リハニュース No.23
2004年10月15日
INFORMATION
医局だより
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報告・印象記
2004年10月15日
INFORMATION
医局だより
報告・印象記
日本リハビリテーション医学会 介護保険検討委員会委員長 大橋 正洋
◆はじめに
1. 実績の評価と将来の予測
介護保険制度について、今回は制度施行後最初の改訂である。この制度においては、保険事務が電子化されていて、全国の状況を逐次統計的に評価することが可能である。今回の改訂にあたっても、これらの統計的数字が改訂の根拠として示されている。
実績として、3年間余りで在宅サービス利用者は200万人以上へと倍増し、現在も1カ月平均3万人増のペースで利用者の拡大が続いていることが注目されている。利用者の拡大に伴い、国民の制度に対する認知度も高まっている。すなわち、介護保険制度は、高齢者の生活を支える基盤になりつつある。
しかし、制度の施行によって明らかとなった課題がいくつか指摘されている。
たとえば制度施行後、要支援や要介護1といった軽度者が倍増している。軽度者に対するサービスの内容は、「家事代行」型の訪問介護による生活援助、通所介護、福祉用具貸与等が多くなっている。こういったサービスによって、要介護度の維持や改善が期待されたが、実態としては、軽度者の改善率は低く、予防効果を示していなかった。
一方、将来を展望すると、我が国は2015年に戦後のベビーブーム世代が高齢期を迎え、さらに2025年には高齢化がピークを迎える。このことから、制度を持続させるための方策を考えることが重要と認識された。
将来を展望したとき、財政的な問題が深刻であるが、それ以外に、たとえば痴呆高齢者の増加がある。現在でも要介護認定者の2人に1人は、痴呆の影響が見られ、その数は約150万人にのぼっている。こうした痴呆性高齢者は、2015年には約250万人にまで増加することが予測されている。その中で、現在約70万人とされている重度の痴呆性高齢者は、2倍近くの約140万人にまで増加することが見込まれている。
また、高齢化の進展状況を介護保険制度の視点から考えると、75歳以上の後期高齢者の増加が注目される。なぜならば、要介護高齢者全体の8割が後期高齢者であり、要介護者割合(要介護認定者数/高齢者数)も前期高齢者が4%であるのに対して、後期高齢者は26%にのぼるからである。
以上のような実績と展望に基づいて介護保険部会は前述の「見直しについての意見」をまとめている。改訂案の骨子は表に示したが、内容の詳細については上記厚生労働省のホームページを参照していただきたい。以下には、日本リハビリテーション医学会に関連が深いと考えられる給付のあり方の中から、いくつかの方向性を紹介する。
表 制度見直しの骨子 | ||
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I. | 給付のあり方 | |
○ | 基本的な考え方 サービスモデルの変化 等 |
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○ | 給付の重点化・効率化 軽度者への予防給付、在宅サービスの充実・強化、施設入所・ケアの見直し、医療との連携 等 |
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○ | 新たなサービス体系の確立 痴呆ケアの確立、生活圏域単位のサービス基盤整備、多様な「住まい方」の確保 等 |
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○ | サービスの質の確保・向上 ケアマネジメントの見直し、サービス評価、権利擁護、人材育成 等 |
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○ | 公正・効率的な要介護認定 認定調査、申請代行、認定審査会 等 |
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II. | 負担のあり方 | |
○ | 将来を見通した負担水準 負担の水準、保険料、財政調整 等 |
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○ | 利用者負担の不均衡是正 在宅と施設のバランス 等 |
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III. | 制度運営のあり方 | |
○ | 地域に根ざした制度運営 事業者指定・指導監督、保険者機能の強化、事業計画 等 |
2. サービスモデルの変化
これから10年間に予想される我が国の変化は、介護保険制度に基本的な変革を求めるものである。制度の基本となるサービスモデルについても、以下のような転換が、環境変化への対応能力を高めることになると期待されている。
「介護」モデル→ 「介護+予防」モデル
「身体ケア」モデル→ 「身体ケア+痴呆ケア」モデル
「家族同居」モデル→ 「家族同居+独居」モデル
3. 総合的介護予防システムの確立
軽度者が急速に増加し、なおかつ従来の軽度者に対するサービスが障害の重度化を予防できなかった反省から、「総合的な介護予防システム」の確立を目指すことが提案されている。これは要介護状態になる前の段階から、統一的な体系の下で、効果的な介護予防サービスを提供する体制の提案である。
予防重視を考えるときに、前述の「高齢者リハビリテーション研究会」がまとめた報告書から、要介護高齢者を以下の3つの状態像に整理する考え方が採用されている。
脳卒中モデル:脳卒中や骨折等を原因疾患とし、急性に生活機能が低下するタイプ。要介護3以上の中重度者に多い。
廃用症候群モデル:廃用症候群(生活の不活発さによって生じる心身機能の低下)や変形性骨関節症などのように徐々に生活機能が低下するタイプ。要支援、要介護1等の軽度者に多い。
痴呆モデル:上記に属さない、痴呆などを原因疾患とする要介護者のタイプ。
これまで我が国で主要な対象となってきたのは「脳卒中モデル」であるが、今後は「廃用症候群モデル」の重要性が高まるものと考えられている。原因疾患は筋骨格系の疾患をはじめとした慢性疾患が多く、下肢機能の低下や栄養状態の悪化による生活機能の低下、環境変化をきっかけとした閉じこもりや初期の痴呆・うつなど、様々である。「廃用症候群モデル」に対する介護予防・リハビリテーションについては、以下が求められている。
生活機能低下の危険性を早期に発見し、軽い段階から短期・集中的な対応を行うこと、
サービスの提供は必要な時に、比較的短期間に限定して、計画的に行うこと、
高齢者の個別性や個性を重視し、一人一人に応じた効果的なプログラムを用意すること。
一方、現行制度で提供されているサービスは、市町村事業として実施されている「老人保健事業」や「介護予防・地域支え合い事業」、介護保険制度における「予防給付」や「介護給付」の一部、医療保険制度におけるリハビリテーションの一部など様々なものがある。これらは、①制度・事業の一貫性や連続性に欠け、対象者に空白や重複がある、②サービス内容も統一性がなく、各職種間の連携も十分でない、③対象者のニーズ・状況に関する的確なアセスメントや、サービスの結果に対する適切な評価が行われていないなど、多くの課題を抱えている。
新しく提案される「総合的な介護予防システム」は、以下の3点が骨子となる。従来の介護保険制度などとの比較を図1に示した。
統一的な介護予防マネジメントの確立
市町村事業の見直し
新・予防給付の創設
ドイツの介護保険制度では、介護給付の利用者は給付を受ける前に適切なリハビリテーションを受ける「リハビリテーション前置」が義務づけられている。介護予防システムは、『予防重視型システム』への構造的な転換を意図したものである。
4. 地域密着型サービスの創設
紙面の都合で、今回の改訂で新しいサービスとして提案されている地域密着型サービスについては、図2の概念図のみ示しておく。これは痴呆老人や独居老人に対応するために、大規模の施設ではなく、居住地域毎に小規模のサービスを創設することを提案するものである。
◆介護保険検討委員会の活動
今回の改訂作業の基盤となった「高齢者リハビリテーション研究会」では、高齢者介護におけるリハビリテーションの重要性が強調されている。
病院を中心に行う「医療リハビリテーション」に対し、介護保険制度および地域を基盤として、高齢者の生活再構築を支援するのは「地域リハビリテーション」である。医療リハビリテーションにおいては、急性期・亜急性期に、十分な数の専門職が、集中的に、統制された機能訓練を行うことが必要である。このようなリハビリテーション前置が確実に行われることを前提に、地域リハビリテーションにおいても、利用者の生活再構築を目的とした支援には、専門家のチームが適時・適正なサービスを集中的に提供して、生活に関わるさまざまな側面の問題解決を図ることが必要である。
リハビリテーションは、目標と期間を限定したプロセスである。したがって地域リハビリテーションが目指す支援は、生活介護と区別されなければならない。同じ理由によって、漫然と続ける機能維持訓練はリハビリテーションと考えるべきではない。
地域において、集中的な統制された専門職のチームによるリハビリテーションを提供するためには、リハビリテーション医が地域リハビリテーションに現在以上に関わることが求められる。リハビリテーション医が地域で活動しやすくなる行政上の工夫も必要と思われる。
こういった視点が、介護保険改訂に確実に活かされるように、国会での審議が始まる前に、日本リハビリテーション医学会として、今度の改訂についての意見書提出を検討している。
第42回日本リハビリテーション医学会学術集会会長 立野 勝彦
2005年6月16日より3日間,石川県立音楽堂,金沢全日空ホテル,ホテル日航金沢の3会場で開催いたします。本学術集会が日本海側で開催されますのは初めてのことであり,地域でのリハビリテーション医学(リハ医学と以後略す)の更なる啓蒙となります良い機会と考えております。我が国にリハ医学が導入されて半世紀以上になり,その間に臨床医学の専門領域として求められてきております。最近の高度医療技術の進歩,それに伴います複雑な障害像の変化,高齢化,障害の受容の変化などによりまして,リハ医療の求められている専門性の姿も大きく変遷してきております。リハ医学は基礎科学に裏付けされた,より実効性のある専門性のある臨床医学であろうと思われます。また高度医療を駆使する他診療科との連携も重要な課題であります。そこで本学術集会のテーマを「リハビリテーション医学の専門性の追求と連携」といたしました。
招待講演として「Why does the world need a decade dedicated to bone and joint problems?」「Evolution of national institutes of health options for rehabilitation research」「脳神経細胞死防御機構-生理学的解析-」とし,リハ医学に求められていること、また老化および変性疾患の脳の基礎知識を学ぶことにいたしました。更にリハ治療の一番の関心事であります脳卒中を今一度洗いなおして,脳の可塑性とリハ治療の最新技術などにつき検討していただこうと思っております。また運動器疾患に対するリハ治療のEBMに基づくガイドラインを少しでも求められたらとも考えております。他に多くの問題につきましても今回の学術集会で専門性の追求ができたらと思います。
情緒ある古都金沢での学術集会は,学問を論じるには最適の地ではないかと考える次第でありまして,さらに加賀百万石の海,山の幸を堪能して頂ければ幸いに存じます。北陸への交通の便もよくなりましたので,能登の景勝地にも足をのばされてはいかがでしょうか。皆様の多数のご参加をお待ちしております。
会 期:2005年6月16日(木)~18日(土)
会 場:石川県立音楽堂,金沢全日空ホテル,ホテル日航金沢
テーマ:リハビリテーション医学の専門性の追求と連携
トピックス:脳卒中のリハ治療の最前線
回復期リハビリテーション病棟の現状と課題
廃用症候群のリハビリテーション
リスクマネージメント
運動器の10年―運動器疾患のEvidence―
転倒―その予防と対策―
協調運動障害のリハビリテーション
招待講演:Nicolas E. Walsh(University of Texas Health Science Center)
Joel A. Delisa(UMDNJ-New Jersey Medical School)
Mutsuyuki Sugimori(New York University, School of Medicine)
事務局:〒920-0942 金沢大学医学部保健学科
TEL 076-265-2615
FAX 076-265-2615, 076-234-4372
E-mail: jrma2005@convention.co.jp
URL http://www2.convention.co.jp/jrma2005
去る7月17日近畿地方会総会が開催され、28名の幹事と2名の監事が新しく選出されました。その後の第1回の幹事会において、6年間の長期間にわたって地方会の基礎を固め発展の舵取りをされてきた兵庫医大リハ科藤原誠教授の後任代表幹事として小生が2代目代表幹事の重責を果たすように指名されました。日本リハ医学会の代表としての理事としての責務と、地方会の代表としての責務は、本来対立したり、無関係に存在するのではなく、緊密に連携が図られることが望ましいことではあります。しかし多くの学術集会や研修会などの運営など多くの業務を果たしていくには現在の地方会の事務局機能はきわめて脆弱といわねばなりません。財政的にも人的にも厳しい事情にあります。新しい広報体制の構築とより地域に根ざした地方会の運営を目指してがんばっていきたいと思います。
●新事務局 関西労災病院リハビリテーション診療科内
Tel 06-6416-1221 FAX 06-6419-1870
E-mail: kinkireh@pac.ne.jp
担当:井上綾香 プロアクティブ・コンベンション㈱
〒650-0033 神戸市中央区江戸町93 栄光ビル2F
Tel 078-334-6873 FAX 078-334-6662
(代表幹事 住田幹男)
中国・四国地区における第14回地方会は、12月12日(日)9時~17時を予定しています。会場は岡山国際交流センターで、大会長は吉備高原医療リハセンターの德弘昭博先生です。特別講演は、関西労災病院リハ科部長の住田幹男先生に「整形外科とリハビリテーション」を、和歌山県立医科大学リハ科教授の田島文博先生に「障害者における運動とスポーツ」をお話しいただくこととなっています。一般演題は、日本リハ医学会会員であれば、どなたでも発表可能です。抄録の提出締め切りは10月17日(日)です。吉備高原医療リハセンターまでお申し込みください(TEL 0866-56-7141、E-mail: info@kibirihah.rofuku.go.jp)。第19回中国四国リハ医学研究会との同時開催となりますので、コメディカルの皆様のご参加もお待ち申し上げています。
(代表幹事 椿原彰夫)
2004(平成16)年度のリハ医学に関連する社会保険診療報酬等の改定について、学会誌「リハ医学」41巻5号に重点項目を中心に解説しました。またリハ医学41巻6号には、DPC導入におけるリハ医療への影響に関するアンケート調査の結果を報告しました。2003年度に日本リハ医学会が委託研究として行った「リハビリテーション患者の治療効果と診療報酬の実態調査報告書」をリハ医学41巻3号にその要点を報告するとともに、学会ホームページにその詳細を掲載いたしました。
本年度の活動として、2004年度診療報酬改定の影響の調査を行い結果を早急にご報告いたします。また脳血管疾患の早期加算算定において実情と矛盾する条件の是正について、他学会と連名で行政当局に要望いたします。2004年度も引き続き委託研究を継続し、リハ料に関わる重要項目を検討してゆきます。
2006(平成18)年度には、相当大幅な診療報酬の改定の行われることが予想されます。日本リハ医学会が加盟する内保連や外保連をはじめとした関係機関との適切な連携を持ち、また中医協医療技術評価分科会で計画されている調査などにも積極的に協力することにより、リハ医療が診療報酬において正当な評価が行われるように努力してゆきます。
(委員長 田中宏太佳)
1. 論文賞選考:2003(平成15)年度 日本リハ医学会論文賞選考を行い,6月の第41回日本リハ医学会総会にて表彰を行いました(リハニュース22号で紹介)。
2. 外国のリハ医学雑誌との提携について:本学会のOfficial Journalの第一候補となっている英文誌Journal of Rehabilitation Medicineとの提携を具体的に検討している段階です。
3. 電子媒体を使った投稿およびその規程について:PDFファイルの形で提出する際の投稿規定を検討しております。さらに細部の詰めが必要ですが、本年秋より試行期間を設け、来年春にはPDF化をめざしたいと思います。
4. 投稿論文:2004年に入ってから投稿論文数の伸びがやや鈍っております。上述した電子媒体を使った投稿を含め、査読過程のさらなる迅速化などさらに努力していきたいと思います。積極的なご投稿をお願い申し上げます。
5. 委員長交代:赤居委員長が理事となられ、後任として今年7月より正門由久が編集委員長に就任しました。その任の重さに身が引き締まる思いです。ご指導をよろしくお願い申し上げます。
(委員長 正門由久)
関連機器委員会では、「運動療法機器の分類」を試みることをテーマの一つとして活動を行ってきました。まず、機器の分類に際しては運動療法自体の分類を行い、これに現在市販され臨床の現場で使用されている各種の機器をあてはめてゆく、という作業を行いました。その結果「運動療法の分類」と「運動療法機器の分類」の関連機器委員会原案が完成しました。
運動療法の分類はI. Mobility exercise、II. Strengthening exercise、III. Total body (cardiopulmonary, conditioning) endurance exercise、IV. Motor coordination or educability exercise、V. Skill and performance、VI. Speed/splint training、VII. Relaxation exercise、VIII. その他、の8項目になりました。これらに対応する機器を分類しております。
委員会原案をいくつかの施設にアンケート調査を行い、ご意見をうかがう予定にしております。その際には、会員のみなさまの原案についてのご意見をお寄せくださるようお願いいたします。
(委員長 徳弘昭博)
理事の改選に伴い、担当理事が立野勝彦先生から才藤栄一先生に交代となりました。理事会と委員会との円滑な連携にご尽力いただいた立野先生に厚く御礼申し上げます。才藤先生には新理事としてエネルギッシュなご活躍を期待しています。
本号が発行される頃には国際福祉機器展が開催されています。今年も昨年に引き続き日本リハ医学会の展示を行います。今年は才藤先生のアイデアで、『リハ科医と福祉機器』をテーマに、パネル、配布資料を準備しました。配布資料はリハ科医を紹介するパンフレット、リハ科専門医一覧、リハ科医が関係する福祉機器開発の三点です。福祉機器の開発に関する情報を、学会誌を通じて募集したところ21件の応募をいただきました。ご協力に感謝いたします。リハ科医紹介パンフレットは道免委員の卓越したセンスによる自信作です。理事会では国際福祉機器展での配布に限るという条件付で承認してもらいましたが、福祉機器展での参加者の反応を見て、できるだけ早く会員の皆様に配布し、有効活用していただけるよう改定作業を進めたいと思います。
ホームページも待望の「市民の皆様へのページ」が完成し、福祉機器展に合わせて公開いたします。トップページは個性的ですっきりしたデザインに更新いたしました。他の医学会のトップページと比べてみてください。 本号にはGW・夏期リハセミナーの感想文を掲載しましたが、昨年の反省から、今年は教育委員会夏期セミナー担当の石田健司先生にご協力いただき、多くの学生さんから感想文をいただくことができました。『今時の若い者は』なんてとんでもない。私の学生時代を思い起こしますと恥ずかしくなってしまうほど、皆さんとてもしっかりと自分の将来を見つめながらまじめに勉強されています。純粋で瑞々しい文章は、忙しい業務の中で学生教育にご協力いただいた各施設の先生方の励みになったことでしょう。この企画は是非来年も続けたいと思います。
(委員長 水落和也)
1928(昭和3)年、久留米市と日本足袋(ブリヂストンの前身)の協力の下、久留米大学の前身である九州医学専門学校が設立されました。現在、久留米大学には5学部11学科、2附属病院、附設中・高校の施設があり、全体で8,800名の学生、2,800名の教職員が在籍しています。リハ部門では、私が1,263床の急性期病床を持つ大学病院リハ部の責任者、梅津助教授が50床の回復期病棟を持つ300床の医療センターリハ科の責任者、リハセンターはこれら大学全体のリハ医療を統括する部門ということで、整形外科の永田教授がセンター長を兼務しています。実質的な運営は副センター長の私が行っていますが、リハ部門は常勤医師5名(教授1、助教授1、助手3)、非常勤医師4名、大学院生医師2名の陣容です。来年度からはリハセンターで3名ずつの卒後臨床研修が開始されます。少人数ですが若いリハ志望の医師がおり、彼らを一人前のリハ医にするために、梅津助教授にご尽力いただいています。
主な研究テーマは筋骨格系廃用予防ですが、無重力による廃用は興味あるものであり、(財)日本宇宙フォーラムより助成を受け、公募地上研究「宇宙環境で有効な骨格筋維持装置開発の研究」を行いました。本年9月4日の成果報告会では、筑波宇宙センターの研究員から、われわれの方法が宇宙飛行士の筋力維持に使用できる可能性が示唆され、研究を継続しています。その他、研究部門では、バイオメカ研究の充実を図っていますが、先日、企業からの依頼で最新型の洗濯機数台がリハセンター動作解析室に持ち込まれ、洗濯機の違いによる腰部負荷を梅津助教授が中心となり解析しました。このような企業からのオファーへの迅速な対応も、大学としてこれからさらに重要になると思います。なお、職員の理学療法士4名も本学の社会人大学院制度を利用し、研究に加わっています。
大学開設76年の歴史の中、久留米大学のリハ医療は新たなスタート地点に立ちました。大きな目標は、大学のリハ医学部門として、臨床、学術、人事、財政、全てにおける真の独立です。容易なことで無いことは身に染みていますが、これからも努力を続ける所存です。今後も日本リハ医学会の皆様のご指導、ご鞭撻、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。
(志波直人)
久留米大学病院 〒830-0011 福岡県久留米市旭町67
TEL 0942-35-3311, FAX 0942-32-5916
http://www.hosp.kurume-u.ac.jp/index.html
久留米大学医療センター 〒839-0863 福岡県久留米市国分町155-1
TEL 0942-22-6111, FAX 0942-22-653
http://iryo.kurume-u.ac.jp/
北関東の太平洋に面した茨城県の霞ヶ浦の南に、県初のリハ専門病院として1996(平成8)年12月に当院は開院しました。遅れていた茨城県のリハ医療の整備と充実を主導し、また1995(平成7)年4月に開学した医療専門職(PT、OT、看護、放射線)を養成する4年制大学の、全国でも初の付属病院として、学生教育と研究を行う役割を担っています。
地下1階、地上3階の建物の中に、PT室801 m2、OT室570 m2の総合リハ施設と、言語(Ⅰ)、臨床心理、相談部門をもち、病床は120床のうち、成人病棟の45床は2000(平成12)年10月から回復期リハ病棟、もう一つの成人病棟45床と小児病棟30床は障害者施設等入院基本料算定病棟として機能しています。
病院医師10名、大学との兼任医師7名のなか、リハ科専門医は院長を含めて4名で、日本リハ医学会の研修施設の認定も受けています。ほかに認定臨床医や専門医をめざす、初期研修を終えた医師を対象に最長3年間受け入れる制度もつくり、常時1~2名の医師が研修しています。
常勤スタッフは、PT 10名、OT 9名、ST 3名、臨床心理1名、MSW 2名、看護2:1を満たす人員のほか、薬剤師3名、管理栄養士2名もチームに入って活躍しています。
新たな病院機能として、1998(平成10)年度から厚生労働省によって進められていた地域リハ支援体制の「茨城県地域リハ支援センター」に指定され、地域リハの中核としてもその責務を果たしています。また今年度から制度化した臨床研修制度においては、近隣2つの大学病院の協力病院として、リハ科研修を希望する研修医を受け入れることにしています。
診療科は対外的にはリハ科単科の標榜で、全医師が主治医として、リハ処方、計画書の説明をはじめチームリーダーとして動き、全入院患者に同じ体制のチームアプローチを行っていますが、院内標榜として内科、神経内科、整形外科、小児科等を掲げ、各々の専門領域に応じた疾患の診療も行っています。医師全体で診療部を組織し、「医局」に代わる集まりを形成し、協力して全体のリハ医療を推進しています。
最近の傾向としては、県内他病院のリハ医療提供能力が高まってきたためか、初期から回復期を経てさらに次の段階のリハを希望するケースや、回復期でも一般民間病院では対応しにくい重度障害のケースが多い印象があります。入退院は年間450人程度で、疾患は脳血管障害、骨関節疾患、神経筋疾患、脊髄損傷、小児疾患、頭部外傷等、平均入院日数は70日、退院先は、約85%が自宅、残りは転院、施設入所となっています。
リハ後進県であった茨城県をリハ先進県にと日々努力しています。
(伊佐地 隆)
茨城県立医療大学付属病院
〒300-0331 茨城県稲敷郡阿見町阿見4733
TEL 029-888-9200, FAX 029-840-2418
http://www.hosp.ipu.ac.jp
◆北海道大学
●名古屋市立大学3年 藤原由有希
「疾患や怪我が治る」ということと、「疾患や怪我の前の状態に戻る」ということの間を埋める医療に携わりたいと考えていましたが、リハというとOT(作業療法士)やPT(理学療法士)が行うものというイメージが強く、リハ医の役割とは何かを知りたくて北海道大学のセミナーに申し込みました。参加者が3年生だけだったためか、5、6年生で行われる病院実習とは違い講義と実習を組み合わせた形式で、内容もリハ医とは何か、といった概念的なことを教えていただいたり、経頭蓋磁気刺激法やボツリヌス毒素を用いているところを実際に見せていただいたりしたほか、OTやPTの先生にもスプリント作成やROM訓練などの実習でお世話になり、リハというものに広く触れさせていただきました。臨床の講義を全く受けていない状態で参加することに不安があったのですが、非常にわかりやすくて興味が沸くものばかりでした。参加者のレベルを考えた内容を考えてくださっていると感じました。臨床を学んでからだとさらに得られるものがあると感じたので、また勉強してから参加してみたいと思っています。医療現場も体験できて今後の学生生活に対するモチベーションも上がったので非常に有意義でした。
●山形大学医学科3年 猪飼紗恵子
この夏、北大病院のリハ科の研修を受ける機会に恵まれました。リハというとPTやOTの担当する仕事としてのイメージが強く、医師としてどのように関わるのかについては漠然としていました。実際にリハ科が網羅している分野は脳神経外科をはじめ多岐にわたり、驚きと今後のニーズの高さを感じました。3日間は神経生理学をはじめとした講義また実際の検査の様子、診療、回診など多くのことを研修しました。特に私が感動したのはリハ科にいらっしゃる先生がたお一人お一人が、リハに対する明確な認識を持っておられることでした。それはどの先生方も、リハとは、病気それ自体の疾患を治すことから、その障害に対しての生活能力を高めるための治療を行うという高い認識でした。リハ科の先生方は疾患の治療終了後またその退院後のことも見据えた上で、より健康的な生活を患者さんに戻そうと日々努力されていました。WHOが定めている健康についての基準がありますが、やはり生活していく上でおいしいものが自分で食べられる、好きな所に自分の足で行けるなど、より快適に過ごすことがとても大切であると思いました。さらにリハ科ほどPT、OTとの密接な連絡をとってチーム医療を行っていく科はなく、そのうえで患者さんお一人お一人にあった治療の方向性を決めていく医師の責務もとても大きく、やりがいのある仕事と率直に感じました。今回学んだことをこれからの勉学に活かして参りたいと思います。
◆金沢大学
●金沢大学医学科6年 越村英世
私は8月18日~20日の3日間、金沢大学でのリハセミナーに参加しました。私が当初描いていたリハは、足を骨折した人が松葉杖をついて歩く練習をするようなイメージでありましたが、少なくとも金沢大学のリハはこのようなイメージと大きく違っていました。
胸部や腹部外科手術の術前や術後の患者さんが多く、回診では主に去痰や呼吸法についての指導がなされていました。このように術前後の患者にリハが介入するようになったのは最近のことらしく、患者の在院日数が短縮されたということでありました。そのようなリハは全く想像していなかったので、その守備範囲の広さに驚きました。 もちろん、脳血管障害の患者さんも多く、廃用性萎縮や肺炎など、麻痺をもつ患者に多い合併症の防止について指導がなされていました。ほかにも、整形、内科など扱う患者さんの疾患の種類は多く、また患者さんの数の多さにも驚きました。
しかしながら、金沢大学のリハ部はいまのところ独立した科ではなく、病院の地下のあまり目立たないところにあり、大学のカリキュラムにもほとんど取り入れられていないので、学生の多くが自分と同様にリハに対する理解が少ないと思います。自分にとって新しいリハに出会えることができて、とても有意義な3日間でした。
◆昭和大学
●秋田大学医学部5年 竹内香織
今回、昭和大学病院リハ科で2日間にわたりリハセミナーに参加し、リハの現場やリハ医の役目、医療現場でのリハという概念の大切さなどを学ぶことができました。私がリハに興味を持ったのは、ボランティアを通して施設や在宅で障害を持ちながら暮らす子供たちと関わり、その子達の生活を見ていたからです。生活という視点に立って医療を行うことはできないかと考えていたときに、リハ科に進んだ先輩から話を聞き、実際のリハ医の仕事を見てみたいと思いました。カンファレンスでは、医師、看護師、PT、OT、ST(言語聴覚士)、SW(ソーシャルワーカー)それぞれから患者さん一人ひとりの現状や問題点、性格にいたるまでの意見が交わされ、話を聞いているだけでもその患者さんの人間像が浮かんでくるようでした。回診では、患者さんが実際に困っていることを聞き、ベッドの状態にまで目を向けているのが印象的でした。今回のセミナーを通して、リハ科の範囲の広さを感じました。また治療+α の視点で患者さんの現状を捉え、よりよい方向へと向かっていけるという部分に大きな可能性を感じました。
◆慶應義塾大学
●北里大学医学部5年 正岡亜希子
リハ科と言いますと、整形外科と神経内科を足して2で割ったようなものだと思っていたのですが、実際見学してみると予想していた以上に守備範囲の広い科だと感じました。膀胱内圧の検査は泌尿器科のようで、嚥下造影は耳鼻咽喉科みたい、血圧の管理は循環器内科で、おまけにメンタル面でもサポートしなくてはならないようで、このような「いろんなことができる」という点は無限の可能性が感じられて大変興味深くて、またいささかホームドクターというものと近いものがあると思いました。科学が好きで医学を選んだ私ですが、ポリクリをやっていて時々その科学的なところに嫌気が差してしまうことがあるのですが、その点リハは科学でありながら人間らしさ、人間臭さの感じられる分野だと思いました。しかしながら守備範囲が広いだけあってその分たくさん勉強しなければならないという現実も痛感しました。
今回、医学生である自分はとても恵まれていると実感したのですが、それは職人や芸人が自分の親方や師匠に知恵や技術を教わるのと同じように先生方が無償で熱心に私に指導してくださったことです。それは心からリハを必要だと考え、また患者さんを大切に思うからこそできることではないのでしょうか。大変感謝しております。蒔いた種が芽を出しやがて花を咲かせるように、先生方に指導していただいた私たち学生が皆いずれリハ科を選びリハ医として働くことになればよいと思います。未来のことはわかりませんが今日現在、リハにしようと思っております。
リハの好きなところは、脳梗塞なら壊死してしまった組織はもう元には戻らないけれどその時点で残っている能力や機能を最大限に使ってそれ以上悪化させないで維持を保ちつつ更なる機能の向上を目指すというポジティブ思考なところです。
◆東京慈恵会医科大学
●東海大学医学部4年 東海林明里
このたび、東京慈恵会医科大学第三病院リハ科夏期セミナーに参加しました。4年生ではほとんどの病院は実習の受け入れ対象外になっており、そのような中、大学の掲示で日本リハ医学会のセミナーのことを知り、出身地でもある東京都狛江市の東京慈恵会医科大学第三病院に実習を申し込みました。もともとボランティアでリハ関連の病院にも行ったことはあり興味もあったのですが、実習としてリハ科の中を見るというのは初めてのことでした。当初リハに何の知識もない私は、リハというのは整形外科の延長と考えていたのですが、患者さんの8割は脳卒中の回復期にある方だという事実に驚かされました。他にも入院患者さんの多くは、神経内科の分野の疾患ということには目からうろこでした。実習ではOT室PT室で実際のリハの様子や、外来、他科からの依頼患者さんの診察、筋電図検査等を見学しました。リハ科でのチーム医療の重要性というものを強く感じました。その他、カンファレンスや医局での勉強会、本院で行われた慈恵会医科大学リハ科全体の勉強会へも参加させていただきました。さらに、最終日の2日間は本院にてbrain cuttingをさせていただく機会があり、大変勉強になりました。短い期間でしたが、多くのことを学ぶことができ充実した5日間でした。またその間だけでも患者さんの回復を眼で見ることができ、リハ科は医者の喜びを感じることができる科だと思いました。とてもよい体験をさせていただき、将来への視野が広がりました。
●東京女子医科大学5年 西川愛子
この夏、慈恵医大のリハ科で実習をさせていただくことになりました。私の大学では、独立した病棟や外来をもっていないため、医療スタッフと患者さんとの関わり方、治療計画の立て方などについて具体的な実感が持てずにいました。しかし、この実習を通して、患者さんの到達目標へ向け、医師が積極的にリーダーシップをとることの大切さを学びました。病棟では、患者さんが自主的にトレーニングできる環境があり、活発に行動していたことが印象的です。これまでの私の病棟実習では見慣れない光景で、新しい発見ばかりでした。実習の合間には、先生方がリハ科医師の役割、今後の展望などたくさんの話をしてくださいました。また、brain cuttingでは解剖学的知識の確認だけでなく、画像所見と臨床症状を突き合わせた深い考え方ができるようになりました。普段では、あまり時間が割けず、貴重な内容でした。
実習期間中は、他大学の学生や患者さんとふれあう機会も数多くあり、刺激を受け合う楽しい毎日でした。また、様々な職域の方との交流ができ、患者さんを全身的に捉える姿勢を学ぶきっかけとなりました。充実した実習ができ、先生方には感謝の気持ちで一杯です。そして、素晴らしい医師のモデル像を見つけられたことをとても嬉しく思っています。
◆横浜市立大学
●横浜市立大学医学部5年 澤崎 翔
私が今回リハ科のセミナーを希望した理由としてスポーツのリハに興味があったことと、また先生が授業中におっしゃった「治療するだけが医療ではなく、治療のあとに後遺症などが残ってしまった人がどのようなリハを受けて生活されているかを考えることも大事である」ということを自分の目で実際に見てみることであった。4日間の実習で学んだこと、感じたことを以下に述べていきたいと思う。
初日と2日目の午前中は大学病院において病棟回診、カンファレンス、外来・リハ室見学をさせていただいた。カンファレンスでは一人ひとりの患者さんに対して医師、PT、OTなどそれぞれの立場から見た意見が寄せられ、相談し今後の治療方針を決定していくなど、チーム医療がどのように機能しているかを学ぶことができた。
2日目の午後はこども医療センターにおいてリハ室と車椅子の創作を見学させていただいた。こどものリハと聞いて最初はあまりピンとこなかったが脳性麻痺や人工呼吸器をつけた子など様々であった。こどもということでリハは親同伴のもとで行い、レクリエーション的なものを混ぜてこどもが飽きないように工夫されていた。また車椅子は多種多様であり、姿勢に応じて設計が異なり、また人工呼吸器を載せられるようにしたり、母親の荷物を載せられるようになど個別のニーズに応じて作られているのが印象的であった。
3日目は横浜市立脳血管センターにおいてリハ室と病棟を見学させていただいた。新設ということで綺麗なこともあったが、リハ室はかなり広く、医師、PT、OT、STの数も多く、リハが充実していると感じられた。また病棟でも廊下が広く作られていて、水道の下も車椅子の方がそのまま使用できるように空間があるなど車椅子の方が生活しやすいように配慮してあった。
4日目は藤沢市民病院においてリハ室を見学させていただいた。市中病院ということもあり忙しく、患者さんに対して医師やPT、OTの数が足らないということを先生はおっしゃっていた。整形外科的な疾患が多く、患者さん自身でリハを行える方は指示に従って行っていた。私が今までに持っていたリハ室のイメージそのままという感じであった。
今回の実習では残念ながらスポーツのリハは見学できなかったものの、結果として様々な病院において、こどもから老人といった幅広い年齢層のリハを見学することができた。また、先生と話す機会も多く、リハに対する理解が深まると同時に問題点を知ることができ、有意義な実習となった。最初にも述べたが、治療を受けた方がその後どのような生活を送るのかを考えつつ、今後の実習に活かしていきたいと思う。
●2004年8月23日から4日間、横浜市立大学リハ科で実習をしました。このリハセミナーに参加したのは、大学で理学療法を学ぶ妹からリハについて話を聞くうちに興味が湧いたためでした。以前から興味は漠然とあったものの、大学の講義では、リハについては整形外科の講義の中の1コマのみ、臨床実習も整形外科での実習中に少し触れた程度であったため、リハ医というものがどういった役割を果たしているかよくわからないまま実習が始まりました。
実習の前半2日間は、大学病院内で朝の回診、外来診察、カンファレンスなどに参加しました。後半の2日間は、関連施設である横浜市南部地域療育センター、横浜市立脳血管医療センター、横浜リハセンターの見学をさせていただききました。
この4日間の実習で印象深かったことをいくつか述べたいと思います。まず、特に実習で実感したのはリハ医が携わる対象患者と対象疾患の幅広さです。整形外科、神経内科、脳神経外科、小児科などの想像以上に多様な疾患をもつ小児から高齢者までの患者をみることは、今まであまりなかったことなので驚きを感じました。
さらに、リハにとってはそうした患者の診断だけでなく生活背景、家族背景が大きな要素を占めており、そうしたことを踏まえて、リハを行いfollowしていく様子は、主に疾患を診る他の診療科との違いを感じ、新鮮でした。“life”という言葉は他の科では“生命”を意味するけれど、リハ科では“生活”を意味するという先生の言葉が非常に心に残りました。疾患を治療し、治ったら終わりではなく、そこからいかに患者のQOLを高めていくかが大切であるという視点は、これからの自分にとっても必要なものであり、常にそうした視点を持てる医者になれればと思いました。
また、リハは他の診療科以上にチーム医療が大きな役割を果たしていることもこの実習で実感したことのひとつです。PT、OT、ST、臨床心理士、ケースワーカー、看護師、医者で大きなチームをつくって患者の治療を行っていく。これがうまく機能するためには、それぞれの職種の理解と尊重が必要であり、またコミュニケーション能力も必要とされることがわかりました。特に、リハを実際に行っていくのはPT、OT、STなどであり医者はそれをまとめていく立場であるということもカンファレンスなどを通じて実感しました。この実習に参加して、なんとなくではありますがリハ医について、またリハというものについて理解を深めることができたように思います。
◆聖隷三方原病院・国際医療センター
●滋賀医科大学6年生 佐藤 亮
私は大学で学んだリハは整形外科で習ったぐらいで、大学のポリクリでは体験できませんでしたので、医師として働く前に是非どういうものか見てみようという気持ちで今回聖隷三方原病院(GW)、国際医療センター(夏期)においてリハセミナーに参加しました。2病院とも、いい意味で私のリハ医のイメージが裏切られ、本当に実際に見に行くことができて良かったと思います。私は、リハ医といえばPT室にいて機能回復訓練をしている専門家で・・・などと勝手に思っていたのですが、全く違っていました。まず、驚いたのは、PT、OT、ST、医師と様々な職種が混ざり合い、カンファレンスに参加しているということでした。リハの内容を考えれば当たり前のことなのかもしれませんが、カンファレンスといえば医師のみというのに慣れてしまっている一学生としては、とても新鮮でありました。次に、先生がパワフル、かつ 、とても行動的で病棟のあちこちを行脚し、積極的に各専門科のカンファレンスに参加し、リハ的な視点からアドバイスをしておられました。また嚥下カンファレンスも主催したり、看護師向けの講習会も開かれたり、積極的に行動するのがリハ医なのだと新たな視点を得ることができました。活動的なリハ医のいる病院は、その土壌があること自体で良い病院、研修病院だと思います。これからリハセミナーに参加される学生も徐々に増えてくると思いますが、リハの現場にいる先生方には、私が戴いたような熱気をどんどん伝えて欲しいと思います。
◆聖隷三方原病院
●今回GWセミナーに参加して得られた一番の宝物は、聖隷三方原病院のリハ医の熱さでした。飲み会の席で語られた先生方のリハに対する情熱を垣間見ることができただけでも、これから医療に携わる僕に対する大きなはなむけであったと思います。聖隷三方原病院のあとも病院見学に行く機会に恵まれましたが、リハは充実しているか?PT、OTの数はどうかなど自然に目がいくようになりました。そのような視点で見て改めて、聖隷三方原のチームは人材が豊富で恵まれているのだなと思いました。
今回は聖隷の得意とする嚥下を見ることができませんでしたが、機会があればまたぜひ見せていただきたいと思います。
●実習内容は外来診療、ベッドサイドでの新患の診察、VF、ホームエバリュエーション、各カンファレンスなどリハ科の日常的な診療をそのままに見学・実習させていただきました。そのため、リハ科の診療がどのようなものであるか、その重要性、必要性がこれまでよりよく分かり、リハ科を志望する気持ちが強くなってきました。卒後、どのような施設で研修をするかは未定ですが(とても迷ってます)、この経験をもとによく考えてみます。
●2日間という短い期間では、なかなかリハのリの字も理解できたとはいえないと思いましたが、何かきっかけになるものもつかんだ気がします。帰りにKスプーンも買って帰りましたし。セミナーを通して感じたことを項目別にまとめて書いてみます。
①リハとイメージ:多くの学生がイメージしているのはリハはPT、OTの仕事だということ。つまり「医師がリハに関わる意義」がやはりつかみづらかったと思います。この分野で治療的な介入は先生方が説明されていたとおりそもそもあまりなく、「cureよりcare」という割と新しい考え方が根底の倫理観であると思われます。ではなぜ医師がやるのか? コストパフォーマンス的にも医師を1人作るより優秀なコメディカルを1人作った方がはるかに安いし効率がいいのでないかと思います。全人的に見ることのできるコメディカルを養成することで不足することがあるかという疑問がわいてきました。(最も聖隷のような嚥下障害を扱う場合、嚥下造影や、内視鏡などは免許の上で医者しか扱えないでしょうが。)
②リハと専門分野:今回のセミナーの目的とは反するのですが、個人的には全くリハ医学に対して無知であったので、この分野にどんな専門が存在するのかがちょっとした疑問でした(これは終わって皆で話していた中ででてきた疑問ですが)。つまり今回は先生の得意な嚥下障害のリハに対しては入り口だけは見えたのですが、他の分野、例えば整形外科的なアプローチなど他の専門分野が覗けなかったのが少し残念でした。
③まだまだこれから!というイメージでした。医学がこういう「慢性疾患のケア」に光を当てた歴史は浅いと思います。まだまだこれからが楽しみな分野です。私自身は割りと急性期の医療が好きなので専門とすることはないかもしれませんが、こういう医療の分野もすごく大切に考えたいと思っています。この初心を忘れないようにしたいと思っています。
●1日間だけでしたが、午前中はリハ科を中心に施設見学をさせていただき、聖隷三方原病院の医療・福祉が提携しあい、患者さんの自立援助をトータルに見ようという姿勢には深く共感を憶えました。
私は大学で障害を持つ方々に関わるサークルやNPOに所属している関係で、個人的に、障害を持つ方と交流する(飲んだりしてるだけですが…)ことが多かったため、自立するということの重要性についてよく身にしみて感じます。「障害がある」というもっともらしい理由で人生の楽しみをあきらめている、または諦めさせられている人達に、希望を与えておられることには感銘を受けました。
その分、1日目を見学できなかったのでその効果について、患者さんを通してみることができなかったのは本当に残念でした。夏休みにまた、見学をお願いしていますので機会がありましたらまた見せていただきたいです。
午後はリハを中心に講義をしていただき、勉強になりました。すごくわかりやすく、使える知識を中心にまとめられていたと思います。全く飽きずに見ることができました。
●実習中は、外来見学から、病棟、ホームエバにいたるまで大学ではできない経験が多くあり、とても新鮮な気持ちで過ごすことができました。
5年生での1年間のポリクリを終えて改めてリハの仕事を見てみると、とても重要な仕事をしていることが良く分かりました。
5年生のポリクリの時に見学させていただいた嚥下造影では、その検査の重要性や意味が良く分からずに見ていたのですが、今回は多くの患者さんが経管栄養や胃瘻で入院生活を送っている様子を見た後でしたので、経口摂取に移行する難しさや必要性もある程度理解して、違う視点から実習に臨むことができました。
また、大学では寝たきりにされている患者さんも、早い時期から生活復帰に向けて積極的なアプローチがされている点に驚かされ、病院によるリハの質の違いが患者さんのその後の生活に大きな差を与えているのを見て、質の高いリハの普及の必要性を強く感じました。
リハで入院、通院している患者さん達を見ると、みな目的意識を持って生き生きしている姿が印象的でした。それは、患者さん達にとっては良く分からない病気が治るよりも、元の生活に如何にして復帰するかを目標としたリハは本当に必要なことなのだからだと思います。
近年の医療技術の発展で、脳血管障害などの障害を残す疾患の救命率は向上しましたが、その先にある患者さんの生活復帰については考えられていない現状があることに今更ながら気付きました。そのサポートをするリハは今後ますます、需要が大きくなることと思います。その一端を担うリハ医の仕事にとても魅力を感じました。先生方の協力体制のすごさに驚かされました。
◆兵庫医科大学
●琉球大学医学部6年生 若井貴美子
リハ医学には以前から興味を持っていたのですが、リハ医の役割があまり分からず、大学でリハ部を選択実習しました。その際、ますますリハに興味を持ち、今回はリハ医学の教室があるところで実習をさせていただきたいと思い、兵庫医科大学の夏期リハセミナーに申し込みました。2日間という短い期間でしたが、リハ概論をはじめ、外来やカンファレンス、嚥下造影検査の見学、リハロボットや物理療法、理学療法、高次脳機能検査、嚥下障害食などの実際の体験、一般のリハ病院での病棟実習など、盛り沢山の内容が含まれている実習でした。
セミナーに参加し、大学病院にリハ医学教室が存在する意義は、医局員が多いことだと強く実感しました。先生方のバックグラウンドや経験年数が様々で視野を広められること、また個性的な人が多くとても楽しい雰囲気であること、しかし、それらの多種多様性の元には共通した熱いリハマインドがあるということ。今回のセミナーで多くのリハ医の先生方と話す機会を得、それぞれの先生の熱い想いを聞くことができたことが最も貴重な経験でした。
リハ医療は、患者さんのQOLを重視すること、臓器を診るのではなく人として診ること、幅広い疾患を扱うこと、チームでアプローチするところなど、医療の重要なエッセンスがすべて含まれているように感じます。医療というと、治療の面に注目が当てられがちですが、障害の面を扱うことのできる医師の存在は重要であり、またチームアプローチをリードしていくリハ医の役割を充分に理解できたような気がします。
今回、夏期セミナーに参加し、リハ医学への興味がますます膨らみました。将来、何科に進むかはまだ決めていませんが、たとえ他の科に進むとしてもリハ医学という分野、またその考え方を知ることができたことは大変有意義であったと思います。その点で、すべての医学生がリハ医学を学ぶことのできる体制が作られることを望みます。
◆高知大学
●高知大学医学科5年 永森 史篤
この夏、私は高知大学医学部附属病院のリハ部を見学させていただきました。以前からリハには興味があり、ポリクリの際にはより積極的に実習に取り組もうと決めてはいました。しかしながら、私の実習班が整形外科・リハ部をまわるのが来年2月であったため、待ちきれなくなり参加をお願いしたのが実際のところです。
今回のリハセミナーにおける一番の収穫は、自らの持つ医師としての将来像をより明確なものにできたことです。繰返しになりますが、私は以前からリハに興味がありました。というのも、現在のような高齢社会において「機能維持」「機能回復」の観点から高齢世代にアプローチすることが重要と考えたことが背景にあったからです。
今回のセミナーでは、高知大学医学部リハ部の石田先生が自治体と協力して取り組んでいらっしゃる、地域リハやパワーリハについて、その最前線の現状と問題点、今後の展望についてお伺いすることができました。また、県の健康増進課の職員の方々との懇談にも立ち合わせていただき、具体的な内容を実感することができました。
また、実際のリハ部の現場を見学させていただいて、PTの方々の専門知識が深いものであることを再認識しました。それはつまり、リハ実施においてコメディカルの人々の相互理解と協力が必要不可欠だということであり、それを肌で感じることができたのはよい経験となりました。
回復期リハや包括的リハの概念が広まりつつある現在においても、問題点は少なくないと思います。根底にあるマンパワーの不足によって、通所リハの質の低下や訪問リハの停滞などが生じているため、さらに増加する高齢者人口に対して地域リハを徹底することが困難な状況は続くだろうと考えられます。今後は「福祉」、「介護」と「医療」を結合させていかねば、それらから漏れる高齢者を出してしまうことになります。その結合にはリハ、特に予防リハの導入が重要であり、それがひいては健康寿命を伸ばす鍵になるだろうと考えさせられました。
今回のセミナーで得られたものを糧にし、より明確にできた自らの将来像を実現するべく、今後の実習、勉学に励みたいと思います。
●千葉大学医学科5年 濱野 剛
高知の城下へ来てみいや、じんまもばんばもよう踊る、よう踊る~♪。2003年と2004年の夏は非常に充実した夏だった。そう、単なるセミナーに終わらず、セミナーの内外がともに充実していた。高知のうまいもん、よさこい練、人の温かさ、リハ医の挑戦、PTさん・OTさんのリハ魂。すべてが新鮮で、刺激を大いに受けた2週間だった。(2003年は夏期セミナー5日間、2004年は夏期セミナー3日間+よさこい5日間)
『何で高知に来たん?』高知に来て、会う人、会う人に聞かれる質問がこれだった。実は、高知には私なりの思い入れがあった。高校3年の夏、一念発起して回った四国遍路。結局、途中で頓挫して遍路を終えたが、その遍路を終えたのが、高知市を越えたところにある土佐市だった。5年後の大学院時代、香北町の高知工科大学で初めての学会発表をした。そうして、思い出の多い地である高知でのセミナーに参加したのである。(実は、高知医科大学が高知県南国市というトロピカルな名前の場所にあったことが一番の決定打だったのであるが、それはそれ。)
そして、2003年の夏、高知に来てリハに対する考えは180°変わった。リハの考え方が科に関係なく必要であること、リハが整形外科だけでなく神経内科や呼吸器、新生児など多岐に渡っていること、コメディカルとの連携が非常に重要なこと、コメディカルのモティベーションが高くリハ魂に熱いこと、装具や補助具の開発が患者さんのQOL向上に密接に関連していること。どれもが、机上の医学を学んでいた4年生の私にとって新鮮で刺激的だった。
また、患者さんへの医大生の接し方も千葉大生と異なるところがあり、学ぶべきところが多いと感じた。千葉大の中にいるだけでは、千葉大の良さも、他大の良さも知ることはできない。一度外に出て、世界を見渡そうとすることの必要性を知った。
さらに、高知のよさこいとの出会いがあった。残念ながら、前夜祭のパレードだけを見て私は千葉に帰ったが、それだけでも十分に刺激的なものだった。躍動感とスピード、踊り子と観客との一体感。高知医科大学に来て感じていた高知の人の持つ力や温かさの原点を知った気がした。そして、住み学び働く環境の重要性を感じた。単に病院の中だけでなく、病院の外でも多くのことを学べる環境が高知には揃っているように思えた。
2003年夏を総括すると、理想の医師像を模索し始めた夏だったといえると思う。医学を志すものには魂が必要であり、その魂は机上では学べないことを知った。世界を見渡すことの必要性と環境の重要性を考えさせられた。実に、リハセミナーの名だけでは想像できないものを私は得たのである。
そして、2004年夏。合併後の高知大学医学部のリハセミナーに私は参加した。2003年に感じたことを再確認しつつ、千葉大でのポリクリで感じたことを踏まえて、理想の医師像の更なる模索を行おうと考えた。そして、また一歩、今年も前進したように思う。
A 構音とは、堀口1)によれば「下顎骨・舌・口蓋帆・口唇などの発語器官を動かすことによって、口腔・咽頭・鼻腔の形態を変化させ、言語音として必要な特性を音声波に与える操作」と定義される。一般的には発音、また専門領域によっては調音とも言われる。発語器官の変化によって日本語の子音や母音、半母音などが作り出されるが、さまざまな原因によってこれらに異常を来した場合、構音障害と呼ぶ。通常、機能性構音障害(functional articulation disorders)、器質性構音障害(organic articulation disorders)、運動障害性構音障害(dysarthria)の3つに分けられる。
以上のような構音障害の評価法であるが、聴覚的評価と、機器による評価の2通りが用いられる。聴覚的評価は、聞き取りによる方法で、実際的、かつ総合的であるが主観的である。評価者によって、あるいは同じ評価者によっても時期によって聴取成績が異なる可能性がある。しかし、経験を積んだ言語聴覚士によって実施される検査では再現性が高い。他に発話明瞭度検査(5段階評価)2)や、日本語100単音節を用いた発語明瞭度検査(%)3)などが使われる場合もあり、主観的評価の客観化の工夫がなされている。
一方で、機器を用いた評価では、分析の条件を同じくすれば再現性は高く、客観的評価が可能である。具体的には、構音時の舌と硬口蓋の接触パターンを分析するダイナミック・パラトグラム、舌の運動を任意の矢状断、前額断で観察する超音波断層法、さらにX線による口腔・咽頭造影検査、近年ではダイナミックMRIによる解析なども試みられている。また、舌の硬口蓋への最大押しつけ力、持続時間など測定する舌圧計も普及しつつある。なお、発話時の共鳴異常を評価する方法として、従来のフローネイザリティグラフに代わってナゾメーターが用いられるようになっている。さらに音響分析を行えば声質、構音、共鳴の障害などを多面的に分析することも可能である。しかし、いずれにしてもこれらの方法は、あくまでも発話の部分的、要素的評価となり、構音障害を、実際的、総合的に評価することは困難である。
日常臨床においては、上記の主観的・客観的評価法が組み合わされたテストバッテリーが用いられている。
文献
1) 堀口申作編:聴覚言語障害、医歯薬出版、東京、1980
2) 熊倉勇美編著:運動障害性構音障害、建帛社、東京、2001
3) 溝尻源太郎・熊倉勇美編著:口腔・中咽頭がんのリハビリテーション-構音障害、摂食・嚥下障害-、医歯薬出版、東京、2000
(川崎医療福祉大学医療技術学部 熊倉勇美)
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座 才藤 栄一
第10回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会が山田好秋大会長(新潟大学大学院医歯学総合研究科顎顔面機能学分野教授)のもと、2004年9月10(金)・11(土)日、新潟コンベンションセンター(朱鷺メッセ)にて開催された。
今年は、1995年に研究会としてスタートしてから10年目にあたり、10周年記念大会となった。したがって、当然ながらテーマは「摂食・嚥下リハビリテーション10年の反省と21世紀への展望」であった。内容は、米国の著明な嚥下研究家(Shaker、Palmer(写真)、Groher、Logemann:米国のDysphagia Research Societyとの協力で実現)による特別講演4題、各専門職6名によるヒストリカルレビュー、教育講演4題、ワークショップ1企画と盛り沢山であった。参加者は2,500名を超え、一般演題も267題とこれまでで最大規模となった。
摂食・嚥下リハは、我が国において近年、急速に発展、普及しつつあり、その中で本学会の果たした役割は大きい。会員数も1997年に1,970名であったのが2004年には4,265名と2倍以上に増加し、毎年の学術集会の参加者も常に2,000名以上と盛会である。本学会の特徴は、リハ科医が医師の中心として活躍(医師会員450名中164名)、歯科医の積極的参加、言語聴覚士の熱心な参加、transdisciplinaryという姿勢、などである。
1985年ころまでは皆無であった摂食・嚥下リハは、今やリハ医療の必須アイテムになっている。リハ科医が本学会に果たしてきた役割も極めて大きく、チームワークに心がけながら各自の専門性も重んじるという柔軟な姿勢が、多職種で構成される本学会をしなやかに推進させる原動力になったと思われる。ヒストリカルレビューでは、各職種の発表者それぞれが、この10年の発展を振り返りその中心に本学会があったことを再確認していた。また、米国の研究者との議論では、我が国特有の研究として、間欠的経管栄養法やバルーン拡張法が興味の対象となった。また、Palmerらが提唱したProcess Modelも我が国でより多面的に検討されていることも面白いことであった。
山田好秋教授と植田耕一郎教授(実行委員長)の行き届いた采配により、大規模な会が活発かつ円滑に執り行われ、とても気持ちのよい学術大会となった。また、新潟の銘酒が夕刻の楽しみを倍増させてくれた。
これからの10年の更なる発展を目指し、来年度より本学会誌は年3号に増刊される。日本リハ医学会員のより積極的な参加を期待したい。来年は、2005年9月2(金)、3日(土)に名古屋国際会議場にて開催予定。
河﨑学園・河﨑医療技術専門学校 上好 昭孝
和歌山県は人口40万弱の中核都市和歌山市を除いては梅、漆器など地場産業はあるものの、地理的にアクセス条件の悪い所が多い地域であります。
少子高齢化が進むなか、政府は平成12年度から医療経済をも配慮して急遽介護保険制度を導入し、地域での在宅医療を進めております。制度そのものは本来理想的な医療を目指したものであることに、異論がないところであります。
然るに現状をみれば地域の過疎化とともに核家族になり、若者が都会に働きに出てほとんど家族介護が期待できないのが現状ではないでしょうか。
在宅医療を少しでも効率よく可能にするには国の施策とともに地域住民・医療関係者の方がリハ医療について知ることが重要となってまいります。
幸い今回和歌山で日本リハ医学会主催地区事業としての県民公開講座を担当する機会があり感謝しております。 企画にあたり従来の医療関係者だけの一方的な講演会ではなく、県民参加型といたしました。タイトルは「生き生き健康づくり―ご存知ですか?リハビリテーション」としました。少しでも多くの方々にリハ医療とリハマインドについて理解してもらうことを意図しました。その内容については県民公開講座報告書に述べさせていただいております。小学生から老人までの幅広い年代層の方々に参加してもらえるよう、また興味をいだいてもらえるように体験コーナーを設けました。車椅子、手話、杖など自助具・装具、言語療法などのブースを設け、各専門家にも参加してもらいました。参加者には手にとり足をとり体験してもらいリハ医療の理解に役立ってもらったのではと自負しております。
独り言:在宅を目標とするには家族介護が得られることがキーワードになってまいります。そのためには現在のような核家族でなく従来の日本の生活様式でもあった大家族制度を今一度見直す必要があると思うのは私ひとりでしょうか。核家族を防ぐには根本的に国が政策とし税制の見直しが必要であります。
一つには相続税を撤廃し家族に還元し、可能なだけ家族に介護面の義務づけを行えばよいと思います。大家族の中でおじいさん、おばあさんと育った子供は痛みの分かる心豊かな成人になって、家族介護も得られやすくなることが大いに期待されます。
最後に本県民公開講座を催すにあたり、和歌山県立医科大学リハ科田島文博教授はじめコメディカルスタッフ、関係各位に多大のご支援をいただいたことを申し添えます。
今年の夏は、連日猛暑、酷暑が続きました。会員の皆様はいかがお過ごしたでしょうか。ニュースがお手元に届くころはすっかり秋らしくなり、体力も回復されているかと存じます。さて、日本リハ医学会は新理事長のもと新しい執行部がスタートしました。当広報委員会は担当理事が才藤栄一先生のもと、7月に第2回委員会が開かれました。小生自身は広報委員となり1年を迎えようとしています。会員としてニュースに興味も持っていなかった付けが回り、広報とはなんだろうかと改めて考えさせられるはめになりました。リハ医療に関する最新の情報を会員の方々に伝え、市民にはリハ医療を紹介することが使命であると、自問自答しています。今回の号は、介護保険の見直しを特集テーマに取り上げました。2005年度の介護保険見直しが行われていますが、厚生労働省の動向、現行制度の問題点などリハ医には関心の高い問題です。次の世代を担う医学生の夏期セミナー報告を掲載しました。一人でも多くの学生がリハ医を目指してくれることを望んでいます。以上、有益な情報が企画できたのではないかと自負しています。啓発活動として広報委員会は、学会のホームページに市民向けのページを作成しております。完成後に会員からの意見を反映させ改定してゆきますのでご協力をお願い申し上げます。
(鴨下 博)