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リハニュース No.2

  1. 第36回 日本リハビリテーション医学会学術集会―鹿児島―見聞記

  2. 特集:介護保険制度へのとりくみ

    介護保険制度と医学的リハビリテーションの役割,医学的リハビリテーションの将来展望

    介護保険制度におけるリハビリテーション医療

  3. INFORMATION

    国際委員会:国際委員会発足にあたって

    教育委員会:医師卒後研修会の追加開催と認定臨床医単位の取得機会の拡大を検討中

    認定委員会:認定委員会からのお知らせ

    編集委員会:編集委員会だより

    関連機器委員会1:「医薬品等安全性情報報告制度」について

    関連機器委員会2:「コンピュータ西暦2000年問題」について

  4. 提言:日本リハビリテーション医学会の進むべき道

  5. 医局だより

    弘前大学医学部附属脳神経血管病態研究施設機能回復部門

    横浜市立大学医学部リハビリテーション科

  6. 文部省科学研究費細目「リハビリテーション科学」消滅の危機

第36回 日本リハビリテーション医学会学術集会―鹿児島―見聞記

川手 信行 (昭和大学医学部リハビリテーション医学診療科)

 雄大な桜島のもと,西郷隆盛,大久保利通など歴史に残る逸材を数多く生み出し,まさに近代国家日本の礎を築いた鹿児島において,第36回日本リハビリテーション(以下,リハ)医学会学術集会が開催された.国立大学医学部では,まだ数が少ないリハ医学講座を有する鹿児島大学医学部リハ医学講座主任教授田中信行先生の学会会長のもと,「21世紀への飛翔~共生のための科学と文化を求めて~」をメインテーマに,全国からリハ医学関係者約2,000名が集い,招待・特別講演,会長講演を筆頭に,シンポジウム3席,パネルディスカッション4席,セミナー7席,一般演題(口演・ポスターあわせて)約650席,その他新しい企画が,3施設13会場にて行われ,熱心な討論,議論が3日間にわたって繰り広げられた.

 2000年4月に施行される介護保険制度,医療改革の目玉になるであろう診断別支払制度(DRG/PPS),クリティカルパス導入などといった今後の日本の医療大系を大きく変えるであろう諸問題をはじめ,脳卒中・脊損・脳性麻痺・骨関節疾患・呼吸,循環器疾患など様々な疾患のリハ医療,リハ効果の報告や電気生理学的検査,運動負荷,歩行分析などの報告,様々な機器を用いた評価法などの報告,地域リハ活動の報告など多方面にわたる研究成果の報告がなされた.

 特に,会長講演での『QOLとは「生きる喜び」であり,超高齢化社会での医療のあるべき姿は「長生きの医学から生きる喜びの医学」への転換であり,長い人類の英知を健常者,障害者,子供,大人,老人の「共生」の意識に結集しなければならない.』という田中先生の御講演や,特別講演での『「世界一の長寿国を達成した日本」の医療の進むべき道は,高齢者がいつまでも健康で,活動的に,そしてその豊かな経験で社会に貢献できるような社会作りであり,そのために長寿科学やリハが大きな役割を担う筈である.』との井形先生の御講演には,非常に感動し心に深く刻み込まれ,リハの将来に大きな夢と希望をあたえくれたと感じたのは私だけではないだろう.

 21世紀初頭,今まで世界中のどの国も経験したことのない急速な高齢化社会が日本を直撃する.その状況下にあって,従来のような疾病のみを対象とした医学では,「生きる喜び」のない寝たきり患者を量産する結果になることは目に見えている.今こそ,救う為の医学から生きる喜びの医学への転換が必要であり,健常者,障害者,子供,大人,老人が「共生」していける科学,文化の構築をしていかなくてはならない.そして,それを担っていくのはリハ医学に従事する者の役割であると思われた.

 3日間の学会終了後,立ち寄った西郷南洲像を見上げながら,ある言葉が脳裏をよぎり,心の底から沸き起こる興奮の鼓動を感じた.『維新はここから始る.』 

 第37回日本リハ医学会学術集会は,2000年6月22日~24日の3日間,防衛医大リハ部石神重信先生の学会会長のもと,東京のビッグサイトにて開催される予定である.

特集:介護保険制度へのとりくみ

介護保険制度と医学的リハビリテーションの役割,医学的リハビリテーションの将来展望

安藤 德彦 (社会保険等委員会 担当理事)

1. 介護保険制度下での医学的リハの知識・技術の活用

 介護保険では市町村調査員の訪問調査結果が認定審査会で審議され,介護の必要性と介護度が認定される.同時に提出される主治医の意見書は医療の要否に加えて,介護度を判定する上でも重要な資料になるであろう.個々のケアプランは看護支援専門員が個別のニーズを分析して策定されるが,この際のサービスの種類は在宅・通所・施設入所(医療要否で療養介護と生活介護を区別)があり,排泄・入浴等への直接介護と買い物・洗濯等の間接介護,看護,医療,機能訓練,福祉用具貸与も含まれる.これらを選択し,組み合わせ,連携体制を組みつつ実行されるのがサービスの全体であるが,対象にはリハを施行すれば要支援・要介護状態を脱却できる人や,機能維持訓練が必要な人も含まれる.

 このような状況を考慮すると,介護保険制度とリハ医学に精通した医師が制度に加わることで要介護度の審査だけでなく,介護の内容を正しく策定し,また機能再訓練で介護度を減少させる可能性を知ることも可能だと期待される.さらに介護保険のサービスは既述したように多様なので,介護サービスは多数職種の連携・協力のもとに実施され,地域の社会資源を最大限に活用し,地域独自の介護システムを構築していく必要がある.異職種間の連携や介護システムの構築は言葉でいうほど容易ではないが,医学的リハは元来チームで治療活動を行っており,リハに精通した医師が存在すれば,チームのかなめの役割を果たすことが期待される.リハ医学会としても各地域医師会が主催する介護保険に関する講習会に積極的に協力する必要がある.

2. 介護保険制度実施下でのリハ医療の将来 

 公的介護保険制度の導入と同時に入院期間の短縮化が進行中である.既に全世界で入院日数は急激に短縮化しており,その状況が一般医療機関でのリハの普及が遅れた日本に持ち込まれれば,リハを受療できずに退院させられる患者は,間違いなくさらに増加するであろう.介護保険の中でもリハは実施されるが,その密度は非常に薄い.リハ医療が慢性期に区分されて介護保険制度の中に組み込まれるような事態がもし起きてしまったら,日本のリハ医療は米国以上に悲惨で壊滅的な状態に陥ってしまう. リハの意義は患者の早期離床をはかり,リハを必要とする患者の治療期間を短縮化させることにあるのだが,その意義を認識している医師は非常に少ない.この状況の最良の解決方法は医学部の教育の中でリハの意義を認識させることである.しかしそれでは差し迫った状況を解決できない.緊急の課題はリハ科が全ての機会を捉えて一般医療機関に積極的に進出すること,急性期から回復期のリハ医療の必要性を行政に理解してもらうことである

3. 楽観的・肯定的将来展望 

 大多数の人にとって高齢化とは健常であることと疾病を得ることと障害を持つことの境界が区分できなくなる状態でもある.したがって高齢者・障害者対策は障害を普遍的なものと捉え,障害の有無に関わらず誰もが普通の生活を送れる経済体制を構築することが今の時代の差し迫った課題でもある.公的介護保険制度にその解決策の1つの手段となることを期待したい.

介護保険制度におけるリハビリテーション医療

伊藤 利之 (障害保健福祉委員会 委員長)

1. 新たなファンドとしての介護保険 

 介護保険制度は,これまで医療保険で行ってきた慢性期の管理医療に加え,老人保健・福祉法によって行われてきた「デイケア」「ショートステイ」「訪問介護」などのサービスの一体化を目指したもので,高齢者に提供されている医療と保健・福祉サービスを再編した新たなファンドです.したがって,介護保険制度の導入にあたっては医療保険との区分けに加え,老人保健・福祉制度,さらには身体障害者福祉法などとの調整が必要で,現在,これらの詰めの作業が中央官庁及び各市町村で行われているところです.

 介護保険の仕組みに関する最新の情報については,日本医師会発行のQ&A(日本医師会雑誌第121巻10号の附録)に詳しいので参照されたい.

2. 医療保険との区分け 

  • 施設サービス(表1
  • 在宅サービス(表2

3. 通所・訪問リハビリテーション―サービス内容と報酬の仕組み― 

 介護保険におけるリハビリテーション・サービスの形態は通所と訪問に分けられます.

 通所リハビリテーションのイメージは,現在,医療機関で行っている「維持的機能訓練」と老人保健施設などで行っている「老人デイケア」の両者を包含したものです.ちなみに,本サービスの報酬については現行制度からの円滑な移行という点を考慮し,要介護度に加えて施設の人員基準・設備基準を加味,包括的に評価する部分と,加算として出来高で評価する部分に分ける案が考えられています. 

 一方,訪問リハビリテーションは訪問看護などと同様,要介護者の機能維持を目的に,訪問して機能訓練を行うサービスです.報酬については,要介護度にかかわらず平均的な費用で設定する方法が考えられています.

4. 今後の動向 

 平成11年10月から,各市町村において「要介護認定」の申請と「認定作業」が開始されます.したがって,「認定」に関する種々の仕組みについては,それまでに詰めの作業を終えることになると思います.

 問題は通所や訪問リハビリテーションの内容とその報酬,福祉用具の給付や住環境整備の拡充など,これまでの医療保険や社会福祉制度では対処しきれなかったリハビリテーション関係サービスを,今後どこまで充実することができるかだと考えます.もちろん,これらのサービスは介護保険に上乗せ横出しすることも考えられますが,障害福祉など別枠のサービスについても視野に入れて考えるべきでしょう.いずれにしても各市町村において,2005年の制度の見直しに向けたリハビリテーション関係者の努力が必要だと思います.

 ちなみに,日本リハビリテーション医学会としては,障害福祉サービスとの併合によって生じるであろう課題について,「障害保健福祉委員会」等において順次検討していく予定です.今後,本ニュースや学会誌を通じて適宜その内容を報告したいと思います.

表1 施設サービス

  医療保険 介護保険
指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 他医療機関からの往診や入院費 等
※具体的範囲は今後検討される
配置医師が行う健康管理や療養指導 等
※具体的範囲は今後検討される
介護老人保健施設(老人保健施設) ・対診にかかる医療行為 
・老人保健施設の入所者に対して他医療機関が行った老人保健施設では通常行えない一定の処置(透析等)手術 等
・医学的管理の下における機能訓練その他必要な医療行為 
・入所者の病状が著しく変化した際に緊急その他やむを得ない事情により老人保健施設で行われる施設療養(緊急時施設療養費)
指定介護療養型医療施設(療養型病床群等) ・療養型病床群等のうちの医療保険適用部分の入院患者の治療(40歳未満や40~64歳の特定疾病以外の者等の長期療養)
 ・介護保険適用部分における入院患者が急性増悪した場合で,転棟等ができない場合等に介護保険適用部分で行われた医療 
・介護保険適用の療養型病床群等の入院患者に対する透析や人工呼吸器の装着など,頻度の少ない複雑な医療行為
・診療報酬における基本診療料,検査,投薬,注射,一部の処置
・介護保険適用の療養型病床群等の入院患者に対する指導管理,リハビリテーション,単純撮影,創傷処理等の長期療養に対応する日常的な医療行為

表2 在宅サービス

  医療保険 介護保険
居宅療養管理指導 ・寝たきり老人在宅総合診療料:診療計画による医学的管理,疾病の治療の指導,投薬・検査 
・訪問診療料 
・具体的疾患に関する指導管理料 
・検査・投薬・処置 等
通院困難な要介護者等について訪問して行われる継続的な医学的管理に基づく 
・ケアプラン作成機関等への情報提供 
・介護サービス利用上の留意事項,介護方法の相談指導
訪問看護 ・急性増悪時の訪問看護 
・神経難病,癌末期等に対する週4日以上の訪問看護 
・精神科訪問看護
・要介護者等に対して週3回限度で行われる通常の訪問看護
 (左記の場合以外)
通所リハビリテーション 要介護者等以外に対する通所リハビリテーション 要介護者等に対する通所リハビリテーション
訪問リハビリテーション 要介護者等以外に対する訪問リハビリテーション 要介護者等に対する訪問リハビリテーション
短期入所療養介護 施設と同様 施設と同様

INRORMATION

国際委員会:国際委員会発足にあたって

岡島 康友 (委員長)

 日本リハビリテーション医学会の各種委員会が新体制へ移行したのに伴い,国際委員会が発足し平成11年1月から活動を開始しました.委員は小池純子先生,宮野佐年先生,荒巻駿三先生に,私を加え4名です.第1回委員会で,担当理事の平澤泰介先生から「Honorary Member, Corresponding Member,海外研修制度」創設が提案されました.平澤先生の国内他学会での経験がもととなり,内規を含め,その詳細の検討がスムーズに始動しました.目的は国際学術交流を促進するとともに,本学会の国際的認知度をより一層,向上することにあります. 

 海外のリハ学会員が対象で,その国のリハ学会と本学会との橋渡しとなりうる医師です.両Memberとも,評議員などの推薦をいただき,委員会・理事会で検討することになります. 

 一方,海外研修制度はリハ業績に加え,語学力のある本学会の若手会員が,海外でのリハ学会口演とリハ施設訪問するのを助成するものです.公募の上,委員会・理事会で検討となります.予算面での裏付けは,Honorary Member, Corresponding Memberには,ほとんど必要ありませんが,海外研修制度に関しては多少なりとも用意しなければなりません. 

 ただし助成額よりも選ばれることの名誉を重んじて頂きたく思っています.Honorary Member, Corresponding Memberも名誉重視の点ではまさに同じです.なお対象となる外国は欧米に限らず,特にアジア地域は本学会がリーダーシップを示すためにも重要と考えています.

 その他の本委員会業務としては,関連国際会議および海外の学会情報の収集,国際会議の後援や主催についての検討などを考えています.以上,御報告まで. 

教育委員会:医師卒後研修会の追加開催と認定臨床医単位の取得機会の拡大を検討中

川平 和美 (委員長)

 教育委員会は生涯教育委員会と医学教育委員会との統合で今年4月に生まれ,生涯教育研修会の開催ならびに認定臨床医単位の認定,医師卒後研修会の開催を主要な業務とする委員会です.

 当委員会の大きな課題は,1) 専門医受験資格の拡大に対応した医師卒後研修会の追加開催,2) 臨床認定医の単位取得機会の拡大です. 

1) 医師卒後研修会の追加開催:研修の機会が少ない小児領域の医師卒後研修会を追加開催することを検討中です.

2) 認定臨床医単位の取得機会の拡大:①「リハ医学会が指定した県単位の医師会主催の生涯教育研修会:細則9号」に加えて,地域の学術集会,研究会における講演も認定の対象とする,②追加の生涯教育研修会の開催などが検討されています. 

これら検討内容がどこまで実現できるかは分かりませんが,取得単位数不足の方は更新を目指して頑張って頂きたいものです. 

3) 研修会等の開催予定もお知らせします.

  1. 医師卒後研修会の開催予定 
    第51回医師卒後研修会(分野:呼吸器障害,循環器,代謝障害,老年者など,期日:平成11年9月16~18日,会場:産業医科大学)
    第52回医師卒後研修会(分野:リハ医学総論,期日:平成12年3月9~11日,会場:奈良県
    第53回医師卒後研修会(分野:脳血管障害,脳外傷,期日:平成12年9月頃,会場:未定)

  2. 生涯教育研修会の開催予定
    地区研修会を年2回以上開催

  3. 医学生用夏期セミナーの開催
    全国の17大学で,7,8月に無料開催されます.

認定委員会:認定委員会からのお知らせ

梶原 敏夫 (委員長)

1. 平成11年5月20日,第36回日本リハビリテーション医学会総会において,日本リハビリテーション医学会専門医認定基準(改正基準)に規定する専門医の受験資格に関する特例が承認されました.その内容は,
学会主催の医師卒後教育研修会と厚生省主催の義肢装具等適合判定医師研修会により研修歴と当該分野の症例報告に置き換えることが可能になるということです.
研修歴は4か月,症例報告は当該分野を除くが30症例のままとします.また,研修歴の期間や分野の数に制限は設けないこととします.
認定される研修会は,平成11年度から実施する研修会としますが,義肢装具等適合判定医師研修会は以前のものでも可能とします.
 

 以上ですが,今後の研修会の予定や申請方法などについては学会誌に公示しますので,周知徹底して下さい.

 なお,今回の特例は受験資格の緩和を行ったわけですが,試験の方法,内容はいままでと同じですので,日頃の研鑚をお願いいたします.

2. 認定臨床医資格更新について 
認定臨床医資格は,10年間に40単位取得が義務づけられていますが,単位取得状況は十分ではありません.平成14年3月に資格更新が行われますが,対象者3,241名のうち,現在のところ,30単位以上1,583名50.1%,29単位以下1,574名49.2%で,半数の会員が資格更新が困難な状況です. 

単位取得状況の再度通知を行うとともに,今後,日本リハ医学会総会,地方会における生涯教育研修会にて単位取得の機会を増やす方向で検討しております.該当される方々には,単位取得の計画をたてていただければと思っております. 

編集委員会:編集委員会だより

佐鹿 博信 (委員長)

 編集委員の任期は最長で6年(3期まで:定款施行細則第4章)までです.この規定にしたがい,三上真弘委員と高嶋幸男委員が1999年3月で退任されました.ご苦労さまでした. 

 新任の編集委員に,北九州市立総合療育センターの北原佶先生が選任されました(1999年4月). 

 リハビリテーション医学誌は,Index Medicusに登録されていません.1991年9月に登録を申請しましたが,編集委員会や査読などが不備であると却下されています(悔しい!).現在,再度登録を申請すべく,編集委員会では投稿規定や執筆規定の改訂を検討中です.“Uniform Requirement for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals”に沿ったものに改訂することを目指しています.

 投稿規定と執筆規定の改訂に合わせて,リハビリテーション医学誌の体裁も21世紀にふさわしいものに変えることを検討しています.つまり,A4判化,英文目次の刷新,英文editorial boardの掲載,編集後記の廃止,オレンジ色や緑色のページ(お知らせや理事会報告など)の配置の変更などです.ご意見があればお聞かせ下さい. 

関連機器委員会1:「医薬品等安全性情報報告制度」について

岩谷  力 (委員長)

 先般,会員から光線治療器により火傷を負った事例の報告がありました.このような事例に関しては学会への報告義務はありませんが,我が国では平成9年7月から「医薬品等安全性情報報告制度」が整備され,日常医療の場でみられる医薬品や医療用具の使用によって発生する健康被害(副作用情報,感染症情報,不具合情報)を国が医薬関係者から直接収集を図っております.

 会員の皆様が日常の医療活動で副作用症例などの経験をなされた際には所定用紙*にて,厚生省に報告して下さい.報告情報は「医薬品等安全性情報」等に掲載,または関係する企業に提供されるなどして活用されます.所定報告用紙は毎年1回医療機関,薬局に送付されるほか都市区三師会や都道府県,制令市,特別区,保健所にも常備されております. 

 なお,報告された情報の出所,患者プライバシーに関する部分は非公開とされ,秘密は保持されます.より詳細は厚生省医薬安全局安全対策課のホームページ http://www.mhw.go.jp を参照して下さい.

*医療用具安全性情報報告書は,事務局にお問い合わせ下さい. 

関連機器委員会2:「コンピュータ西暦2000年問題」について

岩谷  力 (委員長)

 2000年問題とは,これまでコンピュータプログラムが日付情報を西暦の下2桁で処理していたため,来年の1月1日以降の日付情報を入力すると2000年と1900年の区別がつかず,誤作動を生じる恐れがあるというものです.日付を基にした計算データを用いて,患者記録の処理を行う際に留意すべきとされます.

 厚生省が昨年10月に医療機器会社3,310社にアンケート調査を行い,2,978社回答を得た結果によりますと,患者に重篤な障害をもたらすような問題はないものの,以下のような問題点が報告されております. 

  1. 日付表示や記録に問題を生じること 

  2. 機器起動時の自己点検過程で異常を感知し,起動しない恐れがあること

 より詳細は厚生省医薬安全局のホームページ http://www.mhw.go.jp を参照して下さい.

提言:日本リハビリテーション医学会の進むべき道

米本 恭三 (日本リハビリテーション医学会監事・前理事長)

 この度の第36回日本リハ医学会学術集会は,好天にも恵まれ,桜島の噴煙を眺めながらの行き帰りは楽しい思い出となりました.学会の会員数もほぼ9,000人に達し,一般演題が650に及び,参加された先生方は恐らくお目当ての演題を聞くためにプログラムを見ながら会場の往復に忙しかったと思います.

 ところで,シンポジウムのときにお話したことですが,わが国は少子高齢化の進行の結果,有史以来はじめて,総人口が系統的に減少し始め,2050年には1億人になる.そして高齢者の割合をみると,2020年には4人に1人が65歳以上といっていたものが,2040~2050年にはさらに3人に1人になると推計されています.また,65歳以上人口の3/4は健康老人といいます.

 高齢を迎えても,自分の能力を生かし,自立をめざすため,これからのリハは医療から生活の広い範囲に及ぶため,われわれリハ医は今まで以上に多くの知識や技術を要求されることになります.したがって,この領域の学問を発展させ,その臨床的応用であるリハ医療の質を高める努力を常に忘れず,国民の期待に応えていかなければなりません.

 そこで思い出し,心に留めていただきたいのは,文部省科学研究費の細目「リハビリテーション科学」のことです.臨床研究や基礎研究の上に学問の進歩があり,もちろんその研究遂行のためには研究費が必要です.学会では大変な努力と時間を費やして,やっと平成10年度に3年の時限付きの細目(細目番号923)を認めてもらいました.今年の秋は3年目で最後の申請の時期となりますが,科研費申請の資格をお持ちの先生方は全員応募して下さることを期待しております.

 次に,学術集会2日目の夜の専門医の集会で大切な2つのことを提案しました.その1つは,学術集会をお引き受け下さる会長とそのスタッフの皆様にはただでさえ,その準備のために日常業務に加え余分な多くの仕事をお願いしています.開催に多額の費用がかかり,参加費や展示収入で間に合わない部分を,自分達で工面するという悪いしきたりは止めにしたいということです. 

 そのためには,今の学術集会開催費の概算から推定しますと,リハ学会の全会員の1/3,つまり3,000人の参加者があれば,費用の点では大会参加費と展示収入のみで,安心して学術集会を開催し,運営することができます.したがって,各人が1人でも多くの参加者を募り,内容を重視した手作りの質実剛健な学術集会に回帰することを願っています.

 次は,米国における年次学術集会であるAAPMRに対し,別の時期に開催されるAAP(Association of Academic Physiatrists)のような集会を持ち,カレントトピックス&レクチャーを発展的にその中に吸収する案はどうでしょうか.そこでは,卒前・卒後の教育問題や研究,研究費のとり方,リハ医の活動の場など実態に即したミーティングを持つことができるようにしたいものです.私はその機が熟してきたように思っています.

 これらの願いを真夏の夢に終わらせたくないと念じているのが,今の心情です.

医局だより

弘前大学医学部附属脳神経血管病態研究施設機能回復部門

相馬 正始

 昨年は,青森市での第35回日本リハビリテーション医学会総会に多数ご参加いただき誠にありがとうございました.この場を借りまして,感謝申し上げます.

 本年4月には,附属脳神経疾患研究施設の改組によりリハビリテーション部門は,附属脳神経血管病態研究施設機能回復部門として生まれ変わりました.したがいまして,弘前大学におけるリハ医局は,この機能回復部門となっております.弘大リハスタッフは,脳研機能回復部門が教授1(リハ部長併任),助教授1,大学院生1,研究生4,講師1(医療短大),附属病院リハビリテーション部が助手1,医員1,PT3,OT2であり,この両部門が共同して診療を行っております.新入医局員が1名入局したこととは大変嬉しいことですが,本年の記念すべきことは,病院長のご厚意により,4月から2ベッドをリハビリテーション部ベッドとして使わせていただけるようになったことです.まだ,僅かではありますが,念願のリハ部病棟であり,医局員一同喜んでおります.現在までのところ,脳性麻痺,神経疾患患者の入院治療を行いました.また,電気生理学的検査,嚥下造影検査など,検査件数も増えてきております.今後,入院対象疾患も広げ,臨床データの蓄積や研究に邁進すべく頑張っております.医局の年間行事としましては,毎年1回ずつ,弘前大学医学部脳研セミナーと青森県リハビリテーション懇話会を開催しております.昨年は,講師に北海道大学リハ医学講座眞野行生教授と国立身体障害者リハセンター中村隆一先生をお招きし,貴重なご講演をいただきました.誠にありがとうございました.

 レクリエーション的な行事としましては,今年から脳研チームとして医局ソフトボール大会に出場していますが,未だ勝利はありません.冬季には恒例のスキー旅行を行っており,北海道と北東北のスキー場を回っています.滑れない新入医局員もボーゲンくらいはできるようになるというありがたい(?)スキー旅行です.

 以上,弘前大学におけるリハ医療・医局の現状と年間行事などを簡単にご紹介させていただきました.

(相馬 正始)

弘前大学医学部附属脳神経血管病態研究施設機能回復部門
〒036-8562弘前市在府町5
Tel0172-39-5138 Fax0172-36-3827 

横浜市立大学医学部リハビリテーション科

菊地 尚久

 横浜市立大学リハ科は1968年5月に独立した診療科として誕生し,昨年で開設30周年を迎えました.今回は当科関連施設の特長と医局行事について紹介したいと思います.

 当科関連施設の特長として,「急性期から地域リハまで」「小児から高齢者まで」すべての分野にわたり,リハを提供できることにあります.たとえば,急性期リハに対しては市大附属2病院および市立,公的一般病院,亜急性期リハに対しては神奈川県総合リハセンター,地域および慢性期リハに対しては横浜市総合リハセンター,小児リハに対しては神奈川県こども医療センターや市内各地区の療育センター,高齢者リハに対しては脳血管センター七沢病院などがあげられます.

 これらすべての分野にわたりリハ医が中心に仕事をできる背景は,公立大学であり地域に密着したシステムがとれ,医療サイドのみならず福祉サイドや教育サイドにも人員を派遣できるためと思われます.最近のトピックは2つあり,1つは附属病院で新たに臨床教授が就任予定となったことです.教授の就任によりさらに充実した診療・教育・研究活動が行えるものと期待をしています.2つめは横浜市脳血管医療センターの開設(本年8月)です.急性期から地域までの一貫したリハを行うことが可能であり,最新の設備を用い,豊富なリハ関連職種のもとに,脳血管疾患に対するリハを科学的に研究,発展させられるものと期待しています.

 医局の現会員数は37名でうち専門医は24名と多くを占めています.医局行事としては,総会や新年会・忘年会の他に各施設からの研究テーマについて話し合う談話会が年に4回あり,またリハ医学会抄録提出時に全員で検討を行う抄録予演会,リハ医学会発表予演会などがあり,この際には各自の研究について活発な討論が行われています.

 最後になりますが,本年10月2-3日に水落和也幹事で第11回リハカレントトピックス&レクチャーが,2001年6月14-16日に安藤德彦会長で第38回日本リハ医学会総会が開催されます.皆様方の多数の参加をお待ちしています.また当科関連施設等見学の方は大歓迎ですので下記までご連絡下さい.

(菊地 尚久)

横浜市立大学医学部リハビリテーション科
〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9
Tel045-787-2800(内線2713) Fax045-783-5333

文部省科学研究費細目「リハビリテーション科学」消滅の危機

佐藤徳太郎 (東北大)

 平成10年度に開始された文部省科学研究費細目「リハビリテーション科学」は3年の時限付きであり,申請の質・量が不十分であれば消滅いたします.

◆平成11年度の細目「リハビリテーション科学」への申請件数が昨年度に続いて300件に満たなかったようです.これまでに採択された12の時限細目のうち,正式の細目として取り上げられたものは僅かに1つであり,他は最低申請実績の年間300件以上をクリアできずに消滅しております.この2年間の申請状況からいたしますと,「リハビリテーション科学」を正式細目とする道も絶たれることになります. 

◆ますます高まっている「リハビリテーション科学」研究発展への期待に応えるために,年間億単位の科学研究費を是非継続する必要があります.そのためには,細目「リハビリテーション科学」にとって最終となる平成12年度の目標申請件数を500とし,日本リハ医学会が中心となり最大限の努力をすることが必要です. 

◆会員各位におかれましては,公募要項に記載されている細目「リハビリテーション科学」の「内容」を再読され,この夏の間に研究計画をまとめておき,11月に予定されている科学研究費の応募には,全員もれなく申請されますようにお願いいたします.

◆また,整形外科,内科,耳鼻科,公衆衛生学,看護学,福祉学等の領域の方々にも,採択されやすい細目「リハビリテーション科学」を活用されるよう働きかけていただきたいものです.さらに,「リハビリテーション科学」以外には「企画調査」にも申請できますので,リハビリテーションに関する研究を「この区分」にも是非多く申請して下さい.