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リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査-7-

(リハ医学45-1:2008年1月)

日本リハビリテーション医学会 評価・用語委員会 担当理事 才藤 栄一
委 員 長 朝貝 芳美
委員 森田 定雄(担当),浅見 豊子,根本 明宜
正門 由久,美津島 隆

はじめに

日本リハビリテーション医学会評価・用語委員会では1998年以来,リハビリテーション(以下,リハ)関連雑誌の原著論文に使用されている評価法を調査し,そのデータをリハ医学会のホームページに掲載している.さらに評価法使用頻度を集計し,本学会誌に1999年以来,数回「リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査」1~6)として報告してきた.2006年のデータの集計が終了したので,その分析結果を中心に,ここ数年の評価法の使用動向を報告する.

対象と方法

調査方法は2006年発行のArch Phys Med Rehabil,Am J Phys Med Rehabil,J Rehabil Med,Disabil Rehabil,リハ医学,総合リハ,臨床リハを対象に原著論文の中で用いられている評価法を抽出した.これらの論文から抽出する評価法の基準は一昨年(2005年)の報告5)を参照されたい.また,2004~05年の評価法抽出作業では脳卒中合同ガイドライン委員会の脳卒中のevidence levelに関する分類7)を基準にして,各評価法が使用されていた論文のエビデンスレベルの評価も行ったが,それぞれの評価法が用いられている論文のエビデンスレベルと,評価法自体の妥当性,信頼性とは異なるため,今回の評価法抽出作業では,エビデンスレベルの評価は行わなかった.また動向調査開始時の方針に従って,単純なVisual analog scale(VAS)による評価は今回の集計から省いた.

結果

2006年のリハ関連雑誌に使用されていた評価法の延べ数は689件であった.これらの中で3編以上の論文に使用されていた評価法を表1に示す.20編以上の論文で用いられていたFunctional independence measure(FIM),Mini-mental state examination(MMSE),Medical outcomes study short form-36 health survey(SF-36),Barthel index(BI)の4評価法は昨年も20編以上の論文に用いられており,毎年多くの論文に用いられているといえる.その他,高頻度に使用されている評価法は例年と比較して大きな変化はなく,全体に昨年の使用頻度6)とほぼ同様の傾向を示している.

次に疾患群別に各評価法の使用頻度を示す.脳血管障害・その他の脳疾患では論文数が多いため,全体の集計の傾向をほぼ反映し,FIM,MMSE,BIの使用頻度が高いが,SF-36の使用頻度は少ない傾向があった(表2).脊髄損傷・その他の脊髄疾患(表3)ではASIA impairment scaleが多く使用され,FIMは少なく,SF-36が比較的高頻度に使用されていた.関節リウマチ・その他の骨関節疾患(表4)ではFIMとSF-36がほぼ同じ頻度で使用されていた.その他の疾患群の結果は表5表6表7に示す.切断を扱った論文は絶対数が少なく,2つ以上の論文で使用されていた評価法はなかった.

次に今まで蓄積した1998~2000年,2003~2006年の7年分のデータ全体の傾向を表8に示す.やはりFIMが多く使用され,BIの約2.5倍使われていた.さらに7年間で高頻度に使用されていた上位7評価法の経年的な使用頻度の変化を図1に示す.FIMは年ごとに変化はあるが,いずれの年でも最も多く使用されていた.

考察

1998年の調査開始以来,リハ領域の論文で使用されている評価法は,全体的に大きな変化はみられず,臨床,研究に使用されている評価法は表1に示したものが代表的といえる.しかし,頻度の絶対数はその領域の論文がその年に何編発表されたかに影響される.たとえばASIA impairment scaleは脊髄損傷の論文が多いと,高頻度に使用される評価法となるが,2006年にはやや頻度が低い結果となっていた.従って,各疾患群別に高頻度に使用されている評価法が,その領域で一般に広く使用されているものと考えることができる.
2004年より2年間,評価法を抽出した論文のエビデンスレベルの評価を行った.研究のデザインがより客観的で,計画的に行われたものが高いレベルのエビデンスを示す論文であると評価される.しかしエビデンスレベルが高いことが必ずしもその論文に使用されている評価法の信頼性,妥当性の高さを示すわけではないため,今回はエビデンスレベルの評価を行わなかった.

リハ領域で用いられている評価法は数多くあり,それぞれの領域に特徴的な障害をうまく捉えられるように作成され長年使用されているものが多い.評価法の使用頻度と評価法自体の信頼性とは必ずしも一致しないが,頻回に使用されている評価法は多くのリハ医療関連の研究,臨床に用いられているので,今後も使用され続けるものと考えられる.従って,当委員会では現在行っているリハ関連雑誌での評価法の使用動向調査を継続し,リハ医療に携わる医療スタッフの参考にしていただく方針である.また,ここ4年間は毎年,評価法使用動向調査と題して1年間の評価法を整理し,年ごとの使用頻度の動向を報告してきたが,上述のように,毎年,大きな変化はなく,現在使用されている評価法の頻度はほぼ同じ傾向である.従って,上記の雑誌に使用されている評価法の頻度の調査,集計は今後も毎年継続して行い,ホームページ上のデータの更新は行うが,学会誌への動向調査の報告は3年ごととする予定である.

文献

  1. 住田幹男, 園田 茂, 大橋正洋, 小林一成, 近藤和泉, 首藤 貴, 千田富義, 豊倉 穣, 正門由久, 大川弥生, 眞野行生 : リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査. リハビリテーション医学1999 ; 36 : 553-555

  2. 園田 茂, 住田幹男, 大橋正洋, 小林一成, 近藤和泉, 千田富義, 豊倉 穣, 眞野行生, 蜂須賀研二 :リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査―2―. リハビリテーション医学2001 ; 38 : 87-90

  3. 園田 茂, 大橋正洋, 小林一成, 近藤和泉, 豊倉 穣, 森本茂, 千田富義, 住田幹男, 眞野行生, 蜂須賀研二 : リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査―3―. リハビリテーション医学2001 ; 38 : 796-798

  4. 小竹伴照, 朝貝芳美, 豊倉 穣, 住田幹男, 田中信行, 浅見豊子, 高橋秀寿, 塚本芳久, 森田定雄, 森本 茂 : リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査―4―. リハビリテーション医学2004 ; 41 : 727-732

  5. 住田幹男, 朝貝芳美, 小竹伴照, 浅見豊子, 高橋秀寿, 塚本芳久, 美津島隆, 森田定雄 : リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査―5―. リハビリテーション医学2005 ; 42 : 603-608

  6. 住田幹男, 朝貝芳美, 森田定雄, 浅見豊子, 小竹伴照, 高橋秀寿, 美津島隆 : リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査―6―. リハビリテーション医学2006 ; 43 : 571-575

  7. 里宇明元 : 脳卒中リハビリテーション・ガイドライン―策定経過と概要―. リハビリテーション医学2004 ; 41 : 86-89