リハニュース No.8
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New Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicine 開催にあたって
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INFORMATION
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医局だより
New Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicine 開催にあたって
INFORMATION
医局だより
国際シンポジウム実行委員会 事務局長 赤居 正美
1999年11月に,従来2つあったリハビリテーション医学関係の国際学会International Rehabilitation Medicine Association(IRMA)とInternational Federation of Physical Medicine and Rehabilitation(IFPMR)が合併して,新しくInternational Society of Physical and Rehabilitation Medicine(ISPRM)として発足し,第1回の学術集会が今年7月オランダで開催されることになっています.そして世界の地域ごとのリハ医学会も順次開かれておりますが,こうした新たな潮流の中,日本リハ医学会はアジア地区をまとめる要としてますます期待されています.このたび,我が国の近隣諸国に留まらず広くアジア地域のリハ医学の交流を深める契機として,この国際シンポジウムNew Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicineが企画されました.
「リハ医学」11月号で会議の概略をお知らせしましたが,その後海外からの演者との交渉も進み,11月末現在で,韓国,中国(香港,マカオを含む),台湾,フィリピン,インドネシア,シンガポール,タイ,ベトナム,インド,パキスタン,サウジアラビアからの参加が決まっています.
これらの参加者の方々には,各自の専門とする領域での演題発表の他に,それぞれの国におけるリハ医学の現状をまとめた調査アンケートを提出していただくことになっております.その国の全般的な医療制度,リハ医の養成制度から学会組織も含め,リハ医療の具体的内容にまで踏み込んだ内容になっており,今後のこの地域におけるリハ医の相互理解,国際交流を進める上で貴重な基礎資料になるものと期待されます.
またアジアのリハ医が集まるこの機会に,最終段階に入っているInternational Classification for Impairment, Disability and Handicap(ICIDH)の改訂作業について,厚生労働省の担当官よりご講演をいただく予定になっております.
外国からの参加者に対応し,我が国からも若手のリハ医を中心に各トピックスについてそれぞれ講演を依頼しております.活発な討論を含め,意見交換が図られることが期待されます.
なにぶん急な企画のために時間が極めて限られており,また,九州地区や四国・中国地区のリハ地方会・生涯教育研修会の日程と一部重なってしまう結果になり,ご迷惑をおかけいたしました.十分に準備を重ね,調整を図ったというには程遠い状況ですが,実行委員会といたしましては会員各位のご賢察を伏してお願い申し上げる次第です.
本シンポジウムは臨床認定医の生涯教育単位にも認定されておりますので,是非多くの方々の参加をお待ちいたしております.本会議開催の趣旨,諸般の事情をご理解の上,ご協力の程よろしくお願い申し上げます.
New Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicine
会 期:平成13年2月17日(土),18日(日)
会 場:日本都市センター会館(東京都千代田区平河町)
テーマ:アジア諸国リハビリテーション医の交流を目指して
シンポジウム内容は,各国のリハビリテーション医療の実情に対して理解を深め,意見交換を図ることを中心としたPart 1と,個別の疾患に関するPart 2とに分かれています.
■Part 1(S会場にて)
各国のリハ医療の現状と課題:Rehabilitation in Asia Today
リハ医の養成制度:Postgraduate Training Certification for Clinical Practice
地域リハ(CBR):Community Based Rehabilitation
保険制度とリハ:Medical Fee and Payment System
国際交流への協力体制:International Cooperation International Collaboration
■Part 2(L会場にて)
脳卒中治療:Stroke Rehabilitation
脊髄損傷治療:Spinal Cord Injury
切断治療:Amputation
老人リハ:Geriatrics
小児リハ:Pediatrics
骨関節リハ:Orthopaedics & Rheumatology
疼痛管理:Pain Management
代替医療など:Alternative Medicine
各国の推薦する先端研究:Hot Topics in Each Country
(一部変更の場合があります)
委員長 里宇明元
リハ学会誌は,peer review journalとして位置づけられ,多くの外部査読者の協力のもとに論文審査を行っています.Peer reviewをキーワードにMEDLINEを検索してみると,その概念,方法,信頼性(異なる査読者間または査読者と編集者の一致など),妥当性(掲載論文のcitation index,拒絶した論文の他誌での受理状況など),よい査読者の特徴とその予測因子,ワークショップ前後の査読の質の変化などに関する論文が散見されます.JAMAのような一流誌では,定期的にpeer reviewに関する論文を掲載し,その質の維持・向上に努めています.本誌も学術誌としての価値を高めていくためには,定期的に査読の状況を “review” する必要がありますが,その第1段階として1999年と2000年のデータを比較してみました(表).編集委員会では,少しでも迅速な査読を行うべく,査読システムの改良に取り組んできましたが,投稿から掲載までの期間の短縮という形で効果が表れてきているように思われます.今後,査読の質についても検討を加えていく必要があるでしょう.
表 1999年と2000年の査読状況の比較
1999年(1~12月末) | 2000年 (1月~12月4日現在) | |
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受付論文数 |
52 |
51 |
原 著 |
25 |
30 |
短 報 |
11 |
5 |
症例報告 |
7 |
8 |
総説(投稿) |
1 |
2 |
総説(依頼) |
8 |
6 |
受理論文(総説依頼を除く) |
27 |
21 |
審査中論文数 |
2 (新規再投稿) |
13 |
不採用論文数 |
7 |
2 |
受理までの日数中央値(範囲) |
162 (41~358) |
121(81~217) |
受理までの審査回数(平均) |
2.96 |
2.47 |
委員長 出江紳一
認定臨床医の資格更新について
平成4年4月1日から施行された認定臨床医生涯教育基準(リハ医学32(8):479-481,1995参照)に基づき,10年毎に40単位を取得し,資格更新を行うことが決められています.第1回目の資格更新は,平成14年3月31日までに取得された単位数に基づいて更新が行われます.今回は平成3年あるいはそれ以前に認定臨床医の交付を受けた約3,000人の会員の方々が対象になります.平成12年10月現在で,30単位以上取得者は1,900人(65%)で,29単位以下は1,100人(35%)程になっています.平成13年度の学術集会出席および教育研修受講で6単位,各地区での研修会4単位,地方会出席などで単位取得が可能です.なお40単位のうち20単位は,1) 学術集会への参加,2) 教育研修の受講,3) 学術集会での発表,さらに4) リハ医学への論文発表などで履修しなければなりません(註).海外留学,病気,出産などで履修できなかった場合,その期間は延長されます.不明な点,疑問点などがありましたら,学会事務局へ連絡してください.
(註) 単位を取得できる項目の詳しい内訳は,リハ医学32(9) 548-549,1995のお知らせ,ならびに,同誌1995年から2000年までの12月号32:835,33:902,34:847,35:899,36:877,37:913をそれぞれ御参照ください.
委員長 中島咲哉
身体障害者障害程度認定の問題点ほか
身体障害者(以下,身障者)障害程度認定における問題点は,
障害の重度化,多様化に対する身障者障害程度診断基準の矛盾
身障者としての障害の範囲に関わる制度上の矛盾
身障者診断に必要な法と制度に対する医師の認識不足
などにあることが明らかにされました(「総合リハ」28巻7号参照).
今年の介護保険の実施,さらには平成15年度施行をめざす社会福祉基礎構造改革等を視野に入れて,各々の問題点について対策を検討し,早急に提言するべく,以下の課題について作業を進めているところです.
1) 障害程度等級の認定にあたっての障害程度の認定基準を作成し,厚生労働省へ提言する(認定基準については,すでに試行中である).
2) 障害程度等級に関する基準を徹底的に検討し,障害の範囲を含めて,障害の実態に適った診断基準を作成し,厚生労働省へ提言する.
3) 医師に対しての,身障者診断に関するわかりやすい診断マニュアルを作成し,本学会会員ほか,地域の15条指定医に周知する.
同時に委員会としては,身障者更正施設の実態調査,身体障害者更正相談所における補装具給付判定の実態調査等を実施し,その実態を明らかにすること,リハ関連施設の実態調査に基づく地域リハシステム案の構築,介護保険におけるリハの位置付け,高次脳機能障害の位置付け等について検討を進めています.
委員長 鈴木堅二
平成12年11月9日の第2回の委員会が開かれました.前回の委員会では理事会の指示により当学会への代議員制導入を検討することが報告されましたが,役員改選に伴って機構改革が行われ,新たに地方会等検討委員会が発足し代議員制についての検討を担当することになりました.また企画調整委員会が解消しましたので,今後総務部の業務内容に一部変更が予想されます.
今回の委員会では地方会等検討委員会内規(案),学会学術研究助成基金運用規定(案),学会論文表彰に関わる選考内規(案),同採点基準(案)について検討がなされました.地方会等検討委員会では地方会の位置付けと自立性,当学会における代議員制はどうあるべきかなどの重要事項が検討されることになります.代議員制の導入には会員のコンセンサスを十分に反映したシステムの構築が必要となるでしょう.
この度学会学術研究助成基金が,従来の海外研修助成に加えて当学会誌に掲載された優秀論文の表彰にも対応することになり,若手医師の育成によるリハ医学研究の活性化にとって起爆剤となることが期待されます.
委員長 本田哲三
介護保険における福祉用具貸与及び住宅改修に係る見直しについて
平成12年12月1日から,福祉用具付属品単独貸与及び屋外の住宅改修の保険給付化が開始されました(平成12年11月16日厚生省告示348号及び349号).
従来,車椅子付属品と特殊寝台付属品の貸与においては,それぞれの本体が介護保険によって貸与されている限り保険給付の対象となっていましたが,今後は,既に車椅子・特殊寝台を所有している者等に対し付属品のみを貸与した場合にも保険給付の対象となります.また,屋外における段差解消・床材の変更及び手すりの取り付けなどの工事について,住宅改修費の支給対象とされていませんでしたが,玄関から道路までの屋外での工事も住宅改修費の支給対象となります.
これらの見直しによって,介護保険以外の方法で使用している車椅子や特殊寝台の使用者が,それらの付属品を介護保険で貸与されなかったことや,屋内と同様に自立支援の手段として当然含まれるべき屋外の改修が,介護保険で行えなかったことが改善され,介護保険制度が一歩前進することになります.
委員長 吉村 理
地方会等検討委員会は,今年度新設された委員会です.地方会等検討委員会が新設された目的には,大きく分けると2つの役割があります.
1. 地方会について
・地方会の現状,役割,(社団法人)日本リハ医学会との関係,今後のあり方について検討する.
・地方会の区分けについて:県を特定すべきか,勤務地に基づいた地区(組織)を決めるか,地方会への登録はどうするか,地区組織の所属県について検討する.
2. 代議員制について
・代議員制を導入する理由:総会で会員(社員)の意思を反映させやすくし,総会を実質的なものにする,地域の意見を反映させやすくする,総会成立のための事務量を軽減する,社団法人は代議員制としなければならない.
・代議員制導入の方法:民法上の社員とみなすためには定款の改正が必要であり,代議員の選出方法が社員を代表できるよう民主的かつ公平である必要がある.
任期,再任,選挙する場合の問題点,評議員と代議員の関係,代議員制をとったときの理事・監事の決め方,移行スケジュール,選挙のイメージ等について検討する.
渡部一郎 (北海道大リハ科)
日本リハ医学会北海道地方会は,北海道在住の日本リハ医学会会員約330人を対象に,年1回の地方会と年2~3回の生涯教育研修会を行っています.■北海道では,日本リハ医学会地方会の発足以前から,医師,PT, OT, ST,看護婦,行政関係者など多分野の会員を擁する北海道リハ学会(会員約500人)の活発な活動が行われておりました.日本リハ医学会地方会は,この会の学術委員が世話人となり準備を進め,眞野行生代表世話人のもと4年前発会しましたが,以上の経緯から年1回の学術集会は共同して開催してきております.■本年度は,H12.7.15に第45回北海道リハ学会と第4回日本リハ医学会北海道地方会を共同に開催し,3会場を使用して,特別講演2題と一般演題64題(うちリハ医学会地方会26題)について活発な討論が行われました.リハ科標榜科認定,介護保険開始,北大リハ科・講座開設など,時代も動いており,参加者数(昨年度196人,本年度155人)も増加傾向です.またリハ医(認定医・専門医)の増加によりリハ医学基礎研究報告などの内容・討論も充実し有意義なものになってきています.■北海道は,道南・道東などは移動に飛行機を利用するほどの広範な地域性が特徴であり,地方会・研修会開催には地域的障害,講師招聘の経済的障害があります.■2003年第40回日本リハ医学会総会の札幌開催が決定し,現在準備に入りました.6月は札幌の天候は大変良好です.観光地も多く,美味しい物も多く,多数の皆様の参加を期待します.
安藤德彦 (横浜市立大リハ科)
関東地方のリハ学術集会は,10月7日に行われた第15回日本リハ医学会関東地方会をもって,「関東地方リハ医学懇話会」から通算100回目を迎えるに至りました.懇話会は,昭和47年6月1日に,横浜市大土屋弘吉先生の発起で第1回学会が行われ,第85回まで,年4回ごと一般演題発表が中心に行われ,その後「日本リハ医学会関東地方会」と改名され現在に至っています.現在,事務局は横浜市大の安藤が担当し,会員数は約300名である.今回の学会では通算100回記念として,一般演題発表の他,特別公演(米本恭三先生),懇親会が行われました.学会には約100名,懇親会には約60名の出席者があり,津山直一先生をはじめ,千野直一先生,村上惠一先生,上田敏先生ら発足当時の思い出や今後の展望などのスピーチを頂戴し,終始なごやかに行われました.中締めでは,石神重信先生の御発声で,万歳三唱が行われ,次の新たなる100回へ向けて決意を確認し合いました.
佐直信彦 (東北文化学園大医療福祉学部リハ学科)
平成12年5月末現在東北地方会の正会員は,東北地区の日本リハ医学会会員584名のうち336名です(組織率58%).準会員,賛助会員の規定はありますが現在のところ無です.学術集会の演題には,地域の病院・施設や他科の先生方との共同研究も多く,日本リハ医学会会員ではない医師,非医師合わせて毎回10数名が非(一時)会員として共同演者になっています.これらの方々の会員としての定着を図ることが,会の特色ある発展と活性化に寄与するものと考えています.■主たる活動は地方会学術集会と生涯教育研修会の年2回同時開催です.会員数の関係から,宮城県は毎年春先,他5県は秋に持ち回りで担当しています.最近では仙台以外でも参加人員は100名前後となり,認定臨床医の単位取得の機会均等という観点からも,平成13年度より東北6県が平等に3年に1回の持ち回りとする方針が幹事会で決定されました.■経済的基盤の年会費は3,000円で,毎年250~280名の納入があり,この中から1回の学術集会の開催に30万円の援助をしています.開催案内と演題募集,入会の勧誘と会費納入に関しては,東北地区の日本リハ医学会会員全員に通知をし,プログラムの発送は地方会会員だけにしています.会員に益する魅力ある有意義な地方会にしてゆくためにも,東北地方会の在り方や運営に関し,会員諸氏からの提案を期待している次第です.
染矢富士子 (金沢大保健学科)
北陸地方会の前身は,昭和54年に発足した北陸リハ医学集談会で,会員数は約600名(内,医師は約60名)でした.春と秋の年2回開催され,地方のリハ医療の学術的発展に寄与していました.しかし,理学療法,作業療法の各領域での活動の拡大と,リハ医学会での地方会の充実という点から,第34回北陸リハ医学集談会(平成8年)からは,医師を主体とする会とし,リハ医学の進展と普及に努めることになりました.さらに,平成9年3月22日,日本リハ医学会の指導の下,会則を変更し,第1回日本リハ医学会北陸地方会を開催し,現在に至っています.■会員数は約180名と,集談会よりも規模は小さいですが,医師数は3倍になっており,地方会としての目的に沿った会になっていると思います.会員数が少ないので,演題数も少ないのですが,出席者数は毎回70名前後と変動がなく,リハ医学に関して熱心な先生方が集まって下さっているものと考えられます.■収支については,収入が少ないので,会場の設定や人員の配置等に配慮し,わずかですが黒字となっています.また,3年間会費を滞納された先生には督促状を送り,納入されない場合,退会としております.そのため,会員数が減少する傾向にありますが,他の地方会から参加される先生や,新しく会員になられる先生で会員数を維持しています.
菅 俊 光 (関西医科大学 総合リハビリテーションセンター)
日本リハビリテーション医学会Travelling Fellowとして10月9日から約3週間の日程でMilwaukee(Wisconsin),Buffalo(New York),Hilton Head Island(South Carolina)の3カ所を訪問させて頂きました.
第一の訪問地はMichigan湖の畔にあるMilwaukeeで,昨年のリハ学会でシンポジストとして講演されたMedical College of Wisconsin(MCW)のMichael K. Yoshida先生を訪ねました.
初日は吉田先生が勤務されているVeterans Administration(VA)を見学しましたが,病室での患者1人あたりの空間は日本とは比べものにならないほど広く,リハ施設に関しては入院用と通院用に別々に訓練室が設けられていました.吉田先生の外来も見学させて頂きましたが,30分に1人の割合の予約となっていて一人ひとりの患者さんとゆっくり話をされていました.
翌日はMCWの本部があるFroedtert Memorial Luthern Hospital(FH)を見学しましたが,私立ということもあり非常にきれいな病院でした.アメリカでは私立病院は約20年で建て替えになるらしく,吉田先生はこのことが医療費にも跳ね返っていると嘆いておられました.また,1998年10月からリハ科がDRG/PPS(Diagnosis Related Group Prospective Payment System)に含まれるようになってからリハ科の収入が減り困っているとも言っていました.FHでは,私が以前に行っていた制御関節付き長下肢装具についてのプレゼンテーションを行う機会がありました.VA病院で予演会,吉田先生の奥様の発音指導の甲斐あって,WMC Physical Medicine and Rehabilitation ChairmanのMerritt先生,吉田先生,義肢装具士,エンジニアを交えてのプレゼンテーションでは活発な意見交換ができました.
次にNiagara瀑布にほど近いBuffaloへ行き,Millard Fillmore Hospital(MFH)とErie County Medical Center(ECMC)を見学しました.MFHでは外来部門を,ECMCでは入院部門を見学しましたが,ECMCでは午前7時からの回診,カンファレンスにも参加させて頂きました.
最後に,ACRM Annual Meetingの開催地であるHilton Head Islandを訪れました.小さな学会でしたが,リハ医,看護婦,理学療法士,作業療法士等の多くの職種の方が参加していました.私はポスターでの発表で,ポスター演題40題中の約半数にはプレゼンテーションが課せられていました.残念ながら私のポスターにはプレゼンテーションはなく,Travelling Fellowとして少々肩身の狭い思いをしていましたが,最後にポスター賞を受賞することができてほっとしました(写真).
今回最も印象に残ったことは,施設等の環境は日本とは比べものにならないほどの差はありますが,行っているリハの内容に関しては日本とほとんど変わりがないということです.そして,自分がこれからリハ医として働いていく道筋が見えたような気がしました.今後は,これらの経験を生かしてさらに自分自身を磨くとともに,後輩達の指導にあたりたいと思います.
最後に,私をTravelling Fellowとして快く受け入れて下さったMCWの吉田先生,MFHのPeimer先生,Travelling Fellowに選んで下さった日本リハ医学会の先生方に心からお礼を申し上げます.
(研修報告はリハ医学38巻1号6頁に掲載しています)
皆さん,こんにちは! 兵庫医大リハ科医局&スタッフ一同です.当医局の特徴は,医局とスタッフが一体となって共に頑張っていること(右は静かな? 忘年会の写真です),ICUからの呼吸器リハで全国的に有名なこと(全国講習会開催),西宮本院と篠山のリハセンターが1つの組織で動いていることなどです.
上品・温厚・ファーザーという言葉がぴったりの藤原教授,脳研究にハマっているタイガースファンの道免,黙々と仕事をこなす紳士の畠中先生,大きなお腹と高らかな笑い声の大高先生の4名のリハ医と,開業されても辞められずにお手伝いいただいている黒田先生がいます.当医局のイベントは,もちろん! 歩いて行ける甲子園球場でタイガースの応援をすること.残念ながら,若干名オレンジのメガホンもいますが,懐の深い私達「リハビリ猛虎会」は,勝負のしこりを残すことなく,絶妙のチームワークで仕事に励んでいます.
さて,沿革と研究について紹介しましょう.兵庫医大のリハ医療は昭和48年にPT 2名で始まり,昭和50年に藤原先生が初のリハ専従医師として着任.以後,徐々に発展拡大し,平成3年に教授兼専任のリハ部長に就任,大学院医学研究科としての体制も整いました.平成9年には,国立篠山病院の移譲を受けて兵庫医大篠山病院が開設,平成11年にはリハセンターと老健施設が併設されました.将来的には,加齢医学研究所,専門職養成施設などが計画されています.
篠山(ササヤマと読みます.黒豆で有名な丹波篠山です)では,地域リハへの要請が強いので,居宅介護事業支援事業所を開設して地域のニーズに応えています.医科大学で老健を併設しているユニークさを生かして,西宮本院での超早期より始まる高度先進リハから,在宅に至るまで,広範かつ有機的なアプローチを行うことができます.現在,常勤リハ医4人,PT15人,OT7人,ST2人の所帯に成長し,ケースカンファレンス,リサーチカンファレンス,ブレースクリニックなどを,西宮と篠山それぞれで楽しく緊張感をもって行っています.
研究面では,京都学研都市のATR研究所との運動学習に関する共同研究をはじめ,脳研究特に計算論的神経科学のリハ医学への応用,各疾患に対する機能評価の開発研究,予後予測,電気生理学,動作解析,バイオメカニクス,リハ工学,呼吸器リハ,地域医療など多岐にわたって挑戦しています.今年は待望の研修医も複数入局する予定です.リハ医学会と日本の医療界の宝物であるリハ医の人材を大切に育て,ますます発展できるよう,医局,スタッフ一同努力致しますので,暖かく見守って下さい.
(道免和久)
兵庫医科大学リハビリテーションセンター
〒669-2337 兵庫県篠山市山内町75
兵庫医科大学リハビリテーション医学
〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1-1
Tel0798-45-6881,Fax0798-45-6948
E-mail: domen@aqu.bekkoame.ne.jp
当院は平成2年5月に東京都東部の墨田区に開院した,165床のリハ専門病院である.平常時はリハ医療の中核として機能するが,災害時には災害医療センターとして医療救護活動の拠点に転換するという複合目的を有する病院である.病院の運営・管理は東京都医師会が委託されており,公設民営の病院である.当院の運営理念は,東京都におけるリハ医療供給の中核的施設として,広域を対象とした高度の専門リハ医療の提供,リハ医療にかかわる教育研修の推進,リハ医療における研究活動の展開の諸機能を果たすことである. 医師は19名勤務しており,そのうちリハ科医は鷹野院長,本田副院長,医長3名,医員5名,研修医2名の12名で,リハ医学会の専門医は8名である.リハ科以外の医師として,整形外科が4名,泌尿器科が1名,循環器内科が1名,歯科が1名勤務している. 当院には4つの病棟が存在し,そのうち1つの病棟は東京都で最初に認められた回復期リハ病棟である.平成11年度の入院患者の総数は782名で,疾患別では脳卒中462名,脳外傷40名,脊髄損傷64名,RA30名などであった.小児以外のリハ対象疾患はほぼ経験可能である.病床利用率は93.4%,平均在院日数は72.3日で,退院先は自宅が79.3%,転院が17.4%,施設が2.8%などであった. 在宅リハ科は平成7年4月に設置され,在宅リハ相談室,診療支援事業(患者宅を訪問し診療,評価,指導を行う),研修会事業を行っている.外来は研修医以外が行っており,毎日リハ科は2外来で,外来リハのみの患者や退院後の外来フォローを行っている.平成11年度の外来新患数は1,550名,実人員は15,442名であった. 毎週リハスタッフ担当者とのカンファレンスや,リハ科医師だけの症例検討会を行っている.また,嚥下,排泄,ADL,認知などの勉強会も開いている.研修医や専門医を目指す医師に対して,大学の枠を超えて指導している.研修会事業として,リハセミナー,医師研修会,公開講座などを開催している.研究は当院の運営理念の1つで,毎年臨床研究,機器開発研究が申請され,活発に行われている.リハ学会をはじめ多くの学会で成果を発表している. 設備や人材には恵まれているが,まだ知識や技術は十分とはいえない.東京都の中核的リハとしての責任を感じ,精進していかなければならないと考える.
(猪飼哲夫)
東京都リハビリテーション病院
〒131-0034 東京都墨田区堤通2-14-1
Tel03-3616-8600,Fax03-3616-8705
http://www.tokyo-reha.sumida.tokyo.jp/
E-mail: box@tokyo-reha.sumida.tokyo.jp
根本 明宜 (横浜市大リハ科)
2000年9月20~23日に,カナダのオンタリオ州トロントで行われた第54回米国脳性麻痺学会に参加して参りました.トロントの9月はまだ紅葉には少し早く,オンタリオ湖やナイアガラの滝といった水辺の観光には少し寒い季節でした.
この学会は脳性麻痺,発達障害に関わる小児整形外科医,小児リハ科医,小児神経内科医,理学療法士,作業療法士,言語療法士,看護婦(士),歩行分析に関わるエンジニア,ケースワーカーと多くの職種で構成されております.学術集会での講演や発表も多岐にわたり,聞きたいテーマはどこかにあるという学会です.米国の小児病院には歩行分析室が備わっていることが多く,今回も歩行分析に関わる発表が多々ありました.
20日にはオンタリオ州の障害児医療の基幹施設であるBloorview MacMillanセンターの施設見学と理学療法のEBM,小児整形外科といったテーマでの半日のシンポジウムがあり,その後で会長招宴がありました.21日には朝7時から専門家との朝食という教育講演があり,会長講演の後,Kathleen Lyle Murray賞の発表でトルコ地震で被災した障害児への現地での取組みに対しての表彰と講演がありました.(AACPDMは会員名簿に海外での医療経験がある会員のリストも載せており,途上国に対する医療協力にも力をいれている学会です.)その後はデュシャンヌ型筋ジストロフィーに関しての基礎的な講演と一般演題で終わりました.22日は朝食付きの教育講演の後,教育講演に挟まれて,特別講演として「リハ工学の30年の進歩」というテーマで,歩行分析の黎明期の頃からのこと,筋電義手の開発,コンピューター技術の利用などについてBloorview MacMillanセンターのエンジニアが講演しました.最終日はカナダで行われた高圧酸素療法についての多施設間研究で,効果が証明できなかったという報告があり,一般演題,教育講演,患者家族向けのパネルディスカッションがありました.
一般演題では,脳性麻痺における痙性治療がバクロフェンの持続髄注療法の小児への臨床応用によりここ数年で大きく変わっており,その効果に関しては異論は挟まれなくなってきており,難しいケースやジストニアなどにいかに使うかといった演題が増えていました.また,整形外科の発表も多いのですが,動作解析は必須項目になっている印象がありました.それ以外の演題でもEBMを意識したものは多く,GMFMやPEDIといった評価システムを用いての発表,普及のための取組みといった発表も目立っていました.日本からは弘前大の近藤先生がGMFSのポスター演題を出されていました.
米国では選択的後根切断術,バクロフェンの髄注,ボツリヌス毒素といった組合せでなされる痙性の治療,歩行分析等の客観的な評価を行いながらの一期的手術といった,日本ではまだ行えていない治療が一般的に行われており,その評価においても組織的で科学的な取組みがなされており,脳性麻痺治療に一日の長がありと思わされた学会でした.
なお,米国脳性麻痺学会のホームページはhttp://www.aacpdm.org/,今回の主幹であったBloorview MacMillanセンターはhttp://www.bloorviewmacmillan.on.ca/です.
評価・用語委員会 大橋正洋
A 高次脳機能障害という語は,すでに20年近く前に,リハ専門誌の論文名として現れている.ただし,その場合の対象は,主として脳血管障害に伴う失行・失認・失語・記憶障害などの症候であった.
ところが最近,高次脳機能障害という用語がメディアや行政にも取り上げられている.この場合の症候は,失行・失認なども含まれるが,記憶・注意・集中力の低下と共に,人格変化や情緒・行動の障害が問題とされる.疾病としては,脳外傷,低酸素性脳症,脳炎など,脳損傷部位がびまん性,広範囲に及ぶものが多い.身体障害を合併しない場合,高次脳機能障害は外見から存在が分かりにくいので,保障や医療・福祉サービスの対象となりにくい.これがメディアや行政が注目している理由である.
このように高次脳機能障害は,学術用語としてだけでなく一般用語になりつつあるが,一般用語として定義が定まっているわけではない.
ところで学術的あるいは学際的に,高次脳機能障害に定まった定義があるかというとそうでもない.
鈴木は,高次脳機能を以下のように説明している.人や動物において,感覚系から入力された情報は分析・統合されたのち記憶として脳内に貯蔵される.この貯えられた情報に基づいて行動を計画し,実行する脳の働きが高次脳機能である.これには,知覚,注意,学習記憶,概念形成,推論,判断,言語,および抽象的思考などが含まれる.さらに高次機能を営んでいる脳の構造は,大脳皮質運動野と感覚野間に介在する連合野であると説明している.
一方,高次脳機能障害について,上田らは,全般的障害と部分的障害があるとし,全般的症状のうち脳の急性期侵襲によるものを意識障害,慢性期侵襲によるものを痴呆としている.部分的障害として,失語,失行,失読,記憶障害,注意障害などがあるとしている.
ところで高次脳機能障害は,higher brain dysfunctionに対応する和語と考えられる.しかし上田は,高次脳機能障害に対応する洋語としてhigher cortical dysfunctionを示している.このように高次脳機能に類する和語・洋語には,高次皮質機能,高次神経機能higher neural functionなどがある.これらが同義であるのか,それとも何かの理由があってそれぞれを区別しているのかは明確でない.高次脳機能障害リハと同様の問題を扱っている語に,認知リハcognitive rehabilitation:あるいは神経心理学的リハneuropsychological rehabilitation がある.
(神奈川リハ病院 大橋正洋)
参考文献
1) 上田 敏: 高次脳機能障害とリハビリテーション医学. 総合リハ 1983; 11: 605-608
2) 医療ルネッサンス: 読売新聞1999年11月6日, 7日
3) 鈴木寿夫: 序論 高次脳機能の生理学(鈴木寿夫,酒田英夫 編). 新生理科学大系12. 医学書院, 1988; pp1-5
4) 上田 敏,大川弥生 編: リハビリテーション医学大辞典. 医歯薬出版, 1996; p177