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リハニュース No.10

2001年7月15日

  1. 日本リハビリテーション医学会における診療報酬改正要望申請について

  2. INFORMATION

    編集委員会

    認定委員会

    国際委員会

    広報委員会

  3. 平成12年度 日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者の紹介

  4. REPORT:第38回日本リハビリテーション医学会学術集会

  5. 医局だより

    千葉リハビリテーションセンター

    産業医科大学リハビリテーション医学講座

  6. 平成12年度海外研修助成:研修印象記

  7. 第12回リハ・カレントトピックス&レクチャー報告

日本リハビリテーション医学会における診療報酬改正要望申請について

社会保険等委員会担当理事,内・外保連委員 石 田  暉  

はじめに

 来年4月は,2年ごとの診療報酬の改正の時期にあたり,医療をとりまく環境に厳しさが増すことや,老人医療費の総額にキャップがかかるのではないかとさまざまな憶測が流れています.また,会員の先生方には日常診療の中でリハビリテーションの診療報酬に関するさまざまな疑問がおありのことと思います.その主な疑問点である診療報酬改正の当学会での要望書作成プロセスについてQ&A方式でお答えいたします.

Q.日本リハ医学会からの診療報酬改正の要望はどのように行われるのですか?

A まず各種委員会の一つである社会保険等委員会でさまざまな角度から改正を希望する項目を抽出して,新設,改正ごとに整理します.社会保険等委員会委員の構成は利害が偏らないように,大学病院,公的病院,半公的病院(労災病院など),リハビリテーション(以下,リハ)病院,一般病院,肢体不自由施設などからの委員より成り,幅広い意見が吸い上げられるようになっています.委員会で,項目が外保連(外科系学会社会保険連合)にふさわしい内容なのか内保連(内科系学会社会保険連合)にふさわしいのかを検討してそれぞれへの要望書を作成します.また,新設のなかで新しい技術や新たな解釈を必要とする内容に関しては,内保連と外保連とは別に,日本医師会の疑義解釈委員会にその内容と要望点数を添えて要望書を送ります.●委員会案作成にあたっては関連する日本理学療法士協会,日本作業療法士協会,日本言語聴覚士学会,日本義肢装具士協会と数回情報交換と意見調整を行い,整合性のある内容に仕上げていきます.委員会案は理事会に提出され,そこで内容を検討され,必要なら一部修正が加えられたうえで外保連あるいは内保連に提出されます.●提出の時期は例年6月の下旬で医療費の改正がある2年ごとが原則ですが,外保連の場合は要望書の作成に限って毎年この作業が行われます.平成14年には医療費の改正があるため,本年は外保連,内保連とも平成13年6月の要望書の提出になります.

Q.最近の保険診療報酬改正の傾向は?

A 後述する外保連方式など,診療報酬の客観的な算定内容を示すことが強く求められてきています.それぞれの診療行為のtime study(どれだけの時間を要したのか)を行い,コストを算定し診療報酬に反映していく方法がとられつつあります.本学会も早急に各診療行為の客観的根拠を示すべく調査を始める必要があります.また,「物より技術」すなわちdoctor fee重視の傾向が出てきております.そのためリハ医が行う技術(筋電図,VF,運動点ブロックなど)を更に拡げていくと同時に,明確にそれらを報酬として反映していくことが大切です.治療技術に対しては有効性の根拠を示すことが求められ,導入の結果どれだけの効果(入院期間の短縮にどれだけ貢献できたかなど)があがるのかのデータも時には求められます.また,将来的にはリハの出来高払いも聖域ではなくなる恐れがあり,包括医療のなかでどのようにpositionを確保しておくかも重要な課題と考えます.

Q.外保連とはどんな集まりなのですか?

A 1967年に外科系の主な学会が集まり設立され,現在52の学会が所属しています.外保連では現在,診察,診断および治療という診療行為において,現実の数字を基にした評価体系を「手術報酬」「生体検査報酬」「処置報酬」の試案として算出し,診療報酬改正の参考資料として行政に提示しています.

Q.外保連における診療報酬案はどのようにして算出されるのですか?

A 診療行為にかかる経費は,直接経費(主に人件費と特定医療材料など)と間接経費(直接経費以外のもので建物維持管理費・租税公課・支払利息など)に分けられます.●間接経費は,(1) それを計算する専門家(公認会計士など)によっては算出の不一致が見られる,(2) 根拠を持って算出した額を直接経費に加算して現行の診療報酬と比較した場合,常識を逸脱した価格になる場合が非常に多い,(3) 現行の診療報酬体系において,厚生労働省は間接経費の多くを入院基本料の中に含まれると見なしていること等の理由で,とりあえず現在では,直接経費のみを診療報酬の試案として算出する方向性が示されています.●直接経費の要素としての人件費は非常に重要で,施行医ならびに協力医・看護婦や技師および療法士等の費用が加算されます.この場合,医療行為に要した時間,また国家公務員の俸給を参考にした経験年数に対する給与指数や,行為の難易度に応じた技術度指数も考慮して,最終的な経費が算出されます.

Q.内保連とはどんな集まりですか?

A 内保連は1968年に設立され,現在は62の内科系学会が所属しています.最近は必ずしも内科系学会に留まらず,外保連に所属している学会からも入会の申請があります.●内保連は外保連と同様,新設,改正の項目にそれぞれ申請の根拠を添えて提出します.外保連は新設,改正それぞれ3項目以内ですが,内保連は数の制限がありません.しかし,順位の高いほうが要望度が高いとみなされます.●内保連所属の各学会から提出された項目で類似の内容は小委員会で調節が行われます.同じ内容で別々に申請が行われると採択されることはほとんどありません.●各学会から提出されたリハ関連の内容はすべてリハ小委員会(石田 暉小委員長)で調整が行われます(例えば呼吸器学会から提出された「呼吸器リハビリテーション料」は点数の調整を行い,リハ医学会と共同提案となるなど).逆に当学会と関連の非常に深い筋電図関連項目は日本神経生理学会(旧日本脳波筋電図学会)が幹事学会として関連学会の意見を取りまとめます.●内保連は最近,新しい算定方式として米国で用いられているRBRVs(Resource Base Relative Value Score)について検討を始めました.

会員の皆様へ
建設的なご意見があれば学会事務局を通してお寄せいただければ幸いです.

INFORMATION

編集委員会

委員長 里宇明元

電子図書館サービス利用開始のお知らせ

 このたび,理事会の決定に基づき,日本リハ医学会は,国立情報学研究所電子図書館サービスの利用契約を締結しました.電子図書館とは,国立情報学研究所(NII)が運営する国内学会誌の学術研究論文を対象とした大規模学術データベースで,平成9年4月よりサービスが開始され,現在約120学会(うち医学系24学会)が加盟しております.本サービスでは,論文タイトル,著者名,抄録などが検索情報としてデータベース化されているほか,学会誌のページがそのまま画像データとしてデータベース化され,インターネット上で提供されています.リハ医学誌も創刊号からすべて電子化されることになっており,本会会員であれば,登録するだけで本学会誌のみならず,登録されているすべての学会誌の論文・記事を簡単に検索,閲覧することが可能になります.

 利用を希望される方は,URL: http://www.nii.ac.jp/els/detail-j.htmlの利用申請の項をご覧になり,「電子図書館サービス利用者登録申請書」に必要事項を記入のうえ,国立情報学研究所まで郵送していただければ,1~2週間後に利用者番号が通知されます.利用にかかるコストは,会員であれば,インターネット接続代以外は無料です.会員各位の積極的なご利用をお願いいたします.

問い合わせ先

●電子図書館サービスに関すること●
〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
国立情報学研究所 学術総合センター内
開発・事業部コンテンツ課 画像コンテンツ係
Tel03-4212-2315,2316,Fax03-4212-2375,E-mail: els@nii.ac.jp 

●電子図書館サービスの利用申請に関すること●
開発・事業部企画調整課 共同利用係
Tel03-4212-2225,2226,Fax03-4212-2230,E-mail: user-request@nii.ac.jp

認定委員会

委員長 出江紳一

専門医-2 審査の終了について 

 2001年6月15日に開かれました本学会通常総会において,専門医-2審査が2002年3月31日をもって終了することが議決されました.専門医-2審査は,長年リハビリテーション診療に従事してこられた方を,その経験と症例報告,そして論文によって専門医と認定するものであり,学会の発展に大きく貢献してきた審査制度です.けれども近年,専門医-2審査による認定者数が極めて少ないことから,認定委員会ではその終了を検討し,審議経過をリハ医学誌やリハニュースなどを通じて報告してまいりました.本総会決議を受けて,専門医-2は今年度の審査が最後となります.

国際委員会

委員長 岡島康友

 第38回本学会通常総会において以下のことが報告,承認されましたのでお知らせ致します.平成13年度に追加されるHonorary Member候補には元ブラジルリハ学会長で本学会員との親交の厚いDr. Imamura, MD(Dept. of PMR, Univ. of Sao Paulo)に,Corresponding Member候補にはWorld Forum of Neuro-Rehab会長でISPRMとも関係の深い英国のDr.Barnes, MD(Dept. of Neuro-Rehab, Univ. of Newcastle)と前オランダリハ学会会長で2001年ISPRM組織委員でもあるDr.Wever, MD(Rehab Center, Het Roessingh)に決まりました.また平成13年度海外研修助成の対象に,池田 聡先生(鹿児島大学),陳 隆明先生(兵庫県総合リハセンター),前島伸一郎先生(和歌山医科大学)の3名が決定されました.受賞された先生方からは研修終了後に,海外の学会発表・施設訪問のご報告をいただく予定です.

 なお,海外からの国際学術交流を促す目的で平成13年度には試行的に,海外若手リハ医の日本国内短期研修を助成することが理事会で決定されました.Honorary/Corresponding Memberからの推薦もいただき,本委員会で検討した結果,韓国のDeog-young Kim, MD(Instructor, Dept. of Rehabil. Med., Yonsei Univ.),米国のPaul Lento, MD(Fellow, Dept. of PMR, RIC, North Western Univ.)が選ばれました.Kim先生はgait analysis, SCI, amputee, CP, Lento先生はmusculoskeletal&spine rehabilitationを中心に,本学会認定施設のいくつかで短期研修を予定しています.本学会の先生方との親交を築いていただければ幸いです.

 リハニュース9号でお知らせ致しました2002年の日韓合同カンファレンスの1st announcementが韓国リハ学会より出されました.メインテーマは “Roles of Rehabilitation Medicine in the Twenty First Century” で,2002年4月20日(土)を中心に,前日にReception,翌日にRecreationが組まれています.場所は韓国の古都・リゾート地・国際会議場で有名な慶州(Kyeongju)です.Keynote lecture, Symposiumに加えて,Free paper(口演)やPoster session(掲示)が設けられ,インターネット登録・投稿にするとのことです.ホームページ(www.kjrmconf.or.kr)も近々,立ち上げられる予定です.なお,1st announcementのパンフレットをご希望の先生方には本学会事務局までご連絡ください.多くの先生方のご参加を期待しています.

広報委員会

委員長 木村彰男

 広報委員会の活動は,リハニュースの発行と学会のホームページの運営を2つの大きな柱としております.リハニュースに関しましては本号で第10号となり,お陰さまで肩が凝らずにいろいろな情報が得られると会員の方々からは好評をいただいております.ホームページにつきましては無事に開設できましたが,その後の維持管理に多少問題があり,必ずしも速やかに最新情報を掲載できているとは限りません.更新の方法などに関して改善し,正確により早く情報が届けられるように工夫しているところです.

 現在の一番の問題は,会員以外にもオープンとしている今のホームページとは別に,会員だけに限ったホームページを設けることの是非です.即ち電子ジャーナルや学術集会の抄録募集,オンライン査読など,近い将来に対応しなければならない数々の問題については,会員だけのホームページで行った方が良いのではという意見があるわけです.もう一つの問題として,現在は一方通行で流している情報について,双方向とするべきとの意見があります.しかしながらその場合には,患者さん等からの問合せが来ることも予想され,どのように対応するかが大きな問題になると考えられます.広報委員一同このような課題に対して前向きに検討していますが,どうぞ会員の皆様もより良い広報活動を展開できるべく,建設的で積極的な意見を委員会宛にお寄せいただければ幸いです.

平成12年度 日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者の紹介

【最優秀賞】小口和代,才藤栄一,水野雅康,馬場 尊,奥井美枝,鈴木美保:機能的嚥下障害スクリーニングテスト「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)の検討.
(1) 正常値の検討.リハ医学2000;37:375-382
小口和代,才藤栄一,馬場 尊,楠戸正子,田中ともみ,小野木啓子:
(2) 妥当性の検討.リハ医学2000;37:383-388
【優秀賞】辻内和人:脳血管障害患者の下肢感覚機能と体性感覚誘発電位に関する研究.リハ医学2000;37:274-281
【奨励賞】田中尚文:ラット長腓骨筋の電気刺激に関する生理・組織化学的研究.リハ医学2000;37:445-452

「最優秀賞」受賞に際して

小口 和代

 今回受賞しました研究は,主に,平成7~9年度厚生省・健康政策調査研究事業(個人の摂食能力に応じた味わいのある食事内容・指導等に関する研究,分担研究者:才藤栄一)の中で行ったものです.私は,平成8年度から参加させていただきました.平成8年は私が内科からリハビリテーション科に所属を変更した年でした.そこで出会った初めての研究がこのように高い評価をいただき,大変光栄に存じます.

 RSSTは大変シンプルな手法で摂食・嚥下障害をスクリーニングするものです.予備的検討の段階で,脳卒中患者のRSSTから3回/30秒がスクリーニング値として妥当?という仮説が立てられていました.藤田学園の警備員さんたちから採取させてもらった正常高齢者の空嚥下の積算時間から,3回/30秒というスクリーニング値を算出した時は,本当に胸躍る瞬間でした.と同時に才藤教授の臨床における慧眼に驚嘆いたしました.この値の妥当性はその後,他の複数の研究者により多数例のデータで追試,確認されました.私もRSSTを治療効果判定に用いることができるか,検討を行っているところです.

 現在,総合病院で多くの摂食・嚥下障害の患者さんに向き合い,摂食・嚥下リハビリテーションのニーズの高さを痛感しております.評価,治療法,チームアプローチに,試行錯誤の日々です.常に探求心を持って臨床にのぞむこと…受賞を機に思いを新たにしております.

 最後になりましたが,この場を借りて,ご指導いただきました才藤教授,医局の先生方に心より感謝申し上げます.

略歴:平成3年名古屋大学医学部卒業.平成3~6年佐久総合病院内科.平成6~8年渥美病院内科.平成8~12年藤田保健衛生大学医学部リハ医学講座.平成12年~現在,刈谷総合病院リハ科. 

「優秀賞」を受賞して

辻内 和人

 このたびは,日本リハ医学会論文賞「優秀賞」をいただきありがとうございました.受賞の対象となった論文「脳血管障害患者の下肢感覚機能と体性感覚誘発電位に関する研究」は,私の学位論文であり,難産の上の産物であったことから,感慨ひとしおです.才藤栄一先生(現藤田保健衛生大学教授)が指導教官で始めた研究でしたが,研究の途中で先生が栄転され,その上,当初予定していたSEP波形の分析法では良い結果が得られず,研究開始から掲載までに7年もかかってしまいました.結局,慶應義塾大学理工学部の富田教授の一言で解決の糸口が見つかったのですが,論文が完成したときにお礼の挨拶をしたところ,「ぼく,そんなこと言いましたっけ」とまったく覚えておられず,つくづくうまくいって良かったと思いました.

 現在は,神奈川県小田原市にある小林病院という民間病院で働いています.それまで,公立のリハビリテーションセンターで働いていましたので,それらの施設のできないこと,入院を待たせない,入院期間は柔軟に運用する,90歳でも可能性があれば入院させるという方針のもと,急性期から亜急性期のPT訓練を徹底的にやり,リハビリテーションセンターへの転院が必要な人は転院させています.

 最後に,この紙面を借りて臨床検査技師の高橋修先生に感謝の言葉を贈ります.「たくさんのSEP波形をきれいに記録してくれてありがとうございました!」

略歴:昭和62年日本医科大学医学部卒業後,慶應義塾大学医学部リハ科入局.その後慶應義塾大学月が瀬リハセンター,国立療養所村山病院,国立塩原温泉病院,東京都リハ病院,埼玉県総合リハセンター勤務.平成12年より医療法人小林病院リハ科に勤務し現在に至る.平成5年日本リハ医学会専門医取得. 

「奨励賞」受賞に際して

田中 尚文

 このたびは,奨励賞を授与いただき,このように認めていただいたことを大変名誉に思っております.ご存知の通り,廃用筋や麻痺筋に対するTESは臨床でよく用いられ,特にFESの導入では,電気刺激により十分な筋張力を生じさせ,さらに,いかに筋疲労を起こしにくくするかが臨床的な課題です.刺激周波数は20Hz以下で行われるのが多いようですが,臨床的経験から決められているのが実状です.本論文では,持続的低頻度電気刺激の刺激周波数が速筋の疲労抵抗性に及ぼす効果を検討した結果,刺激周波数が10Hzと20Hzとで効果が異なることをはじめて明らかにすることができました.あらためて,ご指導いただいた慶應義塾大学リハ医学教室 千野直一教授をはじめ,藤枝南クリニック 峯尾喜好博士,慶應義塾大学月が瀬リハセンター 岡島康友助教授,同大学物理情報工学部 富田豊教授,池田盛人修士に感謝します.

 私は,今年の5月より,カナダ・エドモントンにありますアルバータ大学Division of NeuroscienceのRichard B. Stein教授のもとへ留学しており,下肢の相反抑制に関する研究を始めたところです.うれしいことに,研究室がすぐ隣にあるTessaGordon教授は,本論文に非常な興味を示されて,ここでさらなる実験を行うことを提案してくれています.カナダの自然に関する研究にも少々熱心になりすぎている感がありますが,リハ医学に関する研究も頑張ってまいります.今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます.

略歴:平成3年慶應義塾大学医学部卒業.平成3~8年同大学医学部リハ科.平成8年同大学月が瀬リハセンターリハ科.平成13年5月よりカナダ・アルバータ大学留学,現在Divisionof Neuroscience, University of Alberta.

【お詫び】リハニュース10号掲載の田中氏のお名前と略歴に誤りがありましたことをお詫びいたします.下記の箇所を訂正しております.■田中尚人(誤)→田中尚文(正).略歴:平成3~12年同大学医学部リハ科.平成12年同大学月が瀬リハセンターリハ科(誤)→平成3~8年同大学医学部リハ科.平成8年同大学月が瀬リハセンターリハ科(正)

第38回日本リハビリテーション医学会学術集会

防衛医科大学校リハビリテーション部 越智 文雄

 第38回日本リハ医学会学術集会が,横浜市立大学医学部リハ科教授安藤德彦会長のもと,2001年6月14日~16日の間横浜において開催された.学会場となったパシフィコ横浜はアメリカ的な雰囲気のショッピングモールに隣接した近代的な学会場で,あいにくの雨にもかかわらず大勢の参加者でにぎわった.横浜市立大からは土屋弘吉先生,大川嗣雄先生に続いて3人目の学術集会長ということで,医局の古い伝統とパワーを感じさせるよくオーガナイズされた学術集会であった.

 21世紀最初の日本リハ医学会学術集会ということでメインテーマは「21世紀への船出―リハ医学の充実と普及―」であり,会長提言では長年臨床とリハ医の教育に携わってきた安藤先生らしく,院内での他科との連携,院外では他の医療機関や地方自治体との連携の重要性を強調されるとともに,人材育成が最優先課題と述べられた.一般総合病院に併設されたリハ科では院内他科との連携において対象疾患や対象科の拡大を図るとともに,カンファレンスへの相互の参加や緊密な連絡,適切な時期にリハ科への転科の申し出をすることの重要性を強調された.また地域の中核病院や3次リハ医療機関には地域リハへの支援の配慮を要望された.また人材育成においてはリハ専門医が少ない現在,いかにリハ医を増やすか,また卒後研修をいかに充実させるかについて述べられていた.

 会長提言に引き続いて行われたシンポジウム「21世紀のリハシステム」はまさにメインテーマにふさわしいシンポジウムであり,安藤先生の意向を強く反映したものであった.この中で東海大の出江先生は,リハが必要な患者にリハが行われなかったり,リハ開始が遅延することを防止するために,救急救命センターにはリハ専門医の配置が必要であり,患者の予後を踏まえてPatient Flow Managementを行う必要があると述べた.また救急救命センターに心疾患や呼吸器疾患を専門とする理学療法士がもっと多く配備される必要があることを強調した.続いて,熊本リハ病院の古閑先生,横浜市総合リハセンターの高岡先生は救急病院,リハ病院,地域の診療所の連携の重要性について話された.古閑先生は,救急病院からリハ病院への患者の流れをスムーズにするためには,リハ病院に脳外科や,循環器内科などを併設し,患者が発症から早期に転院しても安心してリハを行える体制をとる必要があると述べた.またリハ病院は救急病院から患者を受け取るだけでなく,救急病院へ患者の帰結を連絡しフィードバックする必要があることも強調していた.高岡先生からも急性期医療から在宅復帰,社会復帰までの一貫したリハのモデルシステムの提示があった.

 会長が強調された人材の育成では,中国,韓国,タイから各国の第一線で活躍しているリハ医を招き,各国のリハ医の育成状況について意見を交換し合うパネルディスカッションが行われた.中国では医学部でのリハの教育が10数年前から開始されたが,リハ医の数は圧倒的に足りず,人材育成が今後の課題であることが報告された.一方,韓国やタイではむしろ日本よりも充実したリハのレジデントトレーニングカリキュラムが確立されている.韓国では全研修病院の42%にあたる病院にリハのレジデントプログラムがあり,専門医試験を受けるためには研修病院での4年の研修,300例の症例経験,200例の筋電図,12以上の院外セミナーへの参加,200以上の院内セミナーへの参加,3つの論文作成が必修になっている.またタイでは6つの大学で3年のレジデントプログラムがあり,3年間に33カ月以上のトレーニングセンターでの研修を行い,少なくとも1つの研究業績があることが専門医試験を受けるために必要である.どちらの国でも筋電図はリハ医の必須手技として義務付けられているなど,優秀なリハ医の育成のために日本が見習うべき点も多々あると思われた.また日本においては研修医の臨床能力を向上するため,これまで見学のみであった学生時代の臨床実習において,学生が診断や治療に参加できる制度が導入される予定である.その前提として文部科学省が医学教育モデルコアカリキュラムを定め,臨床実習開始前に国家試験をすることになるが,このコアカリキュラムの中にリハが含まれることになった.コアカリキュラム制定の過程においては,前理事長米本先生,現理事長千野先生のご尽力があったとお聞きしている.これらの制度変更を追い風に是非日本でも充実したリハ医の卒前,卒後教育制度を確立してもらいたいと思う.

 この他にも2つのシンポジウム,5つのパネルディスカッション,5つのワークショップ,635の一般演題で活発な討議が行われ,参加したリハ学会員にとって実りの多い3日間であったと思う.素晴らしい学術集会を開催していただいた安藤先生始め横浜市大の先生方に感謝したい.

医局だより

千葉リハビリテーションセンター

 千葉リハセンターは,昭和56年4月千葉県より千葉県リハビリテーションセンターを経営受託し,現在リハ医療施設(病院)110,重度身体障害者更生援護施設75,肢体不自由者更生施設35,重症心身障害児施設35,肢体不自由児施設110の施設で構成されています.常勤医は北原宏センター長以下18名でリハ科3(神経内科2),補装具製作室長1,整形外科3,小児整形外科1,リウマチ内科1,小児神経内科5,眼科1,麻酔科1,精神科1です.非常勤医は内科,泌尿器科,耳鼻科,皮膚科,歯科がおります.

 リハ科入院(60)では脳脊髄など中枢性疾患の血管障害,外傷,変性疾患等が約9割を占め,内反尖足槌趾の矯正手術も行っています.入院・外来では脳損傷,脊髄損傷,パーキンソン病,ギランバレー症候群,多発性硬化症の治療が行われています.関節運動学的アプローチ(AKA)による運動療法,医療体育も入院・外来で行っています.紹介から入院までの入院待期は平均約8日間,入院期間は約60日,退院先は在宅が約9割です.年間患者数は入院約260名,外来約9,000名です.外来診察なしの直接転入院が増加しており,発症から紹介までは脳外科からの紹介では約8日から6週です.千葉では脳外科,神経内科,内科に比べ他病院リハ科よりの紹介が3カ月と遅く,またリハ専門医のいるところでも自分のところで完結していないのが目立ちます.整形外科,リウマチ内科では関節疾患(OA, RA)の手術や内科的治療,補装具製作室では切断肢に対する義肢装具治療を外来・入院で行っています.小児部門では肢体不自由児施設は多様化する社会ニーズに応じて障害児のライフサイクルの観点から取組みを強化し入園期間がより短期化した密度の濃い療育を提供し,重症心身障害児施設では医療的介護度の高いケースに対して医療および訓練と共に生活支援を行い在宅支援の観点から短期入所を実施しています.小児神経科外来では年約8,000名,小児整形外科では年約2,300名を診察し特殊外来として補装具外来,車椅子外来,座位保持外来を行っています.

 今後の千葉リハセンターとしては,厚生労働省の高次脳機能障害(5カ年計画)の全国10カ所の地方拠点病院として事業を展開することや千葉県下での地域リハの体制作りを行うために千葉県リハビリテーション協議会が今年度より発足し北原センター長がその中心となって1次,2次,3次のリハ医療圏システムの構築やネットワーク作りに取り組んでいくところです.

(佐々木健)

千葉県千葉リハビリテーションセンター
〒266-0005 千葉県千葉市緑区誉田町1-45-2
Tel043-291-1831,Fax043-291-1857
http://www.hosp.pref.chiba.jp/riha/

産業医科大学リハビリテーション医学講座

 産業医科大学は北九州市に昭和53年に開設されました.学校法人ですが,経営母体は厚生労働省傘下の特殊法人,産業医学振興財団です.産業医の育成を目的としているため学生には全員奨学金が支給され,在籍年数の1.5倍の期間を財団が指定した業務につくことで,返済を行っています.このためリハ医学講座に入局した卒業生のほぼ全員が,全国の労災病院に一定期間勤務することで奨学金の返済義務年限を消化しています.

 6月現在で大学リハ医局の構成メンバーは,蜂須賀研二教授の下に講師3名,助手4名,専修医2名,研修医5名,大学院生3名となっています.大学病院には20床のリハ科ベッドを有し,北九州市内の急性期病院や院内から紹介のあった脳血管障害患者を中心とした亜急性期リハを行っています.特殊なものとしては,ポリオ後症候群の検査入院や大学の特色を活かして障害者の復職検討などがあります.外来でのクリニカルサービスとしては,神経筋疾患の診断のための筋生検・動脈硬化を評価するパルスドプラ法による頚動脈エコーなどが当教室の特徴となっています.

 本年度新卒で入局した先生の2年次までの研修としては,学内ではリハ科の他に循環器内科・神経内科・集中治療部などを3カ月ずつローテートし,残りの期間を学外の病院で地域医療や整形疾患を学ぶプログラムを組みました.3年次以降は全国の労災病院リハ科で臨床経験を積んだり,大学院に進学して研究生活に入ることになります.昨年・今年と新卒者が5名ずつ入局しているため,将来の進路もバリエーションに富んだものが期待されます.

 学会発表や論文といった研究活動では,脳血管障害や神経難病のQOL・運動生理学を扱ったものが主体となっています.これからは,学外の病院に派遣されている先生の研究活動を大学が積極的に援助するよう体制を整えているところです.

 大学がある八幡西区医生ヶ丘はJR九州の駅から徒歩で20数分,元々緑の多い丘陵地だったことに加えて生活施設の充実から有数の住環境を誇っています.最近,市の都市計画の一環として早稲田大学工学部の大学院や九州工業大学・北九州大学の教育研究施設が続々と近郊に設立されました.これからも学究都市としての発展が期待されるエリアです.他大学からの研修も歓迎していますので,ご希望の方は下記までご連絡ください.

(井手 睦)

産業医科大学リハビリテーション医学講座
〒807-8555 福岡県北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1
医局長:井手
Tel093-603-1611(内2479),Fax093-691-3529
HP: www.uoeh-u.ac.jp/kouza/rihabiri/intro-j.html

平成12年度海外研修助成:研修印象記

慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室 長谷 公隆 

 日本リハ医学会のTraveling fellowとして,「第3回地中海リハビリテーション医学会」への参加ならびに韓国の2大学のリハ施設の訪問研修をさせていただきました.

 2000年9月4日~7日にギリシャのアテネ郊外で開催された上記学会は,20余りの教育講演およびワークショップのセッションと約300の一般演題から構成されていました.効果的なプレゼンテーションを行うためにポスター発表を希望し,歩行・動作解析のセッションで短下肢装具による足関節固定が歩行時の足底圧軌跡に及ぼす影響についての解析をもとに,立脚期の膝関節の運動制御の重要性とその評価の有用性について示しました.歩行解析に関する発表では,3次元解析等の解析システムの開発・普及を背景に,リハの効果判定における定量的評価の必要性が論じられました.その他,筋緊張異常に用いられるボツリヌス毒素の処方基準に関する議論や,興味深い内容の教育講演がありましたが,国際学会にもかかわらずスライドも発表もギリシャ語のものがいくつかあり,理解に苦しみました.

 施設研修は,韓国のソウル市内にある延世大学校(Yonsei University College of Medicine)と梨花女子大学校(Ewha Womans University)のリハ施設を見学しました.Severance Hospitalは延世大学校附属のリハセンターであり,Stroke, SCI, TBI, Pediatrics, Painなどの各ユニットが同一施設内にあり,理学療法,作業療法,言語療法はもちろん,義肢装具作製室,療育施設までもが施設内に設備されていました.まさに,この施設だけであらゆるリハ医療の研修が可能であり,その研修課程には歩行解析室に3カ月間専従しての動作解析学の研修が組み込まれていました.脳性麻痺や脳卒中患者などの中枢神経疾患における筋緊張異常に対しては,体幹筋を含めたTESを系統的に用いており,また,疼痛管理にレーザーやAqua massageなどが包括的管理のもとで行われていました.梨花女子大学校の付属病院であるMok-dong Hospitalでは,総合病院におけるリハシステムを見学させていただくとともに,同病院において進められているTMSなどを用いた研究について議論しました.

 今回の海外研修を機に,今後もリハ医学に関する見聞を積極的に広げ,診療・教育・研究に役立てていきたいと思います.最後に,施設研修を快くご承諾くださったPark先生,Yoon先生ならびにTraveling fellowとしての海外研修の機会を与えてくださった日本リハ医学会の先生方に心よりお礼申し上げます.

第12回リハ・カレントトピックス&レクチャー報告

獨協医科大学リハビリテーション科学教室 古市 照人 

 平成12年11月18日~19日に日本リハ医学専門医会の主催する第12回リハ・カレントトピックス&レクチャーが,関西労災病院リハ診療科住田幹男先生の幹事により大阪市立大学医学部講義室で開催されました.

 初日はシンポジウムに先立ち,大学・リハセンター連絡協議会ワークショップが国立部会と私立部会の2会場に分かれて開催されました.国立部会では,病院経営からみた大学リハ部門の検討を北海道大の渡部一郎先生,大学リハ部門におけるリスク管理を鹿児島大の下堂薗恵先生が発表されました.私立部門では,在院日数2週間に向けての私立大学リハ科の基本戦略をテーマに産業医大の佐伯覚先生からリハ医の役割,獨協医大の古市照人からリハ科の役割,川崎医大の塚本芳久先生から病・病連携についての発表が行われました.

 引き続き行われたシンポジウムは,「21世紀リハ医療,どこからどこへ」と題して専門医の立場からリハ専門医制度の問題点と今後の展望について討論されました.

 まず,認定委員会活動の観点から出江紳一委員長より,続いて,生涯教育の観点から間嶋満教育委員会委員長より,慶應大の正門由久先生からは急性期・回復期リハ多施設間研究からの問題点等が提言されました.千野直一理事長からは日本医学会の各学会専門医制度の検討経過と今後の動向についての報告がなされ,科学的な根拠を基本とした教育・研修制度の重要性が強調されました.専門医会からは,これまでの専門医会の歩みと抱えてきた問題について伊藤利之副会長が,専門医会と大学・リハセンター協議会とのあり方については石神重信会長が報告されました.最後に,指定発言として米本恭三初代専門医会会長からリハ医学の発展についての提言がなされシンポジウムは終了しました.

 シンポジウム終了後,恒例の懇親会が会場近くの都ホテルにて行われました.会場には85名を超える参加者があり,新たに専門医になられた方々からの頼もしい挨拶が多く聞かれました.

 プログラム2日目は専門医コースレクチャーとして,それぞれの専門分野からの成果が専門医会総会をはさんで,午前と午後にわたって13題発表されました.分子生物学的手法のリハ医学への応用として,骨格筋の反復ストレッチ刺激や脊髄切断による大脳皮質の反応について最初期遺伝子等を用いた解析結果を報告された鹿児島大の池田聡先生には,住田幹男幹事から会長奨励賞が贈られました.他の演題もそれぞれ充実した内容で21世紀でのリハ医学の発展を予感させられました.

 総会では,新会長に川崎医大・椿原彰夫教授が就任され,その他の役員も改選されました.

 次回の第13回リハ専門医学術集会は,古市照人が大会長となり東京大田区立池上会館において,平成14年1月26日(土),27日(日)に開催することになります.多数のご参加をお待ちいたしております.