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リハビリテーション科医の魅力

2023年6月 若手リハビリテーション科医Q&A

若手のリハビリテーション科専門医、専門医をめざす医師にインタビューしました。

◆お話を伺った先生
 石川県済生会金沢病院 中積 智先生

【質問1】リハビリテーション科医に関心を持ったきっかけは?

中積 智先生 学生実習時、リハビリテーション科の先生が肩のレクチャーで健常な肩でも少しの制限で腕が全く上がらないことを再現してくれました。その際、筋肉や関節の動きに精通し、運動に対して非侵襲的にアプローチできるところに面白さを感じました。また、初期研修時に治療終了後も廃用のため退院できない患者さんが多くおり、療法士任せになっている現場を目の当たりにしました。リハビリテーション医療の重要性を理解し、治療と自宅の間をつなげられる人になりたいと思い、リハビリテーション科医になることにしました。

【質問2】リハビリテーション科医の魅力は?

中積 智先生 年齢・臓器に限られず、全身を見られることや、患者さんが外で生活をするために何ができるか一人ひとり治療方針が違うため、その人に合ったリハビリテーション治療を提供できるところ。また診療が多岐にわたるため、自分の好きな分野を自由に勉強できるところです。

【質問3】1日(または1週間)のおおまかなスケジュールは?

中積 智先生 午前中は外来か病棟、午後は回診・病棟・検査です。

【質問4】興味や関心を持っているテーマや取り組みは?

中積 智先生 運動器エコーをもっとリハビリテーション診断にも活かせないかを模索しており、運動器エコーの勉強をしています。 まだ自分は関われていませんが、健康でまだリハビリテーション治療を受けていない人に予防のためのリハビリテーション医学・医療を進めていきたいなと思います。

【質問5】医局、診療科の雰囲気、仕事環境は?

中積 智先生 自分で自由に診療をしながらも、カンファレンスなどでフィードバックする機会があり不安なことがあっても軌道修正をしやすいです。
現在二人目を出産、育休中ですが、週に1回のオンラインカンファのおかげで育休中でもリハビリテーション医療の現場での問題などを話せる機会があり勉強する機会があります。
PT/OT/STさんが優しく、わからないことも教えてくれたり、話し合って方針を決めやすいです。
また、ベテランのリハビリテーション科医が知らないことに対して貪欲に勉強して、自分のチーム以外にもほかの診療科の先生に聞きに行く姿を見て、どれだけ経験を重ねても貪欲に学ぶことって素敵だと思いました。

【質問6】印象に残っている言葉やエピソードは?

中積 智先生 北陸はリハビリテーション科医が少ないので、先生みたいに現場に見に来て一緒に診療方針を考えてくれると嬉しいとOTさんに言われたとき、現場を見ながら一緒に診療できているチーム感を実感できてうれしかったです。

【質問7】5年後、10年後、20年後の夢、将来像は?

中積 智先生 まだ将来像は見えていませんが、回復期・維持期で患者さんの生活に根差したリハビリテーション治療を提供したいです。

【質問8】メッセージ

リハビリテーション科は学生の時に学んできた知識に加え、運動学、義肢や嚥下、福祉に関する知識が必要になりとても奥深いです。リハビリテーション診療は治す医療というよりは、活かす医療だと感じており、そのためにたくさんの手段を勉強すればするだけ選択肢を広げやすくなり勉強し甲斐のある科だと思います。
さらに、働く場所も急性期・回復期・維持期とそれぞれに分かれており、研究の分野も広がっています。
実際に診療をしている中で、どうしたらこの患者さんが生活しやすくなれるか一緒に考えて実践していくのはとても楽しいです。患者さんの回復の過程がわかるので、現場では元気をもらえます。

―――中積 智先生、ありがとうございました。

◆お話を伺った先生
 横浜市総合リハビリテーションセンター 田中 都 先生

【質問1】リハビリテーション科医に関心を持ったきっかけは?

田中 都先生 学生から初期臨床研修までは脳神経内科志望でしたが、脳神経内科の中でも急性疾患よりも慢性疾患の診療に興味があり、診療科選択に迷っていました。色々と調べていく中でリハビリテーション科があることを知り、やりたいことに合っていると感じました。その後、病院見学や研修医向けのセミナーに参加してリハビリテーション科を選択しました。

【質問2】リハビリテーション科医の魅力は?

田中 都先生 急性期から生活期まで長期的な視点で診療できることが魅力だと思います。さらに病気の治療の先にある患者さんの生活に関われることや、緊急が少なく体力的な余裕もできるため、長く働き続けることができることも魅力だと思います。

【質問3】1日(または1週間)のおおまかなスケジュールは?

田中 都先生 補装具外来2回/週(成人・小児をそれぞれ1回ずつ)、車椅子クリニック1回/週、一般リハビリテーション科外来1回/週、その他新規入院受け入れ、痙縮外来、カンファレンス、勉強会などを行っています。

【質問4】興味や関心を持っているテーマや取り組みは?

田中 都先生 高次脳機能障害に興味があります。

【質問5】医局、診療科の雰囲気、仕事環境は?

田中 都先生 上級医の先生方には日頃からとても気にかけていただいていると感じており、分からないことや困ったときに質問がしやすい環境です。

【質問6】印象に残っている言葉やエピソードは?

田中 都先生 回復期・生活期のリハビリテーション治療は入院期間が長く、患者さんや家族との関わりも多いです。退院時に「色々相談乗っていただき、ありがとうございます」「ずっと診てくれていた先生がいなくなるのが不安です」と言っていただけたときは嬉しかったです。

【質問7】5年後、10年後、20年後の夢、将来像は?

田中 都先生 まずは専門医の取得を目標としています。専門医取得後の進路はまだ漠然としていますが、高次脳機能障害の診療に関わっていきたいと考えています。

【質問8】リハビリテーション科医を目指す若手医師を増やすアイデアは?

田中 都先生 学生、初期臨床研修のプログラムにリハビリテーション医療を経験できるものがあるとよいと思います。例えば回復期リハビリテーション病棟や、リハビリテーションセンターへの見学や実習があると、より知られるようになるのではないでしょうか。

―――田中 都先生、ありがとうございました。

◆お話を伺った先生
 北海道内病院勤務 男性  20代

【質問1】リハビリテーション科医に関心を持ったきっかけは?

先生 大学での初期研修中に運動器疾患のみならず、幅広い診療科でリハビリテーション診療を行っているのを目にし、その重要性と同時に目に見えて機能回復していく過程の面白さを感じたことがきっかけです。

【質問2】リハビリテーション科医の魅力は?

先生 非常に分野が幅広く、全ての疾患がリハビリテーション治療の対象と言っても過言ではありません。ジェネラリストであると同時に、ロボットや嚥下、高次脳機能、スポーツなど自分の興味のある分野のスペシャリストを目指すことも可能である部分に魅力を感じます。

【質問3】1日(または1週間)のおおまかなスケジュールは?

先生 現在は回復期病棟の専従医として勤務しています。朝は担当患者さんの回診から始まり、訓練が問題なく実施可能な状態かを確認します。その後は病棟で多職種でのカンファレンスを行い、各職種の専門的な視点から患者さんの適切な目標設定や今後の大まかなリハビリテーション治療のスケジュールを策定していきます。カンファレンスが複数件ある時はそれだけで午前中の多くの時間を費やすため、空いた時間に必要な診察や処方を行っています。
午後はご家族も交えたカンファレンスを行い、退院へ向けてのイメージをより具体的なものにしていきます。残りの時間で担当患者さんの訓練中の様子の確認、午前午後問わず新規の入院患者さんの診察やリハビリテーション処方、病状説明等も行うため時間に余裕がないこともしばしばありますが、多くは就業時間内に業務を終えることができています。

【質問4】興味や関心を持っているテーマや取り組みは?

先生 回復期病棟で働く中でポリファーマシーについて考えさせられることが多く、効率的なリハビリテーション治療のため積極的な処方の見直しを実施しています。

【質問5】医局、診療科の雰囲気、仕事環境は?

先生 他科からの転科など様々な経歴を持っている方も多く、自分のキャリアデザインを描く上で多くの刺激をもらっています。働き方にもメリハリがあり、周囲には子育て中の方も多くいらっしゃいます。

【質問6】印象に残っている言葉やエピソードは?

先生 「回復期病棟では、生活の全てがリハビリテーション治療だ」という指導医の言葉が印象に残っています。起床して服を着替え、歯を磨いて髪を整える。病前はできていた「当たり前」を取り戻すためにリハビリテーション治療はあるのだとあらためて気付かされました。

【質問7】5年後、10年後、20年後の夢、将来像は?

先生 まずは専門医を取得し、リハビリテーション科医としての土台を作ることが始まりだと思っています。提供されるリハビリテーション医療の地域格差も実感しており、将来的にはリハビリテーション治療を必要とする方がより広く支援を受けられるようなシステム作りにも携わってみたいです。

【質問8】メッセージ

先生 リハビリテーション科医は患者さんの疾患からその人の生活、人生まで寄り添って診ることのできる魅力的な仕事です。医師人生の選択肢の一つとして、ぜひ考えてみてください。

―――先生、ありがとうございました。