<質問箱>

『舌のROM』


Q

 嚥下障害の分野で『舌のROM』という表現が使われていますが,これは国際的にも正しい用語なのでしょうか.ちなみに,2002年度版リハビリテーション医学用語集にはROMの日本語が,「(関節)可動域」となっており,注として,『ROMの概念には関節の意を含まない.例;体幹ROM』と記載されています.舌のROMもこの注釈が適用できると考えてよろしいのでしょうか.(横浜・MK)

A

 ROMの概念には,関節の意を含まないことについては,そのとおりです.文献的にも,Oncology 11: 651-659(1997)に“range of motion exercise for the jaw, tongue, lips, and larynx”という表現が実際に使われていて,舌,口唇,喉頭などの関節以外の組織でもROMは使われています.
 しかし,医学中央雑誌のキーワード検索では,舌,ROMで検索しても該当なしとなっています.むしろ,舌運動という表現の方が日本口腔外科学会など他学会でよく使われている用語です.したがって,「舌ROM」という表現は,むしろ慣用的表現として一般に用いられているようです.
 舌ROMの正確な測定方法については,まだ確立されていません.ただし,舌の突出,上下,左右,回転,舌体の口蓋への接触運動などを診療場面で確認し,不十分の場合には,他動運動,自動運動,抵抗運動,ストレッチング,などが試みられています.
 また,舌の動きの客観的な評価法として,まず,発声を用いたスクリーニング検査で評価する方法があります.舌尖の挙上が不十分な時は「だ」が「あ」に聞こえ,「の」が「お」に聞こえます.さらに,奥舌の挙上が不十分な時には,「か」が「あ」に聞こえます.また,嚥下造影により,嚥下時の実際の舌の送り込み運動を確認することができます.一方,新生児の哺乳などは,超音波エコーを用いて,矢状面では舌背の動きやオトガイ舌骨筋などの動きを捉えることができます.(評価・用語委員会 高橋秀寿)

(リハニュース19号:2003年10月15日)