<REPORT>

第40回日本脊髄障害医学会

国立病院機構村山医療センターリハビリテーション科

田中 尚文


 本学会は、昨年11 月11 日( 金) 〜12 日( 土)、笹川記念会館にて、国立病院機構村山医療センターの柴崎啓一名誉院長(写真右) が学会長を務められ、脊髄再生医療と脊髄損傷の排尿管理を2 つの大きなテーマとして、シンポジウムや特別講演が企画された。現在、日本脊髄障害医学会の会員数は約1,300 名であるが、本学会には医師約300 名、コメディカル約40 名が参加し、一般演題の140 題を加えて、計164 題の演題発表が行われた。

脊髄再生医療に関して

 シンポジウム「脊髄損傷研究に関する最新知見」では、シンポジストより、骨髄間質由来細胞、神経幹細胞あるいは内在性神経前駆細胞を用いた細胞移植、顆粒球コロニー刺激因子や遺伝子導入など脊髄再生医療に関する研究が発表され、討論では、まず脊髄損傷研究において実験モデルや評価を統一する必要があることが指摘され、移植方法と移植に適した時期などについて活発な討論が行われた。ランチョンセミナー「Stem Cells for the Treatment of Myelin Loss」では、米国 Reeve-Irvine Research Center の Hans S. Keirstead 先生が脊髄損傷に対する幹細胞移植療法について講演された。特別講演「中枢神経系の再生医学」では、慶應義塾大学生理学教室の岡野栄之教授が、ヒトと同じ霊長類であるサルにおいて移植された細胞はNeuron やOligodendrocyte に分化し、損傷された脊髄内でその機能回復を担っていると講演された。

脊髄損傷の排尿管理に関して

 特別講演「脊髄障害者の健康とQOLを高めた自己導尿法の世紀」では、北九州古賀病院の岩坪暎二先生が、自己導尿の優位性について、豊富な自験例を示しながら、選択的くも膜下腔腰神経ブロック法や陰茎プロステーシス手術などの併用の有用性とともに講演された。シンポジウム「自己導尿法に関わる諸問題」では、脊髄損傷急性期・慢性期に加えて二分脊椎症における間欠導尿法の問題点についても討議された。

脊髄損傷のリハビリテーションに関して

 シンポジウム「脊髄損傷のリハビリテーション:機能改善に向けての挑戦」では、脊髄損傷の機能障害を上肢機能障害、下肢機能障害、歩行障害、痙縮および呼吸機能障害の5 つのテーマに分けて発表がなされた。発表では、不全頸髄損傷の上肢機能障害に対して残存機能に適した装具療法などの治療手段の選定が重要であること、歩行再建では歩行支援ロボット、装具とFES または動力源を組み合わせたシステムなど、痙縮に対する治療ではバクロフェン髄腔内投与療法が紹介され、呼吸機能障害に対しては呼吸補助筋の筋力訓練に加えてアンビューバックを用いたair stacking 訓練が有用である可能性が報告された。


(リハニュース28号:2006年1月15日)