リハビリテーションにおける治療は、機能障害そのものへのアプローチと代償的アプローチに分けられます。前者は麻痺や言語障害など、病気の直接の結果として生じたからだの機能の障害を回復させるためのアプローチであり、リハビリテーション医療に携わる者は、常に最大の機能回復に向けて努力する責任があります。ただし、すべての機能障害が元に戻るわけではなく、病気の性質や程度によっては回復に限界があることも少なくありません。したがって、もうひとつの代償的アプローチも活用しながら、生活を送るうえでの障害の軽減に努めることが大切です。
この代償的アプローチには、残った機能の活用(右手が不自由になった場合に左手で字を書くなど)、補助具の活用(下肢の装具を使うことにより歩き易くするなど)、環境の調整(手すりをつけることによりトイレの自立を助けるなど)が含まれます。機能障害が変わらなくても、代償機能の活用により日常生活が送り易くなることはしばしばありますので、2つのアプローチをバランスよく組み合わせて、リハビリテーションチームの協働により、最大限の機能回復と生活の質の向上を目指すことが大切です。
医療の高度化、医学の進歩に伴い、リハビリテーション医学の対象は、従来の脳疾患や骨関節疾患に加え、呼吸器疾患、循環器疾患、メタボリックシンドローム、がん、移植医療など、年々拡大しています。さらに、これまでは回復が困難とされてきた成人の脳における可塑性(変化の可能性)への働きかけ、再生医学の進歩に伴うリハビリテーションの役割の再認識、長期宇宙滞在の現実化に伴う滞在中および地球帰還後のリハビリテーションの必要性など、新たな領域や可能性が広がりつつあります。これらの可能性に対する果敢な挑戦こそ、絶えず進化を続けるリハビリテーション医学の特徴をよく表していると言えます。
※ホームページの「主な疾患のリハビリテーション」から具体的な医療の内容が参照できます(一般向け)。