<質問箱>

?? 質 問 箱 !!
ビデオ嚥下造影の評価のポイント


Q ビデオ嚥下造影の評価のポイントを教えてください。
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A 嚥下の口腔相、咽頭相は、それぞれの運動時間が1秒以内である。嚥下造影検査(Videofluorography、以下 VF)では、このすばやい運動を、ビデオ撮影によって繰り返し観察したり、静止させたりすることが可能である。これによって、誤嚥の同定、不顕性誤嚥の発見、効果的な体位の選択、嚥下しやすい食物形態の選択などが可能になった。

 撮影装置は、通常のデジタルビデオデッキでコマ送りが可能なもので十分である。また、リクライニング式車椅子に座面の高さ調整がついたものを用いることで、いろいろな背もたれの角度での検査が可能になる。

 検査食品は、造影剤を含んだ液体(ジュースなど)に、とろみをつけて、低粘度、高粘度のものを用意する。また、半固形物(ゼリー)、固形物を準備する。
 VFでの評価ポイントとしては、口腔相では、口唇の動き、咀嚼状態、食塊形成、口腔内残留、咽頭への送り込みなど、咽頭相では、早期咽頭流入、咽頭通過、喉頭侵入(誤嚥)の有無・タイミング・量、口腔への逆流、鼻咽腔への逆流、咽頭残留(喉頭蓋谷、梨状陥凹)、食道入口部の通過など、また、食道相では、食道残留、食道内逆流、胃食道逆流などをチェックする。さらに、誤嚥した時の咳嗽反射の有無と強さについても検討する。

 特に誤嚥は、喉頭内への造影剤の流入の時期によって、前咽頭期型、喉頭挙上期型、咽頭下降期型、混合型に分類される。前咽頭期型は嚥下反射が誘発されないか、遅延している場合に生じる。喉頭挙上期型は喉頭挙上や声帯の閉鎖が不十分である場合に生じる。咽頭下降期型は、咽頭期が終わり、喉頭が下行し、声門が開く時に生じる誤嚥で、嚥下時の咽頭内圧の不十分な上昇や食道入口部の不完全な開大のために、咽頭内に残った食塊が、喉頭が下行した際に生じる。

 また、VF中に誤嚥が認められる場合に、これを防止するための対策として考えられる手技について、同時にVFを用いて確認することができる。例えば、食物形態による変化、背もたれの角度調節、頭部の屈曲、頸部の回旋、随意的な咳嗽を促す、反復嚥下、などである。
 しかし、VFの検査は、患者に通常の食事とは異なる緊張感を与え、しかも命令による嚥下であり、食物形態も均一のものを用いているので、その結果がそのまま日常の摂食状態を反映するとは限らない。したがって、臨床所見と合わせて判断することが望まれる。

文献
1)木村彰男:摂食・嚥下障害の評価. 現代リハビリテーション医学(千野直一 編). 改訂第2版,金原出版, 東京, 2004; pp 183-188
2)小野木啓子・他:嚥下造影検査最近の知見を含めて. 臨床リハ 2002; 11: 797-803
3)谷本啓二:VF検査、摂食・嚥下リハビリテーション(金子芳洋、千野直一 監修). 医歯薬出版, 東京, 1998; pp 93-96
(評価・用語委員会 高橋秀寿)
(リハニュース25号:2005年4月15日)