リハニュース No.26
2005年7月15日
特集:リハビリテーション科専門医の開業-現状と未来-
第42回日本リハビリテーション医学会学術集会 6.16-18、金沢
INFORMATION
2004(平成16)年度 日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者紹介
2005年7月15日
特集:リハビリテーション科専門医の開業-現状と未来-
第42回日本リハビリテーション医学会学術集会 6.16-18、金沢
INFORMATION
2004(平成16)年度 日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者紹介
和歌山県立医科大学リハビリテーション医学 田島文博
埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科 陶山哲夫
障害者スポーツは故ルードウィヒ・グットマン卿がリハビリテーション(リハ)の一環として始めた。我が国ではリハ認定医(当時)でもあった故中村裕博士が普及に努め、車いすマラソンを開催しようと計画した。しかし、医学的安全性が確認できないという理由で各方面から反対され、1982年ハーフマラソンでの開催となった。
そこで、産業医科大学名誉教授緒方甫らが体力医学的な研究により、医学的裏付けを与え、1984年車いす「フルマラソン」の開催に漕ぎ着けることができた。「元気な障害者」の活躍は社会通念を変え、現在ではノーマライゼーションの普及に大きく貢献している。
特にパラリンピックの果たした役割は大きく、1996年のアトランタ大会での日本選手の活躍は国民に大きな感動を与え、1998年の長野冬季パラリンピックでの競技の様子は一般のニュースとして伝えられるまでになった。今や、障害者スポーツの一部は立派な競技スポーツにまで発展してきたといえる。
さらに、障害者スポーツは障害者の体力維持増進の面で重要な役割を持つ。スポーツ参加のない脊髄損傷者(脊損者)は驚くほど低い最大酸素摂取量を示し、何らかのスポーツを行っている障害者では有意に改善する。脊損者の多くは加齢による動脈硬化症の進展が早く、日常生活だけでは十分な運動量を得るのが困難なことを考えれば、スポーツ参加は強く推奨される。
しかし、すべての障害者が安全に適切にスポーツ参加するための医学的研究は停滞している。まず、障害者における運動生理学がほとんど研究されていないため、適切な運動負荷量さえも不明である。次に、障害者スポーツの多くは医学的見地から発展してきたために、安全性が重視され、障害者の能力を十分に発揮できていない。そのため、障害者ごとに最適な競技の開発が不十分である。この面でも若いリハ医が積極的に取り組んでいただければと願う。
競技スポーツとしては、競技の高度化に伴い、メディカルチェックの必要性が増していることに加え、ドーピングコントロールが国家をあげての課題となっている。さらに、メダル獲得のため、クラス分けを自国に有利にする国際的駆け引きもあり、この点でも健常者スポーツと変わらなくなってきている。是非、英語の達者なリハ医がチームドクターとして彼らに帯同し、彼らを助けてほしい。
以前は、各種国際大会や国内大会に参加者の付添いとして積極的に参加する若いリハ医の姿が散見されていた。しかし、その姿が少なくなっていることが残念である。障害者スポーツはまぎれもなくリハ医学とスポーツ医学の一角であり、学ぶことが大変多い。是非積極的に参加していただきたい。日本障害者スポーツ協会も障害者スポーツ認定医の称号を設定し、多くのリハ医が参加されることを期待している。
福井県福井市 高田稔浩
スポーツなんて面倒くさいのに、疲れるのに、何の得にもならないのにと思っていました。スポーツをしている人達は、自分とは違う種類の障害者なんだとも思っていました。でも、なぜか彼らを見ていると羨ましくて羨ましくて仕方がありませんでした。
きっかけは、できるできないじゃない、やるかやらないかの違いだと気付いた時でした。自分自身の中に、ブレーキを踏み続ける壁があったことを知りました。機能しない身体を抱え、今の自分に不満を感じているにもかかわらず何もしない、そんな自分が嫌いでした。
障害者スポーツの良いところは、障害の程度に応じてクラス分けがあり、そのクラスの中で競争するところにあります。勝ち目がなければ面白くもないけれど、競い合うのは同じ程度の同じ障害者。さらにタイムなど記録を競い合う競技であれば、自分のモチベーションの持ち方で、どのようにも楽しめます。
私は変わりました。生活の中にスポーツを組み込み、目標に向かって日々努力する。辛くても続ける練習に、選手としての成長を感じ、可能性を活かしている喜びがありました。そんな前向きな姿勢の自分がどんどん好きになりました。スポーツは障害者自身、嫌いな自分を好きになる最高の道具だと思います。
是非、リハ科専門医の先生方も病院を飛び出し、私たちの競技を見に来てください。そして、もしよろしければ皆様の専門知識で私たちを助けてください。よろしくお願いいたします。
*高田稔浩選手の2004年アテネパラリンピック大会での結果を紹介します。
T52クラス(主に肘の伸展と手関節の背屈までの機能を有する)
400 m 決勝 1分00秒92 金メダル
(パラリンピック記録)
1500 m 決勝 3分49秒76 銅メダル
5000 m 決勝 13分10秒86 金メダル
(パラリンピック記録)
マラソン 決勝 2時間00分02秒 金メダル
(パラリンピック記録)
アテネパラリンピック陸上競技日本代表コーチ・理学療法士/
大分リハビリテーション専門学校/(財)日本障害者スポーツ協会技術委員
指宿 立
はじめに
2004年9月に開催されたアテネパラリンピックには世界136の国と地域から約3,800名の選手が集い、世界最高峰のスポーツ大会が開催された。日本からは163名の選手が出場し、52個のメダル(金メダル17・銀メダル15・銅メダル20)を獲得した。
パラリンピックに出場するためには、定められた標準記録を突破したり、世界選手権大会や地域選手権大会で出場権を獲得したり、世界ランキングの上位に入賞する必要がある。つまり世界で活躍する選手のみが出場できる大会である。
一方国内では、障害者自らが組織し運営する大会や社会参加促進の一環として厚生労働省等が主催している全国障害者スポーツ大会等は、国内各地で障害者のスポーツの普及に効果をもたらしている。
本稿では指導者の立場から選手の近況を報告したい。
プロフェッショナル選手の登場
パラリンピックの他にもさまざまな国際大会や世界選手権大会が世界各地で開催されている。パラリンピックでメダル獲得を目指す国内選手も世界を転戦しながらこれらの大会に出場している。しかしながらその時間と財源は、所属組織や団体が資金を捻出するのではなく、個人の負担によるものも多かった。
近年はスポーツマネージメント会社に所属し複数の企業と契約しプロスポーツ選手として執筆活動や講演などにも取り組んでいる選手や、勤務する企業に理解を得ながら就労時間中にトレーニングしている実業団選手もいる。また企業を退職し、無職のままスポーツ選手としての生き方を模索しているものもいる。
障害者のリハとしてスポーツが導入された時代と比較するとスポーツのあり方が異なっていることに気づかされる。
「障害のある子どもたち」のスポーツを応援しよう
近年ではパラリンピックなどの報道を見て、スポーツをやってみたいと思うジュニアの選手やその家族も増えてきている。わが国での教育的リハビリテーションプログラムにスポーツがより多く導入されれば、ジュニアの選手は今後増加するであろう。
障害者のスポーツの先進国であるヨーロッパやアメリカではジュニアを対象にしたスポーツプログラムも多く、10歳代の選手がパラリンピックに出場しているケースもある。
「障害のある子どもたち」に対してスポーツを楽しむ場面を提供し、ジュニアの選手がパラリンピアンへと成長する過程を応援したい。
アンチドーピングの理解
現在スポーツの世界ではドーピングの問題が後を絶たない。障害者のスポーツも例外ではなく、アテネパラリンピックでは642件のドーピング検査が実施されている。
メダリストは競技終了後に、またマラソン選手などは「抜きうち検査」の対象になっていた。ドーピングに関しては、世界アンチドーピング機構(WADA)を中心にドーピング問題が取り組まれているが、「障害のある人たち」のスポーツにもドーピング問題は発生する。
さいごに
地域で生活する障害者はリハビリテーション領域の対象者であることはなんら疑う余地はない。また障害者にとってのスポーツはいろいろな要素を含んでいることから(左図)、パラリンピックなどの競うだけのスポーツのみを強調して肯定することはできない。幅広く「障害のある人たち」のスポーツの意義を考え、関わり、さまざまな活動性や可能性を理解し成功例・失敗例から多くの事例を学ぶことができる。
読者の諸先生方には、さまざまな障害を持つ選手の医学的リスク管理に関わる医師として、「障害のある人たち」のスポーツの良き理解者として、またサポーターとして支援していただきたい。
参考にしていただきたいサイト
障害者のスポーツに関して
ドーピングに関して
横浜市総合リハビリテーションセンター 小池純子
障害者スポーツ文化センター横浜ラポール 田川豪太
余暇活動としての「障害者スポーツ」は、機能維持に有効であると同時に、その活動を通して社会参加を促進し、さらに「生涯スポーツ」として生活を豊かなものとする。しかし、障害者スポーツのすそ野を広げるためには、施設を整備するだけでなく、スポーツを始める契機となるなんらかのサービスが必要である。横浜ラポールでは、「リハビリテーション・スポーツ教室」を「障害者スポーツ」への橋渡しとして実施し成果を上げている。その取り組みを紹介する。
「リハ・スポーツ教室」は、脳血管障害片麻痺を主な対象とするいわゆる保健所事業「機能訓練教室」をベースにスタートした。また、本「教室」は、回復期リハ終了後の外来機能訓練の延長線上に位置づけられ、ともすると手詰りになりがちな「リハ科フォローアップ外来」の救いの手(!)ともなった。
現在、脳血管障害片麻痺者に対しては、さまざまな種目を体験する「リハ・スポーツ教室」(写真1)を軸にスポーツへの導入を図り、教室終了後は、サークル活動への参加、卓球や水泳など種目別教室の利用など活動の継続を支援している。また、年に1回、教室修了者を対象とした体力測定を実施し、経年的な体力の維持と運動の効果を確認している。最近では、教室終了者を中心とした自主的なスポーツ活動を行うサークルが各区に誕生しており、「リハ・スポーツ教室」の成果は体力の向上に止まらず、精神面の活性化、自立性の向上、社会性の獲得など生活全般に及んでいる。
近年、介護予防の重要性が指摘され、「高齢者筋力向上トレーニング」などが勧められているが、生活全般を活性化させる「障害者スポーツ」の効果についても再考すべきである。
「リハ・スポーツ教室」のノウハウは、脳血管障害以外のさまざまな障害においても、初心者に対するスポーツ活動への導入の方法として活かされている。その成果の一つは「電動車いすサッカー」である。筋ジストロフィー児・者の余暇活動から発展し、電動車いすユーザー対象の集団スポーツとして普及を進めるに至った(写真2)。横浜F・マリノスのサポートを受け競技会を開催するなどユニークな側面を持ち、社会資源との連携、余暇活動性と競技性の共存など、今後の「障害者スポーツ」のあり方に一石を投ずるものである。
「障害者スポーツ」の導入には、医学的リハの段階での情報提供や体験プログラムの存在が有効であり、定着を図るためには、障害特性を考慮した支援が必要であり、リハ専門職によるバックアップが条件である。今後は対象者(とりわけ重度障害者)や種目の拡大、関連する組織との連携強化が課題である。
東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 三宅直之
2005年6月16日~18日の3日間、第42回日本リハ医学会学術集会が行われました。金沢大学大学院医学系研究科リハ科学領域の立野勝彦先生が会長を成功裏に務められたことお祝い申し上げます。
金沢の地でのリハ医学会学術集会の開催は、私の記憶するところ、本州の日本海側に面した都市で初めてのことと思います。学会は、石川県立音楽堂、金沢全日空ホテル、ホテル日航金沢の3つの建物で開催されました。昨年の1会場での開催と異なり、それぞれの建物へのアクセスがどうなるのであろうかと思いながら、金沢に到着しましたが、各会場へのアクセスは良好で、さらに金沢駅からもそれぞれ至近距離であったため、そのような思いは杞憂となりました。
今回の学会の特徴の一つは、昨年の683演題をはるかに超える820演題もの一般応募数があり、それが学術集会3日間で発表、討議されたことです。これはリハ科専門医の認可をはじめとしたリハ医学への各方面からの関心の高まりを示すものと考えられました。そして、このような急激な演題増加に対しても、3つの建物を有効に活用され、スムーズな学会運営が行われたことは事務局の皆様のご苦労と努力の成果と感じられ、敬意を表するものです。
メインテーマは「リハビリテーション医学の専門性の追求と連携」であり、会長講演では、疾病構造の変化によりリハ医療の変化もみられ、リハ治療の専門性とその効果が問われてきている現状を問い、正しい評価こそが適切なリハ医療の原点であり、リハの特異的効果および基礎的研究の追及が必要であることが強調されました。特に効果を明確にするためには適切な評価を続けていくことの重要性を、再認識させられました。
パネルディスカッションやシンポジウムでも興味深いテーマが続きました。その一つ「運動器の10年―運動器疾患のEvidence―」では変形性膝関節症や慢性腰痛症においてRCT(ランダム化比較試験:Randomized controlled trial)に基づいた運動療法の効果が示されるほか、関節リウマチ、骨粗鬆症の治療におけるRCTも示され、あわせて保険診療にかかわる提言などさまざまな角度から踏み込んだ発言がありました。先んじて招待講演をされた、NE Walsh教授(写真左)も強調されておられましたが、複数の専門職が互いに協力し合って、自分の果たすべき役割を果たしていくことの重要性を考えさせられました。
教育講演、ランチョンセミナーなども多数の参加者で会場は賑わっており、有意義な時間をすごすことができました。梅雨の期間中ではありましたが、会期後半からは晴れ間もみられるようになり、天候も味方に引き入れて、準備をされた学会事務局の皆さんのご苦労が実を結んだ形となり、個人的にも有意義で印象深い学会でありました。
第43回日本リハビリテーション医学会学術集会は2006年6月1日~3日、東京にて開催予定
会長:宮野佐年教授(東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座)
第42回日本リハビリテーション医学会学術集会 運営委員長 染矢富士子
第42回学術集会の開催にあたり多くの方のご協力をいただき、無事成功に終わりましたことを心から感謝しております。北陸では初めての開催であり、会場も3カ所に分散しての企画であったため、不安を抱えての手探り状態での企画運営でしたが、結果的に一般演題数816題、参加者数2,450名とこれまでにない盛況ぶりで、また天気にも恵まれました。招待講演では、当初予定していた講師の先生が学術集会の2週間前に来日できないことがわかり、急遽代わりに講演していただける講師のお願いをすることになりましたが、名誉会員や理事の先生方のご尽力により、事態の収拾を図ることができました。このように、学術集会を支えてくださった皆様に深くお礼申し上げます。
今回の学術集会はこれまでと少し違った視点から、リハとしての専門性を強調してみたつもりでした。結果的に学究的側面を重視した企画となり、少しでも会員の皆様の日々の診療に貢献できたかと考えております。モーニングセミナーにも、早い時間から大勢の参加者があり、ランチョンセミナー、教育講演では大きな会場が一杯になり、ご不満がでないか心配でした。たくさんの演題数をこなすため、すべての会場をフルタイムで使用することとなりましたが、座長の先生のご努力により、滞りなくプログラムを進めることができました。PC発表も順調だったと思います。休憩コーナーは会場となったホテルの協力を得て、十分に設けることができました。また、前回の学術集会に引き続き託児所を開設しましたところ、大変好評でした。
運営にあたっては、手を尽くして準備したつもりでしたが、多忙にまぎれてご迷惑をかけた点もあったかと思います。さまざまなご意見を真摯に受け止め、残務整理を行っております。
最後に、学術集会関係者の方々に深謝いたしますとともに、次回学術集会の成功を祈念いたします。
●募集情報(*は掲載予定事項)
《掲載例》
新しい短下肢装具(調節機能付き後方平板支柱型短下肢装具)の開発.会員施設:藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座(E-mail:rehabmed@fujita-hu.ac.jp、Fax:0562-95-2906),共同企業:株式会社○○○、株式会社○○○.開発時期:2000年7月~2004年7月現在(開発中),製品の特徴:自由度制約という視点から、効率的な内外反抑制機能、調整機能、コンパクトさを達成できる短下肢装具を開発中。
●応募先:日本リハビリテーション医学会事務局
(fukushi5@dream.com)宛にE-mailでお願いいたします。
●締 切:2005年8月末
(詳細は本誌8号と学会HPをご参照ください)
平成18年診療報酬改定に向けて、当委員会では積極的な活動を行っています。厚生労働省の依頼を受けて、4月1日に保険局医療課長・担当課長補佐とリハ医学会の石田暉社会保険担当理事他2名が参加し、リハビリテーションに関係する医科診療報酬点数表および関連通知等の項目で既に現場の実態を適切に反映していないと思われる事項について検討をする会議が持たれました。リハ医学会からは、現在の2時間を上限とするリハ治療時間では不十分な場合があることなど会員の方々や関連学会などから寄せられた多くの意見を述べました。厚生労働省からは、現在のリハ施設基準を見直し疾患別の新しいリハ診療報酬体系に移行する可能性も示唆されました。またアウトカムを公表することを義務化することで、良質なリハ医療が提供されるシステムを望んでいるようでした。
診療報酬改定に関するリハ医学会の希望書は5月末日までに、内保連に6項目、外保連に5項目を提出しました。今回からは以前の形式と異なり、改定を要望する項目に対して明確なエビデンスの提示と予想される医療費への影響を示すことが各学会に求められるようになりました。我々の医療行為に適切な診療報酬が認められるためには、今後ますますアウトカムが明確に示されたガイドラインのようなものをリハ医学会会員が主体的に関わり作成することが必須であると思われます。
(委員長 田中宏太佳)
山口明委員長、佐伯覚委員が任期満了により退任されました。新委員として樫本修委員、飛松好子委員が就任され、君塚葵理事以下7名体制で平成17年度の障害保健福祉委員会がスタートしました。
介護保険制度の改革、発達障害者支援法の成立、障害保健福祉施策における改革のグランドデザイン案、障害者自立支援法案など、障害保健福祉の分野に関わる情勢の変化には目まぐるしいものがあります。本委員会の活動においては、特に「会員に有用な情報の提供を適宜行うこと」を念頭に、今年度の活動課題を次の4つとしました。
(1) 障害者自立支援法・「改革のグランドデザイン」についての情報の収集と検討(新規課題)
(2) 地域リハビリテーションシステムのあり方と提言(継続課題)
(3) 介護保険と医療改革について情報の収集と検討(新規課題)
(4) 社会参加推進のための障害者スポーツの検討と健康管理の実態調査(継続課題)
介護保険については、介護保険検討委員会が本年3月で終了・解散し、本委員会が課題として引き継ぐこととなったものです。先の検討委員会のアンケート結果では、本領域に対する会員の関心の高さが明らかにされており、今後の活動の参考にいたします。
なお、障害者スポーツについては、昨年度、障害児・者スポーツ関係団体のデータベースを作成しました。現在、学会HP会員向けページへの掲載を準備中です。
(委員長 小池純子)
近畿地方会では、平成16年7月に独立行政法人労働者健康福祉機構関西労災病院リハ科の住田幹男先生が代表幹事に就任され、新体制で運営しております。近畿地方会の事業の一部である学術集会と研修会は、年2回の学術集会と年3回の専門医・認定臨床医生涯教育研修会と兵庫県リハビリテーション医会と京都地域リハビリテーション研究会の際に教育研修会を開催し、専門医・認定臨床医継続に必要な単位の取得が可能となっております。講演内容は、日本リハ医学会の定める教育大綱や卒後教育カリキュラムに準拠しつつ、リハ医学の進歩やリハ医療に直結するものであるよう心がけ、講師の先生についても偏りが生じぬよう研修会が開催される前に幹事会で調整しております。
平成17年7月以降の予定は、7月23日:第26回教育研修会(大阪薬業年金会館),9月3日:第19回学術集会(京都府立医科大学図書館ホール),10月1日:第27回教育研修会(和歌山県民会館),11月5日:教育研修会(兵庫県リハビリテーション医会同会場),11月13日:教育研修会(京都地域リハビリテーション研究会同会場),平成18年2月18日:第20回学術集会(神戸国際会議場)が予定されています。詳細が決まりしだい、リニューアルした近畿地方会のホームページ(http://www.kinkireh.com/)に掲載しますので、研修会参加希望の方はご覧ください。
(地方会幹事 村尾 浩)
今後の学術集会の開催予定は以下の通りです。奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。
・第31回関東地方会学術集会
日時:平成17年9月17日(土) 15時~
場所:昭和大学病院入院棟地下1階 新臨床講堂
学会会長:獨協医科大学リハ科学 古市照人先生
・第32回関東地方会学術集会
日時:平成17年12月17日(土) 15時~
場所:東京慈恵会医科大学1号館3階講堂
学会会長:東京慈恵医科大学リハ医学講座 宮野佐年先生
第31回学術集会にて、第4回総会を開催いたします。
また、本年2月26日に開催された第3回関東地方会総会におきまして、事務局が慈恵医大リハ医学講座から昭和大学リハ医学診療科に移行しました。事務局連絡先は以下のようになります。
昭和大学リハ医学診療科医局内 関東地方会事務局TEL 03-3784-8782 FAX 03-3784-2188
E-mail : rehab@med.showa-u.ac.jp
(地方会代表幹事 水間正澄)
1.電子投稿受付について:最近、各学会誌におきましては、電子化の方向へ向かっており、本学会誌におきましても、校閲および審査等の編集作業の迅速化を図るために電子ファイル原稿(PDF)による投稿を本年1月より試行的に開始いたしました。つきましては、本年第42巻1号1ページをご参照いただき、原稿をご投稿いただきたく存じます。電子化により査読過程のさらなる迅速化などにつきまして努力していきたいと思います。積極的なご投稿をお願い申し上げます。なお、郵送のみのご投稿も従来通り受け付けますので、よろしくお願い申し上げます。なお7月1日現在までのところ、電子投稿は投稿論文の3分の2以上になっております。
2. 論文投稿のお願い:2005年に入ってから投稿論文数の伸びがやや鈍っております。上述した電子媒体を使った投稿を含め、査読過程の迅速化などさらに努力していきたいと思います。積極的なご投稿をお願い申し上げます。またそのお願いの一つとして、第42回学術集会の一般演題のなかから、優れた演題を座長の先生からご推薦いただき、学会誌への投稿論文の勧誘を行いました。その結果139題をご推薦いただきました。会長の立野先生、事務局染矢先生、座長の先生方はじめご協力いただきました各位に深く御礼申し上げます。来年度以降も座長推薦をお願いしたく存じますので、よろしくご協力のほどお願い申し上げます。なお、ご投稿された論文につきましては、編集委員会として通常の査読を行わせていただきますことをご了承ください。
(委員長 正門由久)
広報委員会は水落和也委員長退任後、鴨下博を委員長に選出しました。新委員長としてこれまで以上に広報委員の先生よりご協力をいただき、魅力ある紙面づくりに努力してまいります。
前々回のリハニュース(24号)において広報委員会担当理事の才藤栄一先生は、日本リハ医学会の広報活動特集記事に広報活動の使命と戦略を述べています。少し難解な箇所がありますが、新委員長として会員のみならず国民へ医療、リハビリテーションに関して広報する使命は、会員相互の理解と情報公開をあらゆる情報メディアを使い、各委員会と協力して分かりやすい広報活動をするものと理解しています。
魅力ある特集記事、学会、研究会などのお知らせ、報告、各地の活動状況を伝え、会員からの声を掲載していきます。また、ホームページも活用していきますので会員の声援をお願いします。
現在、医学界は会員のものだけではなく、広く国民に便宜を供する責任があります。学術面、リハ医療の最前線における問題点など、事務局へ会員から多くの意見が寄せられることをお待ちしております。
(委員長 鴨下 博)
本年度のリハ・カレントトピックス&レクチャーを、錦秋の候、10月に青森市にて開催させていただくことになりました。多くの専門医・リハ医学会会員の先生方のご参加をお待ち申し上げます。
開催日時:2005年10月22日(土)13:00~18:20 ~23日(日) 9:30~16:05
会 場:ぱ・る・るプラザ青森(Tel 017-721-3335)
主 催:日本リハビリテーション医学専門医会
プログラム:
10月22日(土)
シンポジウム:嚥下障害のリハビリテーション
座長:出江紳一・木村彰男(13:10~15:40)
1.「非VF系摂食・嚥下機能評価法」 馬場 尊
2.「VEのこつと臨床的応用」 藤島一郎
3.「VFのこつと臨床的応用」 石井雅之
4.「摂食訓練の展開と嚥下障害食」 藤谷順子
パネルディスカッション:臨床研修必修時代におけるリハビリテーション科専門医養成システムついて
座長:石田 暉・間嶋 満(15:50~18:20)
1. 東北大学では 上月正博
2. 横浜市立大学では 佐鹿博信
3. 慶應義塾大学では 里宇明元
4. 産業医科大学では 蜂須賀研二
10月23日(日)
特別講演1「リハビリテーション科専門医のIdentityと求められる専門医像」 宮野佐年(座長:江藤文夫)
特別講演2「電気診断学における最近の進歩と臨床応用」 馬場正之(座長:福田道隆)
ランチョンセミナー「脳卒中急性期リハビリテーション update」 石神重信(座長:伊藤利之)
一般演題
大会長:松本茂男(青森県立中央病院リハ科)
実行委員長:相馬正始(青森市民病院リハ科)
一般演題募集:専門医から公募いたします。演者名、演題名、600字程度の抄録を下記連絡先まで、電子メールでお送りください(E-mail: sm77@zg7.so-net.ne.jp)。 採否は事務局にご一任ください。
演題締切:2005年8月31日必着
認定単位:1単位
会 費:5,000円
懇親会:10月22日(土)18:30、会費5,000円
連絡先:青森県立中央病院リハ科
Tel 017-726-8188 Fax 017-726-1885
E-mail:sm77@zg7.so-net.ne.jp
備 考:専門医以外の方も、是非ご参加ください。
◆最優秀賞受賞論文:渡邉 修、安保雅博、菊池吉晃、妹尾淳史、来間弘展、宮野佐年、米本恭三:手指対立運動に関するペーシング音の影響―機能的MRIによる前補足運動野および補足運動野の賦活について―。リハ医学 2004; 41: 472-478
このたびは、このような名誉ある賞をいただきありがとうございました。学会理事会、各委員会、会員の先生方に厚くお礼申し上げます。
以前より、聴覚的手がかりによって補足運動野の賦活が低下することは知られており、この点が、パーキンソン病のリハに利用される外的手がかりの科学的説明になっておりました。このたびの研究は、この点を再確認すると同時に、補足運動野の賦活部位を近年の機能解剖学の視点からさらに、前方部分(前補足運動野:pre-SMA)と後方部分(補足運動野:SMA proper)に細分し検討することに主眼をおいたものでした。その結果、より選択性、応用性の高い課題では、前頭前野に近いpre-SMAが賦活しやすいと推測され、一方、リハ医学で重視される手がかりとしての環境要因は、補足運動野の賦活を要しなくても、あるいは補足運動野が損傷されている症例でも随意運動を促通できるのではないかと結論いたしました。
今後は、さらにさまざまな環境要因の相違、リハアプローチの相違がどのように随意運動に影響するのかという点に着目して研究を進めたいと考えています。
略歴:1985年浜松医科大学医学部卒業、1991年日本脳神経外科学会専門医、1993年東京慈恵会医科大学リハビリテーション科教室入局、1995年スウェーデンカロリンスカ病院臨床神経生理学部門勤務、1997年医学博士、1999年日本リハビリテーション医学会専門医、2002年より現職。
手指対立運動に関するペーシング音の影響―機能的MRIによる前補足運動野および補足運動野の賦活について―
渡邉 修 安保雅博 菊池吉晃 妹尾淳史 来間弘展 宮野佐年 米本恭三
東京都立保健科学大学
(受付: 2004年5月14日; 受理: 2004年6月11日)
要 旨: 随意運動において,ペーシング音の前補足運動野(pre-SMA)および補足運動野(SMA proper)に対する影響を,機能的MRIを使用し,健常成人10人を対象に検討した.運動課題は母指の各指への順序だった対立運動で,自己ペースで行う場合と,メトロノームによる聴覚誘導で行う場合を比較した.大脳皮質の賦活は,それぞれの領域に10の関心領域をとり,MRI信号強度(t 値)として検出,分析した.右手では,自己ペース運動の場合,10例中6例で右のSMA properに,3例で左のSMA properに賦活が見られた.そして,ペーシング音により,各々,6例中5例,3例中2例で同領域の活動は消失もしくは減少した.一方,左手では,自己ペース運動の場合,10例中5例で右のSMA properに,1例で左のSMA properに賦活が見られた.そして,ペーシング音により,各々,5例中4例,1例中1例で同領域の活動は消失もしくは減少した.しかし右手,左手いずれも,pre-SMAの活動は1例のみにみられ,いずれもペーシング音で減少した.ペーシング音により,特にSMA properの活動が低下する傾向がみられ,こうした現象から,パーキンソン病に対し従来から行われる外的手がかりによる運動の改善には,補足運動野以外の賦活が関与していることが示唆された.
キーワード: 補足運動野(supplementary motor area),逆説的運動(paradoxical movement),賦活研究(activation study)
◆優秀賞受賞論文:新藤恵一郎、辻 哲也、正門由久、長谷公隆、木村彰男、千野直一:書痙患者の書字評価―簡易な筆圧計による筆圧分析の有用性についての検討―。リハ医学 2004; 41: 296-301
このたびは、このような名誉ある賞をいただき誠に光栄に思っております。ご指導いただきました慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室の千野直一名誉教授をはじめとする諸先生方ならびに測定にご協力いただいた作業療法室のスタッフの方々に深くお礼申し上げます。
この論文は、書痙患者の書字評価に関する研究です。書痙は、局所性ジストニアと認識されるようになり、リハ科を受診する機会が増えています。その書字については、書字動作時に起こる筋緊張異常によって筆圧が高くなると報告されていましたが、必ずしも筆圧が高くない症例を経験したため、簡易な書字評価を新たに検討しました。健常人との比較の結果、筆圧変動の指標(変動値=拙劣さ)が、筆圧そのものよりも、書痙患者の書字の特徴的なパラメーターであることがわかり、筆圧が高くない症例でも有用でした。今後は、そのような指標を用いて、臨床分類、重症度や治療効果の判定(反復経頭蓋磁気刺激の効果について2004年9月に短報を報告)などに応用していきたいと考えております。
略歴:1999年慶應義塾大学医学部卒業、同リハビリテーション医学教室臨床研修医、2002年川崎市立川崎病院、2003年国立療養所村山病院、2004年東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野助手(現職)、2005年日本リハビリテーション医学会専門医。
書痙患者の書字評価―簡易な筆圧計による筆圧分析の有用性の検討―
新藤恵一郎 辻 哲 也 正門由久 長谷公隆 木村彰男 千野直一
慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
(受付: 2003年11月13日; 受理: 2004年4月4日)
要 旨: 書痙患者の書字評価における,ペン型の簡易筆圧計の有用性を検討した.健常者10名を対象に筆圧計による書字評価を2回行い,筆圧評価の各指標(書字時間,最大筆圧,平均筆圧,変動値)を算出,再現性(同一被検者内信頼性)の検討を行ったところ,級内相関係数はいずれも0.7以上であった.次に,健常者10名と書痙患者10例における筆圧評価の各指標の比較を行ったところ,書痙患者群では,書字の粗雑さを表す指標(書字時間,変動値)が,健常者群より有意に大きかった.ペン型筆圧計は簡便かつ相応の信頼性があり,健常者と書痙患者の筆圧波形の特徴を数量的にうまくとらえることができ,書字評価法として有用であることが示唆された.
キーワード: 局所性ジストニア(focal dystonia),筆圧(writing pressure),拙劣さ(clumsiness)
◆奨励賞受賞論文:岡本隆嗣、橋本圭司、大橋正洋、中地照子、石井明美、宮野佐年:EuroQOLを用いたリハビリテーション病院入院患者の健康関連QOLと費用対効果」リハ医学 2004; 41: 678-685
このたびはこのような名誉ある賞をいただきまして、誠にありがとうございました。
医療費の抑制が国民的課題とされる中で、同じ効果を上げるためにどれだけの経費を必要とするか、すなわち費用対効果の視点が重視されるようになってきました。近年導入されたEuroQOLは、健康関連QOL(HRQOL)を評価するための自己記入式質問表です。健康状態を数値化し、さらにその値を費用効用分析に用いることができます。本論文は、当院におけるEuroQOLを用いた入院患者HRQOL調査結果と費用対効果の検討を行い、リハ医療における治療効果あるいは効用を、異なる障害あるいは疾患にまたがって論ずることを目的としたものです。当院での臨床研究がこのように高い評価をいただき、大変光栄に存じます。今後とも、リハ医学の発展に、微力ながら貢献できるよう、努力を重ねていきたいと考えております。
最後になりましたが、この場を借りて、ご指導いただきました宮野佐年教授、大橋正洋部長、橋本圭司先生、協力してくださった当院スタッフの方々に深く感謝し、お礼を申し上げます。
略歴:2001年東京慈恵会医科大学卒業後、同リハビリテーション科入局。同大学附属第三病院、都立大塚病院を経て、現在、神奈川リハビリテーション病院勤務。
EuroQOLを用いたリハビリテーション病院入院患者の健康関連QOLと費用対効果
岡本隆嗣 橋本圭司 大橋正洋 中地照子 石井明美 宮野佐年
神奈川リハビリテーション病院
(受付: 2004年5月26日; 受理: 2004年10月4日)
要 旨: 当院で入院の多数を占める脊髄損傷,脳外傷,変形性股関節症患者のHRQOLおよび費用対効果を,EuroQOLを用い調査した.対象は2003年7月~12月に30日以上入院し,質問が理解可能で,重度の合併症がない111名である.調査内容は(1) 入退院時FIM,(2) 入退院時EuroQOL,1)5項目法(5Dimension,以下5D),2)視覚評価法(Visual Analogue Scale,以下VAS),3)5Dで問題がある人の割合,(3) 費用効用分析,とした.結果は,脳外傷・脊髄損傷はFIMが有意に改善し,5D・VASは,3疾患とも有意に改善した.5D各項目では,脳外傷・脊髄損傷は各項目とも全体的に問題を感じている人の割合が減少し,変形性股関節症では,特に痛み・不安の項目で減少がみられた.診療報酬より算出した入院中の医療費は,脳外傷146.2±50.4万円,脊髄損傷182.2±79.0万円,変形性股関節症138.9±40.7(手術料含むと285.6±71.1)万円であった.患者の状態が退院後も変化しないと仮定した場合の1質調整生存年(Quality adjusted Life Year; QALY)獲得のための医療費は,脳外傷43.1±12.4万円,脊髄損傷42.5±55.1万円,変形性股関節症47.8±48.7(手術料含むと93.2±84.7万円)であった.本調査で,リハビリテーション前後での効用値の有意な増加を確認することができ,3群とも費用効果ありと考えられた.
キーワード: EuroQOL(EQ-5D),健康関連QOL(health-related quality of life; HRQOL),FIM(functional independence measure),費用対効果(cost-effectiveness),リハビリテーション(rehabilitation)
スタッフ:リハ科医局として、教授1(岡島)、客員教授1、非常勤講師1、医局長(原田)、医員2。リハ室として、理学療法士11名、作業療法士5名、言語聴覚士3名、理学療法助手2名。
外来担当医師:月~水:岡島、木・金:原田、土:天野。その他、装具外来(木)、筋電図(月、水)、嚥下造影(適宜)。
当院の特色:当院は中央線の三鷹と吉祥寺、京王線の仙川の真中に位置する病床数1162、外来患者数2,500/日の特定機能病院です。救急医学会の重鎮を輩出してきた歴史から東京西部の3次救急の要とされ、救急車の受入数も日本最多といわれています。広い地域からヘリコプターで移送されてくる患者を受入れる熱傷センターもあり、最先端の高度救命救急医療を自負しています。
リハ室・リハ科の特徴:リハ室は理学療法を行う整形外科の中の一部門として1978年に開設しました。その後、作業療法・言語聴覚部門も加わり1994年には総合承認施設となりました。整形外科のなかでリハ担当を設け、整形以外の診療科のリハ診療を行ってきましたが、2001年リハ科・リハ医学講座が開設されたのを機にリハ科が中央診療施設としてリハ室を管理するようになりました。リハ科医局開設にあたっても、広い研究室の提供を受けるなど、今でも整形外科医局員とは親交が厚く、和気藹々としています。現在、リハ科独自のベッドを持たないため、入院リハ140~160人/日はすべて他科入院中です。リハ科医の通常業務は診察、処方、機能予後診断ですが、脳外科、神経内科については密にフォローして併診的な役割を担っています。対象疾患の内訳は脳卒中・脳外傷40%、骨関節疾患25%、廃用症候群11%、循環器疾患5%、呼吸器疾患4%、熱傷3%、脳性麻痺2%と多岐にわたっています。最近の動向として、失語症など高次脳機能障害が減って、嚥下障害の割合が増えています。筋電図は4件/週で整形外科以外からも多様な依頼を受けています。嚥下造影は高齢医学科をはじめとする他科と協力して行っています。
医局の特徴:当院の中でも最も新しい医局で、まだ創成期にあります。先に述べた通り、東京西部の地において日本屈指の高度救急救命医療を展開していることもあって、リハも早期介入の急性期リハを命としています。東京西部に位置する病院のリハ部門拡充をお手伝いしていきたいと考えています。少人数の医局ですので、医局員個人の希望を前面に取り入れることも特徴です。
(原田貴子)
杏林大学医学部リハビリテーション科
〒181-8611 東京都三鷹市6-20-2
TEL 0422-47-5511, FAX 0422-44-0609
URL:http://www.kyorin-u.ac.jp/hospital/
A “注意”に関する神経ネットワークについては1)覚醒レベルの維持:青班、右前頭葉、頭頂葉が関与、2)知覚入力に対するオリエンテーション:上頭頂葉、側頭頭頂葉、前頭眼野、上丘が関与、3)遂行機能能力(executive function):帯状回前部、前頭前野、基底核が関与、の3種類があるとされています。fMRIの結果では、上記のうち1)は視床、2)は上および下頭頂葉、3)では帯状回前部と前頭前野、に特に強い賦活が見られたと報告されています1)。
さらに、3)の遂行機能障害は、言語、行為、対象の認知、記憶などの高次脳機能を制御し統合する“より高次の”機能を意味します。いわゆる“前頭葉機能”とほぼ同義で使用されていますが、遂行機能は単一の機能ではなく、認知機能の柔軟性(セットの転換)、選択的注意、流暢性、decision making等の複数の機能を含むと考えられています2)。脳機能画像では、空間的ワーキングメモリーが関する遂行機能は前頭葉の右に、言語的ワーキングメモリーに関するものは左に優位性があるとされています3)。
一般的に“注意力の障害”については、上記の3種のうち主として障害されているネットワークにより、異なる表現型をとると考えられます。例えば、右半球の広範な障害では空間認知機能障害を伴う注意障害(2+3あるいは1+2+3)、前頭葉に限局した障害では他の高次脳機能障害がないにもかかわらず遂行機能能力のみ障害される(3のみ)、などのパターンをとり得ます。実際の評価法としては、Eriksen Flanker taskの変法として開発されたANT(attention network task)で、注意力障害の鑑別・評価を行うデータが多く報告されています4)。
文献
1)Raz A: Anatomy of attentional networks. Anat Rec 2004; 281B: 21-26
2)石合純夫: 高次脳機能障害学. 医歯薬出版, 東京, 2003; p 203
3)Wager TD, Smith EE: Neuroimaging studies of working memory: a meta-analysis. Cogn Affect Behav Neurosci 2003; 3: 255-274
4)Fan J, Fossela J, et al: Mapping the genetic variation of executive attention onto brain activity. Proc Natl Acad Sci 2003; 100: 7406-7411
(東京医科歯科大学神経内科 山脇正永)
東北大学大学院医学系研究科機能医科学講座内部障害学分野
上月正博
2005年4月10日~15日、ブラジルのサンパウロのグランメリア・ワールドトレードセンター(写真上)にて第3回ISPRM世界大会が開催されました。開会式は、全員起立してのブラジル国歌斉唱から始まり、司会進行や大会長の挨拶がほとんど現地語のみで進められたのには驚きました。しかも時として絶叫調になって、ワールドカップやサンバでの熱狂を髣髴とさせました。
主催者側発表によると大会参加者は92カ国から1,821名を数え、口演発表181題、ポスター発表748題、その他、サテライトなどでの招待講演を合わせると約1,000題に達し、第1回のアムステルダム、前回のプラハを上回るものでありました。しかもこれまでの大会に比較して発表のキャンセルも少なく、質的にも進歩を感じました。米国からの発表も増加していました。
筆者にとっては、特に遺伝子治療前後のリハなどの新しいカテゴリーの演題が出現したこと、呼吸循環のリハや動物モデルを用いての基礎研究の発表が大幅に増加したことが印象的でした。
日本からの発表は、口演7題、ポスター73題の計80題で、私の医局(東北大学内部障害学分野)からの発表が口演2題、ポスター23題の計25題と3分の1を占めていました。ちなみに最多は大会長であるサンパウロ大学Battistella教授グループの30題で、わが内部障害学分野が2位でした。日本からみてブラジルは地球のちょうど裏側にあたり、飛行機で最短でも24時間かかることが、日本からの参加者が少なかった原因かもしれません。一方、韓国は次回開催の宣伝を兼ねていたためか、質・量ともに目立った発表をしていました。会場には特設ブースを設け、チマチョゴリ姿の女性が団扇とパンフレットを配っていました。中国も近い将来の学会誘致も視野に入れ、大使節団を送ってきていました。
ブラジルの治安の悪化が心配されたり、大会プログラムが直前まで決定しなかったりで、学会開催を不安視する向きもありました。しかし、いざ始まってみれば、総勢200名もの関係スタッフが学会場で精力的に働き、あまりトラブルなく運営されたといえるでしょう。外は連日30°Cを超える季節外れの猛暑にもかかわらず、学会場にレストラン・商店が接続しているために、安全かつ快適な環境での学会でありました。冷房のかけすぎか、大会3日目に会場が停電したのには絶句しました。しかし20分ほどで復旧し、停電中は宮野佐年慈恵医大教授のユーモアたっぷりの名司会に助けられたのは学会として非常に幸運でした。南半球で最初のISPRM世界大会は十分成功だったと思います。
学会では、新旧の友人たちと意見を交換したり、旧交を温めたりすることができました。私は口演で思いがけず賞金をいただく栄誉に浴しました。また、大会最終日には千野直一慶大名誉教授、木村 淳アイオワ大教授とご一緒にサンパウロ大のImamura教授から食事をご馳走していただいたことも忘れられない思い出になりそうです。
次回2007年はお隣の韓国での開催です。韓国・中国の追い上げに対抗する意味でも、ぜひ日本からも多数参加していただき、世界のリハ医学・医療の発展や情報交換に役立てていただきたいと思います。
私は昭和47年卒業、5年前に外科医からリハビリテーション科へ転身しました。外科医の経歴により看護部や他科医師との連携は円滑にいきます。一方リハは対象が幅広く、人生経験が必要であること、また問題点も多いことがわかりました。リハ医師に関しての雑感を述べたいと思います。
1.多職種間の連携不足:一番大切なセラピスト諸氏との共働がうまくいっていない。セラピストに限らず多職種のリーダー(たとえば学会長)と具体的な共働作業に関して相互理解を深めて論じるべきです。2.専門医制度の再考:本邦の医学会は研究重視の歴史があり、医師としての資質よりも研究論文が重視されてきたことやリハ専門医になりやすい科があることも疑問です。研修制度は未熟であり、今後の問題だと思います。3.リハ医師の現場における具体的な働きの指針がない:全国同じように作業が施行されているとは思えないし、医師一人あたりのリハ入院患者数の規定もないので、基本から立案し実施可能で、一律な現場業務規定指針を作成すべきです。4.大学医学部でのリハ理解が進んでいない:これがなければリハの概念が普遍的になりません。5.対象が広すぎる:中でも重度認知症や精神疾患合併例・病棟管理困難な高次脳機能障害の方への対応をリハ科が対応して良いものか。精神科の協力はぜひとも推進すべき課題であると考えます。6.マスコミに出るリハ医学に関する記事:まだコンセンサスが無い事項を宣伝ともとれる口調で語ることは、誤解を招きます。本邦の現状を踏まえた正直な発表が真意を伝えます。
基盤作りができていない実情の中、無名でも第一線で、リハマインドを持ち、周囲の方に慕われているリハ医師に遭遇する時が一番大きな救いです。
(協和会病院リハビリテーション科 浅津民夫)
梅雨で嫌な季節ですが、空梅雨よりは良いのではと我慢の日々です。うっとうしいお天気とは裏腹に世界陸上の代表決定などが報じられていますが、そろそろ2008年の北京の話も出てくるようになりました。北京ではもちろんパラリンピックも開催されます。リハ医学会でも障害保健福祉委員会が障害者スポーツについてリハ医の関わり方について検討されています。このたび障害者スポーツ施設、団体のデータベースを作成したいということで、学会HPへの掲載依頼がありました。障害者スポーツに関する特集にしようということで現場のコーチ、選手からの原稿もいただけました。また、トップアスリートばかりでなく、裾野を広げること、リハ医療の中でのレクリエーションとしてのスポーツの意義まで幅広く欲張った企画でしたが、いかがでしたでしょうか。なお、4月より広報委員会委員長が水落先生から鴨下先生に交代し、本号が鴨下委員長での初めてのリハニュースになります。木村委員長の時にリハニュースが創刊されましたが、水落先生の退任で創刊からの委員がいなくなりました。水落先生お疲れ様でした。水落委員長の頃に始まった事業に福祉機器展がありますが、今年は拡充路線で、これから準備が大変そうです。新しい委員として大髙先生を迎え(若返った?)新体制の広報委員会をよろしくお願いいたします。
(根本明宜)