日本リハビリテーション医学会では2018年に「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版」を刊行しました。これはリハビリテーション診療に関連して発生する可能性がある有害事象を予防し、そのような有害事象が発生した際の影響を最小限とすることで、リハビリテーション診療による治療効果を最大限にすることを目的としています。内容としては、合併症や事故対策に加えて、医療関連感染対策が盛り込まれました。
2019年12月に中国に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は瞬く間に全世界に拡大し、各国の医療提供体制を混乱に陥れました。我が国も例外ではなく、医療・介護関連施設でのクラスターなどが発生しました。リハビリテーション診療患者と医療従事者の距離が近く、接している時間も長時間となるため、医療関連感染のリスクが高い診療行為となります。このため、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会において、新興感染症などに対応した医療関連感染対策の指針が必要と判断され、本指針の策定が決定されました。
感染対策指針(COVID-19含む)
「感染対策指針(COVID-19含む)」の利用者対象
想定される読者:主にリハビリテーション診療に携わる医療職としています。
対象とする感染症:COVID-19 のみではなく、飛沫・接触・空気感染予防策を要する感染症も想定しています。
作成組織
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本指針の作成主体は公益社団法人日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会となります。日本リハビリテーション医学会より、リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版の策定委員を中心として、委員が選出されました。さらに感染症専門家として、日本感染症学会の専門医2名にも正式な委員としてご参加頂くこととなりました。
また、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会、日本義肢装具学会、日本リハビリテーション看護学会、日本環境感染学会からも協力委員をご推薦頂いております。さらに本文執筆にあたっては、レビュー委員(執筆支援)として、日本リハビリテーション医学会および日本感染症学会の専門医の先生方にもご協力を頂きました。
作成組織 委員(敬称略、順不同)
- 作成主体(統括委員会)
公益社団法人日本リハビリテーション医学会 診療ガイドライン委員会 - 委員長
津田英一 - 副委員長
宮越浩一 - 日本リハビリテーション医学会感染対策指針(COVID-19 含む)策定委員会
津田英一(担当理事:弘前大学大学院医学研究科リハビリテーション医学講座)
宮越浩一(委員長:亀田総合病院リハビリテーション科)
根本明宜(横浜市立大学医学部リハビリテーション科学)
川上寿一(滋賀県高島保健所・滋賀県立リハビリテーションセンター)
西田大輔(東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学)
藤谷順子(国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科)
細川直登(亀田総合病院感染症科)
岡秀昭(埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科) - 関連学協会協力委員
高橋哲也(日本理学療法士協会)
山本伸一(日本作業療法士協会)
内山量史(日本言語聴覚士協会)
坂井一浩(日本義肢装具学会)
板倉喜子(日本リハビリテーション看護学会)
大毛宏喜(日本環境感染学会) - レビュー委員(執筆支援)
平田知大(ヴォーリズ記念病院リハビリテーション科)
早乙女郁子(国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科)
國枝顕二郎(岐阜大学医学部附属病院脳神経内科)
西田裕介(埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科)
小野大輔(埼玉医科大学総合医療センター感染症科・感染制御科)
作成方法
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日本リハビリテーション医学会感染対策指針(COVID-19含む)策定委員会として、2020年12月10日より作業が開始されました。感染拡大状況を鑑みて、委員会は主にオンライン会議にて開催されました。委員会ではクリニカルクエスチョン(CQ)の立案、コンセンサス形成、本文の記述方法について検討がなされました。各委員によりエビデンスや、関連する指針などの情報収集が行われました。これらの過程で、CQや本文の記述について協力委員の皆様からコメントを頂きました。可能な限り科学的根拠に基づくものを目指しましたが、それが十分でない場合には、委員会内でのコンセンサスに基づいた記述としました。また、関連する学協会や政府機関などの指針がある場合には、それとの整合性も考慮した記述としています。
利用にあたっての注意
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本指針は、リハビリテーション診療の現場における感染対策について、現時点(2021年12月)での一般論をまとめたものとなります。今後も感染拡大状況や、新興感染症の発生など、状況が大きく変わることも想定されます。また、医療機関ごとに対象となる患者背景や、職員配置、施設・備品などの状況が大きく異なることも予想されます。各医療機関内に設定されている感染対策指針がある場合には、そちらが優先されるものであり、本指針がそれらの裁量権を拘束することはありません。
医療関連感染対策の基本は、全ての職員が、全ての患者・利用者に対して基本的手順を確実に実施することにあります。医療機関ごとに設定された指針を熟知し、それを遵守することが必須となります。医療関連感染において、リハビリテーション診療はハイリスク領域であり、そのことを十分に認識して診療にあたる必要があります。医療関連感染対策の推進のため、本指針を役立てて頂ければ幸いであります。