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リハニュース No.29

2006年4月15日

  1. 特集:平成18年度診療報酬改定

    江藤理事長に聞く診療報酬改定

    リハビリテーション領域における平成18年度診療報酬改定について

  2. 第43回日本リハビリテーション医学会学術集会 (6.1-3開催):近況報告

  3. 医局だより:慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室

  4. INFORMATION

    編集委員会・広報委員会

    教育委員会

    近畿地方会

    中国・四国地方会

    九州地方会

  5. 障害者自立支援法 4月1日からスタート

  6. お知らせ:「リハビリテーション科専門医会設立総会」のご案内・同幹事立候補受付

  7. 事務局だより

  8. 広報委員会より

  9. 訃報

特集:平成18年度診療報酬改定

江藤理事長に聞く診療報酬改定

日本リハ医学会理事長 江藤文夫

聞き手: 大高洋平 広報委員
司 会: 鴨下 博 広報委員長 

 鴨下:平成18年度診療報酬改定において、リハビリテーション(以下、リハ)にも大幅な改定が迫られるようです。また、それに関連して運動器リハの一連の問題があり、先日の臨時号にも会員からの大きな反響がありました。そこで運動器リハの問題も含め診療報酬改定について江藤理事長にお話を伺おうと思い、今回のインタビューを企画しました。聞き手は、次代のリハを担う若手ということで、大高委員にお願いします。二人で自由に対談をしていただければと思います。

 大高:よろしくお願いします。未熟者故に失礼があるかもしれませんが、どうかお許しください。折角の機会ですから、診療報酬改定に至る背景や経緯、そしてその中身と立場、今後の学会の方向性、それぞれについてお聞きしたいと思います。  

疾患別の枠組みと研修会 

 大高:早速ですが、まず診療報酬の大幅改定と運動器リハというものが具体化するに至った背景や経緯はどのようなものだったのでしょうか。

 江藤:このような機会を作っていただいて、本当に感謝しております。昨年後半から、今年の4月の診療報酬の改定に向けて「疾患別に」を1つの柱として、リハも大きく変わる、ということが明らかになってきました。その中で、運動器リハという項目が、新たに立ち上げられるという話があり、8月末頃から、各関連団体にヒアリングあるいは意見の聴取というようなことが行われはじめました。ちょうどその頃、日本整形外科学会理事長の越智先生から電話をいただきまして、主として開業の整形外科の先生方にリハの知識や技術に不安があるということ、それに加えて、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などのセラピストが非常に不足しているということ、厚生労働省から運動器のリハを作るにあたっては、そういった医師への研修会、コメディカルへの講習会を緊急の課題としてやりなさいと言われたそうです。そこで、関連する団体で、話し合いたいとのことでした。唐突でよく分からなかった面もありましたが、整形外科の先生、あるいは関連する職種に知識と技術をきちっと伝えて、治療の質を向上させるという趣旨に関しては、全く反対する理由もないので出席しました。そこでの話は、運動器のリハをやるにあたって、リハの専門医の数は少ないでしょうと、それに対して整形外科医は全国津々浦々分布していて、それに関わることができると。しかし、従来リハに関しては、あまり詳しくない先生も大勢みられるので、研修会をやりたいということでした。それを運動器リハ学会がやるということで、サポートして欲しいという主旨だったのです。運動器リハというのを1つのエンティティとして、診療報酬体系の中に取り上げるというのは、我々としては違和感があり、そのこと自体に賛成しているわけではなかったのでしたが、厚労省として研修をやってくれと学会に要請しているという話でしたので、研修会をやることに関しては協力しましょうということになりました。

 そこで、リハニュース(2005年12月9日発行臨時号)でも取り上げていただいた日整会の広報室ニュースの問題が出てきます。運動器リハに関連する記事が出ていまして、非常に微妙な書き方なのですけれども、運動器リハというものが診療報酬で取り上げられることが確実であり、その診療報酬に関しては運動器リハの専門の医者が関わる必要があり、そのための研修会を開催する。その研修会を受けるにあたっては、運動器リハ学会に、これはすぐ後に変更になりましたが、加入することが条件等いくつかあって、診療報酬のためには研修会が必要で、研修会を受けるためには運動器リハ学会に入らなきゃいけないといった、いかにも利益誘導的な内容でした。しかも、4学会(日本整形外科学会、日本臨床整形外科医会、日本運動器リハ学会、日本リハ医学会)は、リハ学会も含め、運動器リハの診療報酬を立ち上げるということに関して合意している、というような書かれ方でした。これは何かトリックにあったような状況と考えましたので、「研修会をやるということに関しては、確かに合意はしていますけれども、我々は、運動器リハを別立てにすることに対して賛成したわけではなくて、このような疾患別、特に運動器だけを強調した分け方は、リハの診療の特色といいますか、専門性からちょっと外れた項目立てである」ということを越智先生には申し上げ、また、9月後半の厚労省のヒアリングにおいても、「我々は合意していない」ということを申し上げました。しかし、その時に厚労省は、「だいぶ前からこういう枠組みを提示していた、今更なにを」というような言い方なのですね。実際には、我々がこの枠組みを知ったのは8月ぐらいのことなのです。我々は相談を受けていたわけではないのですけれど、厚労省はリハ医学会も合意の上だ、というふうにとらえていたのですね。つまり、いつの間にかにリハ医学会も合意だ、というふうに話を進めていた節がある。そういう点で、我々としてはこの一連の動きに非常に大きな不信感があるわけです。

 確かにこの点に関して、今までの流れを振り返ってみますと、医療費をどういうふうに抑制するかという議論にあわせて、平成15年3月に「医療保険制度および診療報酬体系に関する基本方針」という閣議決定がありました。これを受けて、中医協(中央社会保険医療協議会)がいろいろ検討を重ねて、疾患別あるいは障害別という枠組みが出てきて、後に疾患別がクローズアップされてきました。ただ、この閣議決定をよく見ると、急性期のDPC(診断群分類)について疾患別といっているのであって、リハを疾患別という意味には解釈できませんが。同時に、診療報酬の決定プロセスも変化してきました。従来は、内保連・外保連を通じて各学会から意見を出す。それを集約して厚労省あるいは中医協に上げてまとめる、というのが決定プロセスだったのですね。それが、平成15、16年ぐらいから、直接厚労省から学会に問いかけてくるようになりました。例えばリハ医学会でも、鎮痛消炎効果ですとか、脳卒中のリハの効果、早期の問題とかについて、データを出すように求められて、社会保険等委員会を中心に体制を組んで、エビデンスを出したりしてきたわけですね。そういったなかで、骨関節に関するもの、これは運動器ということで、日整会というより臨床整形外科医会を中心にデータを集め、極めて積極的に厚労省に働きかけてきたようです。それが、結局、そのまま1つの伏線になっていて、4つの疾患群の分類ができてくるわけです。そういう意味では確かに、前からそういう枠組は提示していたじゃないか、という厚労省の言い分もあるわけです。ただ、なかなか難しいことなのですけども、これは各疾患のリハに関する実態の調査であって、それとリハを疾患別に分けるということは全く別物です。さらに、そういう枠組がどういうところから発想されてきたか、その意図はどこにあるのか、それはリハ医療を受ける患者にとってよいことなのか、ということは十分考える必要があるのです。

診療報酬改定の中身 

 大高:わかりました。だいぶ政治的な話になってしまったのですが、結果として診療報酬が改定されるわけですが、現段階でわかる範囲でどのような改定内容になりそうなのでしょうか?

 江藤:既に、案はいろいろなところで公開されていると思うのですけれども、従来の施設基準の、総合リハという基準を廃止して、施設よりはスタッフの方が重要であろうというような考え方で、施設の基準を緩和して代わりに疾患別の基準が導入されます。これが一番大きな変化です。大きく脳血管障害等、それと運動器、呼吸器、心大血管といった4つの領域ですね。各疾患領域の中では、施設基準は2つだけにしてフラットな点数分けになっています。
 また、単位に付加される早期加算のようなものをなくしていこう、ということのようです。一方、従事者1人・1日あたりの単位数に関して、医療機関ごとの弾力的な運用が可能となるように、18単位を標準としながらも最大限は24単位まで可能とし、週108単位までとなるようです。要するに従来の18単位よりは、単位数を増やすということですね。それから、従来、特定の疾患について6単位だったのを、1人の患者に1日合計9単位まで認めるというようなこともあります。しかし、単価は大幅に減額されています。
 それから、急性期からの算定日数ですね。点数の関係する日数の上限を決めてきた、ということです。疾患によって、算定日数の上限を決められたということは、リハ資源を急性期と回復期にシフトさせようとするものです。 さらに、運動器リハに関して、短期間の講習会を行うだけで代替のセラピストの導入を大幅に認める方向になったことが、今回の改定の大きな特徴です。これは従来の診療報酬の枠組からも、全く変わってしまったということですね。

多くの問題と疑問点 

 大高:まずこの総合リハの廃止、そして疾患別の単位化に関してですが、もともとリハ医療というのは疾患別ではないという立場で、機能や能力とか、疾患とは異なる別の階層で診断評価をして、治療を行っていくという大前提があったように思うのですが、今回の疾患別の単位化というのは、それと全く相反するもので、とてもびっくりしました。

 江藤:そうですね。これについては、リハの診療というものが、厚労省の方々にどの程度理解されていたのかな、という点に大きな疑問を抱かずにはいられず、はっきりいって非常に落胆しました。リハ医療に従事している者なら誰でも十分理解していることと思いますが、リハは、疾患特異性というよりは、むしろ障害をターゲットにしているので、疾患という「縦割り」を貫く「横糸」の医療です。いろんな疾患があったとしても、障害に対するアプローチが基本的には類似しているということで、診療報酬もそういう体系で来ていたわけです。ですから、疾患別というのは、非常に大きな問題になるのです。私どもとしては、遅ればせながらでも理解していただけると思って、厚労省の方に数回にわたって働きかけましたが今更と言われてしまった。かなり努力したのですが、これは深刻な問題になると思います。従来の疾患別の縦割りの医療に対して、障害を持った患者さんを横糸としてジェネラルに診る、そういう専門性に関しては、日本の医療全体の認識が非常に薄いというのは、相変わらずあることを思い知らされました。これまで、リハに関してはかなり努力をしてきて、実際の診療体系もそのような形になってきたので、役所的には認められているのかな、というように認識していたのですが、やっぱりそうでもなかったということです。今後、改めて主張していかなければいけない、と考えています。

 鴨下:総合リハという考え方が今回消えてしまったけれども、時間をかけてまた復活させていきたいと。

 江藤:そうですね。まずベースにそういう枠組みがあって、その中に、それぞれいろんな疾患のリハが入ってくるものと思います。

 大高:疾患別として4つに分けましたが、かなり無理があるという印象もありますね。

 江藤:実際に問題がありますね。例えば、いわゆる廃用症候群に該当するようなものが、脳血管障害ということになりますし、かなり無理に大枠を設定しています。心大血管と呼吸器は比較的クリアだと思うのですけれども、それでも脳血管障害の患者さんは合併症として肺炎を発症したりするわけですね。不整脈も多いですね。高齢者は疾患を複数持っている場合の方が多く、この体系の理屈だと、そのリハを別々の医師が診ることにもなってしまう。無理な分け方だということは、かなり強く指摘して、それなりの案も提示したのですけれども受け入れられませんでした。ですから、実際に施行されてから、いろいろなところで問題に気づかれることになると思います。直接的な疑問点がたくさん出てきたら、それを全部まとめて上げて、疑義解釈にまわしてですね、問題点を多くの先生、他の診療科、内保連・外保連、中医協の中でも、認識していただけるような取り組みが必要じゃないかと思います。しっかりと対応していく必要があると思いますね。

 大高:単位あたりの点数については、同じセラピストが同じ20分かけて、疾患別に点数の格差があるのですけれども、これに関してはいかがでしょうか。

 江藤:これは、セラピストの方々の関心の大きいところだと思いますが、手技の内容が比較的運動器の場合はシンプルで、脳卒中あるいは脊髄損傷など疾患によっては、そういう同じ時間でも手技の煩雑さといいますか、熟練度、こういったものに差があるからということが根拠だろうと思うのですけれども、これについてもどこで覆るとも限らないですね。

 大高:次にこれも患者さん側にとって非常に深刻な問題ですが、算定日数の上限が疾患ごとに決められているということについてです。いくつかの疾患が除外されるようではっきりとはしていませんが、いずれにしてもこの切り捨てには大きな問題があると思うのですが。

 江藤:実際に、データをもっと整備していかないと、なかなか議論できない面があるのですけども、上限日数に関しては、どの程度根拠があるのかな、という疑問があります。その後は、どういうところで継続するか、ということになると、脳卒中でも運動器にしても、たぶん介護保険のほうでリハに関連する中身を充実させていこうという流れだと思います。機能回復がさらに続いているケースで、算定日数を越してやっている場合には、今の政策的な考え方では、医療保険の対象外と言っているのだと思います。ただし、算定日数制限は大きな流れとしては仕方ないとしても、オール・オア・ナッシングではなく、たとえば、「週1回は算定可能」といった細かな配慮が必要な問題と思っています。

 大高:代替者の問題ですけれども、これは、諸先輩の先生方が、これまで長い間チーム医療の推進、質の向上というなかで療法士の専門性の確立に尽力されてきたと思うのですが、そのチーム医療の専門職の要件が大幅に緩和されそうであるということに関してはいかがでしょう。

 江藤:そうですね。繰り返しになりますが、リハの専門性というのは従来の、臓器別・疾患別あるいは縦割りの専門性とは全く違うわけですね。ターゲットとしているのも障害といいますか、疾患や直接それに関連した症状の緩和ということではなくて、その症状がもたらしている機能障害とか能力低下という、その人の日常生活に対してマイナスになっている事象を解決しようとして取り組んでいるのです。ですから、それに関しては従来の医師と看護師ぐらいで成り立つ古典的な診療の枠組みではなくて、PT、OT、義肢装具士、言語聴覚士(ST)、あるいは医療ソーシャルワーカー、その他いろんな個別のセラピストが必要になり、彼らの専門性がどんどん発達しつつあるわけです。そういう人達とチームでやるというのが一番の特徴ですね。ですから、私どもとしても、関連協会との意見交換の会を定期的にやってきたわけですね。それが、ちゃんと理解されてない。そういう職種をちゃんと育てるという趣旨で、国家試験まで行われるようになったにもかかわらず、短期間の実技プログラムと短時日の研修会で結構ということになると質の維持という点からは大問題です。その根拠はPTの数が少ないということですけれども、実際は学校数もどんどん増えて、現在の在学生の数ですと、PTでも毎年1万人近く増えていくことになるので、この2、3年のうちに充足できる見通しなのですね。そういった背景からもリハの質を低下させるような代替者の参入を診療報酬で認めるということに関して、私どもは反対です。

リハの診療への理解を広めるために 

 大高:現時点での診療報酬改定、あるいはその決定プロセスでかなり問題と思われる部分もある、ということなのですけれど、なぜそういう決定になってしまったのか、なぜリハに対しての理解がされなかったかという点に関しては?

 江藤:そうですね。日本の役人さんはよく勉強していると思います。ただ部署は、ずっと同じところに居るといろんな澱みの元になるということで、すぐ配置が変わります。ですから、私たちが一生懸命説明をして、理解していただいた方が、また別のところに移ってしまうというようなことが今までも何度もあります。そこで必要なことは、社会全体に理解を深めていくということなのでしょうけれども、まだ十分ではなかったのだろうということです。そういう意味では、こういう広報などを通じて、会員だけではなく一般の非会員の先生方、市民の方々にもリハというものをもっと理解していただく努力が必要だろうと思います。

 わかっているものと思っていたのに、そうでもなかった、という原因の1つにはリハが主に米国から取り入れられた外来のもので、広がりつつあるけれどもまだ歴史が浅いという背景もあります。大学の中でリハ科のない大学、実は国立系にはまだたくさんあります。ですから、今後、医学教育に対してもどう関わっていくか、特に卒前のコアカリキュラム、それから卒後2年間の研修の中にリハに接する機会を持つには、どうしたらいいのか取り組む必要がある。その中でリハに対する理解を広く持っていただく。専門研修のローテーションの中で、必ずリハが入れるような仕組み作りに積極的に関わっていきたいな、と思っています。この数年で国立大学でもリハ部という形で整備されてきていますし、これからは、もう少しやりようがあるかな、と思っているところです。

 大高:運動器リハの研修会に関連して今後、リハ医学会主催の研修会を行う計画はありますか。

 江藤:実際に、こういうニードは大きいということですね。リハのニードが急激に拡大しているということもあって、学会員でない方々もリハに関わる機会が多くなったということで、非学会員の医師に対する研修会をやってほしい、というような厚労省側の要望もあるわけですね。リハ医学会としては、運動器に関しては日整会とリハ医学会の主催、それに臨床整形外科医会と運動器リハ学会は共催という形でやりましたが、それ以外の、呼吸とか循環、あるいは脳卒中に関しても、会員外の人達に関連学会とも密接に連絡を取って、そういう研修会をプランしていくことも必要である、と考えています。年度明けできるだけ早い時期に研修会をやれればと思っています。

 大高:最後に、学会の今後の方向性についてお聞きします。学会というのは、そもそも学術団体で、医学というのを発展させていく団体で、それに対し実際の医療を実現するための枠組み、仕組みが保険医療ですね。そこにギャップができだんだん広がって、医学が求める理想的な形と実際の保険医療が違ってきているというのが現実ですけれども、そういうギャップを埋めるために今後どのような対策を行うのでしょうか。

 江藤:そうですね。今回こういうことがあったのを契機に、例えばリハ病院施設協会、それからPT協会、OT協会、ST協会と一緒に、エビデンスを出していく必要があるでしょう。これはかなり科学的にしっかりとデザインして、大規模なデータを出していく世界ですね。ですから、病院施設協会とも協力しながら、リハ医学会が主導で進めていくことが望ましいと思っています。そして、学術的なアプローチから診療報酬を主張する根拠を作っていく。このような面で、いろいろな取り組みが実際に始まっています。代表的な疾患に関してはリハの効果はどういうものなのか、どういうやり方がよいのか、また、算定日数の上限の問題にも関わりますけれど、いつぐらいまでは改善が期待できるものか等について、すでにガイドライン委員会という形で幾つか取り組みを始めているわけです。リハ医療の実施とその効果というものを、学会がちゃんと明確に説明できるようにさらに積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 大高:個々の学会員に、何か期待することは?

 江藤:リハは、今回のことを通じて私たちが思っていたほどには広く理解されてないのかな、ということを実感しています。ただ専門医、あるいは認定医の先生方には自信を持って仕事をしていただきたい。その仕事そのものが、リハの医者を認知させることになりますから。今のリハのカリキュラムを経てこられた方々は、十分自信を持っていいと思います。実際、リハの専門医を是非よこしてください、という要望が昔と比べて確実に増えています。つまり、従来から、診療報酬の都合でリハ医が必要とされたりされなかったりというのはなくて、リハ医のいろいろな仕事を見て、やはりリハ医がいることで患者サービスが明らかに良くなるということが実感されて、そのような要望が来ているわけです。自信を持って、いろいろな風評にあまり動揺しないで、やっていただきたいと思っています。

 鴨下:今回のことを1つのきっかけに、リハ医学会、リハ病院施設協会、PT、OT、ST協会の人達と一緒になって、コンプリヘンシブなリハを国民の医療の中に根付かせていくように頑張っていくということですね。

 江藤:そうですね、その通りです。例えば代替者の導入を安易に認めるとか、やたら単位数を増やせばいいでしょうって、実際には、単価を落としておきながらですね、このようなことは、せっかく今までリハがだんだんと広がって、クオリティも高めることに対する認識が高まってきた中で、明らかに逆行するものだと思います。むしろ形だけのリハをやり易くしているけれども、リハの質は非常に不安なことが起きかねないような、改定方針だと思います。ですから、それを是正する、改めるように我々としては働きかけて、質はきちっと維持するようにやっていくようにしたいと考えております。是非、会員の先生方、ご協力をよろしくお願いいたします。

(この記事は、2月10日に行われた1時間半のインタビューをまとめたものであり、診療報酬改定については、その後、変化した部分もあります。) 

リハビリテーション領域における平成18年度診療報酬改定について

日本リハビリテーション医学会 社会保険等委員会 委員長  田中宏太佳 

はじめに

 平成18年度診療報酬改定の基本方針が、平成17年11月25日に社会保障審議会医療保険部会・医療部会から示され、具体的には、①患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高める医療の実現、②質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携の推進、③我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域の評価のあり方についての検討、③医療費の配分の中で効率化の余地があると思われる領域の評価のあり方についての検討、この4つの視点から改定が行われることが示唆されました。平成18年2月15日には、中医協から答申が行われ、上記の内の2番目の項目の中で、リハに関係する診療報酬の改定内容が示されました。以下にその項目ごとに順を追って3月17日現在までに明らかにされていることを列記します。

表1 新たな疾患別リハビリテーション料 (PDFはこちらより)

  脳血管疾患等リハ 運動器リハ 呼吸器リハ 心大血管疾患リハ
対象疾患 脳血管疾患 脳外傷 等 上・下肢の外傷・骨折の手術後 熱傷瘢痕による関節拘縮 等 肺炎・無気肺・慢性閉塞性肺疾患であって重症度分類Ⅱ以上の状態の患者 等 急性心筋梗塞・開心術後 慢性心不全で左心駆出率40%以下 等
リハビリテーション料(Ⅰ) 250点 180点 180点 250点
リハビリテーション料(Ⅱ) 100点 80点 80点 100点
算定日数上限 180日 150日 90日 150日

1) リハの疾患別体系の見直し 

 表1のように、理学療法、作業療法および言語聴覚療法を再編し、新たに4つの疾患別リハ料が新設されました。疾患群に入れられる具体的な疾患名や障害の状況は表2に示されているとおりです。表3に示す医師や医療職および機能訓練室などの施設基準の低いレベルではリハ料(Ⅱ)が、より手厚い配置がなされた場合にはリハ料(Ⅰ)が算定できるようになっています。特に機能訓練室の面積要件が相当緩和されました。また、疾患の特性に応じた標準的な治療期間を踏まえ、疾患群ごとに算定日数に上限が設定された代わりに、算定日数上限の期間内に必要なリハを提供できるよう、1カ月に一定単位数以上行った場合の点数の逓減が廃止されました。長期にわたり継続的にリハを行うことが医学的に有用であると認められる一部の疾患として(1)失語症、失認および失行症、(2) 高次脳機能障害、(3)重度の頸髄損傷、(4) 頭部外傷および多部位外傷、(5) 回復期リハ病棟入院料を算定する患者、(6) 難病患者リハ料に規定する疾患、(7) 障害児(者)リハ料に規定する患者、の7つの状態が示され、特に(6)や(7)の条件により、(1)でない脳卒中や(3)でない脊髄損傷や多くの神経難病が算定日数の上限や逓減を気にせずにリハの対象とできる解釈も行えるようであり、今後のリハ医の的確なリハ適応に関する技量が問われる重要な事項だと思います。また、集団療法が廃止され個別療法のみとなりました。算定の起算日は、発症、手術、急性増悪した日となります。また入院中であっても再発、急性増悪すればリセットされて起算日となります。

表2 各疾患群別リハ料対象患者 (PDFはこちらより)

心大血管疾患リハ (ア)急性発症した心大血管疾患又は心大血管疾患の手術後の患者:急性心筋梗塞、狭心症発作、開心術後、大血管疾患(大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管術後)のもの。 (イ)慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患その他の慢性の心大血管の疾患により、一定度以上の呼吸循環機能の低下及び日常生活能力の低下を来たしている患者:慢性心不全であって、左室駆出率40%以下、最高酸素摂取量が基準値80%以下又はBNPが80 pg/ml以上の状態。末梢動脈閉塞性疾患であって、間欠性趾行を呈する状態。
脳血管疾患等リハ (ア)急性発症した脳血管疾患等又はその手術後の患者:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳外傷、脳炎、急性脳症(低酸素脳症等)、髄膜炎のもの。(イ)急性発症した中枢神経疾患又はその手術後の患者:脳膿瘍、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脳腫瘍摘出術などの開頭術後、てんかん重積発作等のもの。(ウ)神経疾患:多発性神経炎(ギラン・バレー症候群等)、多発性硬化症、神経筋疾患、末梢神経炎(顔面神経麻痺等)。(エ)慢性の神経筋疾患等:パーキンソン病、脊髄小脳変性症、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)、遺伝性運動感覚ニューロパチー、末梢神経障害、皮膚筋炎、多発性筋炎。(オ)失語症、失認及び失行症、高次脳機能障害。(カ)難聴や人工内耳埋込手術等に伴う聴覚・言語機能の障害を有する患者:喉頭摘出術後の言語障害、聴覚障害、言語聴覚障害、構音障害、言語障害を伴う発達障害等のもの。(キ)リハビリテーションを要する状態であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力の低下及び日常生活能力の低下を来たしている患者:外科手術または肺炎等の治療時の安静による廃用症候群、脳性麻痺等に伴う先天性の発達障害等の患者[治療開始時のFIM 115点以下、Barthel Index(BI) 85点以下の状態などのもの。](ク)急性憎悪:脳血管疾患等リハビリテーション料の対象となる疾患の憎悪等により、1週間以内にFIM得点又はBIが10以上低下するような状態等。
運動器リハ (ア)急性発症した運動器疾患又はその手術後の患者:上・下肢の複合損傷(骨、筋・腱・靭帯、神経、血管のうち3種類以上の複合損傷)、脊椎損傷による四肢麻痺(1肢以上)、体幹・上・下肢の外傷・骨折、切断・離断(義肢)、運動器の悪性腫瘍のもの。(イ)慢性の運動器疾患により、一定以上の運動機能の低下及び日常生活能力の低下を来たしている患者:関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、熱傷瘢痕による関節拘縮、運動器不安定症等。
呼吸器リハ (ア)急性発症した呼吸器疾患の患者:肺炎、無気肺等のもの。(イ)呼吸器疾患又はその手術後の患者:胸部外傷、肺梗塞、肺移植手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対するLVRS(Lung volume reduction surgery)、肺癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌の手術等のもの。(ウ)慢性に経過する呼吸器疾患により、一定程度以上の重症の呼吸困難や日常生活能力の低下を来たしている患者:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、気管支拡張症、間質性肺炎、塵肺、びまん性汎気管支炎(DPB)、神経筋疾患で呼吸不全を伴う患者、気管切開下の患者、人工呼吸管理下の患者、肺結核後遺症等[Medical Research Council Scale で2以上の呼吸困難を有する状態、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)で日本呼吸器学会の重症度分類のⅡ以上の状態、または呼吸障害による歩行機能低下や日常生活活動度の低下により日常生活に支障を来す状態に該当するもの。]
障害児(者)リハ (ア)脳性麻痺。(イ)胎生期ないしは乳幼児期に生じた脳又は脊髄の奇形及び障害:脳形成不全、小頭症、水頭症、奇形症候症、二分脊椎等。(ウ)顎・口腔の先天異常。(エ)先天性の体幹四肢の奇形又は変形:先天性切断、先天性多発性関節拘縮症等。(オ)先天性神経代謝異常症、大脳白質変性症。(カ)先天性又は進行性の神経筋疾患:脊髄小脳変性症、シャルコーマリートゥース病、進行性筋ジストロフィー症等。(キ)神経障害による麻痺及び後遺症:低酸素性脳症、頭部外傷、溺水、脳炎・脳症・髄膜炎、脊髄損傷、脳脊髄腫瘍による後遺症等。(ク)言語障害、聴覚障害、認知障害を伴う自閉症等の発達障害:広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害等。
難病患者リハ ベーチェット病、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、スモン、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、皮膚筋炎および多発性筋炎、結節性動脈硬化症、ビュルガー病、脊髄小脳変性症、悪性関節リウマチ、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)、アミロイドーシス、後縦靭帯骨化症、ハンチントン病、もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)、ウェゲナー肉芽腫症、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)、広範脊柱管狭窄症、特発性大腿骨頭壊死症、混合性結合組織病、プリオン病、ギラン・バレー症候群、黄色靭帯骨化症、シェーグレン症候群、成人発症スチル病、関節リウマチ、亜急性硬化性全脳炎。

2) 急性期リハの評価 

 急性期のリハの充実を図る観点から、疾患別リハについては合計で患者1人・1日当たり6単位まで、(1)回復期リハ病棟入院料を算定する患者、(2) 脳血管疾患等の患者で発症後60日以内の患者、(3) ADL加算を算定(訓練室以外の屋外を含む病棟等において、早期歩行自立および実用的な日常生活における諸活動の自立を目的として、実用歩行訓練・日常生活活動訓練が行われた場合で、訓練により向上させた能力については常に看護師等により日常生活活動に生かされるよう働きかけが行われた状態:1単位当たり30点)する患者においては1日当たり9単位まで算定可能となりました。9単位のPT・OT・STへの配分は必要に応じて実施単位数を決めることができます。ADL加算はリハ料(Ⅰ)を算定する入院患者の場合に、1カ月毎に1回以上リハ実施計画書の作成を行う場合算定できます。一方、早期リハ加算は廃止されました。

3) リハ従事者1人・1日当たりの実施単位数の上限の緩和

リハ従事者の労働時間について、医療機関ごとの弾力的な運用を可能とするために、リハ従事者1人・1日当たりの実施単位数の上限が緩和され、1日当たりの単位数は18単位を標準としながらも24単位を上限とし、週108単位までと規定されました。

4) 回復期リハ病棟入院料の見直し 

 更なる普及を図るために、表4に示されたように算定対象となるリハを要する状態が拡大されましたが、一律に180日を算定上限とされていた現行が改められ、状態ごとに算定日数上限が設定されました。この施設基準として4つのリハ料(Ⅰ)のいずれか1つ〔脳血管疾患等リハ料の場合は(Ⅱ)でも可能〕を算定していることが必要となります。

表3 疾患別リハビリテーション料に関する施設基準 (PDFはこちらより)

心大血管疾患リハ(Ⅰ) 心大血管疾患リハ(Ⅱ) 脳血管疾患等リハ(Ⅰ) 脳血管疾患等リハ(Ⅰ)(言語聴覚療法のみを実施する場合) 脳血管疾患等リハ(Ⅱ) 運動器リハ(Ⅰ) 運動器リハ(Ⅱ) 呼吸器リハ(Ⅰ) 呼吸器リハ(Ⅱ) 難病患者リハ 障害児(者)リハ
専任の常勤医師が1名以上(循環器科又は心臓血管外科に限る)(直接の監視が必要) 循環器科又は心臓血管外科を担当する常勤医師1名以上が勤務(症状が安定している患者の場合、医師の直接の監視下でなくともよい) 専任の常勤医師が2名以上 専任の常勤医師が1名以上 専任の常勤医師が1名以上 専任の常勤医師が1名以上(3年以上の経験又は適切な研修) 専任の常勤医師が1名以上 専任の常勤医師が1名以上 専任の常勤医師が1名以上 専任の常勤医師 専任の常勤医師が1名以上
専従の常勤理学療法士及び専従の常勤看護師それぞれ1名以上 専従の常勤理学療法士又は専従の常勤看護師いずれか1名以上 1.専従の常勤理学療法士が5名以上、2.専従の常勤作業療法士が3名以上、3.言語聴覚療法を行う場合は、専従の常勤言語聴覚療法士が1名以上、4. 1.から3.までの従事者が併せて10名以上 専従の常勤言語聴覚療法士が3名以上 専従の常勤理学療法士、作業療法士又は言語聴覚療法士のいずれか1名以上 1.専従の常勤理学療法士が2名以上、または2.専従の常勤作業療法士が2名以上、または3.専従の常勤理学療法士及び作業療法士を併せて2名以上(研修を終了した代替医療者は(Ⅱ)を算定) 専従の常勤理学療法士又は作業療法士がいずれか1名以上 専従の常勤理学療法士2名以上(1名は回復期リハ病棟との兼任は不可) 専従の常勤理学療法士1名以上 専従の2名以上の従事者(理学療法士または作業療法士1名以上であり、かつ、看護師が1名以上) 1.専従の常勤理学療法士又は作業療法士が2名以上、または2.専従の常勤理学療法士又は作業療法士のいずれか1名以上と専従の常勤看護師1名以上(言語聴覚療法を行う場合は、専従の常勤言語聴覚療法士が1名以上)
病院45㎡以上、診療所30㎡以上、他と兼用できない 病院45㎡以上、診療所30㎡以上、他と兼用できない 160㎡以上、言語聴覚療法を行う場合専用の個別療法室8㎡以上 専用の個別療法室8㎡以上 病院100㎡以上、診療所45㎡以上 病院100㎡以上、診療所45㎡以上 45㎡以上 病院100㎡以上、診療所45㎡以上 45㎡以上 60㎡(患者1名あたりの面積は4㎡を標準) 60㎡以上、言語聴覚療法を行う場合専用の個別療法室8㎡以上

5) 退院後早期の訪問リハの評価  

 居宅を訪問して行うリハについて、入院から在宅における療養への円滑な移行を促すために、在宅訪問リハ指導管理料について、1日当たりの点数から1単位当たりの点数(300点)に改めるとともに、PT、OT、またはSTが、20分以上訪問によりリハを行った場合、週6単位まで算定できますが、退院後3カ月以内の患者においては週12単位まで算定上限が緩和されました。

6) 摂食機能療法の算定上限の緩和 

 摂食機能障害を有する患者に対して、STまたは看護師等が1回につき30分以上訓練を行った場合に185点を算定します。1カ月に4回を限度とされていますが、治療開始日から起算して3カ月以内の患者については、毎日算定できます。

表4 回復期リハビリテーションを要する状態および算定上限日数 (PDFはこちらより)

一 脳血管疾患、脊髄損傷等の発症又は手術後2ヶ月以内の状態 算定開始後 150日
(高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷および頭部外傷を含む多発外傷の場合) 算定開始後 180日
二 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の骨折の発症又は手術後2ヶ月以内の状態 算定開始後 90日
三 外科手術または肺炎等の治療時の安静により生じた廃用症候群を有しており、手術後又は発症後2ヶ月以内の状態 算定開始後 90日
四 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経・筋・靱帯損傷後1ヶ月以内の状態 算定開始後 60日

7) 障害児(者)に対するリハ料の新設 

脳性麻痺等の発達障害児・者および肢体不自由児施設等の入所・通所者
(表2)を対象患者として、表3のような施設基準を満たした場合1日6単位まで、(1単位につき)6歳未満は190点、6~18歳未満は140点、18歳以上は100点が算定できます。心大血管リハ以外の疾患別リハと障害児 (者)リハのスペースの兼用や専任医師や専従リハスタッフの兼務は可能で、疾患別リハを算定した場合本点数は算定できません。 

8) あん摩マッサージ指圧師等の算定 

 運動器リハ料(Ⅰ)においては、適切な運動器リハに係る研修を終了したあん摩マッサージ指圧師等が、専従の常勤者の場合、PTが勤務しているとみなし当該あん摩マッサージ指圧師等が実施した場合は(Ⅱ)の点数(80点)を算定できます。また、脳血管疾患等リハ料(Ⅱ)および運動器リハ料(Ⅱ) で運動療法機能訓練技能講習会(全国病院理学療法協会が実施しているもの)を受講したあん摩マッサージ指圧師等が訓練を行った場合は、(Ⅱ)の所定点数(100点または80点)を算定できます。

おわりに 

 今回の改定では、リハ診療報酬体系の枠組みが大きく変更されました。また急性期に重点を置いた点数配分がある面では促進されたことになります。算定日数制限の除外規定となる対象疾患においては、その程度に関して規定は無く判定基準は設けられていません。また廃用症候群や脳性麻痺等、および急性増悪では正確な日常生活動作の評価が求められるようになりました。リハを継続することで効果があると考えられる例の選択や、どのような状態に何単位のリハ治療を行うのかなどリハ医の的確な判断が今後ますます求められるものと思われます。

第43回日本リハビリテーション医学会学術集会 (6.1-3開催):近況報告

 第43回日本リハ医学会学術集会は、来る6月1日(木)~3日(土)の3日間、東京プリンスホテルパークタワー(港区芝公園)で開催されます。

 学会のメインテーマは「リハ医学の進歩と実践」であります。最近の医学・医療の進歩は目覚ましいものがあり、それに伴ってリハ医学も急速に進歩しております。しかし、リハの進歩は日常のリハ診療において実践が伴ってはじめて進歩と言えるのではないかと思われます。

 学会のプログラムは、特別講演として日立製作所の特別研究員である小泉英明先生に『「脳科学と教育」研究の現状と将来展望』と題して、第1日目の午後に企画しております。小泉先生は光トポグラフィによって脳機能を評価し、脳機能と教育の分野で目覚ましい成果をあげておられ、2003年にはローマ法王庁科学アカデミー創立400周年記念シンポジウムで特別講演をされておられます。

 海外からの招待講演は、J. Borg 先生の "Mild Traumatic Brain Injury Rehabilitation, the Evidence"、 D. Good 先生は "Progress and Practice of Stroke Rehabilitation"、J. Chu先生は"Electrical Twitch Obtaining Intramuscular Stimulation (eToims) in Myofascial Pain Syndrome"、C.I. Park先生は"The Role of Physiatrist in Management of Cerebral Palsy"を予定しております。

 その他に、シンポジウム・パネルディスカッション9企画、教育講演も10企画予定しており、リハ科の研修単位は勿論、整形外科の研修単位も多数取得できるようになっております。

 市民公開講座も6月3日(土)午後、「自立生活のあり方 障害と共に悩み・思い・考えたこと」と題して、バリアフリーコンサルタントの小島直子氏の講演を予定しております。

 また、6月3日(土)は脳性麻痺研究会が朝から第2会場で夕方まで行われ、こちらのメインテーマも「脳性麻痺療育の進歩と実践」であります。

 本学術集会の一般演題は760余題の多数の応募があり、リハ医学に対して、関心の大きさを知ることができます。現在、座長の調整や招待講演の抄録の催促など準備におおわらわと言うところです。後は、本学術集会に皆様の多数の参加を期待するばかりで、よろしくお願いいたします。

(第43回学術集会会長 宮野佐年)

医局だより

慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室

 里宇明元教授の就任以来、スタートからの全力疾走(本人は軽いジョッギングのつもり?)に総勢46名の医局員一同、臨床から教育、研究活動に至るまで追走に必死の毎日ですが、今回は慶應義塾が21世紀におけるグランドデザインとして掲げる「感動教育実践」「知的価値創造」「実業世界開拓」のキーワードをもとに、私たちの医局を紹介したいと思います。

  • 社中協力と感動教育実践:慶應義塾を構成する教職員等のすべては「社中」と呼ばれ、「社中協力」の精神は医局員の強い絆にも息づいています。今春はレジデントを中心としたリクルートが実り、2名の専修医と脳外科からの転科1名を迎えることができました。教える者と学ぶ者の分を定めず、それぞれの分野で一日の長のある者が教えるという「半学半教」(師弟ノ分ヲ定メス教ル者モ学フ者モ概シテコレヲ社中ト唱フルナリ。)を実践すべく、多数の特色ある研修施設の協力を得た質の高い教育プログラムにより、本年度も5名におよぶ独立自尊の専門医を輩出することができました。
  • 自我作古と知的価値創造:「我ヨリ古(いにしえ)ヲ作(な)ス」とは、前人未到の分野に挑戦し、困難や試練に耐えて事態に当たる勇気と使命感を表し、慶應義塾の主義が記された『慶應義塾之記』の中で、前野良沢、杉田玄白らの医学書翻訳事業を讃えた言葉として用いられています。私たちは新たなエビデンスの創出へ向け、中枢神経可塑性による運動機能改善、神経幹細胞移植における神経機能再構築などの先端医療に関わる研究や、半側空間無視に対するプリズム療法をはじめとしたランダム化比較試験などを推進しています。
  • 人間普通日用に近き実業世界開拓:『学問ノスゝメ』には「人間普通日用に近き実学」を社会で生かすことの重要性が説かれています。リハ医学はまさしく経験や実証に基づいた実際に役立つ学問であり、私たちはその具現者として、個々の症例への細やかな対応はもとより、地域に根ざした組織的なリハの体系作りにも取り組んでいます。2004年からは地域リハ支援センターの指定を受けるなど、東京を中心とした都市型リハ診療体制の構築へ向けて大規模プロジェクトを展開しています。

 これらの理念を根底とし、和気あいあいとした雰囲気の中で、当教室はリハ医学の未来への先導に挑戦しています。

(山田 深)

<慶應義塾に関わる引用>慶應義塾ホームページ URL : http://www.keio.ac.jp/index-jp.html (2006年3月7日引用)

慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
TEL 03-3353-1211(内線62264)
FAX 03-3225-6014
http://web.sc.itc.keio.ac.jp//rehabil/index-jp.html

INFORMATION

編集委員会・広報委員会

 J-STAGE による電子ジャーナルサービスに関してリハ医学会誌43 巻1 号(2006 年1月号)にてお知らせいたしましたように、4 月よりJ-STAGE への参加が始まります。J-STAGE は,学術論文の研究成果を国内外に発信することを目的とした電子ジャーナルサイトで、引用文献記述の自動解析により、ChemPort, CrossRef, PubMed,JOIS, JDream など、他サイトの書誌情報との相互リンクが可能となります。abstract などの英文情報については海外からのアクセスも期待できると考えられます。つまりリハ医学会誌を広く知っていただく機会がさらに増えていくものと考えます。

 公開する資料については、原著、短報、症例報告、総説、学術集会会長講演、学術集会教育講演となりました。これらの論文、すなわちPDF ファイルについては発行後6 か月まではリハ医学会会員に限り公開、7か月以降は「会員/非会員にも公開」といたしました。リハ医学43 巻4 号(4月号)掲載の認証方法をご参照の上、ご利用ください。

リハ医学 ジャーナルトップページURL 

 日本語画面
 http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrm1963/-char/ja/
 英語画面
 http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrm1963 

J-STAGE トップページURL 

 http://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
 利用案内
 http://info.jstage.jst.go.jp/info/use/system.html 

(編集委員長 正門由久、広報委員長 鴨下 博)

教育委員会

  医学生リハビリテーションセミナーの近況についてご報告いたします。本セミナーは1998 年度より大学病院施設で開催され、ポスター等の広報活動を行ってまいりました。2005 年度は29 施設においてセミナー開催のご協力をいただき、計47 名の医学生が参加しています。2006 年は65施設より開催のご協力をいただき、ポスター・チラシの作成、その他広報を行っております。

 昨年9月に研修施設指導責任者372名(当時)の先生方に以下のようなアンケート調査を行い、280 名の先生方よりご回答をいただくことができました。その結果についてご報告いたします。

問1:セミナー開催について
知っている 201名
知らない 79名
問2: 医学生からの研修・見学の問合せ
あり 102名
なし 177名
問3:過去のセミナー開催
経験あり 42名
なし 238名
問4:今後のセミナー開催予定
あり 134名
なし 142名

 会員の皆様への宣伝不足、および医学生への本セミナーの紹介が不十分であったことを反省しつつ、これからの本セミナー発展に向けての検討課題を整理しております。今年より、研修施設指導責任者の先生方全員にセミナー開催依頼を行い、セミナー開催が難しい状況であってもポスターを配布し、広報に関してご協力を仰ぐようにしました。会員の皆様の本セミナーに対するご意見・ご要望がございましたら是非お聞かせください。

(委員長 出江紳一)

近畿地方会

 近畿地方会では、年2 回の学術集会と年3 回の専門医・認定臨床医生涯教育研修会、府県にある研究会の際に行われる教育研修会で、会員の学術振興、生涯教育を行っています。講演内容はリハ医学の進歩やリハ医療に直結するもので、各分野の偏りがないように幹事会で調整をしています。◆平成18 年度の予定は、6 月17 日教育研修会(京都府立医科大学図書館ホール):1) 順天堂大学大学院リハ医学 長岡正範教授「高次脳機能障害支援事業について-特にリハ医療への課題」、2) 聖ヨゼフ整枝園 神田豊子医長「脳性麻痺をめぐるリハビリテーションの最近の話題―嚥下障害と姿勢―小児領域を超えて」、3) 日本福祉大学 近藤克則教授「リハビリテーション医のためのエビデンス―介護予防からリハ・プログラムまで」、7 月22 日教育研修会(大阪市立大学医学部学舎4 階中講義室)、9 月2 日学術集会(大阪市総合医療センターさくらホール)、10 月教育講演会(和歌山)、11 月教育研修会(兵庫県リハビリテーション医会同会場)、11 月教育研修会(京都地域リハビリテーション研究会同会場)、平成19 年2 月学術集会(大阪)が予定されています。詳細が決まり次第、近畿地方会のホームページ(http://www.kinkireh.com/)に掲載しますので、研修会参加希望の方はご覧ください。

(地方会幹事:門 祐輔)

中国・四国地方会

 中国・四国地方会では年に2 回の学術集会を開催しておりますが、次回の第17 回地方会は、平成18年5 月28 日(日)9 ~ 17 時を予定しています。会場は宇部全日空ホテル(宇部市相生町)で、大会長は山口大学医学部人体機能統御学教授の田口敏彦先生です。特別講演(専門医・認定臨床医生涯教育研修会)は、久留米大学病院リハ部教授の志波直人先生に「廃用筋萎縮へのわれわれの取り組み―宇宙医学への応用が期待される電気刺激医療―」を、小郡第一総合病院院長の土井一輝先生に「手の外科疾患の後療法とピットホール」をお話しいただくこととなっています(1 講演1 単位)。一般演題の発表も多数予定されており、年々その数は増加しています(参加1 単位)。第22 回中国・四国リハビリテーション医学研究会との同時開催を予定しておりますので、コメディカルの皆様のご出席も可能です。日本リハ医学会会員の先生方には、リハに関係する多くの方々にご出席を呼び掛けていただければ幸いに存じます。学会ならびに専門医・認定臨床医生涯教育研修会への参加についての申込みは不要です。詳細はホームページをご覧ください(http://ds0.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~y-ortho/doumon/riha/index.html)。

(代表幹事:椿原彰夫)

九州地方会

 第19 回九州地方会は、本年2月19日(日)に、松坂誠應幹事(長崎大学教授)の主催で開催され、盛会裏に終了いたしました。下記決定事項を連絡いたします。◆当地方会では、経費の節減ならびに学術集会主催会長の負担を軽減するために、抄録集の配付方法を平成18 年度より変更します。従来約1400 名の会員全てにプログラム抄録集を送付していましたが、学術集会前1 カ月の時点で全会員にプログラム(会期・会場案内・演者・演題名・HP アドレス)のみ郵送し、演題抄録は当地方会のHP で公開します。学術集会当日の参加者に従来のプログラム抄録集を配付致します。◆第20回地方会は、井手睦幹事(聖マリア病院)が主催し本年9月3日(日)、パピヨン24 ガスホール(福岡市)で開催されます。また、第21 回地方会は平成20 年2月、宮崎県での開催とし、会長として山口和正幹事(宮崎県立こども療育センター)が選出されました。◆ 欠員のあった佐賀県および大分県の幹事として、それぞれ、原 寛道先生(からつ医療福祉センター院長)ならびに津村 弘先生(大分大学医学部脳神経機能統御講座(整形外科学)教授)が選出されました。◆本年2 月17 日、当地方会顧問・緒方 甫先生(産業医大リハ医学講座名誉教授)が永眠されました。緒方先生は、当地方会の前身である九州リハビリテーション医学懇話会を1973 年に立ち上げ、以後、九州地区のリハ医学の発展に尽くされました。謹んでご冥福をお祈りいたします。 

(事務局担当幹事:佐伯 覚)

障害者自立支援法 4月1日からスタート

 半世紀に及ぶ日本の障害福祉制度の大改革が始まろうとしています。本法における福祉サービスは表に示したように体系化され、所得に着目した応益負担が4 月1 日より開始されます(補装具については10 月開始)。今回は、「介護給付」と「訓練等給付」について支給決定がなされるまでのプロセス(図)を解説します。

 

表 障害者自立支援法における福祉サービス体系(厚生労働省資料から抜粋) 

 サービス利用申請の窓口は従来通り市町村です。新障害程度区分(区分1 ~ 6)を決定するために106 項目の認定調査(コンピューターによる1 次判定)が行われます。

 ホームヘルプサービス、ショートステイ、入所施設での生活介護(旧法身体障害者療護施設入所者等が該当)などの「介護給付」を希望する場合は、医師意見書、特記事項などに基づいた2 次判定(審査会)を経て支給決定されます。

 一方、施設での機能訓練、生活訓練のみを行う場合( 旧法身体障害者更生施設通所者等が該当) は「訓練等給付」を受けることになりますので医師の意見書は不要です。暫定支給決定が行われ、個別支援計画、訓練効果などをみて審査会の意見を聞きながら本支給決定がなされます。なお、入所して( 旧法身体障害者更生施設入所者等が該当) 訓練を行う場合でADL の支援が必要な方は合わせて「介護給付」(障害者支援施設での夜間ケア等)を受けることになります。

 これまでに支援費制度で福祉サービスを受けている方で4 月以降(旧法支援費制度対象障害者施設利用者は10 月以降)も継続が必要な方は、残りの有効期間が「みなし支給決定」として扱われます。それ以降あるいはこれから新しく福祉サービスを利用しようとする場合は、「新障害程度区分」の決定を受けることが必要となります。

 

図 支給決定までの流れ(厚生労働省資料から抜粋)

 したがって、2 次判定で重要な位置を占める医師意見書の作成を求められた場合、リハ医としてどのような点に注意して書かなければならないかを知っておくことが重要です。障害像を的確に表現し、1 次判定では反映されなかった支援の必要性を専門医師として意見書に盛り込むことが大切です。特に高次脳機能障害や行動障害などの観点が重要と考えられます。各地域において医師意見書作成の研修会が企画される予定ですので参加をおすすめします。

(障害保健福祉委員会 樫本 修)

お知らせ:「リハビリテーション科専門医会設立総会」のご案内・同幹事立候補受付

 日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医の会を組織することになりました。リハ医学会のオピニオンリーダーとして社会的責任を果たすなど、責任ある専門家集団として出発します。

  • 日時:2006年6月2日(金)17:00 ~ 18:30
  • 場所:東京プリンスホテルパークタワー(第43 回学術集会会場)
  • 設立宣言(江藤文夫理事長) ・基調講演:中村隆一先生 ・幹事候補の投票
    *幹事候補の立候補受付け等については,別途,専門医各位に郵送済み

事務局だより

 春眠暁を覚えずとかいわれる頃になりました。昨年7月から医学会事務の仕事を始め、早いもので、もう10 カ月。毎日忙しく、夢中になって仕事をしていましたが、ふと気づくと春になっていました。全く、時の流れの早さに愕然としてしまう今日この頃です。●さて、先月、勤務以来ずっと準備を続けていた専門医/認定臨床医試験が、無事終了しました。この試験が学会の1 年間で大きな山の1 つだと思っていたので、無事終えることができてホッと一安心です。運営に携わった諸先生方には本当にお疲れさまでした。試験の場でいただいたいろいろなご感想については、今年度の課題とし、事務局も担当委員会のお役に立つよう努めてゆきたいと考えています。●ところで春と言えば異動の季節。異動と言えば変更届のお願いです。勤務先やお引越しをされた方は忘れずに変更届をご提出ください。試験はもちろん、現在受付中の単位自己申告についても、会員の皆様にご連絡を取らなければならないことはたくさんあります。勤務先が異動前のままになっていますと、大切なお知らせが遅くなってしまうばかりでなく、以前の勤務先にもご迷惑となりますので、どうぞ変更届のご提出は忘れずにお願いいたします。●まもなく、年に一度の学術集会が行われます。今年は東京で、しかも大変便利の良い所ですので、皆様ぜひお越しください。日頃の疑問なども、この際にお気軽にお問い合わせいただければと思います。事務局員一同、お待ち申し上げます。

(事務局 小林亜愉子)

広報委員会より

 記録的な豪雪を記録した冬が過ぎ去り、お花見の季節となりました。今回は、平成18 年度診療報酬改定を特集に取り上げました。前回の臨時号への反響が大変大きかったこともあり、会員の皆様の声に答えるという意味も含めて江藤理事長のインタビュー記事を掲載いたしました。改定内容は、リハ医療界にとって大変厳しい内容で、広報委員会としても、リハ医療を社会に正しく広めていくという努力がまだまだ足りないと痛切に感じる結果でした。今後は、リハニュース等を通じて学会員の方々に必要な情報を発信していくとともに、医療関係者のみならず社会全体に広くリハ医療を発信していく必要性を感じています。今後ともよろしくお願い申し上げます。

(大高洋平)

訃 報

 名誉会員 緒方 甫先生(産業医科大学名誉教授 享年72歳)が、2006年2月17日にご逝去されました。謹んでお知らせするとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。