リハニュース No.22
2004年7月15日
新理事挨拶
報告・印象記
医局だより
2003(平成15)年度 日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者紹介
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報告・印象記
INFORMATION
2004年7月15日
新理事挨拶
報告・印象記
医局だより
2003(平成15)年度 日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者紹介
報告・印象記
INFORMATION
日本リハビリテーション医学会
東京大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学
江藤 文夫
平成16年度総会後の理事会におきまして、社団法人日本リハビリテーション医学会の理事長職を仰せつかることとなりました。本医学会は平成元年(1989年)に社団法人となり、初代津山直一理事長、2代目米本恭三理事長、3代目千野直一理事長のすぐれた指導力と精力的なご活動により着実に発展を遂げてまいりました。偉大な先生方の後を引き継ぐことは誠に光栄に感じる次第でありますが、なにぶん未熟者ゆえ重責を担うことについては、いささか不安な気分に襲われます。しかし、本医学会のさらなる発展のため微力ながら最大限努力いたす所存でおりますので、会員(社員)の先生方はじめ、理事、評議員に選任されました皆様には学会の運営につきまして何卒、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
今年の3月にリハ科専門医の広告に関する厚生労働省への届出が受理され、広告が可能となりました。専門医の数は900名を超えましたが、諸方面からの専門医派遣要請に応えられないという声も聴かれます。医療法の抜本的改正を目指した政策的取り組みが開始され、年金制度の整備をめぐる問題、施行後5年目を迎えた介護保険制度の抜本的見直しと、それに絡めた障害福祉制度の整備をめぐる課題などが複雑に交錯して、医療制度は先の見えない不透明な時代にあります。わが国のニーズに対応した専門医の適正数の議論と合わせて、政策への対応だけでなくリハ医学と医療のあるべき姿に関する議論も学術団体の使命として忘れてはならないと思います。当面は、専門医の養成システムを洗練、整備することと、プライマリケアのレベルで必要とされるリハの知識と技術を如何にして提供できるか検討することを早急の課題として重視したいと思います。
同時に、関連医学会や関連職協会との連携も、一層親密にする必要が認識されます。このことは診療報酬改訂に対しての対応を図る必要からも大切な課題であります。
専門医の生涯教育も大切な課題です。生涯教育のための研修会や講演会は、学術集会時など例外的に全国規模で企画されることもありますが、原則的に地方会活動の一環として企画、運営されることになっています。学会活動の活性化を全国的に広めるために地方会の活動に期待されます。現在、専門医の分布は地域的に偏在する傾向が若干認められますが、医育機関におけるリハ科の普及はさらに未達成であることから、学会認定研修施設の指導医をはじめ専門医の先生方にはぜひ地方会の活性化にご尽力くださるようお願いいたします。
他にも数え上げると、本医学会が対処しなければならない課題は少なくありません。国際活動を含めて千野直一前理事長の代に推進された事業を引き続き確実なものとするよう努めるとともに、新たな時代に対応した活動を展開させたいと願っております。本医学会のさらなる発展のため、会員の先生方には、これまでにも増してご協力、ご鞭撻いただけますよう重ねてお願い申し上げます。
国立身体障害者リハビリテーションセンター
このたび、日本リハ医学会の新理事に選出されましたので、就任にあたり一言ご挨拶を申し上げます。これまで学会活動としましては、編集委員会、関連機器委員会、選挙管理委員会などの委員長を務めて参りましたが、今回役員会に入ることになりました。3期6年間お務めになった千野理事長の交代もあり、江藤新理事長、石神、伊藤、木村各常任理事をはじめ各役員の先生方、事務局の方々と協力して、学会のために少しでもお役に立てばと考えております。
期、私が担当する委員会は国際委員会になりました。1999年に発足した新しい委員会ですが、これまで平澤泰介担当理事、岡島康友委員長のもと、去る4月の日韓合同カンファレンスの開催協力に代表される活発な活動を行ってきております。発足当時から進められ、確立された4つの業務、すなわち①corresponding member、honorary member制度と②海外研修助成制度の運用、③海外の学会情報の収集と会員への提供、④国際会議の主催や後援、を今後とも強力に推し進めるとともに、近隣アジア諸国との協力体制のもと、さらなる国際交流に努めて参ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
心身障害児総合医療療育センター・整肢療護園
日本リハ医学会新理事となり、医学会運営に参加させていただくこととなりました。皆様のお役に少しでも立つために努めたいと考えており、学会員が一致した社会的な活動あるいは医学的な活動を通じて、本医学会のリーダーシップが発揮されることを願っています。そのためにもいっそうの公平さ、透明性の高い役員会・各種委員会活動が望まれていると考えます。
各科の医師が参加している本医学会の特殊性をまず念頭に置かなければなりませんが、肢体不自由児施設に籍をおく立場から小児リハの側面に活動の重点を置くことが、会員の皆様のお役に立つこととなるよう願っています。自己紹介となりますが心身障害児総合医療療育センター所長・整肢療護園園長であり、全国肢体不自由児施設運営協議会会長を仰せつかっています。また、日本脳性麻痺研究会・日本二分脊椎研究会・日本脳性麻痺外科研究会などの幹事を務めさせていただいています。
不慣れであり不勉強でありますので、これからが大変であると考えております。いろいろなことで、お力添えをお願いしなければならないと思いますので、皆様のご支援ご教授を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
川崎医科大学リハビリテーション科
このたび新理事のご承認をいただきましたことを誠に感謝申し上げます。私はこれまで専門医会の会長を務めて参りましたが、専門医制度の変革とともに今後の専門医の在り方と育成を検討すべき好機であると考えています。高齢社会においてリハ医療が不可欠であることは誰もが認識する時代となっているにもかかわらず、チーム医療のリーダーであるリハ科医が不足している日本の情勢は異常であります。リハ科医を求めて挨拶回りする病院長が多いという社会的現象とは裏腹に、リハ医学講座の新設には力を注ごうとしない大学医学部や厚生労働省の姿勢は理解し難いものであります。新たに認定された「リハ科専門医」の先生方が「私がチーム医療のリーダーとして、コメディカルを指導します」と胸を張って言える存在となるよう、新たな教育の充実が必要です。今回、最初に与えられた任務は関連専門職委員会です。私はコメディカルの学生教育にも携わっていますが、彼らの多くが求めている医師像はリハ医学に精通した医師です。我が国におけるより充実したチーム医療の構築に向けて努力したいと考えておりますので、会員の緒先生方にはご指導とご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座
このたび、日本リハ医学会理事を拝命いたしましたこと、心より光栄と存じております。
自己紹介:1980年に慶應義塾大学医学部を卒業し、千野直一前理事長のもとリハ医としての研鑽を積みました。1995年に、生まれ育った東京を離れて愛知県の藤田保健衛生大学医学部リハ医学講座に赴任し、1998年に講座教授となりました。現在、同大学リハ関連8部署(総勢167名)からなる「リハ部門」を統括しています。(ウエッブをご参照ください。http://www.fujita-hu.ac.jp/~rehabmed/index.html)
中部・東海地区に移り、日本が均一でないことを実感しています。それは、リハ医学・医療についても同様であり、各地域の状況に即しながらの発展を考える必要があるでしょう。その意味で、同地区の現状を学会に十分伝えていきたいと思います。とはいっても、今世紀前半の日本は「高齢社会総決算としての多障害時代」にあり、リハ医学・医療にとって正念場です。日本リハ医学会には、この危機に立ち向かう勇気と工夫が要求されています。江藤文夫新理事長のもと、本医学会の発展のため精一杯努力する所存ですので、どうかよろしくお願いします。
日韓合同リハカンファレンス2004特別プロジェクト委員会委員
神戸大学医学部保健学科
佐浦 隆一
“New Frontiers of Rehabilitation Medicine in Asia”をテーマに第2回日韓リハ合同カンファレンス(JKJCRM2004)が、平成16年4月23~24日京都で開催された。カンファレンスは平澤泰介先生(京都府立医大名誉教授)を会長に、日本リハ医学会日韓合同プロジェクト委員会〔委員長:住田幹男理事(関西労災病院リハ科)〕と共に,京都府立医大および日本リハ医学会近畿地方会と近隣の川崎医大リハ医学講座などが中心に準備を進めた。最初は200題400名の参加が目標であったが、結局は医師 428名、医療関係者(含む同伴者)131名、発表演題も口演(シンポジウムなど含む)37題、ポスター328題と大盛況であった。
23日の第16回リハ・カレントトピックス&レクチャーに続き、尺八と琴の美しい調べが流れるウェルカムレセプションでJKJCRM2004は幕を開けた。はじめに、Dr. Chang il Parkの講演“The current and future management of cerebral palsy”では、画像診断よりも筋緊張、姿勢反射異常などの理学所見の変化に基づく早期発見と機能レベルに応じた包括的なリハ対応の重要性が示された。次に、シンポジウムでは、1. 日韓のリハ医学教育システム・地域リハについて、2. アジアでのリハ医療の現状と将来への方向性が討論された。
まず、韓国では政府の指導によりすべての医学部でリハ医学教育が行われ、72病院で充実した卒後研修プログラムが実施されている。一方、日本では26大学病院がリハ科を標榜しているにもかかわらず、リハ医学講座があるのは半分にも満たない。今春から新臨床研修システムも始まったが、彼我の差は開くばかりだろうか? 次に、アジアでのリハ医療の現状をテーマに英語を母国語としない日韓両国の悲哀、アジア文化に根ざしたリハ医療の必要性が討議された。
その他、脳卒中、スポーツ外傷、骨関節疾患、嚥下障害、脊髄損傷などの口演、ポスターセッションが行われた。ポスター会場はどこも盛況で多くのリハ医師に協力をいただいたが、座長、演者とも慌ただしい発表時間となり、もう少し工夫が必要だったと反省している。
京舞で始まり各賞発表、六斎念仏、おいしい食事とワインと進んだバンケットでは、平澤会長が提示しDr. Il Yung Leeが開会挨拶で述べた“アジアでのリハ医学発展の鍵を握る日韓のリハ医学領域における交流”があちこちで見られ、JKJCRM2004は和やかに閉会した。
最後に、大会運営に協力いただいた京都府立医大整形外科教室、防衛医大リハ部、和歌山県立医大リハ科スタッフ、日本リハ医学会近畿地方会の諸先生方、個人的に助けていただいた武蔵野赤十字病院高橋紳一先生に心から感謝いたします。
第41回日本リハビリテーション医学会学術集会 会長 江藤 文夫
このたびの第41回日本リハ医学会学術集会におきましては、大勢の方々のご協力とご参加により無事終了できましたことを御礼申し上げます。また、抄録号では教育講演の単位取得一覧表につきまして重大な誤りのまま掲載し、多数会員の皆様にご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。
おかげさまで、早めの入梅にもかかわらず、会期中は連日好天に恵まれました。抄録号への広告掲載が例年に比べて少なく、商業展示の応募数も不調でしたが、2,000名を越す会員のご参加があり、不安の一端は解消できました。また、海外からの招待講演の先生方の中には間際まで入国査証手続きに苦労した例もありましたが、それぞれ期待通りのご講演とご討議をしてくださり、ほっとした次第です。発表形式を原則的にPCプレゼンテーションに限ったことにも不安はありましたが、発表者のご協力に加えて、会場と事務局代行のノウハウが生かされ、滞りなく運営することができました。未就学のお子様を対象とした託児所もご利用いただけました。
年1回の総会と学術集会ですので、プログラム企画に最大の精力を注ぎました。当初意図した企画の実現は容易ではありませんでしたが、各講師、座長の皆様のご協力で、聴衆の多少にかかわらず、熱気ある会がもてましたことを感謝する次第です。会期と会場の制約から、複数の企画を並行してせざるをえませんでしたが、教育講演への期待の大きさを予期できなかったことを深く反省いたしております。これらの企画へご参加いただけたことが、リハ医療のさらなる展開につながることを祈念します。
最後に、学術集会の運営に多大なご協力とご支援を賜った関係各位に、あらためて篤く御礼申し上げます。
北海道大学病院リハビリテーション科 渡部 一郎
2004年6月3日~5日の3日間、第41回日本リハ医学会学術集会が行われました。東京大学大学院医学系研究科リハ医学の江藤文夫先生が会長を成功裏に務められ、また同時にこのたびの役員選挙で日本リハ医学会の理事長に就任されたことにお祝い申し上げます。
学会場は、都庁と隣接する超高層ビル・京王プラザホテルの4、5階と42、43階で開催されました。最近本学会総会のホテルでの開催はなく、格調高い雰囲気のなか会が進められました。昨年の第40回総会の札幌コンベンションセンターと比べ一見したところ狭いかと思いましたが、適度に混み合い、討論に活気があふれ、次第にちょうどよい広さと感じられてきました。今回の総参加者は、昨年同様約2,500人を見込んでいると伺いましたが、前半一部の教育講演で人があふれ、途中から教育講演が中心の第3会場と第1会場を交換して使用され、より参加者の流れが円滑になりました。一般演題(ポスター・口演・ビデオ)は678題の多数におよび、42、43階の小会場に分配されました。メインの講演会場と垂直方向にかなり離れており、エレベータによる移動となりましたが、特に滞りなく、座長の力量でどの会場でも活発な討論で盛り上がっていました。
口演の発表形式は、ついにすべての会場でPCによるプレゼンテーションとなりました。LANによる配信システムを利用しているとのことで、一段と洗練されているようです。一聴衆としてもたつきやトラブルはほとんど気にならず、事務局裏方の皆様の準備・運営のみならず、きちんとしたプレゼンテーション資料を提出できた演題応募者のレベルの向上も感じました。PCプレゼンに統一されると演者、聴衆、事務局運営など多くのメリットがあります。
メインテーマは「リハビリテーション医療の更なる展開に向けて-リハビリテーション医学教育の充実と普及-」であり、会長講演では21世紀のLife Scienceを生命科学と訳してよいか議論され、ADLが生命予後に最も関わる要因であることを強調されました。講演の中で提示されたNYHAの心機能分類が実にADLに重点があることを私も再認識しました。
続く特別講演は土居健郎先生(聖路加国際病院)が「リハビリテーションと精神医学」のタイトルで基調講演的なお話をされました。「障害受容」から話を進め、「甘え」や「なつく」の日本独自の精神構造や「医者は患者を診るのではなく病気を見る」という病因論医学を批判し、ヒポクラテスの「患者に対して素人にわかるように説明できるのが医者である」点を強調され、時間を感じさせず話に引き込まれました。講演後、札幌勤医協病院の岡本五十雄先生が「自殺念慮、患者の苦しみ」を医者以外のスタッフしか聞き出せない実態、患者は医学以外のことを担当医に相談できない誤解などを討論され、リハ医療において考え直すことがたくさんありました。
総会は、専門医制度で時間延長となった昨年と違い、おおむね順調に進み時間どおりに終了しました。ランチョンセミナー、専門医会総会など、どの会場もほぼ満員でおいしい弁当を食べながら有意義な時間を過ごすことができました。
例によって、多くの会場で同時進行する講演・シンポジウムは、リハ医にとってすべて欠くことのできない重要なものばかりで、どこに参加するか悩むほどの魅力的なテーマばかりでした。
警備が厳重な都庁で都民公開講座・シンポジウムが行われておりこちらも盛況でした。都庁の無料展望台から富士山、夕焼け、日の入りを見ることができ私的には忘れることのできない学会となったと思います。
獨協医科大学は「療育の父」といわれた高木憲次博士らの意志を継承して1973(昭和48)年に開学しました。当教室は翌年4月、わが国最初のリハ医学の講座として高橋勇初代教授を迎えて臨床医学系教室として開講しました。1979年には大学院が開学し、リハ科学は社会医学系として基礎医学分野に所属しています。1999年からは古市照人教授が江藤文夫教授から引き継ぎ講座を運営しています。
現在、臨床面では大学病院1,200床の特定機能病院のリハセンター機能と27床のリハ科単独病床を受け持つリハ専門病棟機能を並行して管理運営しています。内科系、外科系一般診療科をはじめ救命救急センターからNICUを含めた総合周産期母子医療センター、痴呆疾患センターまで幅広く依頼先があり、地域医療の中核病院であることから急性期から慢性期まで、小児から高齢者まで経験症例には事欠かない状況です。2003年度の新規症例登録者数は1,300例に及びました。最近の5年間でほぼ倍増しています。内訳は、脳卒中その他376例、脊髄損傷その他66例、骨関節疾患375例、脳性麻痺79例、神経筋疾患140例、切断24例、呼吸器疾患76例、循環器疾患35例、その他嚥下障害、乳癌・腹部外科術前術後、熱傷、廃用症候群、肥満、糖尿病、痴呆症など129例です。これら正規登録症例以外に、DPC導入などによる極端な在院日数の短縮やクリニカル・パスの導入拡大の影響で問合せのみの症例があり、今後、対象症例の大幅な増加が予想されています。地域リハについては、「栃木県リハ談話会」を主催し周辺医療機関と連携し、行政面では各種審査会などで全面的に協力し、大学に隣接した保健福祉施設とは直接医療サービス面に参加して地域リハの推進にも力をいれています。
教育面では、開学以来全国でも有数の授業時間と内容を誇り、臨床実習の中核を占め、卒後教育でも他大学から専門医を目指す医師を多数受け入れています。研究面では、日本リハ医学会だけでなく日本老年医学会、日本義肢装具学会など関連学会での活動とともに、コメディカル職種においても各領域の学会活動を奨励しています。地域密着型の病院機能を活用して急性期から地域保健施設まで一貫した研究を行えることが特徴です。
日常診療のほか大学関連ではリハ科はアーリーエクスポージャーやオープンキャンパスの目玉コーナーであり、大学病院では中央サービス部門として、医療安全・医療サービス向上目的の介助法等の職員講習会主催など学生や教職員対象のニードも拡大の一途です。このように教職員との接点が増えていることから、毎週行っているリハ科入院以外の他科入院症例に対する教授回診も主治医や病棟スタッフがてぐすねひいて待ってくれている状態(?)で学内・病院全体での連携が大いに深まっています。
(吉田健哉)
獨協医科大学リハビリテーション科学教室
〒321-0293栃木県下都賀郡壬生町北小林880
TEL 0282-86-1111, FAX 0282-86-6943
E-mail: furuichi@dokkyomed.ac.jp
当院は、人口46万人余りを有する尼崎市に位置し、急性期高度医療を提供する中核病院として、勤労者医療と地域医療の推進に積極的に取り組んでいます。19の診療科を有し、病床数670床、1日平均外来患者数1,600人の急性期一般病院です。
その中で、リハ科は1953(昭和28)年開院当初から理学診療科として始まっています。現在、専従医としてリハ専門医2名(日本リハ医学会理事住田幹男先生、筆者)、研修医1名の3名がいます。コメディカルスタッフはPT 12名、OT 5名、ST 3名、外来看護師1名、PT助手3名です。
外来では、各種疾患の通院リハ診療に加え、他科入院患者のリハ診療も担当しています。疾患は、脳血管障害、脳腫瘍、神経筋疾患、循環器疾患、胸腹部術後、咽喉頭腫瘍、骨関節疾患、廃用症候群などと多岐にわたっており、特に神経内科、脳神経外科とはそれぞれ週1回カンファレンスを行い、情報交換を密にし、よりよいリハを提供するよう心がけています。また患者・家族、主治医、リハ医、看護師、担当訓練士、MSWによるスモールカンファレンスを設け、治療方針、ゴール、入院期間についてより詳細な協議を行っています。
嚥下造影検査、電気生理学的検査も行っており、特に嚥下障害については急性期脳血管障害から高齢者、反回神経麻痺、咽喉頭腫瘍、舌癌患者などさまざまな患者が紹介され、耳鼻咽喉科・歯科口腔外科・栄養管理士と連携をとりながら診療しています。装具診では各種装具、義肢、車椅子の処方も行っています。
当科は18床のベッドを有し、脊髄損傷、切断、脳血管障害などの入院患者の主治医となっています。近年は近隣に回復期リハ病床が増えたためか脳血管障害患者は減少し、脊髄損傷患者(特に頸髄損傷)の占める割合が多くなっています。人工呼吸器管理を必要とする高位頸髄損傷患者の呼吸器離脱訓練やパソコン・環境制御装置使用訓練なども積極的に行っています。在宅医療室と協力し、家族への介護指導や各種制度の調整を行い、地域医療機関と連携し自宅退院までサポートしています。
急性期一般病院のリハ科としてまだまだ課題も多く、毎日があわただしいですが、幅広く、内容の濃い研修ができる病院です。見学・研修は随時受け付けています。連絡をお待ちしています。
(土岐明子)
独立行政法人 労働者健康福祉機構
関西労災病院リハビリテーション科
〒660-8511兵庫県尼崎市稲葉荘3-1-69
TEL 06-6416-1221, FAX 06-6419-1870
HP: http://www.kanrou.net/index.html
最優秀賞対象論文 森 信芳、後藤葉子、黒澤 一、松本香好美、吉田一徳、南 尚義、金澤雅之、上月正博:脳死肺移植術前後のリハビリテーション:本邦第一例を含む連続4症例での検討。リハ医学 2003; 40: 293-301
このたびは日本リハビリテーション医学会論文賞「最優秀賞」をいただき大変光栄に思っています。1997年、臓器移植法の国会での可決、成立後、2000年3月に日本で初めての脳死肺移植が、大阪大学と東北大学で無事行われ、以後東北大学では合計6例(2004年7月6日現在)の脳死肺移植が行われています。移植前の重度の呼吸不全状態でも、心肺機能に注意を払いながらのリハビリテーションにより、運動耐容能の改善がみられることがわかりました。また、移植後には時間はかかりますが運動耐容能は改善し、健常人と同じまでにはいたらないにしてもQOLの改善が得られることもわかりました。本邦初の脳死肺移植からようやく4年が過ぎましたが、ドナー管理の向上といった医学的な要因と、意思表示カードの普及により、より多くの患者さんが重度の呼吸不全による運動機能の低下および日常生活動作の縮小、QOLの低下から開放されることを望みます。最後になりましたが当科の上月教授をはじめとする大学スタッフの心暖かいご支援・ご指導に厚くお礼申し上げます。
略歴:1997年弘前大学医学部卒業、同年岩手県立胆沢病院内科研修医、2000年東北大学大学院医学系研究科機能医科学講座内部障害学分野博士課程入学。
脳死肺移植術前後のリハビリテーション ―本邦第一例を含む連続4症例での検討―
森 信 芳 後藤 葉子 黒 澤 一 松本香好美 吉田 一徳 南 尚 義 金澤 雅之 上月 正博
東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野
(受付: 2002年9月25日; 受理: 2003年4月11日)
要 旨: 脳死肺移植前後のリハビリテーション(リハ)4例を経験した.経過に伴う運動耐容能,精神心理機能,QOL,ADLの変化を分析し,今後の注意点の提示を含め考察した.いずれの症例も初診時は廃用のために四肢筋力の低下があったが,移植前のリハが運動機能やADL拡大・維持に効果があった.しかし,リハを継続しても待機期間が長引くにつれて,運動耐容能が低下しADLは縮小した.移植後は呼吸機能,運動耐容能に大きな改善がみられ,健康関連QOL,ADLにも改善傾向がみられたが,精神心理機能はいずれとも相関が見られなかった.術後合併症・金銭面・家族関係などでのストレスも多く,今後は心理状態をも十分考慮した慎重なリハ的対応と待機期間の短縮のための対策が求められる.
キーワード: 肺移植(lung transplantation),運動耐容能(exercise tolerance),QOL(quality of life),ADL(activities of daily living),臓器提供意思表示カード(donor card)
優秀賞対象論文 都丸哲也:皮膚電気刺激および経頭蓋磁気刺激による大脳運動野の興奮性に関する研究。リハ医学 2003; 40: 757-765
このたびは、このような名誉ある賞をいただきき誠に光栄です。慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室名誉教授であります千野直一先生をはじめ指導していただいた諸先生ならびに被験者として協力していただいた多くの先生方に深くお礼申し上げます。
本研究は皮膚刺激と経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)からなるペア刺激が運動機能促通に与える影響を電気生理学的に検索したものです。皮膚刺激単独またはTMS単独では0.1という低頻度で一定時間刺激を行っても運動機能の促通は得られませんが、あるタイミングで皮膚刺激とTMSを行うというペア刺激にすると運動機能が促通されるという興味深い結果が得られました。さらにこの促通が大脳皮質由来の変化であることが示唆され、錐体細胞でのシナプス効率の変化など大脳皮質の可塑性も惹起できる可能性が推察されました。今後は脳卒中片麻痺患者、特に内包後脚梗塞等の感覚障害を認めない片麻痺患者を対象にこのペア刺激の効果を検証したいと考えております。
略歴:1993年慶應義塾大学医学部卒業、同リハビリテーション医学教室臨床研修医、1995年国立療養所東埼玉病院、1996年小田原市立病院、1997年慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室助手、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、1999年日本リハビリテーション医学会専門医、防衛医科大学校教官、2000年東京都リハビリテーション病院、2002年同医長。
皮膚電気刺激および経頭蓋磁気刺激による大脳運動野の興奮性に関する研究
都 丸 哲 也
慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
(受付: 2003年7月16日; 受理: 2003年10月8日)
要 旨: 18名の健常被験者のうち8名を対象に右示指への電気刺激による感覚入力が右第一背側骨間筋を標的筋とした経頭蓋磁気刺激(TMS)による運動誘発電位(MEP)に与える影響を調べた.その結果,示指刺激後20ms,50~80msでMEPが有意に促通された.次に12名を対象に電気刺激と磁気刺激の刺激間隔を最も促通の大きい70msに固定したペア刺激を0.1Hzの頻度で30分間行い,その前後での大脳皮質の興奮性をMEP振幅およびsilent periodで評価した.ペア刺激直後にMEP振幅は有意に増大し,時間経過とともに刺激前のレベルに戻る傾向を示した.また,silent periodは有意に延長し,同時に記録したF波では有意な変化を認めなかった.以上より示指刺激から50~80ms後のMEP振幅の増大とペア刺激後のMEP振幅の増大の持続は大脳皮質由来によることが示唆された.
キーワード: 皮膚電気刺激(cutaneous electrical stimulation),経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation),運動誘発電位(motor evoked potential),静止期(silent period),大脳皮質の可塑性(cortical plasticity)
奨励賞対象論文 佐古めぐみ:阻血による片側下肢の神経遮断が立位姿勢制御に与える影響。リハ医学2003; 40: 537-545
このたびは、身にあまる賞をいただきまして、学会員の皆様方に改めて感謝の意を述べたいと存じます。論文作成に際しましては、千野直一先生、長谷公隆先生の御指導なくしては、完成しなかったものです。本当にありがとうございました。
この論文は、リハビリテーション医なら誰もが関心のある「立位」と感覚障害に関する研究です。阻血による神経遮断後の立位姿勢の再構築について、健常人での運動学的解析を試みました。実際に障害によって受けた変化が、どのように姿勢や動作に影響を及ぼすのか、その再構築にはどんな機序が働いているのか、リハビリテーションはどのように行うのが最も有効なのか、今後も少しずつ解きほぐしていかなければいけないテーマだと思います。実験でボランティアをしてくれた方々は、感覚障害の不安感、動作の困難を体験し、「感覚障害の患者の気持ちが少しわかった」と言っていました。これからも、患者の気持ちに耳を傾けながら、より良いリハビリテーション治療を提供できるよう精一杯精進していきたいものと存じます。今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます。
略歴:1994年札幌医科大学卒業、同大学整形外科教室入局、1995年慶應義塾大学リハビリテーション科入局、2001年北海道肢体不自由児総合療育センター勤務、2002年札幌医科大学リハビリテーション部助手。現在は、育児のため休んでいます。
阻血による片側下肢の神経遮断が立位姿勢制御に与える影響
佐 古 めぐみ
慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
(受付: 2003年1月6日; 受理: 2003年7月3日)
要 旨: 片側下肢の神経遮断が立位制御に及ぼす影響について,健常成人男性19名を対象に運動学的検討を加えた.右大腿部末梢の阻血による神経遮断後の立位は,右下肢荷重量の減少,右側の股関節と膝関節の屈曲,右足底圧の動揺中心の後退により構築された.その際,右腓腹筋の筋活動が減少し,左下肢筋群と右大腿および体幹筋群の筋活動が増加した.片側下肢の感覚神経遮断は,‘ankle strategy'に基づいた姿勢制御を困難にし,神経遮断された下肢に荷重するためには,両下肢・体幹筋の代償がさらに必要となることが確認された.
キーワード: 姿勢制御(postural control),足関節制御(ankle strategy),足圧中心(center of pressure),神経遮断(nerve block),阻血(ischemia)
平成16年度専門医会総会が6月5日の学術集会2日目に京王プラザホテルにおいて開催されました。
本年3月に、広告可能な基本領域の専門医として、リハビリテーション科専門医が厚生労働省に受理されたことに伴い、専門医会の組織運営の変更を余儀なくされる事態となりました。
幹事会では歴代専門医会会長とも検討を重ねた結果、専門医会解散が適当との結論に達し、以下の発議をさせていただきました。
1. 専門医会は平成17年10月31日をもって解散する。
2. 専門医会の事業を継続しリハビリテーション科専門医の質の保障および質の向上を目的とする委員会を(社)日本リハビリテーション医学会組織内に設置することについて相談する。
3. 平成16年度会費は徴収せず、すでに支払われた16年度以降の会費は返却する。
専門医会会則では解散には会員数の三分の二以上の議決が必要となっておりますので、事前に上記議案を会員に送付し、当日参加が困難な会員からは委任状をいただきました。
総会では出席者177名、委任状325名、計502名の賛同を得て(会員総数704名)、上記解散に関する議案は可決いたしました。
第17回日本リハビリテーション医学専門医会学術集会(カレントトピックス&レクチャー)は松本茂男幹事の担当で平成17年10月に青森で開催される予定です。専門医会が開催する最後の学術集会になりますので、多数の専門医の参加で盛大な会になることを期待しています。
(水落和也)
東京慈恵会医科大学第三病院
リハビリテーション医学講座
殷 祥洙
韓国の私学の雄であるYonsei 大学は、ソウル市にあった2つの教育機関、すなわちYonhi 大学の“Yon”と、Severance病院の“Sei”とが合併したものである。1885年に設立された大学付属病院であるSeverance 病院には、約1,500床を有するShinchon Severance 病院(本院)の他に、Yongdong病院、Yongin病院、 Severance Mental Health 病院、 Wonju Christian病院といった分院がある。
このたび私が海外派遣医師として伺ったYonsei大学リハビリテーション医学(再活醫學)科には、本院、分院を合わせるとprofessor 12名、fellow 6名、resident 42名が在籍している。ソウル市内にある本院には特に、計150床の脳卒中、脳外傷、脊髄損傷、小児、疼痛などの各専門病棟と、外来リハ、成人リハ、小児リハ、物理療法室、VF専用X線造影室、urodynamic study室、VICONや3D床反力計などを設置した動作分析室(専属エンジニア1名)、義肢装具作成室(専属PO6名)、屋内プール室、児童学校、専属広報部などを有するリハビリテーション病院(再活病院)があり、ChairであるDr. Chang-il Parkをはじめ6人のprofessorが在籍している。各病院のprofessorはfellow、residentと共に5~6名のチームを形成し、各々の専門にあわせて病棟、外来を担当する。residentはさまざまな専門領域を持つprofessorの下を網羅的に4年間ローテート研修する。
スタッフの一日は毎朝7時半からの病棟回診で始まる。day timeには病棟、外来業務に加え、装具conference(Otto Bock社アジア担当役員も常時参加)、電気生理学(BOTOXなどのブロック手技を含む)、FES、VE・VF、urodynamic study、歩行分析などを系統的に研修する。毎日午後6時頃からは、テーマごとに各部署のprofessorを招いたstuff lecture、症例カンファレンス、筋電図や解剖学勉強会などがある。その後は各自、研究などを深夜まで行っている。教科書や医学用語はほぼ100%英語が使われる。
Dr. Chang-il Parkは、京都での第2回日韓リハ会議のplenary lectureのごとく、小児、疼痛、脊損のリハ医学の第一人者として世界的に有名である。常時約30名の病棟主治医であり、平均患者数60~70名の外来が週2回ある。それらの合間に韓国リハビリテーション医学会のpresidentやISPRMの vice presidentとしての役割もあり、激務をこなされているが、早朝の病棟回診はほとんど欠かすことはない。residentへの指導時の威厳あふれるお姿は、学会などでお見受けする柔和な表情からは想像し難いものであった。
国際学会で主流となりつつある痙縮、疼痛管理の演題が多い韓国のリハ医学は欧米型といえるのに対し、保険システムなどの制約が多い日本は独自の道を歩み始めているということを、第2回日韓リハ会議でも強く感じた。EU統合により強大な新勢力が生まれた今、この二国が手を組んでお互いを補完しあう時代が来たのではないだろうか。
最後になりましたが、私を受け入れていただいたYonsei大学リハビリテーション科の皆様と、海外派遣医師として貴重な経験をするお許しをいただいた日本リハビリテーション医学会の皆様に深謝いたします。
(報告書はリハ医学41巻7号445頁に掲載)
St. Luke's Hospital
(オーストラリア・シドニー)
Dr. Peter James Scougall
Dr. Peter James Scougall
日本リハ医学会が私を海外交流医に選んでくれたことに大変感謝いたします。美しい国日本を1週間十分に楽しみました。私は日本で多くのことを学び、自分の臨床に生かし同僚と共有したい多くのアイデアを私の国に持って帰ることができました。
南川義隆先生は日曜日に私を空港まで迎えに来ていただき、大阪でもてなしてくれました。
月曜日には大阪大学医学部を訪問し、森友寿夫先生や村瀬剛先生と共通の研究テーマであるキーンベック病の運動学、評価法、舟状骨偽関節、その他の手根部の病変について討論しました。その後研究室を訪問し大学院生の岡久仁洋先生、後藤晃先生と手根部の動きの研究について討論しました。訪問の後、岡先生、後藤先生は私を京都観光に連れて行ってくれました。その夜は南川先生の自宅に招かれ夕食をごちそうになりました。
火曜日、南川先生は私をメイフラワー病院に連れて行ってくださり、リウマチの手の手術とリハについて討論しました。午前中、外来とリハ室を訪れ、病院の療法士とリハの手技について討論しました。前腕の回旋を矯正する装具など興味深い装具や伸筋腱断裂後のバディーテーピング法など簡単でありながら効果的な手技を学びました。患者さんが手の巧緻性を示すため美しい折り紙を折ってくれました。私はそれをお土産としてオーストラリアに持って帰りました。昼食時、50人の病院職員に約50分間のベトナム、ミャンマーにおける手の手術とリハについて講義を行いました。これはRotaryが出資した事業で、シドニーのBruce Conolly 教授と一緒に関わっています。午後、私は南川先生の興味深いリウマチの手術を見学しました。私たちは手関節の手術における軟部組織の処理や指の関節に対する関節表面の人工関節置換など、南川先生のいくつかの新しい手技について話し合いました。
水曜日は北條達也先生が京都観光に連れて行ってくれました。そして夜は平澤泰介教授が素晴らしい食事で歓待してくださいました。
木曜日、私は名古屋大学医学部大学院の中村蓼吾教授、堀井恵美子先生を訪問しました。Tim Herbert 先生に指導していただいた私が特別興味をもっているキーンベック病の詳細について議論しました。私は「キーンベック病、尺骨偏位と月状骨の形」という題で発表しました。特に橈骨骨切術、血管柄付骨移植術についての中村教授との議論に興味がありました。最初にこの技術を本で知ったのは数年前でしたが、専門家からそのこつを学ぶことができて良かったと思います。中村教授はその夜素晴らしい食事に招待してくれました。
金曜日は佐久間雅之先生が名古屋掖済会病院に連れて行ってくれました。そこで私たちは手の外傷の管理、特に局所のフラップと微小血管テクニックを用いた軟部組織の被覆について議論しました。佐久間先生は多くの興味深い患者を提示していただき、彼が開発した微小血管手術後の組織潅流のモニターを標準化した素晴らしいテクニックを紹介してくれました。その後リハ訓練室に行き、何人かのハンドセラピストと訓練やスプリントについて議論しました。
素晴らしい1週間を送ることができ、この機会を与えてくれた日本リハ医学会に大変感謝しています。私は多くのことを学ぶことができました。私をもてなしてくれたすべての方々、特に南川先生、平澤教授、北條先生、中村教授の寛大さ、歓待に感謝したいと思います。11月に大阪で開かれる手の外科学会で再度訪問できることを楽しみにしています。
翻訳;越智文雄/国際委員会海外交流医担当
リハ医学41巻4号に交流報告を掲載
A 1950年代のポリオ大流行世代が1980年代に二次障害(罹患後機能が回復し,一定期間の安定期の後,運動系,感覚系などに急激な増悪を生じる)に直面するようになって,Post Polio Syndrome(PPS)として概念化された.1980年以降,欧米を中心に臨床医学的研究,疫学研究が行われ,PPSの成因としては,免疫による細胞変性,部分的に回復した運動ニューロンの老化,神経再支配を受けた筋線維の脱神経など,機能的要因としては生活に起因した筋肉のover useやdisuse,misuse,加齢の影響など複合的影響が原因と考えられている.
PPSの日本語訳は「ポリオ後症候群」と訳され一般的に使われているが,ポリオ後遺症や進行する筋萎縮に限定した場合には「ポリオ後進行性筋萎縮症(post-poliomyelitis progressive muscular atrophy)」,ポリオが原因で生じた新たな健康状態を「late effects of polio」と呼ぶこともある.
PPSの症状としては筋力の低下や筋肉の萎縮,筋肉痛,関節痛,四肢のしびれや冷感,腰痛,異常な疲れやすさなどがみられる.筋力低下に伴ってあるいは先だって筋線維に攣縮がみられることもある.しかしポリオ罹患者すべてにPPSが発症するものではない.PPSの症状はポリオ罹患肢に現れることが多いが,非罹患肢にみられることもある.筋力低下や筋萎縮はしばらく進行するが,数か月から数年の間に進行は停止し,かなり回復することもある.厚生科学研究(脊髄神経障害性運動麻痺のリハビリテーション技術の開発研究)によると,PPSは,発症後40年を経過した頃から急激に増加し,社会参加阻害の要因となっており,自律神経障害との関連があると考察している.
Halsteadらの診断基準
1. 麻痺性ポリオの確実な既往
2. 部分的あるいはほぼ完全な機能的,神経学的回復
3. 少なくとも15年間の機能的,神経学的安定期間
4. 安定期間を経過した後に,以下に挙げる健康上の問題が2つ以上発生.
・普通でない疲労・関節痛・筋肉痛・麻痺側または非麻痺側の新たな筋力低下
・機能低下・寒さに対する耐性低下・新たな筋萎縮
5. これらの問題が,内科的,整形外科的,神経学的な原因では説明がつかない.
文献
1) 地域における三次予防の技術開発にむけた後天性脊髄性運動麻痺の疫学研究 平成13年度~平成14年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書(研究代表者:熊倉伸宏)
2) Halstead LS,Rossi CD: Post-polio syndrome: clinical experience with 132 consecutive out-patients. Birth Defect 1987; 23:13-26
3) 花山耕三:ポリオ後症候群-障害像とリハビリテーション-.リハ医学2003;40: 771-779
(評価・用語委員 朝貝芳美)
ポリオ後症候群 ―障害像とリハビリテーション―
花 山 耕 三
東海大学医学部リハビリテーション科学
(受付: 2003年8月29日)
要 旨: Many individuals in Japan have suffered from so-called post-polio syndrome (PPS) since the early 1980s, because poliomyelitis epidemics occurred in Japan up to the late 1950s. PPS is defined as the development of new weakness and fatigue in the skeletal or bulbar muscles arising from an unknown cause at 25-30 years after an acute attack of paralytic poliomyelitis. PPS is hypothesized to arise when the remaining motor neurons in the post-polio state can no longer maintain all of their distal axonal sprouts. Electrophysiological studies have confirmed the presence of ongoing denervation and chronic reinnervation. The symptoms and signs of PPS include new muscle weakness and atrophy (post-poliomyelitis progressive muscular atrophy; PPMA), as well as other musculoskeletal symptoms such as fatigue, skeletal deformity, and pain. Psychological problems may also modify the other symptoms. Weight control, avoiding overwork, proper posture and alignment, lifestyle modification and the use of orthoses or other devices are helpful for the management of PPS. In addition, muscle strengthening and aerobic exercises have been reported to be useful even in PPS patients with a current exercise regimen. Exercise should be based on the status of each limb and the regimen should be modified if any new weakness, pain, or fatigue appears.
キーワード: ポリオ(poliomyelitis),ポリオ後症候群(post-polio syndrome),過用性筋力低下(overwork weakness),神経筋疾患(neuromuscular disease)
第41回日本リハ医学会総会において、認定臨床医制度が学会内部の制度として存続することが承認されました。これに基づいて、認定委員会では、リハ科専門医ならびに認定臨床医の資格審査と試験を以下のように行います。
(1)リハ科専門医:ご承知のように、本医学会の専門医制度は、「広告できる専門医」の資格を認定する制度として、平成16年3月1日、厚生労働省に受理されました。専門医試験の受験資格を得るためには、医師免許取得後5年以上の臨床経験を有し、原則として本医学会が認定した研修施設に勤務するリハ科専門医(指導責任者)のもとでの3年以上の研修が必要です。なお、平成16年度の専門医試験は、平成17年3月3日(筆記試験)、3月4日(口頭試験)に実施する予定です。 したがいまして、指導責任者の先生には、受験者が専門医として十分な研修を積んだことを証明していただくことになります。指導責任者は一つの研修施設に何人いてもかまいません。実際に研修を担当されるすべての専門医に指導責任者となっていただきたく存じます。リハ科専門医の資格を取得されているにもかかわらず、未だ指導責任者となっておられない先生には、「指導責任者の認定要領」(リハ医学40巻12号)をご参照のうえ、ご申請いただけますようお願いいたします。
(2)認定臨床医からの移行措置によるリハ科専門医:5年間の経過措置(平成21年3月31日まで)として、認定臨床医からの移行のための専門医試験を実施しています。第1回の試験は、脳疾患、脊髄疾患の2領域を必修問題(各10題)、骨関節疾患、小児疾患、神経筋疾患、切断、呼吸循環器疾患、その他(脳・脊髄と併せて、専門医試験における8領域に相当します)と基礎の中から5領域(各6題)を選択問題として(計50題の多肢選択問題)、研修会と併せて平成16年3月14日に実施いたしました。128名の認定臨床医の先生が受験され、121名の先生が合格されています。第2回の試験からは、基礎問題(10題)を必修に加えて、同様の形式で、第2回:平成16年10月3日、第3回:平成17年3月27日に行う予定です。
(3)認定臨床医:認定臨床医制度に基づく認定臨床医試験は、従来の規定に基づいて実施する予定です。本制度は学会内部の制度であり、平成16年4月1日以降に認定臨床医の資格を取得されても、上記の「リハ科専門医」への移行措置による専門医試験は受験できませんのでご注意ください。今年度の認定臨床医試験は、50題の多肢選択問題により、平成17年3月3日に実施する予定です。
今後は、臨床研修カリキュラムに基づくリハ科専門医の認定、生涯教育研修の見直しなどを行っていく予定ですので、どうぞよろしくご協力のほどお願い申し上げます。
(委員長 長谷公隆)
平成16年度海外研修助成は4名の応募のうち、菊地尚久先生(横浜市大リハ科)、青柳陽一郎先生(川崎医大リハ科)、飯山準一(鹿児島大)が理事会で選出されました。菊地先生は頭部外傷で有名な米国Santa Clara Valley Medical Centerでの交流発表、青柳先生はJohns Hopkins大学リハ科での交流発表とDysphagia Research Society Meetingでの学会発表、飯山先生はスウェーデンにおけるInternational Symposium Measurement & Evaluation Outcomes in Rehabilitationでの学会発表です。
平成16年度外国人リハ医交流助成プログラムについては、韓国リハ専門医からの応募(日韓合同リハカンファレンス2004発表)が多く、少額助成に抑えることで14名を迎えることができました。韓国以外からも2件の応募がありましたが残念ながら本年度は選外といたしました。
国際委員会活動の大きな柱として、Honorary & Corresponding Member探出があり、現在、各々8、10名を数えていますが、韓国以外のアジア地域のMemberを欠いているのが現状です。アジアにおけるリハの位置付けはまだ低く、日本リハ医学会はISPRMの影響力もかりて、アジア地域のリハを啓発していかなければならないと考えております。ISPRMで活躍されているアジア地域のリハリーダーについて情報をお持ちの先生方には是非、国際委員会まで情報をお寄せいただきたくよろしくお願いいたします。なお、適任者と思われても、国別Member分布や日本リハ医学会への貢献度などの関係でMember決定に至らないこともありますので、その点はご了承ください。
最後になりましたが、広報委員会より支援していただき、外国人への広報の一環として昨年度末から国際委員会英文ホームページを立ち上げております。機会がありましたら、お知り合いの外国人リハ関係者にURLをお伝えください。
(委員長 岡島康友)
九州地方会では年2回(2月、9月)の学術集会と専門医・臨床認定医生涯教育研修会を開催しています。会員数ならびに地域性を考慮して、幹事の中から学術集会会長を選任し、幹事会ならびに総会にて決定しています。選出の目安としては、「2004年福岡・熊本、2005年鹿児島・福岡、2006年長崎・宮崎、2007年福岡・熊本、2008年沖縄・・・」の順番としていますが、前後することもあります。
次回の第16回地方会学術集会は、2004年9月12日(日)、熊本市産業文化会館にて、熊本リハビリテーション病院副院長・山鹿眞紀夫幹事のお世話で開催される予定です。同時開催の生涯教育研修会講演は、東大大学院リハ医学分野教授・江藤文夫先生に「転倒・転落の予知と予防」、川崎医療福祉大学教授・前島伸一郎先生に「高次脳機能障害の評価と治療-失行・失認を中心に-」、文教大学人間学部助教授・石原俊一先生に「心臓リハビリテーション患者の心理社会的特徴と行動変容のアプローチ」の3講演を予定しています。非常に興味深い講演であり、一般演題ともども会員の先生方のご参加をお願いいたします。
当地方会では生涯教育研修会の担当幹事のうちの1名が、佐伯(産業医大)から、浅見豊子幹事(佐賀医大)へ交代となりました。
(事務局担当幹事:佐伯 覚)
今年は暑くなりそうですね。我が阪神タイガースは冷夏の中で独走した昨年の勢いがなくて残念ですが、リハニュースの原稿の集まりの方は、年々勢いが増しているように思えます。執筆される諸先生方の熱意に敬服いたします。リハニュースと連動して、ホームページの内容もかなり充実してきました(と思いませんか?)。担当の私自身もスケジュールを確認したいときなど「ちょっとした」用事に利用する機会が増えています。会員の皆様も気軽にアクセスしていただければ幸いです。リハニュースの編集やホームページの更新は、広報委員の重要な仕事ですが、現在はかなりスムーズに業務が流れています。実は、これらの業務には縁の下の力持ちがおられるのですが、まだ紹介されていなかったことに、ふと気付きました。リハニュースの編集担当は、学会誌刊行センターの中山るみ子さん、ホームページの更新作業等の担当は、学会誌刊行センターの苅田重賀さんです。学会との契約ですが、お二人とも広報委員会に出席していただき、一員として責任感をもって仕事をされています。日頃の質の高い仕事に感謝申し上げます。
さて、今回のリハニュースでは、ホットな話題ということで、就任されたばかりの新理事長、新理事の方々から、ご挨拶をいただきました。今後のリハ医学の展開にとって心強いお言葉に溢れ、一会員としても勇気づけられます。また、どの記事からも日本リハ医学会関係者の活発な活動の様子が伝わって来ますので、是非、明日の診療のための栄養ドリンクとして、ご一読ください。
(道免和久)
本年4月から事務局の新人としてお世話になっている髙野です。3月までは医科系の大学に長年おりましたので、「リハビリテーション」という言葉も聞き慣れておりましたし、重要な診療科として先生方からリハビリテーション医学について話を聞いたこともありました。このたび、学会事務局に来て今まで以上に身近になり、事務的立場から会員の先生方のお役に立てればと思っております。まだ日が浅いのでいろいろなことが理解できておりませんが、日韓合同カンファレンスや総会・役員の選挙と通常業務の他に大きな行事が続き、これからも事務上の課題が多いなか、丸山局長以下少数精鋭の事務局員も毎日遅くまで黙々と業務に励んでおり、皆さんの足を引っ張らないよう心がけております。今後ともよろしくお願いいたします。
なお、学会誌でもお願いしておりますが勤務先、住所等が変更の場合は速やかにご連絡ください。
(髙野 猛)