急性期のリハビリテーション医療
垣田 真里 先生
関西電力病院 リハビリテーション科 医長
垣田 真里 先生
関西電力病院 リハビリテーション科 医長
和歌山医大でリハビリテーション科に入局し働き始めたのがきっかけです。挿管中で意識障害が残存しているICUの患者さんを、医師、看護師、療法士など多職種大勢が囲んで立たせる、歩かせるというのを最初に見たときはショッキングでした。正直、こんなことしていいのかとも思いましたが、それと同時に情熱を感じました。主治医とリハビリテーション科の医師、看護師、療法士が、皆で一人の患者さんを囲んで同じ方向を見ている、まさに攻めているといった印象でした。安静とは何かを再考させてもらうきっかけとなりました。
廃用予防=不動の改善、重力負荷を重症患者に実施する難しさをまず感じました。急性期のリハビリテーション治療は、時には侵襲のある治療であると思います。なので、得られるリハビリテーション治療の効果を十分に予測した上で介入する必要がありますが、それと同時に安全に実施する必要もあります。教科書の知識も重要ですが、臨床では、やはり症例から学ぶことが多いと思います。そんな時に、助言を求められる先輩リハビリテーション科専門医が他科のようにいてくれるといいなと思うことは、特に大学外の病院で働くようになってたびたび感じました。また、実際に患者さんを動かしてくれる療法士の先生の力の大きさも非常に感じます。
急性期のリハビリテーション治療を実施することで、退院時に「命が助かってよかった」と患者さんに感じてもらえればいいと思います。患者さんを見れば、いいリハビリテーション治療を受けたか否かがはっきりわかるのでやりがいも感じやすいと思います。
テレビで見たのですが、西城秀樹の告別式で野口五郎が弔辞で「もうリハビリ頑張らなくていいからね。良かったね。」と言って涙ぐんでいたのが印象的でした。リハビリテーション治療、運動療法の治療効果を追求することばかり考えていた私にとってはキュッと心臓をつかまれるような嫌な気持ちもありました。やはり、リハビリテーション医療は最終的に患者さんの幸せのためにあるべきです。西城さんがどんな気持ちだったのかはわかりませんが、目の前の治療に没頭しすぎて、患者さんを置き去りにしてはいけないと強く思いました。そんなときに、いつも思い出すのは「先生と出会えてよかった」と言ってくれた筋ジストロフィーの患者さんの笑顔です。