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【リハビリテーション科医の魅力】~若手医師がリハビリテーション科専門医を志す理由~

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日本リハビリテーション医学会専門医制度

本学会が認定するリハビリテーション科専門医は、運動障害、認知障害を横断的、総合的に診る専門家として、医療において重要な役割を果たしています。その業務は、疾病や障害の診断・評価・治療、リハビリテーションゴールの設定、理学療法、作業療法、言語聴覚療法、義肢・装具等の処方、運動に伴うリスクの管理、リハビリテーションチームの統括、関連診療科との連携など、多岐に渡っています。

診療の対象となる疾患・障害も幅広く、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、骨関節疾患、関節リウマチ、切断、神経・筋疾患、小児疾患、呼吸器疾患、心疾患、がんなどが含まれます。

リハビリテーション科は一般社団法人日本専門医機構が定める19の基本領域の1つであり、2018年度からは日本リハビリテーション医学会が作成し、日本専門医機構の助言・評価を受ける基準等に基づく専門医制度に移行する予定です。

※本学会は専門医資格認定団体として厚生労働省に認可されており、リハビリテーション科専門医は医療に関する広告が可能な資格となっています(医政総発第0301001号)。

リハビリテーションにおける治療

リハビリテーションにおける治療は、機能障害そのものへのアプローチと代償的アプローチに分けられます。前者は麻痺や言語障害など、病気の直接の結果として生じたからだの機能の障害を回復させるためのアプローチであり、リハビリテーション医療に携わる者は、常に最大の機能回復に向けて努力する責任があります。ただし、すべての機能障害が元に戻るわけではなく、病気の性質や程度によっては回復に限界があることも少なくありません。したがって、もうひとつの代償的アプローチも活用しながら、生活を送るうえでの障害の軽減に努めることが大切です。

この代償的アプローチには、残った機能の活用(右手が不自由になった場合に左手で字を書くなど)、補助具の活用(下肢の装具を使うことにより歩き易くするなど)、環境の調整(手すりをつけることによりトイレの自立を助けるなど)が含まれます。機能障害が変わらなくても、代償機能の活用により日常生活が送り易くなることはしばしばありますので、2つのアプローチをバランスよく組み合わせて、リハビリテーションチームの協働により、最大限の機能回復と生活の質の向上を目指すことが大切です。

医療の高度化、医学の進歩に伴い、リハビリテーション医学の対象は、従来の脳疾患や骨関節疾患に加え、呼吸器疾患、循環器疾患、メタボリックシンドローム、がん、移植医療など、年々拡大しています。さらに、これまでは回復が困難とされてきた成人の脳における可塑性(変化の可能性)への働きかけ、再生医学の進歩に伴うリハビリテーションの役割の再認識、長期宇宙滞在の現実化に伴う滞在中および地球帰還後のリハビリテーションの必要性など、新たな領域や可能性が広がりつつあります。これらの可能性に対する果敢な挑戦こそ、絶えず進化を続けるリハビリテーション医学の特徴をよく表していると言えます。

※ホームページの「主な疾患のリハビリテーション」から具体的な医療の内容が参照できます(一般向け)。

全国で活躍するリハビリテーション科専門医

本学会が認定するリハビリテーション科専門医は2019年11月末の時点で、全国で2,350名の専門医が認定されています。リハビリテーション科専門医がカバーする領域は保健・医療・福祉分野に到るまで幅広く、その専門性と役割は他科と比べてきわめて広いといえます。

  • 臨床急性期・一般病床:

    病院(急性期、一般病床)におけるリハビリテーション科専門医の役割は、疾患の急性期に対する早期リハビリテーションを安全かつ確実に実施できるシステムの構築や、適切な機能評価と予後予測に基づいた適切なゴール設定および退院調整など多岐にわたります。一部の施設(臨床研修病院など)では、研修医へのリハビリテーション教育も役割の一つです。

  • 臨床回復期(回復期リハビリテーション病棟):

    回復期リハビリテーション病棟における専門医の役割は主治医として入院患者の評価、適切なゴールの設定、障害の受容を助けるインフォームドコンセント、リハビリテーション処方、装具処方、在宅調整、内科的管理などを行うのみならず、効率的な回復期リハビリテーションシステムの構築、入院希望患者のリハビリテーション適応の判断、リハビリテーションスタッフや非専門医の教育など多岐に渡っています。また、近年は脳卒中などを中心に地域連携が注目されており、急性期と生活期(維持期)をつなぐ橋渡しとして、回復期リハビリテーションは大きな役割を担っています。これらの役割を果たすためには、リハビリテーション医学・神経学のみならず、福祉・行政などを含めた幅広い知識が必要であり、まさにリハビリテーション専門医の活躍の場といえるでしょう。

  • 臨床生活期(維持期)・地域支援(地域リハビリテーション):

    生活期(維持期)リハビリテーションの目的は、活動性を維持・向上させることにより、機能や健康状態を維持・増進させ、家庭内や社会での役割を回復させ参加の拡大を図ることにあります。この目的を達成するためには、専門的なリハビリテーション援助が必要で、少なくとも専門的相談がいつでも受けられる態勢があることが望まれます。特に生活期(維持期)初期においては生活の安定化が主目標となり、生活期(維持期)中期においては機能的変化への対応が重要になります。 また障害者自立支援法の施行により、都道府県で行っていた福祉サービスが、市区町村のレベルで実施されるようになりました。市区町村による障害者支援が、迅速かつ適切に公平に行えるよう、専門的な援助が必要とされています。さらに障害発生に対する予防的見地から、リハビリテーションの専門的知識・経験に基づく社会的啓発を推進させることも重要です。 これらの役割は、福祉・行政を含めたリハビリテーション医学全般の知識と経験が必要で、リハビリテーション科専門医の活躍が期待されています。

  • 教育・研究:

    リハビリテーション医学における教育は、モデルコアカリキュラムに沿ったすべての医学生に対する卒前教育、新臨床研修制度に基づいた初期臨床研修とリハビリテーション科専門医養成のための卒後研修カリキュラムに沿った卒後教育、さらにそれに引き続く生涯教育に分けられます。この中で、卒後教育に関しては、新臨床研修制度の開始とともに、大学病院のみでなく、急性期・一般病院や回復期リハビリテーション病院勤務する専門医が指導医として教育に関しても重要な役割を果たしています。 また、理学療法士、作業療法士を始めとした関連専門職養成校では、すでに多くの専門医が関連専門職卒前教育に関与しています。

※わが国の人口規模と高齢化の急速な進行を考慮すると、少なくともリハビリテーション科専門医は4000名は必要と推計されており、社会に対する責任を果たすためにも、少しでも多くの専門医を育成することが急務となっています。

※ホームページの「リハビリテーション科専門医一覧」で全国のリハビリテーション科専門医氏名が参照できます。

リハビリテーション科専門医になるには?(現行制度)

専門医の資格は、本医学会加入後3年以上を経過していること。リハビリテーション科が関与するすべての領域について、定められた卒後研修カリキュラムにより研修を修め、資格試験に合格して認定されます。

日本リハビリテーション医学会専門医認定基準

  • 医師免許取得後5年以上及び本医学会加入後3年以上を経過していること。
  • 本医学会の定めた専門医制度卒後研修カリキュラムに基づき本医学会が認定する研修施設において3年以上の研修を行ったものであること。本医学会年次学術集会における主演者の学会抄録2篇を有すること。尚、2篇のうち1篇は、本医学会秋季学術集会、地方会学術集会に代えることが出来る。また、地方会学術集会における抄録は、地方会発行の発表証明書でも良いこととする。学会抄録とは一般演題の他、シンポジウムの演者、特別講演、教育講演の講師としての発表抄録とする。
  • 自らリハビリテーション医療を担当した30症例の症例報告を提出すること。
  • 自らリハビリテーション医療を担当した100症例の経験症例リストを提出すること。

※詳しくは、ホームページの「資格・制度」をご参照ください。

※本学会が認定するもう一つの資格として、リハビリテーション医療の一定以上の臨床経験をもつ医師を対象とした認定臨床医制度があります。リハビリテーションに関する医療水準の維持向上をはかり、もって国民福祉に寄与することを目的とした制度で、本学会会員である医師のうちから公募の上審査、認定されます。

リハビリテーション科専門医になるには?(2018年度から開始予定の新制度)

2018年度から開始予定の新制度では、他の基本領域と同様に研修プログラム制を基本とした制度設計に変わります。リハビリテーション科専門医を目指す場合には、全国の研修プログラムのうち1つに所属し、3年間以上の研修(基幹施設と連携施設・関連施設を利用した研修)により研修カリキュラムをすべて満たすことで研修修了となります。研修修了後に専門医試験を受験し合格すると、日本専門医機構よりリハビリテーション科専門医の認定を受けることになります。

また、リハビリテーション科では、いくつかの基本領域診療科の専門医(一部は認定医)をすでに取得している医師等を対象として、研修カリキュラム制を採用する予定で準備を進めています。これは、研修カリキュラムの中で、それまでの診療経験で満たしていない部分のみを、2年間以上の期間で研修することにより専門医試験の受験資格を得ることができるもので、詳細な運用については検討中です。

医学生リハビリテーションセミナー

本学会では、研修指定施設に協力を依頼し、医学生を対象としてリハビリテーション医学を学ぶための医学生セミナーを全国で開催しています。是非ご参加ください。受講者の感想文もご覧頂けます。