筋力増強訓練としてのPRE(Progressive Resistive Exercise)は徐々に負荷量を増やして等張性収縮を繰り返し、筋力増強を図るものです。この手法は1945年にDelorme が発表したものが有名で、彼は外傷などで
萎縮した筋肉の回復を図るには、筋力、持久力、スピード、協調性を分けて考えるべきで、特に筋力(power)と持久力(endurance)は訓練法が異なるということを強調しています。すなわち高負荷、低頻度の運動で筋力が、低負荷、高頻度の運動で持久力が得られるという考えを主張しました。この考え方は現在では一般に広く認められています。また彼によれば、まず、筋力を回復させ、ほぼ正常筋力となった後で持久力を強化すべきとしています。
具体的な訓練の方法は、まず10RM(repetition maximum 、10 回は繰り返しできるが、それ以上の回数はできない負荷量の運動、たとえば懸垂が10回はできるが11 回は無理ならその負荷が10RM)を求めます。初回は10RM を求めるため、問題なく10 回筋収縮をさせることが可能な低い負荷量として10 回筋収縮を行った後、少しずつ負荷を増やしていって、それぞれ10 回筋収縮を
行い、10 回以上収縮不能なところでやめて、10RM を決定します。その週はこの10RM の負荷を最大負荷量として、翌日はたとえば10RM が12 kg であったなら、5 kgの負荷から開始して10 回、次に6 kg で10 回、7 kg で10 回と増やしていって、12 kg で10 回収縮運動を行います。全部で80 回筋収縮運動を行ったことになり、これを1 日の運動量とします。この1 日に行う収縮運動の回数は70 から100 回の間になるように設定します。各負荷での運動の間には休息を入れて、全運動時間は30分程度とし、疲労を起こさないようにします。週に5 日運動を行い、2 日は休みます。5 日目に筋力を測定し、1RM、10RM を求めます。次の週はこのとき得られた10RM を基準に負荷量を調節(増加)して5 日間同じ負荷で運動を行うようにします。
現在、実際に行われている筋力強化法は高負荷という点では、Delorme の考え方に基づいていますが、実際の負荷量の調節などはさまざまな工夫が行われており、また、10RM より強い負荷を与えて筋力強化を図る方法も行われています。Delorme のように正確に筋力を測定し、負荷量を細かく設定し漸増することの意義は必ずしも認 められていないため、質問にあるようにPRE に従った筋力増強法という具体的な訓練法を目にすることがないと感じられるものと思われます。しかしPREは多くの筋力強化法の基本となった考え方といえるでしょう。
文献 Delorme TL : Restoration of muscle power by heavyresistance
exercise. J Bone Joint Surg [Am] 1945; 27: 645-667
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