢による変化が進み、外傷なしでの断裂が多くなります。痛い動きは避け、穏和な振り子運動から関節を動かす運動を始めます。筋力強化も必要ですが、痛くないように行うことが重要です。肩甲骨の動きを改善することや、周囲の筋の強化なども有効です。

変形性関節症

変形性関節症は関節軟骨がすり減ることで発症し、関節の痛みと変形や腫れなどを伴う疾患です。リハビリテーション治療では、関節に痛みを出さない状態での筋力強化訓練などの運動療法、鎮痛を目的とした温熱・寒冷療法などの物理療法、装具による関節保護などを行います。慢性的な疾患ですので、関節症状を悪化させないための生活指導や自主トレーニング指導が必要となります。
保存的治療で改善しなければ、人工関節を主体とした手術的治療を行ないますが、そのときにもリハビリテーション治療は重要です。

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