<特集-2>

特集:回復期リハ病棟―そのねらいと対策
回復期リハ病棟をシミュレーションして

大 島  峻
時計台病院 


■はじめに 平成12年3月,第四次医療法改正の中で回復期リハ病棟が診療報酬上認められた.リハ科を持てば在院日数が長くなると敬遠されていた我が国の医療が,リハを取り入れなければ在院日数が長くなると180度転換した考え方に変わる契機を作るかもしれないと期待される.
■従来のリハ病棟 時計台病院のリハ病棟は2:1看護,一日当たり平均入院単価は26,264円であり,その26.9%がリハ費用,58%が入院料である.注射・投薬・検査・処置・レントゲンなどは合わせても12%に充たない.
■回復期リハ病棟シミュレーション 平成12年2月に入院していた患者251人(延べ5,367日)のうち整形外科と脳外科の入院患者を調査した.整形外科は83人中17人(延べ326日)が,脳外科は38人中7人(延べ118日)が回復期リハ病棟の対象であることが分かった.この時期の整形外科は一日入院単価は42,059円,脳外科は58,731円であり,平均在院日数はそれぞれ19.3日,16.6日であった.回復期リハ病棟があって,予定通りリハ病棟に移行すると,整形外科は患者数66人(延べ1,306日)になり,平均在院日数は17.2日,一日入院単価は50,930円となる.同様に脳外科は患者数31人(延べ536日)で平均在院日数は14.9日,一日入院単価は67,725円となる.
 リハ科は入院患者16人(延べ717日),平均在院日数は51.2日,一日入院単価は26,346円であったが,回復期リハ病棟に移行することで一日入院単価が25,532円と低下することになる.しかし,整形外科,脳外科の回復期リハ患者を24人(延べ835日)を受け入れることで月の入院収入は1889万円から2936万円に増加する.この結果から,病院全体としてみれば,同じ患者に同じ行為を行ったとしても入院収入は月額22034万円から22658万円に624万円増加することになる.
■まとめ 回復期リハ病棟は,従来,急性期の病棟に入院していた患者で長期化していた患者が入院基本料の保証されているリハ病棟に移行することで,時計台病院の場合は明らかに収入の増加(約3%,年間7392万円)につながる.しかし,もっと大きな導入の効果は一般病棟の平均在院日数の削減である.現在,平均21.5日の時計台病院は回復期リハ病棟を作ることで18.4日に削減される.このことはリハ科を抱えていながら特定急性期病院へ移行するための必須の要件であり,多くの急性期病院がリハ科を抱え,積極的に急性期・回復期のリハを提供できるための重要な礎石となるであろう.

回復期リハ病棟の導入による入院要素の変化

 

対象患者(人)

平均在院日数(日)

診療単価(円)

現状

一般病棟

リハ病棟

現状

一般病棟

リハ病棟

現状

一般病棟

リハ病棟

整形

83

66

17

19.3

17.2

38.4

42,059

50,930

23,944

神リ

16

0

16

51.2

-

75.5

26,346

-

25,532

消化

73

73

0

21.4

21.4

-

42,096

42,096

-

外科

32

32

0

23.1

23.1

-

35,335

35,335

-

泌尿

9

9

0

10.5

10.5

-

43,333

43,333

-

脳外

38

31

7

16.6

14.9

33.6

58,731

67,725

27,552

合計

251

211

40

21.5

18.4

54

41,055

46,890

25,290